2008年10月10日金曜日

日経225先物が取引停止-大証

前代未聞。冷静に考えれば、SQ前夜に米国で空売り規制が撤廃されてしまったのが最悪のタイミングだった。

大和生命、更生特例法を申し立て。

きょうに限らず、今週は特に多くの取材をお受けしました。よくある質問は、

「株価(指数)の適正水準は何処だと思われますか?」

わたしの答えは、株価(指数)には適正水準なるものが存在しない。但し、為替(FX)は別かもしれない。。。です。「為替(FX)は別かも、、、」の話は後に回して、株価については巷間よく言われるように

①株価が下落⇒②逆資産効果⇒③消費が低迷⇒④企業業績が悪化
⇒っで、①に戻る。
際限なくこれが続くので、自由放任主義は株価の自由落下に繋がるという理屈です。

「株式や為替については、損をした人がいれば必ず儲けた人がいる筈。上記②の逆資産効果は“火事場泥棒”の資産効果で打ち消される。」というのが捻くれ者の七転び八起きの珍説ではないのか?なのに適正水準は無いと答えるのか?

株価が自由落下する場合の火事場泥棒は人数が少なく富の偏在が極端になり過ぎるので資産効果が十分働かない。但し、このような火事場泥棒、いや失礼、先見の明のある超大金持ちは主としてM&Aという形で株価の下支え要因になります。既に、わたしの周辺でもそのような動きが加速しています。M&Aの件数は、株価が上がりすぎて、企業経営者がM&Aに頼らないと株主の期待に副えない状況下と同じように、株価崩落時にも激増するものなのです。

一方、為替(FX)については、購買力平価が適正水準の目安の筈だという事実をキャリートレードバブル時に有名エコノミストが無視し尽くしたと、4月以来批判し続けて参りました。ところが、通貨によっては、

◎購買力平価が投機的な実為替の水準を引き寄せる

という原則通りに行かず、

×投機的な実為替が購買力平価自体を引き寄せる

ということが起こり得るのです。極端な例で、決して日本のことではないのですが、貿易依存度が高くて食糧自給率が低い加工貿易立国を想定します。極端な例なので、労働者国民の食糧と工場の原材料は全て輸入に頼る。完成品は全て輸出に回すと仮定しますと、この国の為替水準が、これまた極端に昨日から今日にかけて半分に通貨安になったとしても、生産要素の費用増と完成財の売上増が打ち消しあって、意外なほど国民生活に影響を与えないという結論が導き出せます。

80年代後半の円高局面では、以上“暴論”を経済学者や政治家、政策担当者が気付かなかったか無視した。当時わが国の指導者が見過ごしたのは、円高メリットを国民の端々に還元せずコッソリ独り占めする卸売+小売の既得権益構造が複雑怪奇に横たわっていたという問題の所在。

勿論、わたしが掲げた例は極端過ぎて、我が国にもコメのように極端に自給率が高い一次産品は存在するとか、自動車や電化製品を一部は内需してきたわけですから、日本を想定して「為替にも適正水準は存在しない」という暴論を当て嵌めるつもりはありません。

しかし、小国で一次資源(農林水産物や鉱物、原油など資源エネルギー)を殆ど持たない貿易立国には当て嵌まってしまうのです。実にアイスランドがその典型例ではないのか。但し、アイスランドは貿易立国ではなく似非金融立国だったようですが。

一方、私の大好きなニュージーランド。小国という点が当て嵌まるのがヤバいですが、貿易立国ではありません。電気も食糧も、鎖国しても大丈夫な体制が取られています。

実は、1980年から2007年までOECD計算による購買力平価(ビックマック指数よりは信頼出来るとされているが勿論完璧たりえない)と実為替のグラフを米ドル円とNZドル円で作ってみました(やり方が判ればブログにアップします)。やはり、小国である分、NZドル円のほうが、実為替に購買力平価が翻弄されている傾向が出てきます。

以上のお話は、為替相場が貿易収支だけと影響しあうという大前提になっています。貿易取引を遙かに上回る資本取引・金融取引が実為替をより翻弄することは現実見ての通り。資本取引や金融取引がクレジットクランチホームバイアスにより縮小すると、貿易要因が増えるので、現在は青臭い「貿易論」をする格好のタイミングだと思っています。それでも、小国に対する為替相場は行き過ぎる危険があるのだということをご理解いただけたら、長い文章を週末に書いた甲斐があるというものです。

週末は、リカード、レオンチェフ、そして“M.フェルドスタイン=C.ホリオカ”を猛勉強です。
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2008年10月9日木曜日

独り拘るアイスランド国家破綻の危機【夕刊】

先ずは事実関係から、
★10/7(火)アイスランド2位の銀行ランズバンキが経営破綻。即、国家管理下に置かれる。
ランズバンキの企業規模、破綻直前の収益力や時価総額は無意味な数字なので、従業員数が2000人強。人口30万人のアイスランドでです。日経新聞では国家管理として小さく扱われているだけですが、「支払不能と宣言し、管財人による保全命令が下った」即ち、倒産だというところが重要なのです。

★英国でネット銀行を営むアイスセーブ(ランズバンキの子会社)、同様に支払不能に。
氷のように固く貯金を守ってくれそうな名前ですが、英国民30万人の口座が凍結状態になってしまいました。アイスランドの人口と差が無いじゃないか、とFT紙。

★10/8(水)ブラウン首相は、英国の預金者は“英国の手により(?)”完全に取り戻されると約束。
★ダーリング財務相、預金保険の範囲(増枠後の£50,000)に拘らずアイスセーブ預金者全てを保護すると約束。
★ダーリング財務相、BBCのインタビューで「アイスランド政府は、信じられないことだが、英国民の預金の弁済の意思はないと伝えてきた」と証言。
★ブラウン首相、「預金補償をしないというのなら、アイスランド政府と法廷で戦う」と宣言。

この間、オランダ金融大手INGが自ら英国内でネット(+電話)銀行を営む子会社によるアイスランド系銀行2行の英国内預金業務の買収を発表。買収額は明かされていませんが、預金総額は£30億。またISDAはランズバンキが、翌水曜日に正式に国家管理となった同国3位の銀行グリトニール共々、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の信用事由(トリガー)に該当するとしています。

そして続報。
★テロ対策法Anti-terrorism powerを適用。アイスランドと英国の関係は1970年代のタラ戦争以来の険悪な状態に。

英国民がアイスセーブに預けた預金は£46億(1兆円近い!)に及ぶ。このうち£22億をアイスランドの預金保険スキームに、£14億を英国の預金保険スキームに、残りの£10億を英国政府に負担させようと財務省は考えていた(英国民の税負担は£24億。4000億円強相当ということに!)。

テロ対策法適用となると、親銀行ランズバンキが英国内に保有する資産を凍結、差押、売却換金することで事後的に上記税負担が取り返せるかも知れないと財務省関係者は語る(しかし貸付債権など金融資産の強制売却はランズバンキ取引先への貸し剥がし等、信用収縮の連鎖反応を懸念する法律専門家の声も聞かれる)。

一方、
★ダーリング財務相は預金保護の範囲を個人に限り、地方自治体や大学については保護しないと前言撤回

★アイスランドのハールデ首相、「アイスランドクローネ下落阻止で西側同盟が非協力的だった」と怒りをぶつけ、「だから“新しい友達”を探さざるを得なかったんだ」とロシアからの€40億の融資依頼を正当化

ただし、噂では、英国民の財産がアイスランドを経由してロシアにも流れているという情報があり、前代未聞のテロ対策法適用という強硬手段の背景になっているとの説も。

以上はここ数日のFT紙の記事をまとめたもの。何だか、朝銀公的資金投入問題(北朝鮮問題)を彷彿とする向きもいらっしゃるかも知れませんが、北朝鮮系信用組合の貯金の恐らく殆どは在日朝鮮人の預けたものである点は異なります。いずれも、銀行業務をやっている所在地国で預金保険料を払っている=預金保険対象金融機関であることは共通です。

「世界金融危機global financial crisisに直面して“やり得”moral hazardを指摘している場合じゃない」というのが各国首脳、大手マスコミ、有名知識人に略共通する意見になってきていますが、「済んだ事は仕方ない」では済まされないケースがこのように出て参ります。リーマン経営者の退職金や賞与も然りですが、アイスランドの金融行政と銀行経営が共同正犯でアイスランドに収奪された富が集まっていたとすれば、外交・軍事を含め出るところに出ざるを得ないと言われても仕方がないのではないでしょうか?もともとは不毛な土地の貧しい国で且つ非武装中立の国体維持の有形無形の費用もあったのでしょう。この点、ロシアとの関係はもっとちゃんと調べてみたいと思っています。

最後に、アイスランド系のネット銀行が何故にそれほど英国内で闊歩していたかですが、これも調査中ですけど、アイスランドはネットバンキングとクレジットカードが相当早くから発達していたらしいのです。その理由は、数少ない資源であったタラの漁獲量が激減して、インフレが発生、紙幣発行費用が馬鹿にならなくなったからだそうです。現在では現金決済額はGDPの1%程度のようです(出所Wikipedia)。
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米欧6中央銀行、協調利下げ

米国2.0%⇒1.5%(公定歩合も同時引き下げ。本来のFOMCは10/30だった。)
英国5.0%⇒4.5%(本日10/9予定だったBOE総会は前倒しによりキャンセル)
ユーロ圏4.25%⇒3.75%(先週10/2のECB総会で金利据え置き発表が記憶に新しい)
カナダ3.0%⇒2.5%
その他、スウェーデン、中国、UAE・・・・

昨夜BBCで在東京特派員がキャスターから「日銀はどうして協調利下げに参加しないのか?」と質問され「日銀の政策金利は殆どゼロなので、下げようが無いからだ」と答えていたのが印象的でした。今週初、アスキー+マネージャパン共同企画で対談をさせていただいたソフトブレーン創業者の宋文洲さんも「日本が超低金利で海外に資本輸出し過ぎたのも問題の一端。FXもレバレッジを掛けさせ過ぎじゃあないのぉ」と忌憚の無いご意見。ごもっとも!わたしは「FX会社は、過度なレバレッジに頼らずに事業の継続が出来るような体制・体力を目指すべきだと、少なくともフェニックス証券は考えているんです。現在の競争環境で完璧な体制を築くのは至難の業ですが、フェニックス証券はその理想に相当近いほうだと自負しています」と回答。

日銀はさておき、協調利下げの前日のRBA総会、オーストラリアは予想幅を超える1%の利下げを発表。一時的な効果はあったものの、このところの豪ドルの下落は、対日本円は勿論ですが、対米ドルでも最悪状態です。これは今月23日に政策金利発表を控えるニュージーランドについても言えます。

4月以来、当ブログやセミナーで一貫して申し上げてきたことは、信用収縮⇒金融危機、つまりデ・レバレッジの局面では、為替相場は購買力平価に収斂するという読みでした。これが、対米ドルでユーロやポンドを売り推奨させていただいていた理由です。しかし、もうひとつ忘れてはならなかったのは相場は振り子だということ。極端から手を離したブランコは最下点では止まらず、もう一方の極端へと一旦は向かってしまう。信用収縮⇒金融危機の震源地である筈の米国が、それゆえに米ドルの空売りコストが割高になってしまっている要因も手伝い、米ドルのパフォーマンスは対日本円以外では頗る良好になっております。よって、豪ドルとNZドルは購買力平価を通り越しても下落が止まらない恐れあり。

そうは言っても、日本人にはファンが多い、オーストラリアとニュージーランド。セミナーでも申し上げたとおり、外貨預金の感覚で(すなわちレバレッジ=1からゆっくりと・・・)買い始めても良い時期なのではないでしょうか?外貨預金より取引コストが圧倒的に低いFX(外国為替証拠金)取引。円の一人勝ちがまだまだ続くと読まれる向きには、米ドル売り+豪ドルand/orNZドル買いというポジションも作って(このポジションは過去数週間は最悪のパフォーマンスでした。これを外貨預金でやるのは無理です)対日本円で中立(ニュートラル)にすることだってできます。米ドルを余計に売り建てて、対日本円買い長(ロング)にすることもお好みで可能です。

毎度のことながら相場は当たるも八卦、当たらぬも八卦。人生は七転び八起き。投資は自己責任かつ余裕の範囲で。。。いまほどこの原則が大事なときはありませぬ。
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2008年10月8日水曜日

世界同時株安。世界金融危機。

●モルスタ株急落-三菱UFJからの資本注入に問題が生じたとの噂で(10/8WSJ)
モルスタ側は交渉は順調に進んでいると説明、噂を否定。が、結局は前日比25%安。

バーナンキ議長が利下げの可能性を仄めかした後も、株価下落は続き、ダウ平均は500ポイント以上下落(過去5日間で13%下落)。

●英ブラウン首相、数百億ポンドの公的資金の注入を決定(10/7FT)
イギリスの大銀行は半国営化されることに!RBS株が39%下落(前日は20%下落)、HBOS株が41%下落する等、銀行株暴落を背景に。イギリス国民一人当たりの税負担は£1400~£2000になりそうだが詳細はこれからとFT紙。

●スペインも“独善的”な手段に走る-300億~500億ユーロの公的資金で国内銀行の資産を買取へ(10/7FT)

アイルランド同様、ユーロ圏での“独善的”な財政規律のなし崩し的違反は批判されてもしょうがない。EU首脳会議はようやっと預金保護は一人当たり5万ユーロまでと決めた矢先に、スペインは(同国のこれまでの5倍の)10万ユーロと発表(昨夜深夜BBC)。

で、アイスランドはどうなのか?人口20万人の漁業立国は、元NATO加盟国でしたが、2006年に米軍が撤収、非武装中立国家となっています。EU漁業協定を批准できないとして、EUにも加盟していません。一人当たりGDPは日本を上回る豊かな国を支えていたのは、筆者ブログでもしばしば取り上げてきた高金利通貨アイスランドクローネ。でも、タラとニシンだけでは、自動車や家電を買えません。貿易赤字をファイナンスする筈の海外資本が不動産市況を過熱、バブルが弾け、銀行と国家が共倒れする危機に直面。ようやく身の丈にあった生活の重要性に気がついたとしても時既に遅すぎたのかも知れません。

このような状況下で宣言された、アイスランドクローネとユーロの固定相場。機能するのでしょうか?ロシアから米ドルの緊急融資も実現するかどうか不明です。

しかし、高緯度の割りに温暖な気候で知られる非武装中立の小国は、三位一体改革を逡巡しつつ、アフガン戦費もっと負担しろと“みかじめ料”を際限なく強請られ続ける我が国の国体を考えるうえで、ユニークな材料にも思えるのです。アイスランドより南アランドというセミナーをやった割にはアイスランド自体の話を詳しくやらなかった小職としてはこの国のことをもっともっと調べてみたい気になりました。
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