2012年2月6日月曜日

アラブの春が中国に近づきつつある

ニューヨーク・タイムズ紙オンライン版のなかのブログです。

http://rendezvous.blogs.nytimes.com/2012/02/05/the-arab-spring-is-coming-to-china/

ミュンヘンで開催中の世界安全保障会議の中での一幕。よくもまあ、こんなパネルディスカッションが成立したなあと思わせる構成員は、4年前の米大統領選でオバマ現大統領の対立候補だった共和党のマケイン上院議員と中国の外務副大臣、そしてなんとコーディネーターを、かのキッシンジャー元国務長官(筆者の世代以前には極めて印象の強いニクソン政権の最重要人物のひとり)が務めています。

ベトナム戦争の終結、金兌換停止、変動相場制への移行という当ブログが扱うべき重要テーマにおいてもニクソン=キッシンジャー体制は大いに研究すべきテーマであるし、最近話題の映画のタイトルロールであるエドガー・フーバーとの絡み合いもまた米国史の暗部ということで熱い視線を送りたい部分です。
http://phxs.blogspot.com/2010/02/blog-post.html
http://phxs.blogspot.com/2010/02/blog-post_05.html
http://phxs.blogspot.com/2010/02/blog-post_26.html
http://phxs.blogspot.com/2010/03/blog-post_08.html

それにしても、核開発疑惑でイラン経済制裁という点でも、米国(+欧州+日本)と対立している中国(+ロシア+インド)が、事実上の戦争である(BBC)とも言われるシリアにおいても安保理決議でロシアとともに拒否権を発動している状況のなかで、この企画が中止にならなかっただけでも十分有意義ですが、マケイン氏が「敵国」の外務官僚のナンバー2に面と向かって「(チベットで相次ぐ焼身自殺が、チュニジアのジャスミン革命の触媒となったのと同じように)中国にアラブの春がもたらされつつある」と言い切ったのは非常な重みがあると思います。

さて、中国の外務副大臣はどう言い返したでしょうか?「中国でアラブの春というのは幻想を超えるばかげた発想だ。。。中国は100年以上も外国勢による侵略と占領に屈してきたのだから、内政干渉に対しては黙っていないぞ」。

後段の部分は、北朝鮮からもよく聞こえてくる科白です。

イランとシリアを契機とした大国間の対立軸は、ソビエトやベルリンの壁が壊れる前の構図に戻った感もあります。ただし、もちろん大きく違うのは経済や情報技術であり、今は中国は、深刻なバブル崩壊の真っ只中かも知れませんが、社会主義が建前、資本主義が本音、より正確には半奴隷制、という2つないし3つの顔を持つ得体の知れない国へと変貌していることに注意が必要です。
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2012年2月1日水曜日

増収減益のアマゾン・ドット・コム

独占・寡占の仲間入りを賭けて薄利多売に専心するのはFX業界だけではないと思い知らされる決算発表でした。

2010年のアマゾンの売上は前年比35%の上昇。にもかかわらず、利益は57%の減少でした。原因は、ウェアハウス投資(本の倉庫のことなのか、クラウドサーバーのことなのか、両方か?)、技術投資、そしてキンドルであるとしています。

キンドル関連の数値はすべてが公表されているわけではありませんが、ホリデーシーズンの売上は前年比177%増とのこと。しかし、キンドル一台売るたびにアマゾンは15ドル赤字だという推計もあるようです。それを将来、デジタルブックや音楽配信などで取り戻すという考え方なのですが、日本の携帯端末と同じようなモデルが成り立つのかどうか、iPadもあり、不透明と言わざるをエません。

無制限即時発送を約束している「プライム・プログラム」も、年会費79ドルを徴収しても尚11ドル(一会員あたり)赤字なのだそうですが、同会員はプログラム加入後は従前比3倍もアマゾンを使うという推計もあります。

詳しくは、WSJの記事を御覧ください。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052970204740904577195371567545142.html?mod=WSJ_business_LeftTopHighlights
日本語の記事は例えばこちら。
http://japan.cnet.com/news/business/35013651/

全然話が変わりますが、今朝一番気になったのは、ユーロ圏が通貨統一後失業率が最悪になったという記事です。こちらはFT。
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/dca5fe48-4bf3-11e1-98dd-00144feabdc0.html#axzz1l5fAlXZ0
特にひどいのが若年失業率で、スペインとギリシャは50%に接近しています。このような状況が放置できないと政治や民意が動くとなると、ユーロ危機問題の解決の経路として、救済基金の増額の可能性(もともと低い)よりも、ユーロ分裂(による各国の財政金融政策の柔軟性の取り戻し)の可能性に振れると見るべきかも知れません。
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2012年1月25日水曜日

ビッグマック指数の最新版

今月は英エコノミスト誌恒例のビッグマック指数が更新され発表されています。
http://www.economist.com/blogs/graphicdetail/2012/01/daily-chart-3
もともと何か特殊要因でハンバーガーの「相場」が割高だったブラジルは、欧州危機後のレアル暴落にもかかわらず、「平均値的通貨」であるドルや円に比べて依然極端な割高が続いていること、1ユーロ=1.2スイスフランまで無制限介入を約束して度肝を抜いたスイスもまだ、割高さトップの地位に君臨していることなど、様々なことが見えてきます。

2008年に、この「七転び八起き」ブログを始めたときに、同時にオンラインセミナーも始めており、当時からユーロの割高をしつこく指摘してきました。その論拠の一つが、購買力平価であり、その簡易版であるビックマック指数もプレゼンに活用させてもらいました。

オンラインセミナーのオンデマンドは期限か切れておりますが、より詳しい内容は、このブログの過去記事にもあります。一例がこちら

先々週ついに97円割れ寸前まで下落したユーロも、その後の一週間半で101円台まで急速に買い戻され、対ドルでも1.3台を回復しています。しかし、OECDの指摘(新興国への警告)の通りで、ユーロが最悪期を脱したと見ているひとは殆どいないでしょう。それだけ、円キャリー(またはドルキャリー)によるユーロバブル(またはポンドバブル)が常軌を逸していたわけであり、その治癒には相当の時間がかかるものと思われます。

その反面、デレバレッジ、金融機関の機能の低下が世界中に蔓延しそうな今日この頃、ハンバーガーの値段が極端に安い国の通貨はもっと見直されてもよいと思います。

ビッグマック指数は、他にも面白い切り口を提供してくれています。ずっと円高だったため、割安感もなくなってしまった日本(円)ですが、実は、最低賃金で買えるビッグマックの個数は世界一なのだそうです。何かと、生活保護の給付水準に比べて最低賃金が安すぎると議論されることが多い現在、日本の最低賃金の高さを目立たさせる事実になっています。ただ、ここで大変失礼ながら、マクドナルドのパートの皆さんの給与水準が法定ぎりぎりに近いと仮定すると(注:それでもマックのバイトが人気なのは、時間の柔軟性にあります。これ、重要)、高い最低賃金で作られる日本のハンバーガーが安いのは、効率性(労働者がテキパキしている。ひっきりなしにお客さんが来るので原材料のロス率が低い)の高さや、または諸外国比でビッグマックの大きさが小さい(日本が本当にそれに該当するかどうか知りませんが、オーストラリアのビッグマックはカナダのそれよりかなり小さいらしい)、材料をけちっている(本部のバイヤーの買い叩きが特に強烈であるとか、質を「選んでいる」とか)などなどの要因も考えられます。

ファーストフードのパート店員の給与水準が最低賃金レベルであるという事実が概ね世界共通であるという仮定から、エコノミスト誌自身も、実際の為替レートと、ビッグマック指数が乖離するのが、一人あたりGDPの違いによるところが大きい と分析しています。

この点、わたしが重要だと思うのは、「逆は必ずしも真ならず」であって、今日、ファーストフードのパート店員だけが最低賃金レベルではなくなってきており、製造業の現場では部品のモジュール化が、非製造業の「現場」ではIT化が、それぞれどんどん進み、これにグローバル化を掛け算すると、「われこそは最低賃金とは無縁の中流ホワイトカラーだ」と思い込んでいた中途半端な知性の人たちの雇用がどんどん失われていく傾向にあることです。ビッグマック指数が平均以上の国の「中間層」のひとたちは注意が必要です(この議論には、貿易黒字国・貯蓄超過国の海外からの配当利子などの所得が一人あたりGDPや実際の為替に与える影響について含めておりません)。

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2012年1月23日月曜日

2012年を大胆予測-FX攻略.com最新号

FX攻略.comの最新号(3月号)がいよいよ書店に並びました。
わたくしのコーナーでは、2012年を大胆に占う予言集となっております。
新年ということで、いつもよりもグンと読みやすい内容となっていますので、是非ご一読をお願いいたします。
雑誌全体の特集内容は「確定申告」です。

さて、過去記事をご紹介します。2011年8月下旬に発売された同年10月号から・・・

ヨーロッパではギリシャに端を発した財政危機が桁違いに病巣の大きいイタリアとスペインに蔓延したことで、ユーロが導入以降最悪の危機に直面しました。一方、米国では、すったもんだの末、米国債の発行上限の問題を議会がクリアしたものの、その直後の米国債格下げ(スタンダード&プアーズ)で基軸通貨(?)ドルの存在感を取り戻し損ないました。金融市場が大混乱したなかで、日本は前人未到の円高のお盆を迎えています。


国民とマスメディアとが「内向き」な島国根性を競っているような日本ですから、大震災でも原発事故でもリーダーシップを発揮出来ない政権を血祭りに上げることしか能が無いわけです。こんな体たらくのメディアに洗脳されてしまっては、国内外でどんな種類の危機が起こっても、種類を問わず何でもかんでも超円高というのが理解できなくなってしまいます。しかし、そんな日本円よりも高騰を繰り返している金(ゴールド)の存在は謎を読み解く大きなヒントです。

リーマンショックから3年近く経ったので、サブプライムなる言葉すら死語に近づきました。「内向き」のメディアたちがリーマンショック前に繰り返していたのは「金融技術の革新とグローバリゼーションで日本を除くアジアと米欧は好景気が加速していて、日本だけ蚊帳の外」という論調でした。今考えれば、ひとつはサブプライムを一例とする詐欺的手法でレバレッジされた不動産バブル、もうひとつはユーロという通貨統合によって期待された不動産バブルに過ぎず、その宴のあとの後始末の厄介さの本質は、日本の90年代、2000年代と変わらず、しかもどうやら欧米のほうが重症なのではないかということです。

実は、わたしは、リーマンショック後に緊急出版した「『為替力』で資産を守れ」で予想を外していました。リーマン倒産による金融市場の混乱はなかなか収束しない。金融市場のチョンボを財政出動で取り返そうとしても抜本解決にはならない。能力以上の生活水準を追求してしまったツケは節約と緊縮(オーステリティ)でしか解決できないから当分景気は悪い、等々。小国ゆえ一番目のモデルケースになってしまったのがギリシャでした。大国の多くも、財政出動やらイカサマの銀行ストレステストなどで約3年誤魔化してきましたが、財政も破綻気味、金融機関も破綻気味となると、もうあとは本質に回帰するしかない、つまり「清貧の思想」を国民に要求する以外にないのです。これが受け入れられるかどうかは人生観、文化の違いが大きいでしょう。日本はいまのところ例外的な国家のひとつのようですが、多くの先進国や新興国では暴動がまだまだ多発する恐れがあるのです。

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