2008年11月17日月曜日

言論クーデターと自爆テロ

日頃親しくさせていただいている方が最近南アフリカ共和国に出張されました。週末お会いできる機会があり、いかがでしたか?とお聞きすると
「白人と黒人が同じ場所にいるのを見たことが無い。白人が農園主⇔黒人が農奴という関係に変りは無く、アパルトヘイトは“実質的に”無くなっていない、と感じた」
「治安の悪さ-やはり日本人観光客は集団行動しか許されない雰囲気だった。人口5000万人の国で一日に50人が殺されているのだから・・・」
と言いつつも、人口1億2000万人の某国の自殺者が一日当たり90人というのも悲しい比較対象だと知人。
「殺人や強姦などの被害者は決して白人ではない。ハイパーインフレに悩む周辺国ジンバブエやレソトからの不法移民が南アフリカ共和国で定職に就けず自暴自棄になり犯罪や麻薬密売に走っている」
・・・
「が、兎に角、大変な思いをしたが、もう一度行きたいかと聞かれれば、答えはYESだ」
それと言うのも、FXに携わっていらっしゃる方々なら良くご存知の通り、豊かな天然資源と、うまく組織化されれば名実共に世界の工場となるに相応しい良質な労働力がこの国には備わっているからです。この中で、金や白金、ダイヤモンドの需要は世界的な景気後退とともに著しく減退するでしょう。しかし、経済の破綻や戦乱の末に最後の拠り所となるのは「食べるものがある」ということではないでしょうか?先の大戦に破れ挑戦動乱の特需で復興するまでの間、我が国の生命線となったのは農村に他なりません。翻って、東京一極集中が金融危機で或る意味逆流したとしても、脱ホワイトカラー族を養うには一人当たりの耕作(可能)面積が狭すぎるのが実は我が国の弱みだというのが持論。付和雷同して少子化問題なんて言っている場合ではないのです。

金曜日夕刊で伊藤忠商事の丹羽会長のブレトンウッズ体制云々という話を引用したら、金融サミットで新ブレトンウッズ体制を云々と来ました。ブレトンウッズ体制に蜂の一刺しとなったのは、現在のユーロ圏の諸国家がベトナム敗戦後に米ドルから金の現物への交換をせがみ取り付け騒ぎとなったことであるのを忘れてはなりません。銀行の金庫には我々が預けた“お金”(紙幣や補助硬貨)が全て詰まっているわけではないことが取り付け騒ぎの可能性を孕むのと同様、米国もまた発券済の米ドル紙幣greenbuckと同額の金の延棒を用意していたわけではないのです。

それでも、サミット参加国のなかで、ひとり麻生首相だけが、米ドル支持で米国の歓心を買おうとするのは、ひとり日本円だけが対米ドルで高いからでしょうか?確かに、通貨切り下げ競争dirty floatの口火は既に切られつつあります。それとも、そもそも経済力とは別次元の、独立国家と言うには相応しくない独立した軍事力を持ちえていない我が国の弱みに由来するのでしょうか?

田母神論文を言論クーデターと呼ぶならば、村上談話は日本社会党の自爆テロだったのではないか・・・
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2008年11月14日金曜日

海図なき航海

伊藤忠商事の丹羽宇一郎会長が米国発金融危機の分析をブレトンウッズ体制崩壊後の大局観に立ち見事に説明をしておられます。ちなみに丹羽会長は私と何ら血縁関係はございません。

丹羽氏曰く、1971年スミソニアン協定でドルの金兌換が停止、1973年から変動相場制に移行したことで、「ドルに対する金の担保がなくなり、世界経済は、“海図なき航海”に乗り出すことになった」と(11/14マイコミジャーナル)。以降は、実体経済と乖離したバブルが発生してもそれが崩壊するまで続くという現象が繰り返されたと論じます。

固定相場制よりも変動相場制のほうが景気循環が激しいとか、(機軸)通貨が兌換紙幣よりも不換紙幣のほうが過度なバブルが起きやすいという論旨には疑問が全くないわけではないです。が、続けて主張されている国民所得と株式時価総額のバランスのお話、すなわち

★1970年代の米国の国民所得が1兆㌦⇔株式時価総額が6000億㌦(10:6)
★1995年~99年のITバブル時(10:12)⇒崩壊後(10:7)に戻る
★2006年が住宅バブルのピークだとして、世界の国民所得総額50兆㌦に対して、株式時価総額は70兆㌦(推計)⇒再び(10:14)までバブルが膨らんだということ・・・

したがって、株価資産がこの先35兆㌦程度まで下落するという試算は妥当だという件は説得力があります。

無論、私がブログで書かせていただいているとおり、「為替相場が実体経済を表すならば購買力平価に近づく筈」とは必ずしも言えない事象もあります。世界の国民所得総額自体も、虚業としての金融業が弾き出していた上澄み部分がまだまだ調整余地を残していることを考えると、国民所得と時価総額のスパイラル的な縮小はしばらく続くと見るべきでしょう。それでも、丹羽氏の言う「底はあるのだから、あたふたしてはいけない」というのはその通りで、残滓を素早く拭い去り、個人も企業も新たなスタートが切れるワクワクした時代が一日も早く到来したほうが健康だと思うのです。
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FX業者は絶滅するのか!?(其の壱)

「日本株は駄目、投信は売れない、外国債券では客に損をさせた。。。」、というわけで証券会社が絶滅危機種であることは既に述べました。FX業界をも震撼させたのが、先週の日本経済新聞の1面記事「顧客資産の区分管理を《全額》信託保全に・・・」週刊東洋経済の特集記事「FX130社に迫る大量淘汰の足音」です。

伝統的な金融ビジネスモデルが次々と頓挫する中、FX業者は独り勝ちだと周囲から思われ、安易な新規参入が近頃まで続いてきていました。しかし、リーマン前夜の時点で、FX後進国だった我が国のFX委託者の裾野は、FX先進国の欧州やアジアよりも広がっていたとも考えられます。先週から今週に掛けて、欧米アジアの名だたるプライム・ブローカー(以下、PB)の方々の訪問を受けましたが、皆さん異口同音におっしゃるのは

★欧米やアジアの主戦場でPBの主たる客層はヘッジファンドと富裕層個人。日本のようにリテール市場で何百倍ものレバレッジが提供されてきた市場は世界で類を見ない。

★解約と消滅に歯止めが掛からないヘッジファンド。彼等にレバレッジを提供してきたPB業界の上位2社だったゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーが銀行持株会社として生き残りレバレッジを落とさざるを得なくなった。ヘッジファンドに対するレバレッジ解消のあおりを喰う形で、これまで一生懸命我が国のFX大手にPBやらせてくれと営業に来ていた大手外銀の中には「いついつまでに他さんでPBをやってもらい、自分達はカバー取引をギヴアップする形にさせていただかないと流動性の供給を続けられない」と方針の大転換を迫られているところが出現。

クロス円ロングのお客さまの損失や解約よりも、FX業界にとって、リーマンの影響は上記の点において深刻なのです。

日経新聞の記事は現時点では観測記事に過ぎないかも知れません。しかし、顧客資産と最大同額の資金繰りをカバー先銀行に対して捻出しなければならない。信託銀行からのLG(保証)は認められない。PB契約もままならない。そして、多くのFX業者がこれまでは大儲けが出来た「お客さまのFX注文をカバーせずに向かい呑む」という(上場株式の信用取引では法律違反に該当する)利益相反行為に規制が掛かるとすれば、生き残れるFX業者は数えるほどしかないと考えられます。

勿論、金融庁もリーマン直後矢継ぎ早にアンケートをとられ、この点十分理解をされております。お客さまのFX注文に自己で向かわず銀行間市場で直ちにカバーを取る経営方針。LGに頼らずに《全額》信託保全が可能な財務体力。FX業者の正常化に必要な自己資本規制比率はざっくり800%以上必要と考えられることから、当局としても内閣府令の改正を急ぎすぎると大半のFX業者を廃業・倒産させてしまうことでかえって投資家保護に悖るということもあり悩ましいところなのだと思います。

はっきりしていることは、FX先進国を驚かせるような低スプレッドや高レバレッジを宣伝文句につかう業者は長続きしないということでしょう。

ちなみに、フェニックス証券は、来年1月を目処にPBをバークレイズ銀行、スポーク銀行(カバー注文をギヴアップして決済と証拠金のやりとりをPBに集約させる銀行)としてゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーという体制に練り直す予定です。

珍しくフェニックス証券の宣伝にしてしまった今日のブログ。でも、FX業者選びで一番大事だと思っていることは廃業する勇気のある社長の会社を選ぶことです。社長という職業はどんなに努力してもうまくいかないことがある。それを素直に認めて、悪あがきせずに堂々と撤退する。これがなかなか出来ないものなのでしょう。最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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2008年11月13日木曜日

救済か?倒産か?運命の日が近づくGM

民主党寄り、労働者階級寄りとして知られるニューヨーク・タイムズ紙が意外な解説記事を載せました。
●窮地のGM,倒産か救済かの疑問を掻き立てる(11/13NYTimes)
ワシントンでは、GMの倒産を回避するために、救済パッケージを自動車産業にも広げようという動きが加速しているが、連邦破産法11条(いわゆるチャプター・イレブン)は皆が恐れるほどの悲劇を招くものではないという論調もある、と同紙が紹介。

オバマ新大統領、ペロシ下院議長等、民主党幹部をはじめ、当然のことながら、ワゴナーGM会長や自動車労連は破産回避の言い分として、自動車産業の裾野の広さを強調しています。が、「倒産で良いのだ」派の論陣は、航空業界や鉄鋼業界、小売業界の場合は、倒産こそ新たなスタートをより競争力のあるコスト構造とともに提供するものだと主張。また、倒産の壊滅的な影響を緩和する方法として「プレパッケージ」(保全状態での銀行借入枠や新しいスポンサーを予めこっそりと決めておいて倒産法の申し立てをすること)を提案するファンドマネージャーの意見も紹介されています。

もしかしたら、そのファンドはトヨタ株に投資していたのかも知れませんが(笑)。

米国から市場開放と自由主義経済を押し付けられてきた我が国で気を吐いてきたトヨタ自動車(の株主-と言っても米国籍の方々も大勢いらっしゃる筈ですが)の立場から、競争相手が自由主義のご本尊に救済されるかも知れないというのは納得がいかない話でしょう。

今では鳴りを潜めつつあるハゲタカが我が国に啓蒙してきたのも自己責任原則でした。つぎ込まれた公的資金が銀行を経由して次々と債務免除に流し込まれて、本来なら倒産を通じて新しいスタートか否かという選別過程に移るべき企業群を非効率のまま生き残らせてしまった我が国の90年代。前述のプレパッケージや保全状態での銀行借入(DIPファイナンス)など、自己責任原則と自由競争原理、すなわち真面目に健全経営してきた競争相手が馬鹿を見ない制度として会社更生法が改正されたのはその直後。これこそ、失われた10年の最大の副産物のひとつであり、今すぐGMに提要されるべき制度インフラなのではないでしょうか。
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