2020年4月16日木曜日

WHOって誰!? インフェルノ

われらが金髪の《ジャイアン》、ドナルド・トランプ米大統領が、WHO(世界保健機関)への拠出金の支払いを停止するとして、またもや物議を醸しています。

トランプ・フォロワー(注1)のわたくしとしては、「同大統領の初期動作がもう少し早くてしっかりしていれば、重症者数や犠牲者数をずいぶん減らせたはずだ」という言説には、諸手を挙げて賛成することはできません。

そのいっぽうで、WHOの初期動作が遅すぎた、不徹底であったことは、まずもって、批判を免れないでしょう。

WHOが中国を贔屓にしている(注2)と揶揄するのは、行き過ぎかも知れないものの、身から出た錆です。

3月10日㈫付け、七転び八起きFXブログの新型コロナシリーズの記念すべき第一回、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の「ホモ・サピエンス小史」と並んで紹介した図書として、ダン・ブラウン氏の「インフェルノ」がありました。

「インフェルノ」については、「ダ・ヴィンチ・コード」ほどは成功しなかったと書いてしまいましたが、それでも世界中に翻訳されて、累計6百万部以上売れているようです。

同じサスペンス物でロバート・ラングドン(注3)のシリーズであっても、「ダ・ヴィンチ・コード」は水戸黄門や暴れん坊将軍よろしく、勧善懲悪物で、敵味方はっきりしている書きぶりでした。「インフェルノ」は、WHOと天才科学者ベルトラン・ゾブリスト(注4)との対立軸で物語は進みます。前者が善玉、後者が悪玉と決めつけられていないのが特徴なのです。あら筋をフォローするのに一苦労する理由(注5)でもあります。

ちなみに、「インフェルノ」は原作のあら筋に対して、映画のほうは、エンディング部分が大きく改変され、勧善懲悪物にされてしまっています。これが、WHOという巨大組織に対する忖度のせいなのか?大ベストセラーの「ダ・ヴィンチ・コード」の映画版が興行収入としては期待通りでなかったことの反省からなのか?は知る人ぞ知るです。

きょうのブログの着目点は、「インフェルノ」の、原作にあって、映画にはない、エンディングに向けてようやく明らかになる「落ち」です。

飛び抜けた才色兼備と、そのことがむしろ災いして招いた幼少期からの数々の艱難辛苦、それを乗り越えるきっかけとして、時を挟んで、シエナ・ブルックスの前に現れた二人の天才の男性。

天才科学者であり、見た目はこの物語の悪役であるベルトラン・ゾブリストは、これまでの研究成果により大富豪のカリスマとなっています。

ゾブリストの思想、教義を乱暴にまとめると、

「人類は今日の人口爆発により共倒れ状態となり、意外に早く絶滅する。」

「危機を乗り越えるための《進化》が必要だが、人口爆発のスピードには間に合わない。」

「人類全体の滅亡を回避し、《進化》のための時間を稼ぐには、《間引き》つまりトリアージュしかない」

ということ。しかも、ゾブリストの言う《進化》は人為的なもの。すなわち、遺伝子操作によるデザイナーチャイルドの発想なのです。

最後の部分は、トランスヒューマニズムと呼ばれるそうです。もうひとつの推薦図書(?)であるユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス小史」では、遠くない将来、スーパーヒューマン(注6)が地球上に現れ、これにより現在の人類(ホモ・サピエンス)は滅ぼされると言います。おそらくですが、ゾブリストの《進化》は、スーパーヒューマンを志向するものだと考えられます。

ざっくり言うと、ゾブリストが命を賭して開発し撒布を企てた人工ウイルスの性質を知って、シエナは身も心もゾブリストから遠のくのですが、そのあとも、人口爆発制御こそ最重要命題だという点においては、ゾブリストの一「使徒」(いちしと)であり続けていることが、遁走中のラングドンとの会話から明確に読み取れます。

で、ここからが肝心です。だいぶネタバレに近づいております。人口爆発問題に対処するという点においては、ゾブリストとWHOの方向性が異なっているとは見えないわけです。しかし、発想の未熟さや方法の稚拙さにより、WHOは結果を出していないと、ベルトラン・ゾブリストは女性の長官(エリザベス・シンスキー)を呼びつけて批判、啓「蒙」します。人口爆発のepicenterでありground zeroでもある発展途上国に、先進国から義援金がわりに送られた避妊具が埋め立て用の土嚢の代わりに堆(うずたか)く積まれているエピソードについては、女性長官エリザベス・シンスキーは反論出来ずにいる、などです。

この物語のあら筋~落ちの部分でわかりづらいのが、ここです。

シエナ・ブルックスは、映画で捻じ曲げられたあら筋のように、ゾブリスト側の悪役で終わるわけではありません。かと言って、逆にゾブリスト側からWHO側に寝返ったわけでもありません。

最後の最後にこの謎が解き明かされることになります。ゾブリストの病原体は何としても撒布前に食い止めなければならないと思った。しかし、食い止められたとしても、それがWHOの手に渡ってしまったのでは元も子もない!?と思った。だから単独行動に出て、しかも、WHOの絶大なリソースには頼れないところ、暗号(クリプト)を地下(クリプト)で解くことが得意なラングドンを連れまわすという着想に至った。。。

そして土壇場でラングドンを振り切って、WHOよりも早くepicenter、ground zeroを目指す。。。その場所はラングドンの天才的暗号解読によって特定されたものであるという皮肉。。。

シエナ・ブルックスは言います。WHOと協力して人口ウイルスの回収という選択肢はないのだ、と。ゾブリストの人工ウイルスがWHOに渡ってしまえば、その支援国家間の権力闘争やひいては戦争に悪用されることが間違いない。空気感染も可能な高性能のウイルスは悪用されようものなら、生物兵器にほかならないから、と言うのです。

わたくしたちは、国連(機関)というのは、国家や政治家のエゴから中立的な、公正で公平な存在だという幻想を持っています。これには社会科教育も一役買っています。第一次世界大戦後に出来た国際連盟は実力部隊を持たなかった。これが第二次世界大戦を引き起こした反省。それで国際連合は国連軍という実力部隊を持った。そして安全保障理事会の大国主義は機能している、などと習います。現実はおおいに異なり、第二次世界大戦後、戦場になっていない国は、日本を含めて極々僅かなのです(9.11も戦争、戦場だと看做します)。

WHOは、安全保障理事会や、国際オリンピック委員会よりはマシであると信じたいです。しかし、ダン・ブラウンが、どちらかと言えば悪役側であるベルトラン・ゾブリストやシエナ・ブルックスをして言わしめた批判(ややもすれば中傷)は、大国のスポンサーシップなしには成り立たず、大国の利害に揺さ振られる、vulnerableな国際機関の宿命を見事に描写しています。

エチオピア出身の現WHO事務局長テドロス・アダノム・ゲブレイェソス氏によるパンデミック宣言が遅かったことは記憶に新しいところ。そこには中国への配慮があったのか、新型インフルエンザで大騒ぎをしすぎた過去への反省があったのか、わかりません。そのあと、「一にも二にもテスト、テスト、テスト」発言です。

これまでの新型コロナウイルス感染症シリーズで一貫してお伝えしているように、都市封鎖の費用対効果と並んで、いま陽性か陰性かを判断するPCR検査の費用対効果について、わたくしは非常に懐疑的です。エボラ出血熱と異なり、致死率が低いこと、無症状または軽症を経て免疫を獲得できるひとの割合が高いこと、発症するにしても潜伏期間が長いこと、これら3つの性質に鑑みると、実施する意味がある検査は抗体の有無の検査(アンチボディテスト)です。数が足りなければ無作為抽出のサンプルテストでもやる意味があり、それによって、国ごと地域ごとの、適切な制御方法は異なってきます。

免疫を獲得できたひとを医療現場や隔離施設や経済社会に戻すこと、配置転換すること、これこそがいま一番大切な経済政策であり社会政策なのです。

いっぽう、都市封鎖を、一概に有意義だとか、一概に無意味だとか決めつける態度こそが有害無益です。このブログでは、定期的に、国(など)ごとの(単位)人口に対する死亡率に注目して、エクセルシートを更新してきました。この視点が、一部の心ある研究者や媒体を除いて欠けており、的外れの悲観論や楽観論がパンデミックを起こしてしまっていました。

感染率や致死率が、男女で、年齢層で、血液型で、どんな持病を持っているかいないかで、人種で、どのように異なるかという研究は、いろいろと進んでいることは確かです。が、その結果を知っても、ジタバタすることくらいしかできなくて、オンライン飲み会でのネタ程度にしかならないです。

多くの研究者や媒体が飛びつき群がる上記テーマよりもむしろ、人口密度(都市化率、都市の集中度)という要因を強調してきました。

このブログのエクセルシートを受け継ぐ以上に遥かに良くできた統計処理とビジュアル処理をしている無料サイトがニューヨークタイムズ紙にあります。ここから読み取れる情報は多岐にわたりますが、是非とも、都市集中と単位人口当たり(ニューヨークタイムズでは十万人当たり)の死亡者数に注目して、ニューヨーク州(ニューヨーク市)と、西海岸の大都市、その他を比べてみてください。国ごとの比較だけからは見えてこない示唆があります。




注1:トランプ大統領のツイッターをフォローしているだけであって、トランプ大統領の信奉者という意味では必ずしもありませんのであしからずご了承ください。

注2:実態は、中国がWHOの贔屓(谷町)になってきている、と言えそうです。

注3:美術史(と「象徴学」)を専門とする学者というキャラクター。謎の殺人事件など凶悪犯罪の現場などに残された「象徴」や「暗号」(=クリプト)を解読し事件解決の手伝いをするために、歴史的建造物の地下空間(=クリプト)などを、《マドンナ》キャラと一緒に遁走するのが特徴

注4:とくに産業革命以降に幾何級数的に増殖する人口が人類を滅ぼすとの信念から、自らが開発した人工ウィルスで、世界全体の女性の三分の一を不妊にさせるというパンデミックを起こす。ややどうでも良いが、LGBTのB。

注5:「インフェルノ」での《マドンナ》役は、シエナ・ブルックスというIQ200越えの女性。かつての信奉者であり恋人でもあったゾブリスト(注4)と、ラングドン(注3)との間で女心が揺れる。以下、ネタバレの本質部分になってしまいますが、ゾブリストが撒き散らす人口ウイルスの内容には合意できないことから、ラングドンとの逃避行の目的が変容するのですが、かと言って、ゾブリストに予告されたパンデミックを封じ込めようと焦るWHO(世界保健機構)側に寝返るわけではない。

注6:ホモ・サピエンスに対して、”ホモ・スペリオーレ”みたいな感じで、現人類とはホモ(ヒューマン、ヒト)という「属」は共通だが、「種」が異なる存在。かつては、ネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)をホモ・サピエンスが凌駕したのと同じような関係

2020年4月7日火曜日

アベのマスク

どうも、ミルクボーイです。

よろしくお願いします。

(最前列のお客さまへ)あーーありがとうございます。
いま、トイレットペーパーの《芯》をいただきました。

(左の内ポケットに入れながら)ありがとうございます。

こんなの、なんぼあってもいいですからね。

ありがたいですわ、ほんまに。はいー。

ゆーとりますけともー。

実は、ウチのオカンが、一日も早く着けたいマスクがあるらしいんやけど、、、

ほうほう。。

その名前がどうしても思い出されへんらしいねんな。

好きなマスクの名前、忘れてもうて。
どないなってんねん。
ほな、俺がな、一緒に考えてあげるから。
どんな特徴言うてたか、教えてみてよー。

オカンが言うには、
布で出来てて、
左右にゴムがついてて、
一世帯に2枚ずつ《配給》があって、郵便屋さんが届けてくれるものらしいんやけどな。

アベのマスクやないかい。その特徴は完全にアベのマスクやがな。すぐわかったやん。

俺もアベのマスクや思うたんやけどな。

そうやろ。

せゃけど、オカンが言うには、そのマスクは片時も離さず、一生着けてたいらしく、、

ほうほう、、

着けたまんまで、人生最期の瞬間を迎えてもえぇ言いよるんや。

そしたらアベのマスクとは違うかー。。
人生最期のマスクがアベのマスクでえぇわけないもんね。
アベのマスクは、寿命にまだ余裕があるときに、着けてられるもんやねん。
アベのマスクの側にしても《御臨終の死装束》となると荷が重過ぎるしね。
お通夜の弔問客も、アベのマスク着けたまんまで棺桶入ってるオカン見ようもんなら、
『アベのマスクでウイルス防げかったんか』って《誤解》するもんね。
ほなー、もうちょっと何か言うてなかったか?

郵便屋さんが、
『書留でーす、判子くださーいっ』呼び出すんで、
おっ、30万円届いたか思うて、いそいそ玄関行って、なか開けたら、布切れやったらしい。

アベのマスクやないかい。ってか、なんでもう届いてるんやー。
アベのマスクは、現金やないのに何故か書留で届くんよ。
しかも布切れ二枚やから厚みがちょうどお札三十枚くらいで、期待持たせといて、中身見てがっかりさせる。
そう言う作戦やから。俺は騙されへんよー。アベのマスクに決まりや。

いや、それがまだわからへんなんて。

何がわからへんのよ。ハッキリしとるがな。

いや、オカンが言うには、国会では安倍首相をはじめとして、議員先生がた全員がそのマスクを付けてて、永田町のラッキーアイテム言われてるらしいねん。

ほな、アベのマスクと違うやないかい。
布で出来たマスクを着けてるのは安倍首相だけ。
ほかの下々の議員さんたちは、メルカリで大枚叩いた使い捨ての紙マスク着けてんねん。
自民党の先生がたも肝心なときに《忖度》忘れてもうて。
ほなー、もうちょっとなんかヒント言うてなかったかー?んんん。。。

オカンが言うには、布切れが薄っぺらくて、目が荒過ぎて、杉とか檜の花粉は防げるけど、ウイルスとかPM2.5は素通りするらしい。

アベのマスクやないかい。日本人の多くは花粉症に悩まされてるけど、ウイルスやPM2.5は気にせぇへんのよ。安倍首相は頭えぇから、そこに目ぇ着けてて、コスパの良いもの作るゆーて、財務省の官僚たち説き伏せたんよー。アベのマスクに決まりやー。

いや、それがまだようわからへんねんて。

なんでまだわからへんのよ。はっきりしとるやないかー。

オカンが言うには、海外で超絶人気で、貿易船が海賊に遭って、船乗りさんの命は助かっても、マスクは根こそぎ奪われて転売されるくらい垂涎の的らしい。

ほな、アベのマスクと違うやないかい。アベのマスクは日本では人気でも、
海外では馬鹿にされてんのよー。
海外で人気なんは、紙のマスクと、紙の百ドル札だけ。
アベのマスクと違うがな。
アベのマスクで、アベのマスクやのうて、わけわからへんがな。もうちょっと何か言うてなかったかー?

洗って乾かしたら何度でも使えて衛生的らしい。

アベのマスクやないかい。洗って、乾かして、なんぼでも使えて、しかも衛生的なんは、アベのマスクと、薄すぎない昔のコンドームだけ。もう、アベのマスクに決まり!

しかし、オカンが言うには、そのマスクは、アベのマスクやないゆうねん。

そしたらアベのマスクとは違うやないかい。どないなってんねん。俺が恥を忍んで、昔のコンドームと比較したとき、おまえはどう思うてたんや!?

いや毎度のことながら申し訳ないなと。
どっちもサイズにあわせてそこそこ伸び縮みするわなと。

ほうほう。。感心してる場合かぁ!!

で、オトンが言うには、オカンが着けたいのはタイガーマスクやろうて。

鼻と口と目が開いとるやないか。絶対違うやろ。もうええわ。ありがとうございました。

2020年3月30日月曜日

日本型BCGで新型コロナウイルスの免疫

免疫力をつけましょう。新型コロナに対してと、愚かしいマスコミ+SNSに対しても
前々々回前々回前回のブログに続いて、こんなタイトルからはじめると、

七転び八起き社長は、一貫して、「都市封鎖懐疑派」だな!?

何て空気が読めない輩だ!!

と糾弾されてもおかしくありません。

「一貫して」という箇所はお褒めの言葉だとありがたく頂戴します。

一貫性がない(※)と言えば、前回、都市封鎖を一日でも早く実現して、経済活動を壊滅させないようにしたいと会見しツイートしたトランプ大統領。舌の根も乾かぬうちに、ニューヨーク市完全封鎖と言い出し、クオモ州知事がアベコベにこれを言語道断と批判。

大統領は前言を再度撤回と、二転三転どころではなく本日に至っています。

リーダーがこれじゃ駄目だろうと言うのは簡単。良くも悪しくもトランプ大統領は、一貫性も指導力(独裁性?)もある部類です。《空気》を読めずに困ることもあるのです。大統領選がさらに一年先であれば違っていたかも知れません。

都市封鎖について懐疑派か?推進派か?
このように二項対立の問題として提示し結論を得ようとするところが、群集心理を手玉に取ろうとするマスコミの常套手段です。

日中戦争から太平洋戦争へ突き進み、サイパン陥落後も軌道修正できなかった日本の指導者と群集の壊滅的失敗から、ほとんどまだ何も学べずにいる、この国があります。

前回ブログで提示した、医療崩壊と経済崩壊はどちらが致命的なのかという究極の選択。

これには明確な正解はなく、現実的な妥協をどこかの中間点でするしかないのです。

しかし、マスコミも、多くのSNS民も、どちらかの結論を、根拠も示さず、公平で冷静な分析もせずに喧伝し、世論を二分するだけになっています。

形勢?としては、経済=おカネ(?)より、医療=人命(?)のほうが大事に決まっているだろう!?に賛成する(いいね!を押す)のが、いまの《空気》なのでしょう。

このブログもまた、その《空気》を追い風にして、幾何級数的に人々を煽るか、逆に極端に《空気》を無視して異論をぶちまけ、Disられるか、どちらかしたら、クリック数も挙げられると期待はできます。

このブログでは、怪しい《空気》に最小限の《水》を差す役割だけは果たし続けたいところです。

「ロンバルディアの宝石」

で、月曜日恒例の、新型コロナウイルス統計アップデートです。きょうは、「国家」以外の例外としてさらにニューヨーク市(ニューヨーク州はもとから入っています)とベルガモ市(ロンバルディア州はもとから入っています)を入れました。
本日追加したベルガモ市は、ロンバルディアの宝石とも評される観光都市です。旧市街(Citta Alta)が特に美しい歴史的な街の人口はたったの12万人程度。そのうちの2,000弱が、非情なペース、で亡くなっているのです。

その割合である
1.67%
という数字は、「致死率」ではありません。

「致死率」の分母である「感染者数」の統計を取るにも、病院もパンクしていて、数字がわからないのです。自宅で倒れて医者にも診てもらえず葬式というケースが雪だるま式に増えていると言います。そして悲しいことにパンクしているのは病院だけでなく教会も火葬場も、です(ニューヨークタイムズの無料記事)。

上記記事で取材を受けている現地の医師の推測では、すでにベルガモ市では7万人が感染しているだろうとのこと。これは前回ブログで引用したイスラエルの疫病学者の考え方だと、Ro(基本再生産数)=2を前提とするならば、集団免疫(Herd Immune)が完成しているレベルとなります。個人的には、ベルガモ市のような状況(同様のケースがクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」、ニューヨーク市、など)では、Ro>>2と、前提が著しく狂っているではないかと考えます。

その近くに、集団免疫が出来つつあると考えられるモデルケースがあります。初回から、敢えて、載せていたサンマリノ共和国は人口2万人規模の小国。潜伏期においては、イタリア北部の他の地域と新型コロナウイルスが行き来していたに違いなく、これまで「国家」単位でくくると感染者の比率も死者の比率もワーストでした。が、直近一週間の増加率で言うと改善に転じていることが見て取れます。

二つの意味での都市封鎖

都市封鎖(Lockdown、Quarantine)には、都市の《内部》の人の動きを押さえつけるのと、都市の《内外》のそれを押さえつけるのと、二面があります。

前者については、北部イタリアの各都市に限らず、ヨーロッパのほとんどのところで、時すでに遅しと見えてしまいます。しかし、遅きに失したとしてもやってなかったらもっとひどかったかも知れません。

後者については、中部から南部のイタリアは、北部各都市の封鎖で大いに助かった数字が見て取れます。感染者(および死者)がゼロではないので、新型コロナウイルスは間違いなく中部南部にも侵入はしていて、しかしながらゆっくりとしたペースで集団免疫を作っていくということになりそうです。

臥薪嘗胆作戦は、ワクチン利用可能となるおそらく18か月先まで続けないと意味がない選択肢であり、経済崩壊を中心として、先進国に居住する人口にとって、生き方や考え方の変革を抜本的に求められる道です。

経済学について何もわかっていない媒体に露出することだけが評価対象となる自称経済学者(例:●●生命経済研究所など)が、GDPの●割程度の真水の財政出動が必要かもという、そのGDPって人間にとって何だろうというところまで見つめなおすくらいの価値観の変革です。

志村けんさんを悼む

がらりと変わって、国内の話題に。土曜日に小学校から帰ると、まずは「吉本新喜劇」を見て、夜は「8時だョ!全員集合」を視る。その前に大橋巨泉さんの「お笑い頭の体操」~「クイズダービー」も欠かさず。これが文化の汽水域である三重県のテレビ事情を踏まえたわたくしのお笑いの原点(←どうでも良いことです)になっています。

荒井注さんの後任として、ドリフの見習いとして頭角をあらわしていたすわ親治さん(※)が一軍昇格かと思いきや、その兄弟子だった志村けんさんが抜擢。その後の活躍については説明を要しないでしょう。

どれだけナンセンスな笑いであっても、あれだけのコントを毎週考えて練習して生放送でやり遂げることがどんなにたいへんなことか、もちろん子供のころはまったく理解できず、またまずまちがいなく一生理解できないわけです。厳しい芸能界のなかで生き残り頂点を極めている芸人さんというのは、そのストレスや苦痛を、やりがいや快感へと昇華させているのかも知れません。

すべてはわからないものの、特別な人生だからこその「免疫力」の限界というのはあったのではないかと。それと不可分で喫煙の問題も無視はできないところです。とにかく、その特別な人生だからこその達成感をその最期に意識されておられたならなと祈念しつつ、謹んでお悔やみ申し上げます。

都市レベルで壊滅的な感染と犠牲を出すことになったベルガモ市その他の地域や、志村けんさんは人柱です。感情的にYesNoを断じて扇動することでは犠牲者の魂は報われないでしょう。

BCG接種も要因のひとつとして?

最後に、まだまだぬか喜びは禁物ながら、日本や、(旧東)ドイツや、ロシアで感染者数や死亡者数が有意に低そうな背景として、結核予防のためのBCG接種をやめていなかったことがあるという指摘があり、いま鋭意研究が進んでいるそうです。ツベルクリン反応の、アレです。最初に指摘された記事はコチラ。ビジュアルでさもありなんと納得してしまう記事はコチラです。

都市封鎖か否かどうか?だけでなく、免疫があるかどうか?免疫力があるかどうか?という問いもまだYesNoの二項対立ではなく、程度の問題です。
①若い(※)、
②体力がある、
③体調が悪くない、
④適度に清潔で衛生的である(※)、そして、
⑤日本型BCGを接種している(自分も、まわりも)
⑥被曝する新型コロナウイルスの量が多すぎないこと
こういったことの積み重ね(加点方式)で、感染しないというよりは感染するが比較的軽症または自覚症状なしで免疫を付けていく可能性が高くなると予測されます。

最後の⑥はあたりまえのようであたりまえではありません。まだよくわかっていないし、だれもちゃんと説明しようとしていません。新型コロナウィルスは間違いなくこの国にも蔓延しているところ、それにまったく被曝しないと免疫は獲得できないが、単位時間にあまりに大量に被曝したり、または累計的にでも大量に被曝すると、発症、重症化する蓋然性が高くなる。医療崩壊現場の医師や看護師さんが、防護服を着ていても犠牲になる事例からこのように考えられると思います。

マスクは無意味だと理論的に言われています。間違った使われ方や無駄な使われたかがされている現状では、そのように啓蒙するのが正しい態度だと同意します。いっぽうで、被曝を適量に抑える(お互いに)という意味では、手洗いうがいと同じく、一定の意味はあるのだと考えられます。

以上、アセトアルデヒド善玉説を立証して、飲食業を微力ながら応援したい、七転び八起き社長からでした。


※一貫性のない身近な例は、ワイドショーの常連の「専門家」と「評論家」。知らないくせに知ったかぶりを求められ断言を求められるのが仕事ゆえ仕方がないが、彼らの雇用維持のために群集心理が扇動され幻惑されるのは許されることではありません。

※冒頭に《空気》という表現を乱発しました。これは、山本七平先生の「空気の研究」という著書を踏まえています。このブログをご愛読中のみなさまには、是非いちど手に取ってみていただければうれしいです。サイパン陥落と戦艦大和の特攻のエピソードは何千万人もの日本人犠牲者人柱に立つ財産です。

※当時の芸名はすわしんじさんとひらがなだったそうです。ブルース・リーの燃えよドラゴンが大流行した時期で、その物まねをやっていました(それしかやっていなかった?)。

※きょうのブログでは、「免疫」ということばと「免疫力」ということばを使い分けています。このふたつは意味がちがうだけではないのでややこしいです。「免疫」=「抗体」である一方、「免疫力」という表現のなかの《免疫》は、なにかの細菌やウイルスなどに被曝しても感染しない、感染しても発症しない抵抗(力)のようなニュアンスがあります。スギ花粉症の人がスギ花粉の免疫力があると言って褒められることはありません。

大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之教授によれば前者を獲得免疫、後者を自然免疫と言い換えることもできるそうです。そして、日本型BCG(の接種)は、それ自体が新型コロナウイルス(感染症のワクチン)そのものであるということはたぶんありえない(獲得免疫が無毒化された抗原でもたらされるわけではない)。そうではなく、一般的な自然免疫(巷間言われる免疫力)が高められている可能性はあるとのことです。

※「若い」要因。幸い、新型コロナウイルスではかなり有効のようです。季節性インフルエンザでは有効ではないこと。次以降のパンデミックではどうなるかわからないことなど、いろいろ謙虚でいる必要はありますね。

※《適度に》清潔で衛生的。完璧に清潔だと、「免疫力」は付かないとも言われます。腸内の寄生虫がスギ花粉症を防ぐと主張するために自らサナダムシを体内で《飼育》していた藤田紘一郎先生も免疫学者のひとりです。本書きすぎ?









2020年3月26日木曜日

新型コロナの致死率と、トランプの我田引水


手洗いと、、、

米国のトランプ大統領が、24(火)の会見で、「新型コロナウイルスに打ち勝てる道筋が見えてきた」として、復活祭で「教会を満席にして祝えるように」4月12日までには、自宅軟禁~隔離政策を解除させたいと述べたことが物議を醸しています。

人気のトランプ大統領のツイッターを覗いてみました。報道機関が引用しているのは、

会見同日のこちらのツイートです。反響も大きく、アンチ・トランプ勢からは、「ホワイトハウスにとっては、米国民の命よりも、ダウ平均株価のほうが関心事項であることが暴露された」みたいなリツイートが多いです。



トランプ大統領自身も、他人のいろんなつぶやきや報道をリツイートしています。最初に引用したCNNなどアンチ・トランプの記事については偏向報道などとコメントをつけて、、、ですが。

注目は、

新型コロナウイルスに関してはトランプ大統領が正しい。世界保健機構は間違っている。

というイスラエルの疫病学者の記事です。これが、トランプ大統領の、一転、自宅軟禁~隔離政策を早期解除へと駆り立てた理論的支柱になっていると考えられます。

非常に長いインタビューの形式になっています。

トランプ大統領の変節の理由は?

わたくしの前々回前回のブログと、分析結果の8~9割が一致します。

重要な点から並べると、

①新型コロナウイルスの致死率は0.45%と推定される。世界保健機構の言う3.4%よりも著しく低い(留保付き賛成)

②新型コロナウイルスのRo(ひとりの感染者が何人を感染させるか?)は2.0である。だとすると、ワクチンが開発されるまでの間に収束する=筆者注)感染者の世界人口に対する割合は50%(留保付き賛成)

③医療資源に制約があるときは、(治る見込みの高い)軽症の若者よりも、(治る見込みの低い)重篤な高齢者を隔離入院させたほうが良い。
  (1)エボラ出血熱で現場を指揮したときの教訓
  (2)急性の重篤な症状の患者のほうがウイルスをたくさん持っているから+死に際に大勢の見舞い客が来て感染するから
(上記②Roが、(a)重症患者>(b)陽性だが軽症>(c)陽性だが症状なし、、、という傾向であるという点で、エボラ出血熱と新型コロナウイルスが同様であるとは言い切れないし、イスラエルの疫病学者もその点は断言していない)

まず、①について。前回、前々回のブログの通り、国や地域(そして極端な事例としてのクルーズ船)で検査態勢が異なること、検査の精度自体の問題もあることから、多かれ少なかれ、感染者の統計が(b)と(c)を取り逃がしているわけで、ゆえに、巷間言われているよりも感染者は多く、致死率は低いというのは間違いないです。

ですが、イスラエルの疫病学者が主張するように、0.45%ぽっきりかというと完全同意は出来ません。

致死率を計算した今週23(月)のエクセルシートを再掲します。きょうは、その1週間前のデータと比べて、《実績値としての致死率》がどれくらい変化したのかが見られるようにしました。

今週の時点で、致死率が、世界保健機構の期待値をも大きく上回っているイタリア、スペインなどは、ほんの1週間で悪化度合い自体も酷いことがわかります。

《実績値としての致死率》からアプローチすると時系列分析が必要で、平均の潜伏期間、発症するしないの確率、発症した場合の回復に要する期間、発症したが回復できず、、、の期間等の平均・分散を知りたいところです。これらが入手困難だとしても、各種タイムラグが(おそらく1週間ずつくらいは)あると考えられるので、致死率が安定しないのです。

そしてこれにさらに、医療崩壊の要因と、年齢構成や、他の持病との併合の要因が重なります。

クルーズ船からのデータの貴重さは強調しすぎることがありません。これまた年齢構成や他の持病など、母集団にありすぎる特徴の考察は保留させてもらうとして、本日ブログを書いている時点で、月曜日から死者が3人増えてしまい、《実績値としての致死率》は不幸にも1.4%と上昇しました。

クルーズ船の《実績値としての致死率》の微妙な高さや変化と比較して、イスラエルの疫病学者の0.45%はさすがに楽観的すぎる気がしてなりません。彼の記事を見る限り、クルーズ船のデータを顧みている形跡がありません。彼に、国立感染症研究所の論文を英訳して送ってあげるのが、人類のために役立ちそうです。

全人類に感染するのは所詮?時間の問題だという事実?

次に、②のRoは、見た目より難しい概念です。Roは各種の病原菌に固有の値ではないらしいのです。そのうえで、馴染みのある病原菌の各数値をご紹介すると、

新型コロナウイルス  1.4~3.9(上記記事では2と紹介されているところ)
はしか        12~18
HIV/AIDS      2~5
季節性インフルエンザ 0.9~2.1(1918年のスペイン風邪や2009年の新型インフルエンザはまた数値が異なるようです)

はしかについては、昨年欧州で深刻な疫病として「復活」したことは別としても読者の皆様に馴染みが深いと思います。

筆者は子供のころなかなか罹らなかったので、近所でより小さい子供が罹ったと聞くと、オカンに連れられ「罹りにいかされた」ものでした。それでも罹らなかったので、「これだけやって罹らないのだから、一生罹らないのではないか?」とご近所巡りに抵抗を示したらたいへん怒られました。

結局ワクチンを打つことになりました。

ワクチンを打つ段になって、ワクチンを打つことで軽い症状は出るんですよね?と聞いたら、いや出ないですよとお医者さんに言われ、横から看護婦さんが、えっ、先生、普通にはしかに罹ったのと同じですよ。何言ってるんですか!?みたいな会話で、どっちでも良いから早く打ってくれと思ったのを覚えています(以上の会話はすべて伊勢弁でなされております)。

日本酒(ビール)と同じく、生酒(生ビール)と、火入れ(加熱処理)されたものがあることを知ったのはずいぶんあとのことです。

新型コロナウィルスは、はしかと違って、2019年12月の時点ではまだ誰も免疫を持っていなかったうえに、ワクチン開発と運用まであと1年6か月掛かるということがありますから、、、

Ro>1

であれば、全員が感染するのは時間の問題で、4の5の言っても仕方がないのではないかと素人考えが頭をもたげてしまいます。

日常会話で「時間の問題」と言い回しが使われるのは、遅かれ早かれとか、どうせ駄目になるのだから手間かけて対応しても意味がない、みたいな文脈が多いです。感染症ではここが大いに異なります。対応することに意味があるからです。

しかし、

対応、つまり具体的には現在世界人口の25%が経験している自宅軟禁が、感染のスピードをいくら遅らせたとしても、最終(※)的には、全人類が感染し、一定割合(※※)は無症状のまま免疫を取得し(この集団のことをHerd Immunity(集団免疫)と呼ぶそうです)残りは症状を経て回復するか残念ながら死に至るかという定常状態(新生児要因は無視しています)になるというロジックにおいては、筆者はこのイスラエルの疫病学者に賛成をせざるを得ません。

※生ワクチンかどうかにかかわらず、
《無症状のまま免疫を取得できるワクチン》
が開発され運用可能になるのが、この定常状態に間に合わないことが前提です。

※※このイスラエルの疫病学者によれば、一定割合は50%らしいですが、新型コロナウィルスのRo=2.0から、この50%という数値がどうやって導かれるのか、記事を読んでも筆者には理解できませんでした。

わかりやすく譬えて言うと、日本は、来年7月までに、新型コロナウィルスの終息(収束)宣言を出さなければいけなくなったのですが、これに間に合わせるためには、自宅軟禁などの隔離政策をとらないほうが安全であるという逆説的かつ不都合な事実を突きつけられているわけです(上記※の前提で)。

医療崩壊と経済崩壊。守るべきはどちらか?

もちろんここで「医療崩壊させないことのは重要ではないか!?」という《物言い》がつきます。イタリアやスペインそしてフランスの惨状を追っているニューヨーク市のアンドリュー・クオモ市長(民主党)が強調しているところです。

これに対して、トランプ大統領は、《経済》を犠牲にしてまで、治療と隔離を押し通すのは馬鹿げていると言い始めたというわけです。

トランプ大統領にとっての経済は、再選を実現するための、ダウ平均株価と雇用統計だけではなさそうです。トランプ大統領が経営するテーマパークの売上という死活問題があるという指摘があります(25(水)のテレビ東京WBS)。

トランプ大統領の公私混同、我田引水の疑惑を追及するのがブログの目的では実はありません。どこの国の政策担当者(※)にとっても、ワクチン開発スピード(※※)を所与とせざるを得ないならば、医療を崩壊から守るのか、経済を崩壊から守るのか、この二者択一を迫られていること。この究極の選択のどちらに傾いても、ワイドショーのような「報道」では批判票を集めて井戸端会議しておけばよいわけで、番組の構成や視聴率の面では手頃なテーマとして弄ばれてしまう点、注意を要します。

※米国に加え、英国(ボリス・ジョンソン首相)と日本において、そのブレの激しさが目立っています。

※※ワクチン開発スピードと、病原菌の突然変異(体のうち過去の免疫が機能せず新たな病原となる「株」の出現)のスピード、病原菌の感染のスピード、、、これら3つの変数が鍵を握ります。