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2021年12月30日木曜日

コロナワクチンで長寿という統計【年末ご挨拶】

2021年(令和3年)の暮れもいよいよ押し詰まってきました。通勤電車も、緊急事態宣言下を彷彿とさせるようなガラガラです。

英エコノミスト誌のニュースレター(※1)のなかに、Daily Chartというものがあり、統計マニアのスタッフが独特の視点で(その極端なのがビッグマック指数か?)、かつビジュアル重視で、人間社会や自然界に切り込んでくれているものがあります。

今年そのなかで最も反響があったとされるのが、この棒グラフです。



表面的な結論は、ファイザー社とモデルナ社の新型コロナウィルス感染症に抗するワクチンを2回接種したグループは、それ以外に比べて、新型コロナウィルス感染症以外の死因で亡くなった人の数(100人あたり、1年あたり)が、たったの1/3程度である。

つまり、

ファイザーとモデルナのコロナワクチンは、コロナ以外の病気に罹るリスクや重症化するリスクをも抑える効果もある。

ということです。

去年もそして今年も、どちらかと言えば(?)、ワクチンに対して懐疑的な話を紹介するなどひねくれた傾向(※2)にあった当ブログと当メルマガ(本人はいたって中立公平のつもりです!)なので、ワクチンの意外なすばらしさを伝えるエピソードで年末を締めくくり、バランスを図ろう・・・

というのが本日の趣旨???

では必ずしもありません。


どの程度の効果があったのかまったく検証されなかった緊急事態宣言下の様々な措置がありました。飲食業や旅行業に携わる人々はその理不尽な被害者の典型です。

今月、また、二度ほど、真珠湾攻撃前夜の話を書きました。無謀な戦争が、決して、非民主的な専制政治の暴走ゆえ始まったわけではないという、今日ではよく知られている真実にあらためて迫ろうとしたものでした。

この反省がまったく活かされていないのが、コロナ禍での、為政者⇔マスコミ⇔世間一般大衆のトライアングルだと思います。

マスコミ=マスゴミとは思いたくないですが、視聴率狙いでコロナを煽った低級情報番組が、この英エコノミスト誌の執筆スタッフとは大違いの数理・統計センスのなさで、世間一般を欺罔している姿は、戦前の朝日新聞と何ら変わりがありません。

☀☀

「相関関係」と「因果関係」はイコールではない、というのは統計のイロハのイです。なので、英エコノミストの同記事(棒グラフからハイパーリンクしています)でも、簡潔かつ丁寧に注釈がなされています。

例えば、

①持病を抱えていてコロナワクチンの接種を控えろと医師に助言されているひとたち→まさにその持病が原因で調査対象期間中に亡くなる。

②持病は抱えていないが何らかの理由で(下記③を除く)ワクチン未接種のひとたち→調査期間中に新たな病変を自覚したが(医療機関でコロナに感染したくないという理由で)診察を先送りにし、癌など進行の早い病気で亡くなる。

③持病が理由ではなく(例えば上記※のようなワクチン陰謀論を妄信している)偏屈なリバタリアン(※3)→平均的なひとよりもリスクの高い生活習慣や行動態度(マスクなんか着けずに三密環境で馬鹿騒ぎするなど)・・・

この調査は米CDCが米国民に行った悉皆調査です。そこでは③の要因は考慮に入れられているそうです。そのために、コロナワクチンを打っていないグループには、インフルエンザワクチンすら打っていないひとは除いている(≒納得のいく限り健康維持のためにできることはちゃんとやろうというグループのなかからファイザーまたはモデルナを打ったサブグループとそうでないサブグループとにわけた)ということです。

☀☀☀

こうして、同記事も、「ワクチン接種は『死への免疫』ではない」、つまりワクチンが不老長寿の妙薬ではないと結語しているのです。

ところで、このブログの読者の半数以上が日本人なので(!?)、同記事の本筋ではないのですが、冒頭の右側のグラフが気になるところではないでしょうか。

米国は、日本以上に(!?)多民族国家であることから、CDCの調査も、アジア系、ヒスパニック系、白人、黒人(※4)別に集計をしてくれています。

ワクチン二回接種済みか否かにかかわらず、致死率が、アジア系<ヒスパニック系<白人<黒人となっていることが見て取れ、なんとなく、ここ二年間で、コロナに関する世界情勢から感じ取ってきたことと整合するようには見えます。

ここであらためて、「因果関係」≠「相関関係」です。

アジア系(の読者が多いこのブログ)は、血筋的というか先天的というか抗コロナの免疫が備わっているひとの割合が多いと読み取りたい気持ちはわかります。実際そのようないわゆるファクターエックス的なものはあるのかも知れません。しかし、これら4つのグループの間では、住環境、経済環境、生活習慣や文化など、感染症に影響する特徴の違いが明確にありそうです。

この点でも、謙虚な分析が必要です。

先ほど、同記事の結語を紹介しましたが、その直前のセンテンスは、

It seems all but certain that some still-invisible difference between people who get the vaccine and those who do not, rather than some unknown benefit of the jab, is to thank (or blame) for the vaccine’s correlative effects.

ワクチン接種済みの人たちとワクチン未接種の人たちとの「いまだに見えざる差異」は、ワクチンの知られざる効能というよりもむしろ、ワクチンの「相関関係的」影響のおかげ(せい)と思えてならない。


※1    The Economist TodayMonday to Friday

※2    ワクチンに限らず、なにごとも(とくに世間一般で当然のこととして受け入れられてしまっている考え方について)新鮮な懐疑の眼差しを持つことはたいせつだと考えております。ただし、これは、ワクチン陰謀論とはまったく別物であることをあらためて強調しなければならないでしょう。「ワクチン接種の世界的キャンペーンは、某IT長者による、人口削減計画が背景にある」とか「ワクチンを利用して全人類にマイクロチップを埋め込もうとしていて誰が何処にいるのかGPSで監視できるようになる」とかを、立証もせずに、デマを広める行為は、ワクチンの効果を鵜呑みにするのと同等以上の非科学的態度です。

※3    わたしはどちらかというとリバタリアンですが偏屈ではないつもりです。

※4    この分類方法が完璧なのかどうか疑問ですが、あえてこのように分類してくれていることは統計を鑑賞する側としてはとても助かります



2009年4月30日木曜日

豚インフルと悪性インフレのストレステスト

Googleでの検索順位が急上昇の「パンデミック」と「フェーズ5」。パンデミックな感染症とインフレーション(通貨の紙屑化)は、伝染が伝染を呼ぶ(期待が期待を呼ぶ)スパイラル現象を起こしつつ蔓延しうるという共通点があります。

ワクチンで意図的に抗体を作ったり、抗生物質(効かないものもある・・・)で対処療法を試みても、ウィルス側が進化することで耐性を確保し、人類側とのイタチゴッコが収まらない。インフレ(デフレ)期待の蔓延を喰い止めようと政策側が関与しても、期待通りの効果が得られない(不発に終わるか、副作用が強すぎるか、何れかの極端に陥る)等、万能の処方箋が無いことに酷似しています。

パンデミック退治も、インフレ(デフレ)退治も、すべて政府の責任だ。。。と論ずるのは簡単。しかし、いずれも人類が互いに接点を持ちながら或る程度自由に経済行為を続けるための宿命または自由社会の対価との覚悟も必要。

「伝染が伝染を呼ぶスパイラル」と書きました。相場に譬えれば、ロスカットがロスカットを呼ぶクラッシュ。「市場は需給が均衡することを前提として機能しているので、均衡しない場合には介入する必要があるのだ」という考え方で、株価のPKOや、為替介入がしばしば正当化されます。しかし、バブル崩壊過程が痛みを伴い過ぎるとして、それを反省材料として、そこまで酷いクラッシュは再現させないように、今後は預金保険というモラルハザード下にある銀行にはレバレッジ規制を掛けるという政策の介入はあり得るでしょう。が、別のモラルハザード(良いとこ取り)を市場参加者に助長させるような相場介入を正当化する理由にはなりません。

バブルに塗れなかった禁欲的な投資家が自らの利害で相場に登場するタイミングは、政策の介入の可能性で疑心暗鬼にさせることで、政策意図とは反してかえって遅くなる。このことこそが、日本の失われた10年の教訓であり、現在、米欧が他山の石とせねばならない点。

ワクチンも抗生物質もなかった中世後期のヨーロッパでは、確かに黒死病で人口が激減しました。感染する人が増えれば増えるほど自らも感染する確率が加速度的に増える状況で生き延びることが如何に困難かという実例です。しかし、黒死病を生き抜いたヨーロッパ人が現実少なからず居た(居る)こと、そして彼らは黒死病に犯されなかった地域の民族と比べて、人類にとって未解決の別の感染症、例えばHIVに対する抵抗力を有している(これは抗体が遺伝しているわけではなく、もともとの遺伝子が両感染症に抵抗力があったという意味。欧州全域の全人口が黒死病の“ストレステスト”を受けたわけではないので、ヨーロッパ人が決してHIVに感染しないということは意味しません)ことも同時に見逃してはならないと思われます。

パンデミックな感染症も、インフレ/デフレも、いずれも人類(の豊かさ)をゼロまたは無限大にまで収縮/発散するようなパニックにはならないという腹を括ることも、一面の真理。敢えて衒学的な言い方をすれば、ウィルスの拡散は、インフレ(デフレ)期待と同様、局所的にはしばしば不安定だが、広域的には安定する微分方程式だということです。

昔から、周りの誰かが風邪をひいていたら必ずうつされるという感染症に弱い筆者にとっては、パンデミックはそうでなくても腹を括らざるを得ない問題。優秀な中高生諸君には、構造不況の金融界など目指さず、絶対に喰い扶持が無くならないウィルス研究の分野を目指して勉強してもらいたいものです(笑)。
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2009年1月19日月曜日

バイアグラが売れない!?

●ファイザー製薬、営業部門2400人の雇用を削減(1/17WSJ)
全米のセールスマンsales repの何と三分の一に相当。先日の研究部門800人削減に続く発表。

景気が悪くなると勃起薬が売れなくなるのか?と想像しては行けません。米国の製薬業界の雇用のピークは2006年第一四半期の105,000人。現在そこから1割以上減少しており、ファイザーに至っては2007年1月以上、累計で15,000人雇用削減している、その最大の理由は、後発医薬品との競争で利益率が落ち込んでいることなのです。

ちなみにこの勃起薬ですが、インターナショナル・ヘラルド・トリビュン紙によりますと、スポーツ選手の成績との因果関係が強く疑われる(可能性が強い)。つまり、バイアグラを服用した後だと、速く走れる等の効能が認められるのだそうで、研究が進められている一方、ドーピング検査の対象にするべきかどうか喧々諤々の議論があるのだそうです。

●日興コーディアル証券、売却へ-シティグループ、急遽路線変更(1/18WSJ)
たった3日前には、ほかの個人向ブローカー事業(スミス・バーニー)をモルガン・スタンレーに売却する計画のなかに、日本のブローカー業務は含めないと発表していたのに、直近四半期83億㌦の赤字決算を発表した直後後、方針を変えたと。

ウォール・ストリート・ジャーナルが日曜日夜(日本時間)に報じたニュースは、日本においても注目だと思うのですが、ことの真偽がハッキリしないせいか、どういうわけか、日本のメディアの追随報道は妙に区々です。それにしても、この動き、日興コーディアル証券に対しても、モルガン・スタンレーに対しても、影響力が大いにある筈の三菱UFJは主導権を握っているのでしょうか?

●イギリス、金融機関への追加支援策を今夜発表へ(1/18FT、WSJ)
一発目は昨年10月の4000億ポンド。造反やら再可決やらで物議を醸した米国の金融安定化法案の7000億㌦と比べても、国民所得の規模を考えれば、全く遜色のない乾坤一擲だったが、血税を湯水のように使っているという世論の反動を余所目に、ブラウン首相もダーリング蔵相chancellor of exchequerも、公的資金受け入れ後も貸出を伸ばそうとしない銀行業界に対する怒りと不満を表明すると見られている。

●米国も、銀行救済策を練り直しへ(1/18WSJ)
銀行危機は当初想定よりも酷いとして、財務省、連邦準備銀行、預金保険機構の首脳が次期政権の経済閣僚と議論に入ったと。不良債権買い上げを目的とした「政府系銀行」を設立も。

ゴールドマン・サックスの試算によると、世界中の銀行が米国向けに保有している不良債権のうち、既に2兆㌦は損失が実現しているが、含み損がまだ同規模あるそうです(住宅関連で1.1兆㌦、企業向け貸出と社債で0.4兆㌦、商業用不動産、クレジットカード、自動車ローンで0.6兆㌦・・・)。

●アイルランド最大の銀行を国営化へ(1/17FT)

後半3つの話題、オーバーバンク解消という漢方薬を煎じて飲まないと長期的には資本主義経済圏の病理は何一つ改善しないのですが、短期的にはモラルハザード政策のスピードに応じて、その国の通貨が評価されるという事態が続くかも知れません。政府主導の信用膨張と財政膨張が、当該通貨の買い材料から売り材料に逆転するのが、どの程度「短期的」か、これを占うことが大変難しい。
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2008年8月5日火曜日

FOMC前夜の大物放談

●銀行救済はまだまだある-グリーンスパン氏が警告(8/4FT)
ノーザン・ロック、ベア・スターンズと同じように、破綻寸前の金融機関は少なくないと断言。

辞めたからって好き放題喋りやがって(怒)、という批判もあるでしょう。が、好き勝手な発言ならではの本音を重視したいもの。

100年に一度か二度の金融危機ではあるが、しかし政府の過保護な危機対応(heavy-handed regulatory response to the crisis)は世界的な株安など寧ろ弊害を齎すと警告。

●HSBC、アジアにおける信用収縮を警告(8/4FT)
●ベトナム政府、企業に対しコスト増の吸収を呼びかけ-消費者に価格転嫁するなと強行手段(8/4FT)
新興国とて米国経済の急激な鈍化に無関係(immune)ではいられない。信用危機が始まっている、と警告。
インド、ベトナムでの富裕層ビジネスが不振に陥りつつあると。

やはりデカップリングは難しいのか。アジアに営業基盤を置く同金融グループ会長の発言には重みがあります。デカップリング説のゴールドマン・サックスの反論も聞きたい。

●ヤフーの大株主、ジェリー・ヤンCEOの信任投票結果に疑問を突きつける(8/4WSJ)
調査を依頼したのは大株主ゴードン・クロフォード氏。8/1(金)に延期されていた年次総会で、ヤンCEOが85%で信任されたというのは疑問だと。少なくとも17%のシェアを押さえているクロフォード氏系列のファンド、確かに数え間違いはありそうだとの説も。ヤフー側は、集計作業に関与していない、独立した第三者の検査済と表明。

ヤフーと言えば、
カール・アイカーン氏、ブリストル・マイヤーの買収提案は価格が低すぎると苦言(8/4WSJ)
自身が会長を務めるバイオテクノロジー会社イムクローン・システムズ社の株式83%を取得したいとの提案に対して。

ロシュ⇒ジェネンテック(こちらも敵対的unsolicited)同様、製薬会社がジェネリック医薬品の競争と新薬開発の失敗を埋め合わせるために慌ててバイオテクノロジーに回帰(re-orientation)しているとWSJの論調。
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今週も宜しくお願い致します

2008年7月22日火曜日

続 社長はつらいよ

●ロシュ、米ジェネンテックを完全子会社化へ(7/21WSJ、FT)
昨日出ていたニュースですが、昨夜のNHKスペシャルを見て急に取り上げたくなりました。

ロシュはジェネンテックの創業者精神を重んずるべく過半株式を押さえつつ上場維持を続けていたが方針変更。ジェネンテック執行部は「聞いてない」とノーコメント。ちなみに同様の関係にある中外製薬については完全子会社化の計画は無いとのこと。

ジェネリック医薬品で日本10位の共和薬品(本社:大阪)がインドのルピン社に買収された様子を描いた昨夜のNHKスペシャル。理系大学院を卒業した俊才を年俸僅か75万円程度で雇い、低コスト高品質の製薬プロセスを導くために妥協無き議論が続けられるインドの医薬品メーカーの研究室。その礎は1975年「海外医薬品メーカーの特許はインド国内メーカーが国内市場向けに開発する分には(製法以外、つまり原料と最終品の成分については)特許切れの如く扱って良い」という法律が出来(現在は廃止)良いものをより安く作る製法を研ぎ澄ましてきた歴史にあると。

特許収支がマイナスで貿易収支はプラスだった日本の高度成長期を彷彿とさせます。

ところで、ルピン社買収の窓口となっていた共和薬品の副社長(創業者のお孫さん)が工場担当に異動した後ルピン側から求められている経営効率化の笛を吹けども踊らない現場の監督に苦労されている様子が痛々しかった。ルピン社が共和薬品の発行済株式の過半を取得したのは去年と報じられており、新株中心だったのか旧株中心だったのか筆者の手元資料では判然としません。インド人との会話では英語でご苦労され、現場でも浮いているとしか映らない姿に、もしかしたらこの三代目は「あんたは株を売ってしこたま儲けたんだからええわなぁ。ウチらはインド人に何時クビにされるかわかれへんし」という従業員の冷たい視線を感じたのは筆者だけでしょうか。勿論、多少なりとも映像的な演出もあったのでしょうが。

●ヤフー、アイカーン氏側の取締役選任で一時休戦(7/21WSJ、FT)
何処の業界も、会社の独立性を保つ経営というのは難しいものです。社長はつらいよ
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