これで果たして株式相場、不動産相場は、大底を打つのか?その分析の前に、ガイトナー財務長官がウォール・ストリート・ジャーナル紙に寄稿した論説の極々一部を御紹介します。
「一国家として、我々アメリカ人は借金をし過ぎたのだ。金融システムをして無責任なリスクを追わしめた。かような意思決定は、どちらかと言えば慎重で責任感のある普通のアメリカ人や中小零細企業のオーナーたちにダメージを与えている。実に不公平であり、わが国民が憤るのは無理もない。」
無責任な大手金融機関が貸し渋らざるを得ないために、借入に慎重だった責任感のある個人零細が最終的かつ極大的な被害に見舞われるのは理不尽だ・・・この理屈、慎ましい生活をして資源や農産物をせっせと輸出している新興国の通貨が、持続不能な大量消費が破綻して信用収縮を起こした震源地米国のドルに対して、暴落したままだという皮肉と通ずるものがあります。
途中、民間資金を導入することで、(不動産系)不良債権の譲渡価格が正当化できる・・・という件(くだり)があり、
「片やリーマン破綻によって招かれた壊滅的な被害を受け入れるという選択肢、片やAIGの如き組織に兆円規模の血税を注ぎ込むことでしか経済を危機の大きさから守れないという選択肢。米国は、この両極端よりも優れた選択肢を選ぶに値する国だ。」
まだまだ抽象的だとの批判を覚悟して結んだガイトナー財務長官の論説は、“演説の国”アメリカを思わせる言葉の力を持っています。実現の可能性、効果の程度には当然疑問が残るものの、これから先は、リーマンもなければAIGもないとの主張は、とても雄弁な「安全宣言」です。
最後に、ブログ読者の最大の関心事:「これで大底を打ったのかどうか?」まず、少なくとも日本の株価は、たとえ米国が本格反転してくれても、ついて行けないと考えられます。言わば「逆デカップリング」の我が国。その理由は過去記事をご参照下さい。
米国について。民間資金の導入が、政府資金が足りないことと、上述の不良債権移転価格の正当化と、二つ意味があります。「正当な条件で不良債権処理を進めること=巨額の債務超過を認めること」・・・市場参加者は既に気づいている実態を白日の下に晒さす事態は、当プログラムで乗り越えられるのか?この各論部分までを議会制民主主義国家の金融当局のトップに突き詰めるのは、トップが誰であっても酷。議会制民主主義国家でバブルが弾けたときに、金融を政局にしてはならない、というのが「失われた10年」の日本の最大の教訓だというのが私の意見。しかしこの教訓を学べるのは独裁国家しかない。
ガイトナー財務長官は、「官民投資プログラム」はスウェーデン(ほど単純ではない現在の米国金融のシステム)の教訓と、日本(ほど不良債権処理に時間を掛けたら経済停滞は深刻)の教訓から作り上げられたアイデアだとも言っています。
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