2008年10月22日水曜日

クライマックスは第二ステージへ

●米ドル、対ユーロで1年半ぶりの高値(10/21FT)
4月のフェニックス証券セミナー『ユーロ、どこまで強いか?』で申し上げた「年内にユーロドルで1.35、ユーロ円で135を目指して下落」という予想レベルを突き抜けてしまいました。足元は、ユーロは対ドルでも対円でも更に弱まる可能性はあります。ただし、これは私が4月に申し上げたロジックとは別の道理が働いてのこと。FT紙にも書かれたとおり、米ドルの調達需要が過多なため、買われざるを得ないという皮肉な現象です。

本日の日経新聞にもある通り、米ドルLibor(ロンドン銀行間貸出金利)年末越3ヶ月物は3.83%と7営業日連続で低下。直近ピークより約1%低いものの、リーマン破綻前の2.8%前後に比べると依然高いという状況。銀行間信用の萎縮が更に改善すると、米ドルの底抜けの可能性がある(逆に言うと米ドルに対する協調介入のあり方が資金供給からスポット為替の買い支えに転換を迫られるほどの激変の恐れがある)ことを示唆します。

●ヤフー64%減益、アップル27%増益-7~9月期四半期決算(10/21WSJ)
ヤフーは年間4億㌦程度のコスト削減(含む人員1割カット)も発表。アップルはマッキントッシュPCとiPhoneが好調だが、この先景気後退の影響については何とも言えないと同社CEO。いずれも安い買い物ではありませんから。

●オバマ氏対マケイン氏
ネオコン支援メディアとノーベル賞経済学者クルーグマン氏に名指しされたWSJのNBCとの共同調査によれば10ポイント差と両氏出馬表明以降で最大の幅に。ただし、他の調査期間は4ポイント乃至9ポイント差とまちまち。

●アルゼンチン、民間ペンションファンドを国営化へ(10/21WSJ)
同国の株価指数は11%下落。
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2008年10月21日火曜日

銀行による株式保有は禁止されるべきだ

●CITIC香港現地法人、為替投機で20億㌦穴を開ける(10/20FT)
CITIC(中国国際信託投資公司)は政府系巨大ノンバンクみたいなもの。その香港現法(上場企業)が米ドル売り+豪ドル買いのポジションで大ヤラレした。しかも巨額のポジションを持つことについてちゃんと稟議があがっていなかった。

内規や決裁権限は措くとして、マクロ分析で豪ドルが対米ドルで割安に映った気持ちは個人的には判らなくもない。レバレッジ過多に硬直的なロスカットルールではリスク管理の機能が果たされない。むしろ損失の思わぬ拡大に繋がる。この点、個人レベルでも巨大金融機関でも同じなんだと本件は示している。

こういう馬鹿な政府系金融機関があるお陰で、豪ドル/米ドルは史上稀に見る押し目買いbargain huntのチャンスを提供してくれているような気もします。

ところで昨夜の相場は、
●景気後退見通しで米ドルは前半の下落を補う(10/20FT)
米ドルと日本円は先週ボラティリティ急騰を味方につけ高値を享受してきた。しかし、スウェーデンと韓国の公的資金導入発表で、ドルと円は下落。

世間の大半は相変わらず単細胞。米ドルと日本円はキャリートレードの原資に過ぎず、リスク性向の度合いに反比例して上げ下げすると同紙は指摘。

本日一番取り上げたかったのは、
【番外編】自己資本規制比率見直し検討-銀行貸し渋りに金融庁が対策、含み損処理など焦点(10/21日経)
日本の銀行は海外の銀行に比べて株式の保有比率が高く、株価下落局面では規制自己資本下落が追い討ちを掛け貸し渋りの原因になる、というのが銀行界の言い分。

ちなみに、銀行保有株式(など有価証券)の含み益を規制自己資本に入れて欲しいとBIS(国際決済銀行、於バーゼル)に主張したのは日本。結果、認められたのが45%相当を補完的項目に入れること。逆に含み損については税効果勘案後を補完的項目から差し引かれるので現在の法人税率を前提とすると約60%相当と、プラスとマイナスで非対称的だと泣き言の理由になっている。

何故、バブルが繰り返されるか?何故、銀行破綻を招くほどの不良債権が発生するか?私の答えは変りません。銀行の数、銀行員の総人件費が高すぎるのです。R銀行を公的資金で救済して「失われた10年」に終止符が打たれたと巷間言われますが、わたしに言わせれば、R銀行1行分がこの国には余計だ。

銀行保有株式について言えば、銀行が融資先の「物言わぬ株主」という地位に甘んじないと融資先を増やせない融資を伸ばせない。間接金融の少ない需要に対して供給過多(オーバー・バンクと言います)つまり過当競争となっている状態を、90年代高額の授業料を払ったにもかかわらず是正出来なかったことこそ、バブルと不良債権が繰り返される諸悪の根源です。

時限を設ける等の激変緩和措置があって良いので、銀行による株式保有を例外なく禁止すべき。「貯蓄から投資へ」のラストチャンスが今到来した、というのが私の考えです。

ちなみに、R銀行は無借金経営の優良企業の当座貸越枠さえ貸し剥がす一方、貸出先には不良人材を半ば強制的に送り込み、自発的な経営改革を逆行させ、結果として不良人材派遣元の融資や政策保有株式の価値を下落させ、それゆえ公的資金(つまり我々の血税)も返済できない、愚かな金融機関です。
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2008年10月20日月曜日

バブルは何故繰り返されるのか?大手メディアも注目のアイスランド

ひとり当ブログで拘泥し続けていたつもりのアイスランド国家破綻問題。週末は、日経新聞やNHKなどでmも取り上げられました。NHK「海外ネットワーク」という番組のなかで、アイスランドの港に大量に留め置きされている輸入高級車が映し出されていました。日本を上回る一人当たりGDPは世界5位。この購買力は、漁業国に過ぎなかった土地の痩せた小さい島国が金融自由化後の超高金利政策で世界中から資本を集め金融立国として成長を遂げたことに起因しています。

国家財政によっても管理治癒出来ないほど暴走してしまっていた金融ビジネス。その一コマとして、ある典型的な家族が「ザ・低金利通貨」日本円建てで住宅ローンを借りて(日本人から見ると豪華な)家に住み始めたが、今回のアイスランドクローネ暴落と不動産バブル崩壊で名目借金が倍増しつつ資産価値が半減したことで絶望の淵に立たされている姿がありました。

一家の主は「銀行の詐欺にあったようなもの。どうしてくれるんだ」と語ります。それでも私は言いたい。金融リテラシーが足りなかったことは言い訳にもならないと。返済能力を遙かに超えた豪邸に住み始めた人たちを、分相応の慎ましい生活をしている人たちの血税で救う道理は無いと。

銀行の詐欺という点では、米国のサブプライムローン問題の縮図とも言えるアイスランド。国家の体力に限界があるため、皮肉にもモラルハザードすら起こせない窮地こそ欧米の大国と状況は異なりますが。今回ヨーロッパで住宅バブルが酷かった国に共通するのは、「ザ・低金利通貨」日本円建て住宅ローンが広まっていたことがあげられます。

バブルが何故繰り返され、そして何度繰り返されても潰れるのか?昨今色々な著作や言説が巷間出回っています。当ブログの一貫した主張は、金融自由化・金利自由化が導入されたにもかかわらず、銀行の数が十分減っていない、銀行員の数や給与が十分減っていないから、銀行(員)が食い扶持を繋ぐために、詐欺的手段を含めた余計な“付加価値”を追求しようともがき苦しむ。その結果、不動産の相場操縦という究極の選択をせざるを得なくなってしまっているのです。日米欧を問わず、この現実に背を向けて、公的資金をばら撒いてインフレ経済で実質借金を棒引きにしても、徳政令のツケは結局、分相応の慎ましい生活者に回されるだけなのです。

依然こうした主張は極々少数派。テレビ朝日「サンデープロジェクト」では公的資金+財政出動は当然。ばら撒き方をどうするか、が議論の焦点。小泉+竹中両氏は人気が無いそうです。確かに小泉家の世襲政治は余計だったかも。

昨夜、近所の銭湯で、日経CNBCの幹部の方とバッタリお会いしました。是非、「夜エクスプレス」特番でリチャード・クーさんと竹中平蔵さんのコブラ対マングース討論を実現して欲しいと要望しておきました。
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2008年10月17日金曜日

モラルハザードとファイアーウォール

●スウェーデン・クローナ、対ユーロで史上最安値(10/16FT)
バルト海沿岸諸国への貸出“Baltic exposure”の多さ、失業率の急増が懸念されていると。

●ハンガリーとウクライナ、IMF等に支援要請-アイスランドの二の舞を演じたくない?(10/16FT)
ハンガリーに対してはECB(欧州中央銀行)が50億ユーロの信用枠を設定。過去15ヶ月の信用収縮“credit crunch”のなかで、IMF(国際通貨基金)のような多角的機関“multi-lateral agency”が大陸欧州の国家を救済する動きは初めて。信用に餓えた市場“credit-starved markets”から資金繰り難に陥っている債務国の危機の深刻さを象徴しているとFT紙。ウクライナの株式は年初来80%値を消している。

資本を輸出している国だから投融資が焦げ付いて駄目。資本を輸入している国だから投融資が引き上げられて駄目。というのでは、為替の下落の説明にはなりませぬ。世界金融危機という言葉。米国発という枕詞がしばしば付けられております。その米国自体は、通貨ドルが日本円以外では最も堅調であるという皮肉な現象。リーマンショック以降1ヶ月間書き続けた私の捻くれた貿易理論でないと説明がつかないのでは。

多角的multilateralの反対語が一方的unilateral。自分勝手な、とも意訳されるこの単語。ブッシュ大統領率いるネオコン政権の形容詞として随分頻繁に使われて来ました。昨日ブログに書いたスイスの公的資金案はunilateralの局地でもあります。

unilateralな周辺国の政策にspeedyに対抗したイギリスのブラウン首相は、支持率が急回復しているとのこと。世界中の報道機関や経済専門家は略一様に「米国発の危機なのに、米国の対策が一番遅くて中途半端だ」という論調。いまさらモラルハザードが、何て言っているのは地球上で私だけかも知れません。が、ヨーロッパ諸国がモラルハザード問題を強引に無視してunilateralな政策を競うように公的資金をばら撒く最大の理由はuniversal bankingの国(銀行と証券の兼営が堂々と許される国)においては、自己投資で失敗しても自業自得である筈の事業部門が社会インフラとしての商業銀行部門を人質に取っているからです。銀行と証券の兼営を禁じた米国1934年及び1935年証券法(いわゆるグラス・スティーガル法)が撤廃されグラム・リーチ・ブライリー法に切り替わったもののインフラ整備が対応し切れていない米国との決定的な差になっています。

こんなことを言うと、証券村のなかで村八分にされるでしょうが、私は旧証券取引法65条(現金商法34条)には20年間一貫して反対です。しかし、投資銀行業務と似て非なる自己投資部門で穴を開けた責任を取らせず、血税に責任を取らせるためでは全くありませんファイアーウォールを置くべき場所は、銀行と証券の間ではなく、銀行証券(投資サービス業)と自己投資業との間であるべきだと考えるからです。
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