2008年10月9日木曜日

独り拘るアイスランド国家破綻の危機【夕刊】

先ずは事実関係から、
★10/7(火)アイスランド2位の銀行ランズバンキが経営破綻。即、国家管理下に置かれる。
ランズバンキの企業規模、破綻直前の収益力や時価総額は無意味な数字なので、従業員数が2000人強。人口30万人のアイスランドでです。日経新聞では国家管理として小さく扱われているだけですが、「支払不能と宣言し、管財人による保全命令が下った」即ち、倒産だというところが重要なのです。

★英国でネット銀行を営むアイスセーブ(ランズバンキの子会社)、同様に支払不能に。
氷のように固く貯金を守ってくれそうな名前ですが、英国民30万人の口座が凍結状態になってしまいました。アイスランドの人口と差が無いじゃないか、とFT紙。

★10/8(水)ブラウン首相は、英国の預金者は“英国の手により(?)”完全に取り戻されると約束。
★ダーリング財務相、預金保険の範囲(増枠後の£50,000)に拘らずアイスセーブ預金者全てを保護すると約束。
★ダーリング財務相、BBCのインタビューで「アイスランド政府は、信じられないことだが、英国民の預金の弁済の意思はないと伝えてきた」と証言。
★ブラウン首相、「預金補償をしないというのなら、アイスランド政府と法廷で戦う」と宣言。

この間、オランダ金融大手INGが自ら英国内でネット(+電話)銀行を営む子会社によるアイスランド系銀行2行の英国内預金業務の買収を発表。買収額は明かされていませんが、預金総額は£30億。またISDAはランズバンキが、翌水曜日に正式に国家管理となった同国3位の銀行グリトニール共々、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の信用事由(トリガー)に該当するとしています。

そして続報。
★テロ対策法Anti-terrorism powerを適用。アイスランドと英国の関係は1970年代のタラ戦争以来の険悪な状態に。

英国民がアイスセーブに預けた預金は£46億(1兆円近い!)に及ぶ。このうち£22億をアイスランドの預金保険スキームに、£14億を英国の預金保険スキームに、残りの£10億を英国政府に負担させようと財務省は考えていた(英国民の税負担は£24億。4000億円強相当ということに!)。

テロ対策法適用となると、親銀行ランズバンキが英国内に保有する資産を凍結、差押、売却換金することで事後的に上記税負担が取り返せるかも知れないと財務省関係者は語る(しかし貸付債権など金融資産の強制売却はランズバンキ取引先への貸し剥がし等、信用収縮の連鎖反応を懸念する法律専門家の声も聞かれる)。

一方、
★ダーリング財務相は預金保護の範囲を個人に限り、地方自治体や大学については保護しないと前言撤回

★アイスランドのハールデ首相、「アイスランドクローネ下落阻止で西側同盟が非協力的だった」と怒りをぶつけ、「だから“新しい友達”を探さざるを得なかったんだ」とロシアからの€40億の融資依頼を正当化

ただし、噂では、英国民の財産がアイスランドを経由してロシアにも流れているという情報があり、前代未聞のテロ対策法適用という強硬手段の背景になっているとの説も。

以上はここ数日のFT紙の記事をまとめたもの。何だか、朝銀公的資金投入問題(北朝鮮問題)を彷彿とする向きもいらっしゃるかも知れませんが、北朝鮮系信用組合の貯金の恐らく殆どは在日朝鮮人の預けたものである点は異なります。いずれも、銀行業務をやっている所在地国で預金保険料を払っている=預金保険対象金融機関であることは共通です。

「世界金融危機global financial crisisに直面して“やり得”moral hazardを指摘している場合じゃない」というのが各国首脳、大手マスコミ、有名知識人に略共通する意見になってきていますが、「済んだ事は仕方ない」では済まされないケースがこのように出て参ります。リーマン経営者の退職金や賞与も然りですが、アイスランドの金融行政と銀行経営が共同正犯でアイスランドに収奪された富が集まっていたとすれば、外交・軍事を含め出るところに出ざるを得ないと言われても仕方がないのではないでしょうか?もともとは不毛な土地の貧しい国で且つ非武装中立の国体維持の有形無形の費用もあったのでしょう。この点、ロシアとの関係はもっとちゃんと調べてみたいと思っています。

最後に、アイスランド系のネット銀行が何故にそれほど英国内で闊歩していたかですが、これも調査中ですけど、アイスランドはネットバンキングとクレジットカードが相当早くから発達していたらしいのです。その理由は、数少ない資源であったタラの漁獲量が激減して、インフレが発生、紙幣発行費用が馬鹿にならなくなったからだそうです。現在では現金決済額はGDPの1%程度のようです(出所Wikipedia)。
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