2022年7月22日金曜日

岸・安倍ダイナスティは何と戦ってきたのか?

 まずは、故安倍晋三元総理の系図を掲載します(出典:日本語版ウィキペディア)。

周知のとおり、岸信介元総理は、安倍元総理の母方の祖父にあたります。ちょうど二週間前の暗殺事件がきっかけで、岸信介氏の東京は渋谷の南平台の邸宅の隣に統一教会=国際勝共連合の本部があったことが話題になっています。岸氏は、以下のライブラリーのなかでもひときわ注目される存在です。

⑴有馬哲夫「児玉誉士夫 巨魁の昭和史」(文春文庫)
⑵西敏夫「占領神話の崩壊」(中央公論新社)
⑶渡辺惣樹・茂木誠「教科書に書けないグローバリストの近現代史」(ビジネス社)
⑷孫崎亨「アメリカに潰された政治家たち」 (河出文庫)

これらのうち⑷は、大胆すぎるほどわかりやすい書きぶりです。ここでは、岸信介は、(「事実上」前任の)鳩山一郎、(弟の)佐藤栄作、(日中国交正常化とロッキード事件の)田中角栄、竹下登、小沢一郎、(「最低でも県外」の)鳩山由紀夫など同様、「対米自主派」ゆえに《アメリカに潰された》総理のひとりだとされています。

ちなみにこの著作では「対米追随派」ゆえに《アメリカには潰されなかった》政治家として、吉田茂、池田勇人、小泉純一郎、野田佳彦を挙げています。

結論を言うと、政治家の本質は、目的(政策)と手段(政局)を変幻自在に扱う融通無碍な人間力なのではないかと思うのです。

戦後の日本では、国のリーダーは、「自主独立」という目的=深謀遠慮に対して、「対米追随」は手段=面従腹背の演技に過ぎないはずだが、職業病である腹黒さ(褒めています)から手段と目的が逆転しているのではないかと疑いたくなる局面があるというものです。

なので、吉田茂は対米追従組で、岸信介は対米自主組だという分類は、あまりに単純すぎると考えます。このあたりのより正確な記述は⑴に譲りたいところで、自身もやはりCIAのスパイであることをほぼ徹底して手段=政治資金調達と割り切って米ソ両帝国主義からの本質的独立のために日本のリーダーを培養してきた児玉誉士夫像から戦後史を読み解いています。

しかしながら、60年安保改訂の自然成立と同時に、安保闘争の最中に退任した岸信介総理に対する印象は、戦後教育のバイアスその他の影響もあり、むしろ対米追随派の典型として見られていた時期がありました。そうではないこと(特に、ある時期から、CIAは岸信介を見限って、むしろ全学連をして安保闘争の火に油を注がせるべく、(児玉誉士夫と同じく右翼の大物だが元共産党の)田中清玄を通じて資金援助をしていた事実の紹介など)を指摘した孫崎さんの著作の意義は大きいと思います。

まずは、岸信介氏のホンネ=政治信念がわかりやすく表れている語録をウィキペディアから紹介したいと思います。

①侵略戦争というものもいるだろうけれど、われわれとしては追い詰められて戦わざるを得なかったという考え方をはっきり後世に残しておく必要がある。

②今次戦争の起こらざるを得なかった理由、換言すれば此の戦は飽く迄吾等の生存の戦であって、侵略を目的とする一部の者の恣意から起こったものではなくして、日本としては誠に止むを得なかったものであることを千載迄闡明することが、開戦当初の閣僚の責任である。

③終戦後各方面に起こりつつある戦争を起こした事が怪しからぬ事であるとの考へ方に対して、飽く迄聖戦の意義を明確ならしめねばならぬと信じた。

④日本をこんなに混乱に追いやった責任者の一人として、やはりもう一度政治家として日本の政治を立て直し、残りの生涯をかけてもどれくらいのことができるかわからないけれど、せめてこれならと見極めがつくようなことをやるのは務めではないか。

これらは、A級戦犯被疑者として留置されていた巣鴨プリズンでの発言で、特に④は「獄中記」からの引用とのことです。このうち③が、想像するに意図的にわかりづらい表現になっていますが、「終戦後各方面に起こりつつある戦争」というのは、朝鮮戦争と、中華人民共和国成立のことを指しているのかと私には読め、「怪しからぬ個とであるとの考へ方」というのは、《米英が日独を叩いたのは平和と正義のためだが、その後東アジアの紛争に介入するのもまた正義である》とまで言うのならちょっと待った!という意味なのかなと。これは間違っているかも知れず、識者のご指摘を待ちたいと思います。

さて、戦後の、日米政権の対比表を個人的にまとめてみました。
戦後日米政権対比表

対米関係は、民主党政権下(水色)よりは共和党政権下(ピンク色)のほうがまし、というと、先述の孫崎亨さんの本のことを笑えないほど雑な分析になってしまいます。それでも、鳩山一郎政権(鳩山由紀夫元総理の祖父)と岸信介政権(安倍晋三元総理の祖父・・・くどい)のカウンターパーティであるアイゼンハワー大統領(R)は、連合国遠征軍最高司令官として当時は上官でありその後は大統領ポストを襲うトルーマンに対して講和模索中の日本に対してまったく不要であるはずの原爆投下に反対していました(日本語版ウィキペディア)。フランクリン・D・ルーズベルト大統領(D)が秘密裏に進めていたマンハッタン計画を知らされずに、ハーバート・フーヴァー前大統領は同じころ当の垣根を越えてトルーマン大統領に日本に対して無条件降伏を迫ることには絶対反対であると諫言していました(英語版Wikipedia)が、これらふたつからは両二大政党の考え方の違いが明確です。

つづく

【次回予告】
昨日の友は今日の敵?同志児玉誉士夫と岸信介の関係性

【次々回予告】
CIA、KCIA、国際勝共連合=統一教会(=原理研究会)、朴正熙の時代






2022年6月24日金曜日

ロシア革命も第二次大戦もみんなユダヤ資本の陰謀だった

先週末、多くのお客様にお読みいただいた
は、看板に偽りありで、まるで東〇ポのお家芸みたいになってしまいました。

本日のタイトルは、先週分の捩(もじ)りです。
ユダヤ資本≡英国ロスチャイルド家という前提に立てばこっちは正しいようです。

ユダヤ人らしくないユダヤ人たちだけど・・・

私は、五月の連休のころからアイン・ランド著「Atlas Shrugged」というのを読んでおり、やっと三分冊の三冊目まで来たところで、ある種のユートピアが描かれ、ネタバレのネタが見えてきたところです。この小説が、米国では、聖書の次に売れた書籍だというのは信じられませんが、日本では邦訳版でも読み切ったひとは少ないのではないでしょうか?いったん休憩して、さくっと読ませてもらったのが先週ご紹介の茂木誠・渡辺惣樹共著「教科書に書けないグローバリストの近現代史」だったのです。

茂木誠先生の最新のYouTube動画で、日本人にしてユダヤ教徒となった吉岡孝浩さんとの注目すべき対談がコチラです。
参院選もあり、インフレ対策も争点のひとつですね。FXをやっている以上、毎日、各国のインフレ率の発表などがますます気になります。並べてみるとどうなるのでしょうか?ブログにOECDのグラフィックを張り付けてみました。

冒頭の成績は、先々週、先週とご紹介しているアヴァトレード・ジャパン>AMMA>新登場の「笑門来福」です。今週も大幅成長を続けていて、絶好調すぎるので、ロット数を落としましょうか?と技術者同士で話をしているところです。

ところで、アイン・ランドも(帝政ロシア出身で脱ソ連の)ユダヤ人ですが、カール・マルクスも、ウラジーミル・イリイチ・レーニンも、イエス・キリストもユダヤ人です。ユダヤ人らしからぬユダヤ人ということでひとくくりしましたが、マルクスとランドは政治思想が真逆(ランドが最も忌み嫌うのは共産主義とナチズムです)。ところが、このふたりの描くユートピアが一見酷似しているところが味噌です。

ゴールドマンサックスがハイエナならアヴァトレードは蛆虫

陰謀論と真実の境目は、ユダヤ資本が一枚岩でありロスチャイルド家が唯一の黒幕であるという単細胞的理解に与するかどうかであると考えられます。事実は、ユダヤ人社会やユダヤ人組織では内部の対立は絶えません。日本の社会や組織とはまったく違います。

国際金融資本と一口に言っても、ゴールドマンサックスとアヴァトレードグループでは月とスッポンです。そして、どちらもロスチャイルド家の系譜ではありません。国際金融資本でロスチャイルド家の系譜としていまだ残っているのはJPモルガン(それ自体はWASPだが、19世紀からその有力代理人であったことはよく知られています。同銀行と合併したチェース・マンハッタン銀行は、ロスチャイルド家と「世界タイトルマッチ」を演じてきたロックフェラー家であってこちらもユダヤ人ではありません)くらいです。

しかしこれは20世紀の話。19世紀においてはロスチャイルド家が隆盛を極めていたことが日本にも影を落としています。幕末において、ジャーディン・マセソン、トーマス・グラバー、坂本竜馬を通じて討幕派に資金援助したのが英ロスチャイルド家で、幕府側についたのが仏ロスチャイルド家ということで、どちらに転んでも儲かる仕組みだったと言われています。

武器商人の逸話として有名なのは日露戦争のときに高橋是清蔵相に対して「日本軍は神の杖だ」と言って戦争国債を引き受けたジェイコブ・シフは、クーン・ローブ商会の代理人ですが、これもまたロスチャイルド家の代理人です。国際金融資本の天敵と考えられる共産主義の政権をもしかしたら地上で初めて実現するかも知れないレーニンの陰にもロスチャイルド家がいたのはなぜかということになりますが、ロマノフ王朝によるユダヤ人虐殺(ポグロム)へのお仕置きと考えれば、日露戦争での日本支援、ロシア革命でのボルシェビキ支援は一貫性があります。

誤算は、レーニンの早すぎる死(1924年)とその後継者だったはずのトロツキーの失脚、そしてスターリン粛清=トロツキー暗殺ではなかったでしょうか。

共産主義者も国際金融資本も一括りにすると真実は見えてこない・・・

現在進行中のウクライナ戦争においてゼレンスキー大統領に妥協をさせない勢力こそがネオコンであり、その源流がトロツキスト、すなわち共産主義者と言われています。ネオコン政治家の有力者全員がユダヤ人の血を引き継いでいるわけではない(例:コンドリーザ・ライス元国務長官、ジーン・カークパトリック元国連大使)ですが、イスラエル建国=シオニズム支持という点では一枚岩のようです。スターリン粛清を逃れたユダヤ人トロツキストだけではなく、ロマノフ王朝時代のポグロム難民の例えばウクライナ系ユダヤ人もネオコンの重要な構成要素です(現役では、ブリンケン国務長官、ヌーランド国務次官補)。とりあえず、共産主義者をスターリニストとトロツキストに分類しないとわけがわからなくなることがわかります。トロツキストを源流とするネオコンは、マルクスやレーニンの教条を悪用した全体主義としての「共産主義体制」を封じ込めたいわけで、それが、ベトナム、イラク、アフガニスタン、コソボ、ウクライナへと戦火を広げる原動力になっています。

この話、なかなか、収拾が付かなくなりそうなのですが、第二次大戦に日本が引き込まれた(という見方を日本の歴史教科書ではいまだにされていないことが問題・・・真珠湾攻撃やハル・ノートに関する新たな資料「VENONA文書」などが公開されているにも関わらず)背景として、ロックフェラーはスターリン(が乗っ取ったコミンテルンの日米における諜報活動)を動かし、ロスチャイルドはナチスドイツのホロコーストにより急激に弱体化しつつもチャーチルを(海軍大臣を務めていた第一次大戦時に引き続き)動かしていたことから紐解いていきたいところです。

最後に、唐突ですが、いや、以上の考察と無関係ではないのですが、インフレ対策はどうなのでしょうか???我々、特に中高年(?)は、思考がドメスティックになっていて、ついつい国際比較をおろそかにしてしまう習性があって、いまだにコロナ禍とは何だったのか反省に至らない自分たちがいます。物価の状況についてもまずは冷静な国際比較が必要でしょう。OECDの以下のグラフィックは、タイムフレームや、コアインフレだけを取り出す取り出さないなどいろいろな操作ができるので非常に出来が良いのです。



一般には、物価上昇が深刻な国の不換紙幣が売られるわけなので、いくら穀物や化石燃料の多くを輸入に頼っている日本だからと言って、それだけで日本円のアンダーパフォーマンスを説明するのは無理があります。

そうすると気になるのは、米国債は引き続きだれが引き受けさせられているかという疑問です。それがこちら。

中国同様、日本のそれもウクライナ情勢激変のなかで顕著な増減はないと見ます。せっかくのドル高なのだから利食えばよいじゃないかと思うのは私だけではないでしょう。たぶん、そうは出来ない言うに言われぬ理由があるのかも知れません。




2022年6月17日金曜日

円安もウクライナ戦争もみんなユダヤ資本の陰謀だった

件名にあるような陰謀論や、歴史上の登場人物や国家権力を善玉悪玉へと単細胞的に分類する愚考に抗ってきたのがこのブログです。

そんなわたしも、30年以上にわたる社会人生活を振り返ってみると、限りなく陰謀論に近い、しかも似たような内容の書物を不定期的に読んできたものだなと思います。

二十歳代の頃(1990年代初頭)

宇野正美「ユダヤが見えると世界が見える」「ユダヤと闘って世界が見えた―白人支配の崩壊と「二つのユダヤ人」」

三十歳代の頃(2000年代初頭)

広瀬隆「赤い盾」「世界金融戦争」「世界石油戦争」

そしていま

西鋭夫・岡﨑匡史「占領神話の崩壊」

渡辺惣樹・茂木誠「教科書にかけないグローバリストの近現代史」

結論を急ぐなら、最新の書籍がお勧めです(Kindle版あり)。時代が下るほど情報公開が(いまのところは)進んでいること。それと、たとえとしてはわかりづらいですが「個体発生は系統発生を繰り返す」という面もあるというのが理由です。

共著者のおひとり茂木誠先生は、先月投稿したおすすめYouTuber(前編)でご紹介した

歴史>むすび大学

というチャンネルで、ちょうどウクライナ情勢の悪化と同期するような形で、その淵源のひとつがユダヤ人(問題)であるという仮説を思わせるようなシリーズを展開されています。

ユダヤ人の歴史

旧約聖書からはじまり、いったんウクライナ問題に焦点を当て、現在はニューヨーク(イスラエルに次ぐユダヤ人人口を抱える場所)の成り立ちについて動画をアップしておられ、まだまだ続きそうでこの先も楽しみです。

件名にあるような陰謀論は、国際金融資本=ユダヤ資本でなおかつユダヤ社会は一枚岩であるという分かり易過ぎる前提に立ってしまっていることが多いのですが、茂木誠先生のユダヤ人の歴史は極めて公平です。

フーヴァーを襲ったルーズヴェルト

それでも、「教科書にかけないグローバリストの近現代史」(脱稿時点ではロシアのウクライナ侵攻はまだはじまっていなかったように思われます)は取り扱っている時代から、イギリスやフランスのロスチャイルド家の影響力をやや過大視している感じはあります(それをさらに極端にしたのが、ご存じ「赤い盾」と言えるでしょう)。

いまだに日本には戦後教育のせいで(経済学で言えばケインジアンが多いことと呼応して?)、フランクリン・ルーズヴェルト大統領は、平和主義者で民主主義者だと洗脳されたままの「知識人」もいるようですが、わかりやすく言えば、わたしは同大統領に取って代わられたハーバート・フーヴァー大統領のファンです。

同書の共著者のもうひとりの渡辺惣樹先生は、まさにそのフーヴァー大統領が退任後(というかさらに第二次大戦後)フランクリン・ルーズヴェルト大統領(とその一味「ニューディーラー」)がやらかした国内の経済政策と外交軍事政策を嘆いて書いた力作「Freedom Betrayed」の日本語訳をされた方です。フーヴァー大統領が母校のスタンフォード大学に作った研究所で仕事をしつつ「釈明史観」に異を唱える研究をされたのが、上記占領神話の崩壊の共著者のおひとり西鋭夫先生です。

西先生と渡辺先生はいずれもフーヴァーフォロワーであることは間違いないわけですが、おふたりの目線が一緒かというとそうではないかも知れません。西先生の本には、戦前の日本共産党に対する治安維持法という悪法による弾圧(拷問致死など)について激高されています。おそらくこれは共産党員の多く(とくに下っ端)や支持者の多くは、貧富の格差や軍国主義に対して善意から抵抗しようとした弱者だったからという前提があるのだと思います。実際、党組織が治安維持法により解体されるまでは、日本は中国と並びコミンテルンにとって最優先の戦略国として金銭面での支援がなされていたという情報もあります。党指導者層の少なくとも一部はソ連のスパイであったことは間違いないと考えられます。ただ、お亡くなりになった宮本顕治元日本共産党委員長のスパイ事件(殺人事件)は有名ですが、ここで言うスパイは、日本共産党本部に潜入していた特高警察のスパイのことです。

ぐじゃぐじゃ書きましたが、わかりやすいたとえをすると、ローマカトリック協会の中枢がどれほど極悪で腐敗しきっているにしても、布教活動が滞っていた近世日本の極少数派のキリシタンのほとんどは純粋にイノセントに入信したわけであり、豊臣秀吉や徳川家康の禁止令は気の毒というしかないという一方で、キリシタン大名についてはある程度は利害と打算があったと考えても可笑しくないということなのではないかと思います。

中央銀行員は公務員なのか?

最初の宇野正美さんについては、ある朝、職場の入口のまえで、同氏の後援会のチラシが配られていた記憶があるのと、相前後して、私が営業担当としてお世話になっていた某総合商社関西支社の財務部長さん(彼も私と同様でどちらかというとマルクス主義に偏った教員が多かった大学の卒業生)からのおすすめもありました。ざっくり言うとその反動で目から鱗を落とすための読書を精力的にやっておられたのではないかといまでは思います。

ざっくり言えば似た系統の書物と著者を並べてみたのですが、全般に、真珠湾攻撃に関する(フランクリン・ルーズヴェルト大統領の)陰謀疑惑を始めとして、戦後歴史教育(戦後の日本の「正史」とされているもの)への修正を迫る論客のものが多いのははっきりしています。これは、論説を、単純に右か左かで分類する流儀に従うと、はっきり言って右になるわけです。そのなかで、どう見ても反原発一筋の広瀬隆氏は「左」です。それでも、今日の脱炭素(地球は温暖化しているという言明、その原因は二酸化炭素であるという言明)運動は、現在も世界を動かしている黒幕による陰謀であると考える点で、立場が異なる渡辺惣樹先生と意見が一致しているところは妙に面白いと言えます。

最後の最後に本当の本題です。「件名に円安だのウクライナなどあるのに、ブログの本文中なんにも触れていないではないか!?」とお怒りの読者の皆さまへ。ここをまとめるのが非常に難しいところだったのですが、この近現代史の本の真骨頂だと私が思っているのは「中央銀行」の歴史を、簡単ではあるが、独特の視座でまとめてくださっているところなのです。経済学でも、中央銀行はまるで最初からあったかのごとく説明されることが多いのですが、そうではないどころか、われわれが学校教育なのか常識なのかよくわかりませんが何となく叩き込まれている通貨の番人としての中央銀行の存在などというものはもともとなかったことがよくわかります。

現在の円相場は、そんな各国中央銀行の先祖返りというか「幽霊の正体見たり枯れ尾花」の逆で政府からも民間金融資本からも独立した中立的公共的機関にして枯れ尾花的存在だと思っていたら実は化け物だったという文脈でとらえる必要があるのではないか、というのが本題でした。


2022年5月6日金曜日

おすすめYouTuber・・・(後編)「数学」「鉄道」

 お待たせしました。いや、それほど大勢の読者に待たれていない感が満載ですが、続いて「数学」です。

環境やエネルギーの問題、戦争、感染症など、人類の将来は明るくもなさそうだという雰囲気に満ち溢れている今日この頃、インターネット社会の良い一面はこれだなと思えることがありました。

【数学系YouTuber】

見たことがあるチャンネルは以下の通りです。良し悪しを判断できる立場ではないですしその能力もありません。このほかにもすぐれたYouTuberがいると思います。

AKITOの特異点

チャンネル登録者数 6.66万人

動画の更新はここ1年なされていないように見受けますが、ツイッターは続いているようです。数学マニアであることは当然として、トークも巧妙で、才能にあふれています。

予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」

チャンネル登録者数 89.9万人

教育系YouTuberの草分けだと勝手に筆者が思っているヨビノリタクミさんです。数学系で視聴回数を稼ぐには大学入試問題にフォーカスしたほうが楽なのですが、あえて、大学入学後に数学で落ちこぼれそうになる学生をターゲットにしているところがユニークです。

変わり種の動画で、

教育系YouTuberにならない方がいい7つの理由

というのがあります。YouTubeビジネスの裏側を赤裸々に語った非常に貴重な内容です。

(前編)で宇宙論に関する動画を紹介しましたが、ヨビノリさんの、

宇宙創生から現在まで【宇宙の歴史①(過去編)】

は非常にわかりやすく、現在のところ何がわかっていないかがわかります。

さて、注目は、大学院(修士)を卒業したばかりの古賀 真輝 Masaki Kogaさんです。

西日本を代表する中高一貫の進学校の正教員として就職が決まったにもかかわらず、YouTubeの活動を続けられると発表しました。

進学校も、予備校も、優秀な教員を抱え込むことで、優秀な生徒を確保し進学成績(「どこどこ大学に何人合格させました」など)という親御さんたちに訴求すべきKPIを競っているものだと考えられてきました。

「優秀とは何か」というのはまた別問題ですが。

この点、正規採用後もYouTubeを続けたいと願った古賀さんの心意気もさることながら、それを許可した某学校法人の寛大さには快哉を叫びたくなります。

酒は白鹿です。

まだまだ超優秀な方々はいらっしゃいますがきりがないので最後におひとかただけ。

楽しい数学の世界へ

チャンネル登録者数 2.27万人

ななゆうさんもまた東京大学数学科卒の俊英です。以下は異例なコンテンツですが、

これから数学科教員を目指す人へのアドバイス

必見です。

【鉄道】

まずは、

スーツ 交通 / Suit Train 

チャンネル登録者数 90.4万人

つい先日横浜国立大学を卒業されたとの動画がありましたが、概要によればYouTubeをはじめたのが2010年ということですから、天才というよりは神童です。池袋の某書店に行ったら、JTBやJRの時刻表の横にスーツ君の著書が平積みになっていました。

おびただしい数の動画のなかで、ひとつだけお勧めというのは難しいのですが、あえてこれを、

【遅すぎる特急】JR東海の「伊那路」に乗車 これは遅くても仕方ない……

まだグーグルマップでの経路検索やYahoo!の時刻表などが使えなかった時代、時刻表は、学生にとっても社会人にとっても必需品でした。その最初のほうのページには、旧国鉄を中心とする路線図が載っています。このなかで、大都市圏近郊電車を除くと、やたらと駅が稠密している路線がひとつあり、何故なんだろうと好奇心を駆り立ててくれていたのが現在はJR東海に属する飯田線です。

これにはちゃんと歴史的な理由がありました。中央本線の誘致に失敗した(政治的に木曽谷に負けた)伊那谷の政財界が遅ればせで鉄道を通したが、中央本線や東海道本線(これらは官営鉄道)が敷かれた時期は蒸気機関車が前提であったのに対して、飯田線の前進のひとつである伊那電気鉄道は、国内では京都市電に続く「最初から電車を通せた路線」となった。よって、電化後駅の数が増えた山手線や山陰本線京都~嵯峨嵐山間のように、最初から駅の数が妙に多かった(汽車より電車のほうが加速と減速が容易である)というわけです。

諏訪から伊那にかけては水力発電がやりやすかったからというのも理由のひとつかも知れませんが、この水資源は諏訪近郊の生糸生産にも消費されていたので、非常に端折ると、繊維産業と鉄道事業との間での電力の奪い合いや利益相反のような問題があったとされています。

あと、飯田線に限らず、日本の鉄道の多くは山岳鉄道であったりするわけで、トンネル技術の進歩とそれによるサンクコストというのが、コロナ禍で改めて問題になっているローカル線赤字問題を悪化させています。これだけだとなんのことだかさっぱりですので、稿を改めたいと思っています。飯田線に関しては、スーツ交通では、手彫り(手掘り)のトンネルが紹介されていて、それがどういうひとたちの汗と命のおかげでなされたのかへの言及もあります。

もうおひとり、鉄道を歴史という視座からマニアックにしてかつ独特のネタ文学で彩る鉄道系YouTuberで最近のおきにいりをご紹介しますと、

にっこーけん【旅行】ー日本の交通を研究する会

チャンネル登録者数 8.67万人

【1分弱車載祭】近鉄だけで京都から名古屋を目指すついでに近鉄の歴史も解説【VOICEROID車載】

赤字ローカル線を多く抱えるJR各社のうち、新幹線が超過利潤をもたらしてきた会社では、高速道路のプール制のような具合で、赤字路線の維持に努めてきました。これがコロナ禍の二年間でワークしづらくなり、先日のJR西日本による赤字区間公表という広報につながるわけです。

ローカル線の廃線(危機)と一口に言っても、理由はひとつだけではありません。北海道と九州においては炭鉱閉鎖が最大要因だったと言えます。東北、北陸、中国地方は、人口減少とモータリゼーションだ、と片づけたいところですが、モータリゼーション=「田舎ではクルマに乗る人がほとんどになった現象」だと定義すると、ちょっと見落としがあります。鉄道インフラが整備された時代と、自動車専用道路や酷道(こくどう、または、ひどみち、と発音します)が改善された国道の整備が進んだ時代とでは、トンネル掘削技術が大いに異なるため、特急列車を頑張って走らせても、高速道路に勝てないという現象がどんどん進んでしまっているというわけです。

さて、JR西日本が発表した存続見直しを検討したい赤字区間のなかで、上記の理由とは異なるユニークなものがひとつあります。それは、関西本線の非電化単線区間の亀山~加茂です。

国鉄または官営関西本線の前身である民営の関西鉄道(くゎんせいてつどう)にも、上述の飯田線同様、複雑な歴史があります。これを紐解くことで、公共性(外部性)が高そうな産業であっても、国家権力による資本主義経済への介入は結局は余計なお世話となってしまうことが多いという事実に目を向けることができると考えています。

にっこーけんさんの近鉄(この場合、近畿日本鉄道のことであって近江鉄道のことではありません!)にまつわるこの動画は、こうした歴史への糸口として非常によくできた内容になっていると思います。関西地方にお住まいでない読者の皆さんも是非ご視聴ください(「1分」と書いてありますが、これはニコニコ動画でいう1時間なのだそうです。知りませんでした)。