2008年9月19日金曜日

AIGは留守番電話

昨日は日本証券業協会「代表者セミナー」~「全国証券大会」。全国の証券会社の社長が一同に会する年に一度の会議は、毎年9月中旬に開かれます。証券業協会の支部長さんに「大変な時期の開催になりましたね」と挨拶すると、「毎年この時期は鬼門なんだよ。9・11直後だったこともあるし。期末前で相場が荒れていることも多い。ようこそお越し下さった」と。

証券業界の大先輩にも挨拶。聡明で何事にも一家言を持っておられる尊敬する社長さんから「丹羽くんの為替の相場観を聞きたい。休憩時間にちょっとコーヒーでも」と誘われ、10分間の集中討議。

「リーマンが助けられなかったことも驚きだったし、AIGが助けられたことも驚きだった。」と大先輩に告白。「しかし大事なことは、

☆『公的資金⇒金融システム救済』=ドル買い材料

★『自己責任原則⇒金融機関倒産』=ドル売り材料

という経験則を鵜呑みにすると危険ではないか。」

時間的制約から政治上の意思決定が間に合わない金融支援は、財政政策と金融政策が一体不可分となって行なわれる。平たく言えば、ドル紙幣が好きなだけ輪転機で擦られるのと同じこと。インフレによる生活水準低下という経路での実質増税が米国民に強いられる方向は、明らかにドル安材料だ。

ご質問くださった大先輩の証券会社は外貨建て債券を売りまくってらっしゃったらしく、円高要因を心配しておられたが、私の説明に納得。市場は私の捻くれた論理に直ぐには与しないだろうが、時間の問題だろうと。

こんな話をしていたら、北浜で親しくさせていただいている社長さんから、「丹羽さん、日銀がFRBとドルのスワップ6兆円を発表して、一気に円安ドル高になったよ」と携帯を見ながら教えてくれた。

分不相応のデカい家を買った借り手と貸し手の責任を問わずに究極のディープポケット中央銀行が自ら印刷したお札で代位弁済してあげたら、第一次大戦後のドイツよろしくリヤカーに山済みされた紙幣の束を想像してしまうのは私だけでしょうか?金が一瞬反発したのは理解できます。原油も通貨機能はありますが、金地金のように箪笥において置けないのが難点!?しかし「すべての金融活動=信用創造は不毛で虚業だ。金本位制に戻して一から出直しだ」という議論も万能ではありません。何故、ニクソン大統領が金⇔ドル交換を停止せざるを得なかったのか?覇権国家だったスペインが銀本位制を悪用し、アステカ文明とマヤ文明を蹂躙して安い銀を還流させることで(当時はハイパワードマネーじゃ無かった筈の)マネタリーベース自体を膨張させ、インフレを起こし、自国の製造業の競争条件を優遇。「価格革命」は15世紀のダーティ・フロートに他ならず、これにより北ドイツ経済圏は衰退してしまったのです。バブルの起源はその後短期間で覇権を奪うオランダのチューリップより遡るのです。

政治経済の教科書だけでケインズの乗数理論とマネーサプライの信用想像を理解するのは高校生にとっては頗る難しいこと。高校生の皆さん、センター試験のうえでは不利かも知れませんが、是非とも政治経済と世界史を選択してください(教科名、変ってますか???)

最後に、AIG。やっと電話が繋がったかと思ったら、応対は録音テープだけ。「親が潰れても、子は大丈夫ですから、契約はそのままで」ですって。潰れても潰れなくても良いから、もうガン保険は解約したいんだけど、どぉすりゃ良いんだろうぉ(TT)
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