2009年3月25日水曜日

WBC、敗者復活戦の妙

天邪鬼で鳴らす「七転び八起きブログ」としてはWBCネタは取り上げないつもりでしたが、V2は目出度し。「韓国とは最大で5回も戦うことになるんですよ」、と事前に聞かされたものの、、いまだに仕組みを理解していない筆者は、案の定最悪の5回も戦わされた韓国軍に「お疲れ様」も言いたい気持ちです。

敗者復活の仕組みが随所に活かされたトーナメント形式。一度負けたら御仕舞いの厳格なトーナメントが当然の我が国高校野球に応用されたら?と昨夜想像してしまった筆者は相当な捻くれもの。敗者の涙と甲子園の砂はキラーコンテンツ。そんなことは議論すら起こり得ないでしょう。

しかし、社会には厳格なトーナメント形式の中にもっともっと敗者復活のメカニズムが入れ込まれたらどうでしょう。失われた10年やらリーマンショックなどを通じて、自他ともにエリート組織人と思われてきた方々の中にも、有名な学校、有名な企業や官庁、そして大組織の頂点を目指すことだけが社会的な成功の証だとは既に言えない世の中になってきることを自認出来ている心ある方々が加速度的に増えていると御見受けします。

このような方々は定義上は「正社員」。つまり不況下で非正規労働者に雇用調整を押し付け、立場上は大組織にしがみ付くことが出来る方々です。この日本独特の理不尽は、正社員にとって守るべき既得権益でしょうか?

受験のためだけに勉強をし、大企業ブランドを身につけるためだけに面接技術を磨いた腰抜け正社員にとってはそうでしょう。しかし、「定年とやらまで会社で(会社が?)喰って行けるのか?」と疑問を募らせ、危機に直面しても大企業病を無視する組織の中で閉塞を感じつつも、言いたいこと、やりたいことを主張するよりは我慢することを選んだほうが取り敢えず賢明かと、不承不承、無難な選択を余儀なくされている方々のほうが大多数なのではないでしょうか?

正規雇用に限って会社事情による解雇が困難である我が国独特の制度(判例)では、正規雇用労働者を雇う側も定年までの固定費を心配して転職者の受け入れに慎重になることや、既に正規雇用労働者を雇った場合には当該企業でしか使えない技能の教育に力を入れる等々、様々な「社畜化」メカニズムを働かせている現実があります。これらは、既得権益である裏側として、既に当ブログで問題視してきた「非正規雇用が雇用全体のバッファーを押し付けられていること」と「バブル期と就職氷河期とで馬鹿馬鹿しいほど理不尽な世代間不平等が発生すること」と併せて認識されなければなりません。

終身雇用と年功序列は意外と日本の伝統芸能ではありません。論功行賞で俸禄が決められた封建制度の縦社会においても、主君を何十人と変えて最後は外様大名としては異例ながらも家康の最期に接見するに至った実力主義者藤堂高虎のような例もあります。儒教の浸透で、その後の我が国では藤堂高虎のようなジョブ・ホッパーへの評価は必ずしも高くはありません。しかし、「実力があれば、くだらない上司や閉塞的な組織から飛び出せるんだ」という希望を、潜在能力が眠っているエリート組織人に撒き散らすのだとすると、一見しがみ付くべき既得権益に思われる終身雇用と年功序列は意外にも権利放棄すべきもののように思われ、藤堂高虎のような武将は今日こそ再評価されるべきだと思います。

決して、高校野球に、WBCのようなややこしい敗者復活ルールを入れるべきという論旨ではありませんので、よろしくお願い致します。
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2009年3月24日火曜日

最大1兆㌦、官民投資プログラムを発表

これで果たして株式相場、不動産相場は、大底を打つのか?その分析の前に、ガイトナー財務長官がウォール・ストリート・ジャーナル紙に寄稿した論説の極々一部を御紹介します。

「一国家として、我々アメリカ人は借金をし過ぎたのだ。金融システムをして無責任なリスクを追わしめた。かような意思決定は、どちらかと言えば慎重で責任感のある普通のアメリカ人や中小零細企業のオーナーたちにダメージを与えている。実に不公平であり、わが国民が憤るのは無理もない。」

無責任な大手金融機関が貸し渋らざるを得ないために、借入に慎重だった責任感のある個人零細が最終的かつ極大的な被害に見舞われるのは理不尽だ・・・この理屈、慎ましい生活をして資源や農産物をせっせと輸出している新興国の通貨が、持続不能な大量消費が破綻して信用収縮を起こした震源地米国のドルに対して、暴落したままだという皮肉と通ずるものがあります。

途中、民間資金を導入することで、(不動産系)不良債権の譲渡価格が正当化できる・・・という件(くだり)があり、

「片やリーマン破綻によって招かれた壊滅的な被害を受け入れるという選択肢、片やAIGの如き組織に兆円規模の血税を注ぎ込むことでしか経済を危機の大きさから守れないという選択肢。米国は、この両極端よりも優れた選択肢を選ぶに値する国だ。」

まだまだ抽象的だとの批判を覚悟して結んだガイトナー財務長官の論説は、“演説の国”アメリカを思わせる言葉の力を持っています。実現の可能性、効果の程度には当然疑問が残るものの、これから先は、リーマンもなければAIGもないとの主張は、とても雄弁な「安全宣言」です。

最後に、ブログ読者の最大の関心事:「これで大底を打ったのかどうか?」まず、少なくとも日本の株価は、たとえ米国が本格反転してくれても、ついて行けないと考えられます。言わば「逆デカップリング」の我が国。その理由は過去記事をご参照下さい。

米国について。民間資金の導入が、政府資金が足りないことと、上述の不良債権移転価格の正当化と、二つ意味があります。「正当な条件で不良債権処理を進めること=巨額の債務超過を認めること」・・・市場参加者は既に気づいている実態を白日の下に晒さす事態は、当プログラムで乗り越えられるのか?この各論部分までを議会制民主主義国家の金融当局のトップに突き詰めるのは、トップが誰であっても酷。議会制民主主義国家でバブルが弾けたときに、金融を政局にしてはならない、というのが「失われた10年」の日本の最大の教訓だというのが私の意見。しかしこの教訓を学べるのは独裁国家しかない。

ガイトナー財務長官は、「官民投資プログラム」はスウェーデン(ほど単純ではない現在の米国金融のシステム)の教訓と、日本(ほど不良債権処理に時間を掛けたら経済停滞は深刻)の教訓から作り上げられたアイデアだとも言っています。
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2009年3月23日月曜日

二世、三世、だけじゃない

西松建設疑獄は、検察の意図が外れたかどうかは別として、政治とカネの問題を思い出させてはくれました。つまりそれは、当ブログでしばしば指摘している「失われた10年」の政治改革が何だったのか?政治資金規正法の改正の繰り返しに意味があったのか?ということ。

政治改革が、小選挙区制と企業献金の合法化(注)であったとすれば、政治改革の成果は、ウン億円の価値とも言われる選挙基盤だけには世界的にも稀有な高税率の法人税が掛らないことも相まって、これまた世界でも稀なる世襲型議会制民主主義だということになります。

(注)合法化≒脱法手段の提供

このような永田町で気を吐く稀有な政治家、田村耕太郎氏と今夜、再会。

刺激的な会話の数々は、流石の「七転び八起き」ブログでもご紹介できません(汗;)。わたしのブログと主張が一致するなんて申し上げると、田村先生が自民党に居づらくなるでしょうから。。。

参議院議員田村耕太郎公式ブログを、今夜から貼り付けております。併せてお読みください。
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ガイトナー財務長官、去就を賭けて

米国金融システムの強化策を発表する予定。外国為替市場の注目が集まっています。

AIGの巨額ボーナスに対して、公的資金(≒TARF)を利用した金融機関のボーナスには90%課税をするという法案を可決した米国下院。ガイトナー財務長官は、バーナンキFRB議長共々、「AIGの巨額ボーナス支給を何故事前に阻止出来なかったのか?」という問題で叩かれるべく、米国下院での議会証言も予定されています。

ガイトナー財務長官が叩かれたのは、①脱税疑惑発覚で長官任命に手古摺ったこと、②去る2月の金融システム強化策の発表内容が具体性に欠け株式市場が暴落したこと、に続いております。ちなみに、当ブログで取りあげた「中国=為替操作国」発言は財務長官任命前のことでした。

2月に叩かれた「官民一体ファンド」での住宅ローン証券化商品を含む不良債権の買い上げについて、今夜具体策が出ることが予想されています。民間が1㌦出せば、公的資金(預金保険機構)が4㌦まで出すという案のようですが、AIG巨額ボーナス支給問題が悪影響して「民間の投資家は、公的資金を活用するビジネスに乗りたがらない」(WSJほか)という憶測も出ております。

本日日本時間午後9時45分に予定されているガイトナー財務長官の会見。今回も空振りに終われば、FOMC以降のドル安の流れが加速する可能性、また過去2週間連続して好調だった米国株式が大幅調整する可能性があるだけでなく、財務長官の更迭を経て、オバマ政権がある種の無政府状態に陥るリスクがあります。無政府状態という表現は、当ブログで主として我が国の永田町を描写してきたものですが、

「金融が政局になってしまうと議会制民主主義が機能不全に陥る」

のは日米欧似たり寄ったりです。近々同様の問題が日本もヨーロッパも襲うということで為替相場は引き続き不美人投票が続くものと思われます。

ところで、何故、金融が政局になると議会制民主主義が機能不全に陥るのか?

当ブログでしつこく批判しているモラルハザードの問題が頭をもたげることも大きな理由のひとつ。

「金は天下の回りモノ」の実例を海外メディアから2つご紹介します。

★中東ファンドがダイムラー株を9%取得(FT)
Aabarインベストメント社はアブダビの“半”政府系ファンド。殆どの中東系またはアジア系SWFが、落ちてくるナイフを早く拾いすぎてナンピン出来ない状態かと思いきや、まだニューネームがありました。自動車が売れないから石油も売れない。したがって、産油国による自動車産業の救済の余裕はないと思っていただけに意外な臨時ニュースでした。

★米国の複数の生保が、AIG救済を批判(WSJ)
生保業界の競争を歪めるとして、バーナンキFRB議長にAIG破綻を直訴。

当然です。我らがトヨタ、ホンダのためにも、GMを早く潰しましょう。
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