2009年4月10日金曜日

ウェルズ・ファーゴ好決算-株高円安はまだ続く?

昨夜の米国株式連騰を演出したウェルズ・ファーゴの決算。全米4位の同商業銀行は、当ブログでは全く信頼をしていない米系格付機関から唯一AAAを取得している「世界で最も安全な米銀」だそうです。

ウェルズ・ファーゴは、昨年10月3日にワコビアを事実上救済。この頃、先に手を挙げていたシティグループから「横取りだ」と訴えられるという事件がありました。後から思えば買収する余裕などなかったシティグループにとって横取りされて結果オーライ。銀行M&Aの横取り事件は、ソシエテジェネラル⇔BNP⇒パリバ、住友信託⇔三菱東京(MTFG・・・懐かしい)⇒UFJ(信託)、など枚挙に暇がないDEJA-VU(既視体験)です。

リーマン破綻直後は、米銀の合従連衡がどのような形で進むかまだ見えておらず、様々な憶測が流れていました。極端な言い方をすれば、不動産(関連融資)のように恐慌下で全く値がつかない状態であれば合従連衡の参加者は全員が実質債務超過の筈。買う側に回って勝ち組宣言したいという動機が働く、ポーカーゲームです。時価会計凍結下での銀行決算は、いわば金融当局がポーカーフェイスを勧奨しているようなものでもあります。

ところで、昨日、日本の大学生は大手銀行のモラルハザードを喝破しているのか?と書きました。銀行のモラルハザード≒半永久的ゾンビ化を見抜いているのは若者に限らないことを表しているのが、2月に相次いで発行されたメガバンク各行の個人向劣後債が馬鹿売れした事実。2月と言えば、当ブログで最近頻繁に話題にしている3月10日以降の株高円安トレンドが始まる直前で、多くの有識者が3月末の日経平均は6000円台だとか5000円台だとか悲観論をぶちまけていた頃。株価が二桁になろうと、個人向金融商品は元本保証してくれるだろうという楽観は過去の金融危機と公的資金注入の繰り返しがストレステストになっている証左でしょう。

ただし、気になるニュースもあります。CNBC-REUTERが、GMは債権者(含む社債保有者)に対して、GM株との交換(すなわちデット・エクイティ・スワップ)の条件提示を始めている(大口債権者を手始めに、か?)と報じています。GMは連邦破産法11条申立てか私的整理かで大詰めを迎えていると見られます。来週本格化する米銀決算よりも、GMの動向が、約一ヶ月続いている株高円安トレンドの曲がり角になるかも知れません。
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2009年4月9日木曜日

真水15兆円、モラルハザードと就職ランキング

モラルハザード政策に文句を言うひとがどんどん減ってきています。

★米国金融安定化法(TARP)を生保にも適用へ

★来週から始まる米国金融機関の決算、時価会計凍結で悪材料化を回避か?

★我が国の追加経済対策、真水は15兆円に

一つ目は、昨日東京時間の昼間に飛び込んできたニュース。二つ目は、4/3(金)のブログG20、ECB1.25%へ利下げ、そしてFASB で御紹介。三つ目。15兆円という規模は、90年代後半、小渕政権~森政権の約3年間でばら撒いた総額に及ぶ程の巨額。「需給ギャップが問題なのではない。売れないものを作ってきた工場設備は無価値だ」と喝破する経済学者が居ないわけではないものの、少数意見。有権者も株式投資家もモラルハザード政策を支持する限り、暫くは世界的なトレンドというかブームに乗る必要はあります。

もうひとつ、このブームに乗っかろうとしているのが日本の若者。

今朝の日経新聞で2009年の大学生就職志望企業ランキング(リクルート調べ)が報道されています。
初の首位に躍り出たJR東海、同じく順位を急伸させた2位のJR東日本は理解できます。驚いたのはメガバンクが殆ど順位を下げていないこと。この現象は、97~98年の金融危機、2000~02年の危機と大きく異なります。

世界では「100年に一度」(?)らしい金融危機が、我が国では20年に3回も4回も起きている事実は、モラルハザード政策をばら撒いたとしても、金融サービス業が適度な規模に縮まないと同様の危機は何度でも繰り返されることを教えてくれています。いよいよオーバーバンクにメスを入れざるを得ない局面に来ている我が国金融界の先を読めないのか?何度危機を迎えようとメガバンクは公的資金で助けられるので公務員感覚で勤められると見切っているのか?若者読者の皆さん、どちらですか?

筆者としてはどちらでも良いです。このご時世でメガバンクが人気企業だというこの国に将来は無い。長期円安の見方を、筆者は変えておりません。
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2009年4月8日水曜日

円>ドル>ユーロ

まずは市況から。円はドルに対して強く、そのドルもユーロよりは強い。これはリスク選好の後退サインだとWSJ紙。危険水域を知らしめたのはやはり企業業績への不安でした。

REITの話も、今朝の日経新聞に詳しい。それにしても破綻REITのニューシティ。民事再生法で初となる負債全額弁済は快挙だとして、投資口ひと口あたり3万5000円での買い取りとは、開示書類での鑑定価格は何の意味があるのか。

それでもこれはREITのお話。負債の弁済率と言えば、当ブログでしばしば問題視してきたアーバン・コーポレイションの弁済率が幾らに決まったがご存知でしょうか。たった15%です。黒字倒産で、もしかしたら資産超過倒産かも知れない事例だっただけに残念。これが不動産取引の実態です。

さて、話題をガラリと変えます。フェニックス証券が昨年末チャリティ・オペラ・コンサートを行ない、出演者の皆さんと観客の皆さんの御支援のお陰で、義捐金の一部をチェルノブイリ子ども基金に寄付させていただいております。同基金の事務局がある神楽坂に昨日訪問。あちらこちらで満開の桜を他所目に、道に迷いながら、新しいオフィスに辿り着きました(汗;)。ウクライナ名物のホワイトチョコを頂きながら、最近の私の問題意識、ウクライナ、ベラルーシ情勢を御教授いただく。反ロ、親ロで、ウクライナとベラルーシは180度異なり、故に工場労働者や都市労働者が大量失業しても、キエフでは赤旗を振ってデモ行進が起きるのに、ミンスクではデモが起きない(一部例外で敢えて捕まりたい人は大暴れをするらしい)。ただし、ウクライナもベラルーシも、失業は必ずしも飢餓を意味しない点では一緒。つまり、農村というバックボーンがある故、失業しても大抵の人は自力で農業をやるか、やっている血縁地縁を辿って生活できるのだそうです。以前の日本の田舎にはあった相互扶助のコミュニティが存在すること。日本の都市労働者の殆どが抱いている恐怖感「お金がなければ生きていけない、豊かになれない」という感覚とは真逆、お金に無頓着でも生きていける楽観、達観があるのだそうです。

両国とも独自の通貨を持っており、外国資本の引き揚げで、相場は崩落しています。しかし悪性のスタグフレーションに立ち向かう両国民の心の支えになっているのは、政治のリーダーシップではなく、農村というバックボーン。両国の農業従事者一人当たりの耕地面積は13~14ha。日本ではたったの2.2haです。

この話に落ちをつける必要はないのですが、最後にウクライナ、ベラルーシ両国と日本の共通点をひとつ。合計特殊出生率は3国とも1.2近傍と少子化まっしぐらです。
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2009年4月7日火曜日

円安と株高、どこまで続くか?

根拠なきトレンドでも、トレンドに乗ることが相場の定石だと、自戒も込めてお伝えして来た当ブログ。それでも、

★銀行の不良債権の実態

★絶望的に低調な不動産取引

を知る投資家にとって、3月以降のトレンドに乗るのは勇気が要ること。一方、トレンドに乗れている側の意見としては、「知らぬが仏」と言ったものから「根拠は兎も角、円安も株高も、皆がハッピーなんだから、結構なことではないか」というものまで聞かれます

先月10日に日中最安値7,021.28(終値では7,054.98)をつけた日経平均は、その後、殆ど上昇基調で、一ヶ月弱の間で、3割弱も値を戻しています。根拠なき熱狂が永遠に続く道理はないものの、何時熱狂が剥がれ落ちるのかこそ皆が知りたいところ。

常識的には、上場会社の決算発表が本格化する今月中下旬以降。実際には、下方修正の発表、特に欧米銀行の決算予想の発表が年度決算シーズンを牽引する形となり、相場の冷や水はもうそこまで来ていると見るべきかも知れません。

ところで、株高、株安と、株式相場を十把一絡げにすることには限界があります。3月10日以降の相場急回復について来られなかった銘柄の代表格として、NTT、JR、電力が挙げられます。根拠なき反騰の代表例が銀行とノンバンクだとしたら、GWに向けては金融VS公益のロングショートには妙味あり。但し、アップティックルールあり。

続いて不動産。破綻REITのスポンサー決定で、REIT相場は堅調ですが、出来高の少なさはまだまだ解決されていません。公的枠組みでのREIT買い上げも政治主導で検討されている最中。しかし民間の禿げ鷹に出来ることがREITにこそあります。破綻の前後を問わず、複数のREITに対して増資に応ずることで経営を掌握しつつ、LTVを下げてノンリコースローンの貸し渋りを回避し、合併を進める。アセットマネジメントの規模の利益が拡大するわ、出来高が増えるわ、良いことだらけです。破綻前の増資が有利発行の判定等の問題で時間が掛るのであれば、ノンリコースローンを提供している銀行がデットエクイティスワップに応じるという手もあるのですが、これが進まないとするとどういう理由があるのでしょうか。ここから先はブログの範囲を逸脱しますので、今日はこのあたりで。

円安の話まで入れませんでした。
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