2009年4月8日水曜日

円>ドル>ユーロ

まずは市況から。円はドルに対して強く、そのドルもユーロよりは強い。これはリスク選好の後退サインだとWSJ紙。危険水域を知らしめたのはやはり企業業績への不安でした。

REITの話も、今朝の日経新聞に詳しい。それにしても破綻REITのニューシティ。民事再生法で初となる負債全額弁済は快挙だとして、投資口ひと口あたり3万5000円での買い取りとは、開示書類での鑑定価格は何の意味があるのか。

それでもこれはREITのお話。負債の弁済率と言えば、当ブログでしばしば問題視してきたアーバン・コーポレイションの弁済率が幾らに決まったがご存知でしょうか。たった15%です。黒字倒産で、もしかしたら資産超過倒産かも知れない事例だっただけに残念。これが不動産取引の実態です。

さて、話題をガラリと変えます。フェニックス証券が昨年末チャリティ・オペラ・コンサートを行ない、出演者の皆さんと観客の皆さんの御支援のお陰で、義捐金の一部をチェルノブイリ子ども基金に寄付させていただいております。同基金の事務局がある神楽坂に昨日訪問。あちらこちらで満開の桜を他所目に、道に迷いながら、新しいオフィスに辿り着きました(汗;)。ウクライナ名物のホワイトチョコを頂きながら、最近の私の問題意識、ウクライナ、ベラルーシ情勢を御教授いただく。反ロ、親ロで、ウクライナとベラルーシは180度異なり、故に工場労働者や都市労働者が大量失業しても、キエフでは赤旗を振ってデモ行進が起きるのに、ミンスクではデモが起きない(一部例外で敢えて捕まりたい人は大暴れをするらしい)。ただし、ウクライナもベラルーシも、失業は必ずしも飢餓を意味しない点では一緒。つまり、農村というバックボーンがある故、失業しても大抵の人は自力で農業をやるか、やっている血縁地縁を辿って生活できるのだそうです。以前の日本の田舎にはあった相互扶助のコミュニティが存在すること。日本の都市労働者の殆どが抱いている恐怖感「お金がなければ生きていけない、豊かになれない」という感覚とは真逆、お金に無頓着でも生きていける楽観、達観があるのだそうです。

両国とも独自の通貨を持っており、外国資本の引き揚げで、相場は崩落しています。しかし悪性のスタグフレーションに立ち向かう両国民の心の支えになっているのは、政治のリーダーシップではなく、農村というバックボーン。両国の農業従事者一人当たりの耕地面積は13~14ha。日本ではたったの2.2haです。

この話に落ちをつける必要はないのですが、最後にウクライナ、ベラルーシ両国と日本の共通点をひとつ。合計特殊出生率は3国とも1.2近傍と少子化まっしぐらです。
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2009年4月7日火曜日

円安と株高、どこまで続くか?

根拠なきトレンドでも、トレンドに乗ることが相場の定石だと、自戒も込めてお伝えして来た当ブログ。それでも、

★銀行の不良債権の実態

★絶望的に低調な不動産取引

を知る投資家にとって、3月以降のトレンドに乗るのは勇気が要ること。一方、トレンドに乗れている側の意見としては、「知らぬが仏」と言ったものから「根拠は兎も角、円安も株高も、皆がハッピーなんだから、結構なことではないか」というものまで聞かれます

先月10日に日中最安値7,021.28(終値では7,054.98)をつけた日経平均は、その後、殆ど上昇基調で、一ヶ月弱の間で、3割弱も値を戻しています。根拠なき熱狂が永遠に続く道理はないものの、何時熱狂が剥がれ落ちるのかこそ皆が知りたいところ。

常識的には、上場会社の決算発表が本格化する今月中下旬以降。実際には、下方修正の発表、特に欧米銀行の決算予想の発表が年度決算シーズンを牽引する形となり、相場の冷や水はもうそこまで来ていると見るべきかも知れません。

ところで、株高、株安と、株式相場を十把一絡げにすることには限界があります。3月10日以降の相場急回復について来られなかった銘柄の代表格として、NTT、JR、電力が挙げられます。根拠なき反騰の代表例が銀行とノンバンクだとしたら、GWに向けては金融VS公益のロングショートには妙味あり。但し、アップティックルールあり。

続いて不動産。破綻REITのスポンサー決定で、REIT相場は堅調ですが、出来高の少なさはまだまだ解決されていません。公的枠組みでのREIT買い上げも政治主導で検討されている最中。しかし民間の禿げ鷹に出来ることがREITにこそあります。破綻の前後を問わず、複数のREITに対して増資に応ずることで経営を掌握しつつ、LTVを下げてノンリコースローンの貸し渋りを回避し、合併を進める。アセットマネジメントの規模の利益が拡大するわ、出来高が増えるわ、良いことだらけです。破綻前の増資が有利発行の判定等の問題で時間が掛るのであれば、ノンリコースローンを提供している銀行がデットエクイティスワップに応じるという手もあるのですが、これが進まないとするとどういう理由があるのでしょうか。ここから先はブログの範囲を逸脱しますので、今日はこのあたりで。

円安の話まで入れませんでした。
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2009年4月6日月曜日

北朝鮮“ミサイル”報道と台湾統治

ブッシュ前大統領が、イラクとイランと北朝鮮を悪の枢軸と呼んでから7年以上経ちます。緊迫と混迷の連鎖から抜け出せない中東情勢に比べて、極東情勢は極めて対照的です。

ミサイルか衛星か?流石のグーグルアース、もとい、米国の軍事衛星でも識別は不可能。中国とロシアの拒否権発動の可能性は高く、イラク戦争のように国連安保理決議なしで米国が戦闘状態に入るとは考えにくい。その理由は、北朝鮮が核を持っていること。日本にも朝鮮半島にも油田がないこと。これら二つの前提が中東と異なるからでしょう。

日本が(現在の技術と資源相場を前提にすれば)無資源国であることは、地政学上は、不幸中の幸いと言わざるを得ません。

北朝鮮“ミサイル”報道で終始した週末の地上波テレビ。そのなかで、NHKは日曜夜9時、NHKスペシャルで、我が国による台湾の植民地統治を取材していました。第二次大戦敗戦により我が国では廃棄焼却された台湾統治の資料が、台湾総督府には残っていた。その古文書を手掛かりに、日本政府に協力した台湾人、台湾議会設立運動を企てるも挫折した台湾人の御子息を探し当て、インタビューに応じてくれていました。証言が上手な日本語で語られていただけでなく、難しい話をしたり、学術的な文章を書くことは今でも日本語でしか出来ないことを目に涙を浮かべて告白するご老人の姿。第二次世界大戦で日本の臣民として南方戦線に駆り出された人達、夥しい数の同僚の戦死を目の当たりにしつつ生き残った元台湾人“日本兵”の方々が教育勅語を諳んじている姿。

朝鮮半島や中国と比べて、台湾は反日感情が薄いという“常識”を打ち砕く内容。但し、この番組、決して南京大虐殺的な歴史観を押し付けるものではありません。先進国の仲間入りをしたい(しなくてはならない)明治政府にとって初体験の植民地統治のモデルを(当初は同化政策だった)フランス⇒アルジェリア型にするべきか、逆にイギリス⇒インド型にすべきか議論の末、当初は折衷案と取ったこと。ところが日中戦争突入により、漢民族が敵性民族となったため、同化政策に切り替えられた、という展開。

昨日のテレビ朝日の番組で「“ミサイル”発射は国威高揚と体制維持だけが目的」と言い切った田中均元外務審議官。氏の北朝鮮との交渉は、当時、生温いと批判されたものでした。消されることのない歴史、不可抗力により与えられた各国の状況を考慮すれば、生温い対話という物言いは当て嵌まらない。寧ろ、批判を繰り広げては、北朝鮮の面白映像を興味本位に流して視聴率を狙う地上波テレビのビジネスモデルが未だに生き残っている規制環境こそ生温い。
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2009年4月3日金曜日

G20、ECB1.25%へ利下げ、そしてFASB

G20金融サミット閉幕、0.25%に止まった欧州中央銀行(ECB)の利下げ幅、そして今夜は注目の雇用統計と材料目白押しの今週末。昨夜の米国株連騰のMVPは、G20でもなければ、ECBでもなく、FASB(米財務会計基準審議会)です。

早い話が、「金融機関の不良債権や塩漬け有価証券の含み損をちゃんと出さなくても良い」というニュースに株式投資家が好感したということ。

御上が銀行の粉飾決算を黙認するから、時価総額が上がるという現象に、納得の行かない読者の方々も少なくない筈。

しかし、相場はトレンドが一番大事。理屈は頭の片隅に仕舞っておき、祭りには参加したほうが賢明です。

見た目の株価がどうであれ、びくとも動かない大型不動産の売買や、改善の兆しがない雇用情勢、そしてその背景にある世界の各大型金融機関が抱える不発弾の数々。この厳然たる事実がある限り、どこかで大規模調整はあります。株式や外貨を買い遅れたと嘆いていらっしゃる方々。後悔する必要は全くないと思います。

とまれ、我が国の「失われた10年」1990年代の金融敗戦のMVPこそ、押し付けられた時価会計です。押し付けておいたルールが自国に不利となると、あっけらかんと変更する。このような大国主義に文句のひとつも言えず、「これで株価が上がった。英断だ」と褒めちぎり、我が国も真似してみますか?という政策担当者の体たらくを批判する前に、迎撃ミサイルはすべて日本製で賄っていない現状を直視する必要はある。しかし現実は甘くはありません。一昨日来ブログで取り上げているウクライナこそ、屈指の豊かさを誇る穀倉地帯を背景に、気骨を以って大国と向かい合い、よってまた慢性的に経済危機とも向かい合っている実例です。
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