2009年5月7日木曜日

米銀ストレステストは茶番なのか?

GW中、NHKで(4度目の?)再放送していたドラマ「ハゲタカ」。祝日もFXは動いているため、「七転び八起き」は重役出勤と録画を併用して、視聴。経営不振の大手家電の最大株主に躍り出た米系ハゲタカファンドは、容赦なきリストラと転売可能部門の切り売りを実現させるために、取締役の総入れ替えという「株主提案」を提出。従業員の雇用を最優先させてきたカリスマ会長が末期癌との闘病の末、株主総会の最中に死去。弔い合戦の装いの中、現職取締役全員の再任という「会社側提案」に屈します。

敵対的TOBを決意し総会の場を立ち去ろうとした主人公のファンドマネジャーの前に現れたのは、かつてそのハゲタカにより実家の旅館と父親の命を失ったITベンチャーもどきの社長。その彼が、恨んでいる筈の主人公に投げた言葉は「茶番ですね」。。。

本来、今夜の米国市場終了後に正式発表される筈の米銀ストレステストの結果。昨日の日本時間の昼間より、明らかなリーク報道が始まりました。

NHKドラマ「ハゲタカ」の中でも、様々な悪用例が示された「リーク報道」。その多くは報道側の取材合戦の結果としてのスクープとは似て非なる出来レース。小沢秘書逮捕は検察リークだとか、FX規制強化シリーズは金融庁リークだとか言って憚らない人もいますが、それを言うなら、米銀ストレステストの報道では米ウォールストリートジャーナルが全ての局面で一歩以上抜きん出ており、米国金融当局から「茶番劇だと皮肉らないと約束してくれるなら、早漏OKョ」かのような遣り取りすら推測される程。

大西洋を挟んで、英フィナンシャル・タイムズは、この件では米国の大本営発表に批判的。「創造的破壊こそがシュムペーターが語った資本主義の本質だ」と、甘過ぎるストレステスト結果批判の急先鋒リチャードソン、ルービニ両教授の論稿『破綻銀行は市場の掟に晒されるべきだ』を臨時ニュース扱いで報道。

実際の市場参加者の行動は、「茶番と知りつつ、一緒に踊ろう」という株高。大本営発表が見事に茶番劇を演出し、売り方に致命傷を与えたとすれば、米国はスタグフレーションへの道に大きな一歩を踏み出したのかも知れません。問題は、我が国も同様の方法で金融システムを浮上させることができるかどうか。

ドラマ「ハゲタカ」のファンドマネジャーの言葉「腐った日本を買い叩く」。ドラマ初放映から何年も経ち、この間、リーマンも破綻したほか、このドラマのモデルと思えなくもない村上ファンドやライブドア、スティール・パートナーズやTPC等も事実上現在の日本から居なくなってしまいました。当ブログの読者の皆さんのなかにも、「腐った日本」が悪いのか、「買い叩く」ハゲタカが悪いのか、考えが二転三転された方も少なくないと察します。

「失われた10年」が現時点でも未だに10年どころで済みそうもないのは、「腐った日本」が悪いと決めて掛らず、中途半端な大本営発表で金融システムを守ろうとしたツケ。我が国の場合は、茶番劇でモラルハザードを押し通すには、宿命的な外交力や軍事力の欠陥が立ちはだかっていること。「100年に一度の危機」という表現を信用しないとしても、米銀の不良債権が世界規模の人質を取ってしまっている点もまた我が国のバブル崩壊とは著しく異なる点です。

パイオニアやエルピーダのように事業会社に直接公的資金というモラルハザードを批判する声は大きいでしょう。
「宝田豊 新マネー砲談」番外編
日産自動車やオリックスに対して追加で公的資金が検討される一方、その規模の税金があれば簡単に救えそうな倒産事例は少なくなく、特に昨日今日気になったのが一橋出版という中学高校時代にお世話になった教科書出版の会社など、負債総額はたったの12億円弱です。

前掲の宝田豊氏は、給与水準の高い大企業製造業を贔屓する日本の体質を、士農工商を未だに引き摺る「モノ作り信仰」だと言います。金融ほどは虚業でないにせよ、モノに溢れた時代、モノを作っているから守ってあげなきゃという理屈は通りません。大企業が倒産すると、下請け孫請け含めて雇用に与える影響が大きすぎるという理屈も、それなら大企業一社に相当する規模の数々の中小零細企業の破綻は放置して良いという理屈にはなりません。影響の大きさという言い訳に逃れざるを得ない理由は、我が国の不良債権の問題が、かつてないスピードで大企業製造業、即ち、それを得意先とするマネーセンターバンクに押し寄せてきた事態を、銀行経営側も永田町も霞が関も認識しているものの、正投銀を痰壺扱いすることに対しては決して永田町霞が関は一枚岩ではない点が、今後の波乱要因です。日本株の一方向の上昇はあり得ないでしょう。
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