2013年12月30日月曜日

ここにはパーツ屋さんもあった

先月久しぶりに昭和の残り香が漂う高円寺に舞台演劇を観に行きました。お題は、「ここには映画館があった」。映画好きの少年が、映画館の集まる県庁所在地の賑と、映画独特の垢抜けた開放感へ憧れ、それが時代に取り残された郷愁へと変わっていく姿を、見事にまで映像や動画に頼らず、舞台俳優さんたちの演技と台詞だけでファンタジーまでやってのけるという、実験的劇作家坂手洋二さんの真骨頂に引き込まれました。

表現能力も表現手段もまったく段違いに低いわたくしでありますが、憧れと妬みの対象だった田舎の県庁所在地がどうしようもなく空洞化して、乾ききった郷愁に変わってしまっているという感覚は、劇作家の逆手さんとわたくしが共有できるものだったのかも知れません。

さて、映画という産業やメディアがなくなったわけではなくて、物理的なアナログフィルムが仮想的なデジタル「フィルム」に取って代わられただけです。

デジタル革命とムーアの法則によって空洞化したのは、もちろん映画館だけではありません。

毎週末テレビでやっていた歌番組やお笑い番組は、年末年始にしか見られない、それなりに凝縮感のある特番になったのも、もしかしたらデジタル革命の仕業かも知れません。

ところで、今ではどこにでもある田舎の県庁所在地のシャッター商店街には、かつては映画館だけではなく、パーツ屋さんもありました。トランジスタや(青色ではない)ダイオード、コンデンサや抵抗などをバスに揺られて買い求めに行ったものでした。そこそこ狭い店内をごった返していたのは、いまではオタクと分類される人達だったのでしょう。ちゃんと確認したわけではないが、お世話になったパーツ屋さんはもう廃業しているのでしょう。そもそも秋葉原にだってラジオの部品屋さんって現存しているでしょうか???

「近年,ラジオ,テレビ,ビデオ,携帯電話などに代表される家電製品の中核が LSI 化され,その内部はほとんどわからなくなってしまった。かつては,ラジオ少年,無線マニアと呼ばれる若者がいたが,現在では彼等も製品を買ってきて使うだけで,中味は知らないようになってしまった。いわゆるブラックボックス化であるが,はたしてそれでよいのであろうか。科学は,未だ人類が知らないことを,より知っていこうという努力の結果,発展してきた。家電製品などは,自然物ではなく人工物であり,理解はもっと容易である。それすら,理解を放棄してしまうのでは,将来の科学技術の発展はとても覚つかない。」(岡部洋一放送大学学長「コンピュータのしくみ」)

http://www.moge.org/okabe/temp/computer2013.pdf


目から鱗です。お恥ずかしながら、わたくしの知識も記憶も好奇心も、集積回路の頃から停止してしまっていたことを自覚したところです。

ビットコインを勉強するまえに、まずこの教材からやり直しです。


ところで、うれしいことに、年末年始の放送大学で、過去の名講義として、再放送中であることを発見しました(^^ゞ)

・・・今年一年もたいへんお世話になりました。読者のみなさま、どうぞ良い一年をお迎えください。アヴァトレード・ジャパン 丹羽

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2013年11月13日水曜日

話題のビットコインが取引できるFX会社も

読売新聞の記事です。

綿密な取材に基づいた記事なので、是非本文をお読みください。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/fx/tokudane/20131113-OYT8T00467.htm

題名だけでスルーされてしまうと、とんでもない誤解を招いてしまいます。そこだけは、読売新聞らしくなくて、敢えて言えば某スポーツ紙のような感じがあり、危険です。

ビットコインに関しては、まだまだ情報が乏しいです。

併せて過去のブログもお読みいただけるとうれしいです。

ビットコインとアベノミクス(2013年5月7日)

・・・いちばん声を大にして言いたかったことは「規制する法律がないから扱っていいと私は考えていません」という部分です。


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2013年11月5日火曜日

長く稼げるテクニカル分析を学ぶ

5FX攻略.com主催セミナー


『長く稼げるテクニカル分析を学ぶ』




20131130日(土)10301700
東京渋谷にて開催

池辺雪子さん、平野朋之さん、井手慶之さん、
マックス岩本さんの4人を講師として招き、
テクニカル分析に特化した内容でお届けする、
FXセミナーです。

セミナー後には、講師や投資仲間と交流ができる、懇親会を開催。
また昼食休憩時にはお弁当が出ます。

FX初心者から中上級者まで、
今後長く使えるテクニカル分析のコツが身につく

実戦的なFXセミナーです。

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2013年10月11日金曜日

反社会的勢力とストーカー問題

まず、三鷹のストーカー殺人事件については、真相(≒不都合な真実)が真相だけに、大手マスコミの報道と匿名的ネットの書き込みとの間に、内容のギャップがあり、評価にも著しい差があります。

評価の差としてもっともわかりやすいのが、警察のパフォーマンスです。

不都合な真実を隠した報道からは、おそらくストーカー殺人の度に、「どうして警察は、やるべきことをタイムリーにやってくれないのか???」という感想を世論にもたらします。

しかし、おそらく一般的に、ストーカーで殺人予備または未遂が疑われてもしかたがないが、逮捕状を取るのも一苦労、かりに逮捕されても起訴猶予で保釈されたのち監視をつけるのも物理的にたいへんという、よく考えて見れば明らかな現実があるときに、「警察沙汰にしたほうが、ストーカーの『逆切れ』を招き、予備罪が未遂罪に、未遂罪が既遂剤に、悪化させてしまう」という悲しい結論に至ります。

このように、警察の肩を持ちつつ、指摘をせざるを得ないのが、治安の抜群な先進国とは言え、完璧な法治国家などありえないということであります。

正当防衛(と緊急避難)を例外として自力救済は許されないというのが法治国家の法治国家たる所以です。しかし、自分や家族の命や生活を”正当に”守るために、合法的な自助努力はもちろんのこと、疑わしい自力救済も含めて、「警察や国家権力(だけ)を頼りにしていては行けない」という心構えを持つことは、必要でしょう。

・・・・

あまり詳しく書く能力もないし、また書くべきでもないと思うのですが、戦後日本の発展の影には、アウトローの人達が、アウトローではない人達(特に政治家やエリート官僚や銀行を中心とした経済界)が自ら直接手を下すことを嫌がる事柄について、アウトソーシングを受託してきて、微妙ながら絶妙な関係を維持してきたという、これまた不都合な真実がありました。

・・・・

わたしは、みずほグループの一OBとして、みずほの大企業病体質(臭いものには蓋をしろ、派閥争い、足の引っ張り合い、年功序列等)を、誰よりも、ヤフコメ民の誰よりも批判的な気持ちでこれまでずっと観察してきたつもりです。

しかし、今回の反社会的勢力への(迂回融資の)一件が、その大企業病体質の末期症状であるとか、二度のシステムトラブルに続いて「仏の顔も三度まで」だとか、ここぞとばかりに非難轟々するのは、冷静さを欠いた熱狂なのではないかと思うのです。




一度始まってしまったアウトローとの関係を、新しいリーダーが前任者から引き継いだ時に、外部の誰からも、「コイツの責任と権限でオレは切られた」とハッキリわかってしまう状況で、「自分の命や家族よりも、リーダーとして預かった会社の名誉(や行政処分回避)のほうが大事だ」という決断が出来るでしょうか???


確かに、歴代云々というところが問題です。さはさりとて、日本経済のなかでの銀行業のポジション、日本経済のなかでの反社会的勢力のポジション、政治とカネと・・・・、こう言ったすべてが、冷戦とバブル崩壊後、ルールと価値観の激変により軋んできたわけで、それを数値化したものが不良債権であると考えるとき、たまたまその局面で責任を負わされた頭取の人格識見に集中砲火を浴びせるというのは、あまりに表層的すぎると言うべきではないでしょうか???

(なお、きょうの話は、「副頭取止まりだった」⇒「頭取も知っていた」に途中で変わった問題については触れていません。このあたりも含めてのことについては、やはり、みずほネタと言えば《月刊ファクタ》だと思っているので、次月号を楽しみにしています。)

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2013年8月5日月曜日

【アヴァトレード・ジャパン】アヴァトレード×ゴゴジャン×グッドウェイ「シストレの現状と分析~システムトレード対談」

グッドウェイの藤野社長とは、ひょんなきっかけで出会いましたが、こうして自ら対談に参加してくださり、とってもありがたかったです。

恥ずかしいので大きな声で言えませんが、これまでのFX人生は何をやっても失敗の連続でした。数々の失敗の原因を運不運のせいではなくて情報収集の失敗、判断の失敗と捉えて再チャレンジを繰り返すことで、ようやく壺に近づいてこられたような気もしています。

【アヴァトレード・ジャパン】アヴァトレード×ゴゴジャン×グッドウェイ「シストレの現状と分析~システムトレード対談」


システムトレード(自動売買)に何とか活路を見出し、まだまだ試行錯誤を繰り返しながら、一歩ずつ前に向かって行きたいと思っています。

(アヴァトレード・ジャパンでは様々な自動売買(システムトレード)のニーズにお答えしてまいりたいと思っております。上記は、メタトレーダー(MT4)のお話が中心ですが、FX初心者のお客さまにもよりわかりやすいミラートレーダーという取引プラットフォームもあります)

http://www.avatrade.co.jp/lp/mirror/

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2013年7月24日水曜日

自民党と共産党の大連立時代

終わってみれば予想通りねじれ解消の結果をもたらした参議院選挙。共産党の躍進を、はしゃぎ気味に報道するテレビ朝日の姿に、違和感だけでなく、懐かしさすら感じる選挙後の風景。


第三極という言葉が流行語に過ぎなかったこと、1993年以来間違いなく台風の目であった小沢一郎氏の20年が、少なくとも数の論理、長いものに巻かれろという政治はもうゴメンだと意味では、完全にそっぽを向かれたこと、など。


同じテレビ朝日でも、経営が楽ではない朝日ニュースターのなかで、野中広務氏が、「変わらないのは自民党と共産党だけ」と豪語されていました。週末、国民が選択したのは、変わらない政治であった、ということです。


アヴァトレード・ジャパンに来て、まもなく半年!!半年ぶりに、ツィッターなるものにログインできる余裕が出来ましたので、数多ある選挙後の感想めいたツイートを追っているうちに、ややびっくりするものを見つけました。



常識的には、日本医師会=自民党、であり、共産党=反自民でありますから、よって、共産党=反「日本医師会」であると考えうるところであり、小池晃氏がたとえご本人お医者さんであっても(日本医師会の会員かどうかは知りません)、また政策的には犬猿の仲だが礼節は別だとしても、違和感のあるツイートであり、言動だと思いました。


テレビ討論でも、頭脳明晰際立つ小池氏ですから、政治家独特の本能もあり、さすがにアポが取れたのではなくて、(電話ですが)と限られた文字数のなかで、しっかりとリスクヘッジをされています。でも、電話に出てもらっただけでも、凄いことだし、エール交換のような微笑ましさすら感じます。


テレビではなくてニコニコ動画の党首討論で、安倍総裁(首相)が「大企業が内部留保を溜め込み過ぎているという(共産党の)志位さんの指摘はごもっともで・・・」という譲歩発言を以って、「自民党も共産党の経済政策に理解を示している」と、鬼の首をとったかのように繰り返す志位委員長の姿もまた微笑まし過ぎるものがありました。


この点、安部首相のアベノミクスに関する討論対策はほぼ完璧であったと思います。わたしは安倍首相は第三極壊滅のためには共産党の経済理論には致命傷を与えないほうが良いという賢明な作戦で、反批判を控えたのだと思いますが、どうせなら、


「志位さん、もしあなたが、あなたがたの応援する中小企業の社長さんだったとして、がんばって働いてくれている人にも、そうでない人にも、リスクを恐れず出資をしてくれた人にもそうでない人にも、一律内部留保を所得移転する、みたいな経営をやりますか?そんな経営では競争に勝ち残れず、倒産は時間の問題ですよね?」

とまで言ってもらいたかったです。


共産党のもうひとつの批判、雇用流動化を促進する「限定正社員」導入反対についても、解雇規制で雇用が硬直化して国際競争力を失っているのは主として大企業の問題であって、共産党が味方している中小企業においては、すでに解雇規制が実態として当てはまっていない、という現状をどう見ているのでしょうか?


共産党こそ、第三極の政党たちを弔うべく、解雇規制を大企業ホワイトカラーの特権とせずに、中小企業と同じく、頑張らないひとはいつでも首だという、同一労働同一賃金同一保障を主張すべき政党であるべきです。


が、それでは、今回のような躍進はなかったのでしょう。


選挙対策の伝統、傾向と対策という点においても、自民党と共産党は東西の横綱であると言えます。

以上になりますが、最後に落ちがありまして、わたくしは清き一票を、共産党(と吉良よし子氏)に投じております。

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2013年6月25日火曜日

破綻寸前のネズミ講と揶揄された中国のシャドーバンキング

脱税幇助では稼げなくなったから、今度は相場操縦で行ってみようという魂胆なのか?スイス系銀行の幹部らしきひとが、アベノミクスで日本経済は崩壊するという論調を、気さくな媒体に載せています。

UBS銀行最高投資責任者 最悪の場合は日本経済クラッシュも


確かに、一理あります。しかし、中央銀行のマネタリーベースの匙加減が経済成長やら国家破綻やらに良くも悪しくも直結するような考え方はそろそろ卒業したほうが良い時期です。

きょうは、ポジショントーク(自分が投資をしている資産が値上がりするように世論を誘導すること)の臭いがプンプンする話を、ほかにも紹介します。

まったく同じスイス系銀行の顧問で独立経済コンサルタントのジョージ・マグヌス氏は、アベノミクス批判(アベマゲドン予想!?)の記事に比べると気さくとは言えない媒体に、6月後半の中国株の大暴落・続落について、バーナンキ発言や季節要因などいろいろあるが、シャドーバンキングが制御不能なレベルにまで肥大してしまい、中国人民銀行としても荒療治せざるを得なくなった点を指摘しています。

市場への洞察=中国のネズミ講的な信用創造ブームが収縮に転ずる

何につけても、中国は古くから日本にとって教師でもあり反面教師でもあります。シャドーバンキングについては、サブプライム・ショックとリーマン・ショックの後に関しては、最も派手に奔放にのさばったのが中国で、その真逆が日本だったのではないでしょうか。この違いは、金融政策ではなくて、金融監督のあり方の違いです。

わたくしがやっている商売も含めて、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資顧問業すべてシャドーバンキングに当たります。しかし、わたくしの感覚では、銀行だけが日向で、それ以外は日陰と言われるほど、普通は後ろめたいことはしていないし(笑)、またやろうと思っても出来ない程度に規制監督をしていただいており、良くも悪しくも、金融商品取引法に書かれているようには簡単に登録が出来るものでもないという事情があります。

「貯蓄から投資へ」なんて、口先だけじゃないか!!と会う度に怒りを顕にされる同業他社の先輩社長さんがおられますが、まったくその通りでして、日本の金融当局が見事にブレないので、市場もそう簡単にはブレないのであります。

もうひとつ、同じ英フィナンシャル・タイムズ紙からの引用です。

勇敢なバーゲン・ハンターなら、今こそ新興国に投資すべきである

先日書きましたように、バーナンキ発言の影響をもろに受けているのは、ドル円相場よりもむしろ、南アフリカランドなど新興国の通貨やオーストラリアドルなど資源国の通貨です。

オリンピックやワールドカップ、コンフェデレーションカップなどに、経済危機と暴動は付き物です。
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2013年6月13日木曜日

「バーナンキは何を考えているのか」問題とユダヤ系アメリカ人

5月の下旬以来、「日本の」金融市場で起こっていることは、株価の急反落とドル円相場の戻り売りだとまとめられることが多いです。そのきっかけを与えたのがバーナンキFRB総裁の量的緩和終結を示唆する発言だったともされています。

黒田日銀総裁の異次元緩和の直後の「日本国債の利回り低下、株価の急激な続伸、ドル円相場の更なる急伸」は矛盾を抱えるバブルであり、「日本国債の売り、日本株(とくに不動産株)の売り、ドル円の売りの、どれかをやっても、すべてを組み合わせても、合理的な投資戦略だ」という話を、このブログで4月5日に書いております。

予感が的中したことを自慢するのが本題ではありません(外れることのほうが圧倒的に多いので)。

なぜ、バーナンキ議長がアベノミクスに水を差したのか?という怒りや疑問に、臍曲がり七転び八起き的角度から答えてみるとすると・・・

そもそも、バーナンキ議長はアベノミクスに水を差そうなどという意識で「空気を読めない」発言をしたのでは全くなく、米国内のバブル退治を念頭に置いているだけであって、きょうのブログの冒頭の「ドル円相場の戻り売り」というのは為替市場全体から見たら副次的に過ぎません。

もっとたいへんなのは、南アフリカランドなど新興国の通貨やオーストラリアドルなど資源国の通貨に対して米ドルはむしろ劇的に上昇しているという現象です。

「金融緩和さえとことんやれば景気が良くなるのに」と無知蒙昧な批判に晒され続けて最後辞任に追い込まれた白川前日銀総裁よりも更に不人気的な言動を毅然ととるバーナンキ議長のセントラルバンカーとしての矜持の背景にある人となりを探ってみる価値はあると思います。

まず、彼は、同じくユダヤ系アメリカ人で、自由の国アメリカを代表する経済学者であるミルトン・フリードマンの信奉者でした。

大雑把に言えば、20世紀のアメリカ社会は、世界中で最も、ユダヤ人(の移民の受け入れ)に寛容だった国だと思われますが、それでもミルトン・フリードマンも、ポール・サミュエルソン同様、1940年代には大学社会で理不尽なユダヤ人差別を受けてきたという記録があります。

経済学界に限らず、アメリカですらあったユダヤ人差別と闘いながら、それぞれの分野で頭角をあらわしたユダヤ系がいかに多いかは、ウィキペディアの「ユダヤ系アメリカ人」の記事の末尾の写真一覧を御覧ください。

スポーツと政治(ロビー活動は措くとしても)はそれほどでもないですが、よく知られているように、映画・音楽・自然科学(理数系などと呼ぶべきか・・・もちろん経済学を含みます)・金融(投資・詐欺を含むorz)・コンピュータ製造・ソーシャルネットワークの世界での活躍ぶりは驚愕的でもあります。

わたしが尊敬している広瀬隆さんに言わせれば、これは偶然ではなく、陰謀ではないかと上手にこじつけられるかも知れません。それは話としては面白いのですが、すでに引用したユダヤ系アメリカ人の記述をお読みいただくと、(アメリカの)スポーツ界における黒人の台頭と同じで、貧困と差別から逃れるために人一倍努力した人が比較的多いと評価するのが妥当でしょう。

バーナンキその人についても然りで、「景気が悪い」「人々が全体的になんとなく不幸である」「プータロウの比率が高まっている」などなど世界中の先進国≒オールド・エコノミーで見られる現象が、通貨をばら撒くだけで治癒されるわけがないと、心の底では思っているはずなのであります。

こういうひとたちは、失業の原因は(ケインズが言うように)有効需要の不足ではなく失業者本人の努力の不足だと思っているのです。

これには重要な限定条件が付けられるべきではあります。

5月22日アベノミクスと貧困の連鎖をご参照ください。

この限定条件が無視されて、弱肉強食の思想だけが各経済圏で独り歩きしてしまうと、有史以来繰り返されてきたユダヤ人迫害の一因になってしまうのです。
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2013年5月22日水曜日

アベノミクスと貧困の連鎖

金持ち優遇だという批判は避けて通れなさそうなアベノミクスですが、そんな現政権下でこそ、これまでに見られなかった「貧困の連鎖」の対策がなされようとしているのは、画期的でかつ不思議なほどうれしい話です。

貧困の対策と、貧困の連鎖の対策は、全然異なります。ここが大事です。

実際、アベノミクスの教祖がいらっしゃるとしても、それは新自由主義の重鎮である故ミルトン・フリードマン先生とは真逆の立場の人達であろうと思われます。

フリードマン先生の主張は、ケインズ主義的総需要政策の批判、そして中央銀行はマネーサプライを一定(の成長率)に保つべく監視をすることに限るという内容です。

以上は、ミルトン・フリードマンのウィキペディアの長い解説を無理矢理二行にまとめたものですが、知られていないもうひとつの視点があります。彼は、政府は何もしなくても良いと言っているのではなくて、子供の教育は、貧困家庭に生まれてしまった子供にも均等に施さなければ社会正義に反する、そのために教育バウチャーなどを提案していたのです。

ぶっきらぼうに言えば、貧困(貧富の格差)は(大いに!?)認めるが、貧困の連鎖は許さないという立場です。

人間の社会が、人間以外の野生動物のように弱肉強食は致し方ないと言い切れない唯一の理由は、財産とか所有権という人間(社会)にのみ存在する相続贈与可能な不公平に求められます。

実際には、親が貧乏すぎても不幸、親が金持ち過ぎても不幸なわけで、ここにメスを入れる社会設計こそ、政府の役割なのです。

必要なのは予算や借金ではなくて、知恵なのかも知れません。

さて、同時に喧しい憲法改正議論に触れるならば、解決を要するのが憲法第九条と自衛隊なのか集団的自衛権なのか、湾岸戦争と冷戦崩壊のあたりから変節してきた我が国でありますが、それよりも、教育の機会均等など、戦後70年、ずっと違憲状態ではないかと.。7条解散も然り。憲法学とは頭の良すぎる人が間違った国語の読み方を正当化するノウハウで、これからもあり続けてよいのかどうか、というそもそも論を、もっと多くのひとに論じてもらいたいものです。

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2013年5月16日木曜日

mixiの社長交代と東京電力の副社長候補辞退

社長業は特殊な職業であると思っています。雇われ経営者という言い方のほうが正確かも知れません。経営者以外で雇われるときは、プロの業者から不動産や商材を買うのと同じで、「聞いていた話と違うじゃないか!?」「売主やメーカーのせいで損をさせられた!!」などと文句を言う相手が存在します。雇われ経営者として火中の栗を拾うとき、このような「瑕疵担保責任」を前任者に問えるでしょうか?問える場合もありますし、そういう訴訟を、なんちゃって上場企業のプレスリリースで見たこともあります。が、経営者としては、基本的に、前任者(たち)の故意過失責任も引き継ぐ覚悟をもって粉骨砕身の努力をしなければならない宿命にあるのだと思います。

禅譲であるかどうかにかかわらず、これは重要なテーマだと思っていて、これまでもこのブログでしばしば取り上げてきた問題です。

長銀と日債銀の違い

火中の栗を拾うのも自由、拾わないのも自由です。

mixiと東京電力、、、まったく違うビジネスに一見見えますが、扱っている電圧が違うだけで、電線とネットワークがビジネスモデルの鍵であること、巨大な設備とその初期投資をどのようにリスク分散するかには、ある程度の裁量があること、いったん出来上がってしまった巨大設備は参入障壁が比較的高く、外部の企業(第三者)との提携やシナジーを追求できるという面白い展開と発展が考えられること、などなど共通点のほうが多いように思えます。

そして最大の共通点が、揺るぎない勝ち組フェイズと負け組フェイズと両方を体験していること。

揺るぎない負け組からの脱出というのは、確率50%を大きく下回るのが普通で、それを引き受ける若さとユニークさに最大限のエールを送りたいと思います。


ミクシィ、経営体制を一新 スマホへの対応急ぐ 


(日経電子版)


東電常務が副社長昇格を辞退「一身上の都合」

(産経ニュース)


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2013年5月10日金曜日

【謹告】人材急募(^_-)-☆

【謹告】人材急募のお知らせでございます(^_-)-☆

「おとなの隠れ家イタリアン乃木坂ヴィラージュ」のほうではなくて「外資系オンライン・デリバティブ会社『アヴァトレード・ジャパン』@赤坂二丁目」のほうです( ゚∀゚)

アベノミクスの好影響かと疑われるところですが、そうでもありません(汗)。

英語や算数が得意に越したことはございませんが、ヤル気と、お客さまへの親切な気持ち、集中力と好奇心には自信があるという方であれば、年齢性別問わず、大歓迎です!!

学歴・職歴、全く問いませんが、いますぐできなくても、デリバティブの理屈やアルゴリズムについて強い関心を持って取り組んでもらったほうが、いっそう働きがいがあることは間違いないです!!

ヘブライ語が出来たほうがもっと良いか?それは120%不必要でございます(笑)。

まずは何よりも日本語環境で仕事の要件定義がきちっと出来て要点を整理してコニュニケーションとインターフェイスが出来る人であってほしいと思います。相手が、同僚であっても、お客さまであっても、、、です。

細面談ということで、「履歴書」「職務経歴書」を、弊社サポート宛にご連絡いただければ幸甚です。
アヴァトレード・ジャパン 丹羽
http://www.avatrade.co.jp/
support@avatrade.co.jp


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2013年5月7日火曜日

ビットコインとアベノミクス

「どうせまた話題の言葉を並べてページビュー数を狙ったのだろう!?」と訝る筋もあるかも知れませんが、そんなことはありません。

しかし、これは5分でわかる経済学というわけにはいかない深淵で哲学的な問題も孕んでいるのです。

高校時代に「政治経済」という科目があり、どうもわかりづらかった(正確に言えば、当時だけでなく未だにわからない、、、だから「わかりづらかった」のではなくて、苦し紛れに(受験のためだけに)わかったふりをしていた)のが、信用創造(銀行の貸出と預金)、年金制度、そして憲法第九条です。

年金制度と憲法第九条は、過去ログのどこかにあると思いますので、本日は割愛。

それを言うなら、信用創造だって、アベノミクスだって書いていますし、金本位制についても書いてます。

金本位制について書いた部分を検索されてしまいますと、いつのまにお前はアベノミスト(←さすがにそんな言葉はないですね)に転向したのかと間違いなく突っ込まれてしまいかすから、黙っておきたかったのですが。

はい、はっきり言いましょう。オンライン・デリバティブ会社のポジショントークにほかなりません。従業員の雇用を守る立場から転向と変節はやむをえないのであります。

スペインやイタリアやフランスに比べて、イギリスや日本がちょっとはましなのは、裁量的な金融(財政)政策が許されているからにほかなりません。財政に括弧(カッコ)をつけたのは、ユーロ圏の財政赤字ルールももはや決壊した堤防みたいになっているからではありますが。

言い訳はこのくらいにしておきまして、「わかったふり」をしたくても正直言えば「わかりづらい」問題に戻ります。

一番言いたいことは、「わかりづらい」難問というのがあって、これを早く(速く)解ける人が頭が良いとは必ずしも言えないということです。

紙幣や補助貨幣(≒箪笥預金)と中央銀行の当座預金をマネタリーベース(ハイパワードマネー)と定義するまでは良いとして、それ以外の民間銀行債務のどこまでが「通貨」(マネーサプライ)と定義すべきか(※)というのはとっても難しい問題で、これをいったんわかったふりをしないと、信用創造のメカニズムも、物価(上昇期待率)への影響も、論ずることができません。

(※もっと言えば、アップル社の社債だって株式だって、不動産だって、コメや金(の倉荷証券)だって、流動性・換金性があって購買力を表象しているし、財産価値の尺度となるし、価値の貯蔵もできるぞ、、、ということになります)

かと言って、これをすんなり理解してしまう秀才的な器用さというものは、「ビットコイン」のような革命的なビジネスモデル(それ自体はビジネスではなかったかも知れないのですが、敢えてビジネス・・・とつけました)を生み出す頭脳を退化させてしまうものです。

進化論も、iPS細胞も然り、、、地動説も相対性理論も然り、、、先生の話を聞いて周りの優等生たちがウンウンと頷きながらノートに鉛筆を走らせているときに、自分だけが理解できてないのではないかと不安になり自信を失いそうになり、それでもわからないものはわからないと自分に嘘をつかない別の自信と開き直りがあったればこそ、先学の胡散臭さに切り込みフロンティアを開拓できるというものです。

肝心のビットコインの説明を全くしておりませんが、中央銀行がやるのが当然と誰もがおもっている通貨の供給を、サイバー上でP2Pでやろいという試みです。規制当局がただでは置かないと思うのは当然。投機的という言葉が似合う乱高下をしてしまったものですから、当局も鬼の首を取ったよう。

関連記事はこちら。
「ビットコイン対ベン・バーナンキ」(ウォールストリート・ジャーナル5月3日)
http://online.wsj.com/article/SB10001424127887323809304578429142650304564.html?mod=trending_now_4

「米国の規制当局がビットコイン監視を視野に」(フィナンシャル・タイムズ5月6日)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/b810157c-b651-11e2-93ba-00144feabdc0.html#axzz2SZXPm3Pt

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2013年4月24日水曜日

チェルノブイリと福島の子どもたち

・・・子どもたちの未来のために今できること・・・数年前にわたくしも出演をさせていただいたチャリティ・イベントの宣伝です。4/26はもちろんチェルノブイリ原発事故の日です。

4 月 26 日(金)18:30 開場   19:00 開演
文京シビック   小ホール

〔主催〕チェルノブイリ子ども基金/
チェルノブイリ子ども基金・文京/未来の福島こども基金


1993年より続けているチェルノブイリ救援キャンペーン

今年は「チェルノブイリと福島の子どもたち」という
タイトルで、講演会とコンサートを開きます。

★放射線の研究者・木村真三さんは、今もチェルノブイリと
福島をひんぱんに往復されて放射能を測定し、人々の
健康への影響を調査されています。
チェルノブイリでも福島でも住民の人達に寄り添った
上での活動です。それによって、住民の人たちの
苦悩が見えてくる、研究者という立場だけでなく、
一人の市民としての視点を持ち続けたい。
そして市民科学者を一人でも多く育てたい、とも言われています。
チェルノブイリと福島の放射能汚染は今どうなっているのか。
最新情報をお聞きください。

★フォトジャーナリストの広河隆一さんは、チェルノブイリを
50回以上訪れています。人々の状況を取材すると共に、
被災した子どもたちの救援活動にも携わってきました。
その経験を生かした、福島の子どもたちのための
保養施設、沖縄・球美の里の運営を昨年夏より始めました。
先月、甲状腺検診プロジェクトがいわき放射能市民測定所で
オープンし、その支援も行っています。
首都圏のホットスポットに住んでいる子どもたちの
甲状腺検診の取組みも始めようとされています。
子どもたちを守るために何をすべきか、その最新情報です。

♪特別ゲストは弦楽四重奏団「オブリジェ」の4人です♪
リーダーの大山さんはかつて、ボランティアとして
ベラルーシの保養施設「希望21」でバイオリン教室を
開いたことがあります。
J.Sバッハ、武満徹、ピアソラの曲などを演奏します。
どうぞお楽しみください。

それぞれのプロフィールはチラシをご覧ください。
http://homepage2.nifty.com/chernobyl_children/saishin.html

会場の文京シビックホールは後楽園駅の目の前。
春日、水道橋なども利用できます。

6時半開場。7時開演。終了は9時半の予定です。

どうぞ、ご都合のつく方は足をお運びください。
お待ちしています。

チケットの予約は以下の団体で受け付けています。

--
チェルノブイリ子ども基金 Tel/fax 03-5228-2680
cherno1986@tokyo.email.ne.jp
http://homepage2.nifty.com/chernobyl_children/index.html
未来の福島こども基金 Tel 090-3539-7611
fromcherno0311@yahoo.co.jp
http://fukushimachildrensfund.org/
@=半角@に変えてください。

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2013年4月5日金曜日

黒田=アベノミクスをちゃんと理解して、日本を取り戻す

長期金利0.3%割れ目前というのは、さすがにバブルだろうと思いつつ、住宅ローンを借りようにもまずは物件探しからはじめなければならない状態で、しばらくこの状態が続くとありがたいものです。

それにしても、OECD加盟国の中でも最悪水準の対GDP比での財政赤字または国債発行残高の日本の金利が、短期~長期問わず、ダントツに低いというのは、皮肉であることを通り越して、ちゃんとその理屈を理解しておきたいところです。

今こそ、外国為替証拠金(FX)取引を始めよう、(時間がないから順張りタイプの自動売買ソフトを購入しよう)、金や株式や不動産に投資をしたいという方々が急速に増えています。が、どれを買って、どれを売れば良いのかというアセットクラスの選択を考えるうえで、この「不健康な国債利回りの不気味な低さ」を説明づけることは重要です。

読者のみなさんが、もしも土曜日の朝、電話で叩き起こされて、出てみたら街の金融業のコールセンターからで、「突然ですがあなたはいま無担保で100万円借りることができますよ。どうぞお借りください」と言われたとします。「これはラッキー」と思って、すぐに借用書に判子を押すというひとが何人いるでしょうか?

ほとんど居ないでしょう。

ただし、もともと「貸家を追い出されそうなので住宅を取得しなければならない」とか「仕事またはプライベートで自動車を購入しなければならない」状況で、常日頃から、どこかローンを下ろしてもらえる金融機関はないかなあと探しまわっていたという状況では、結論が全く変わってくるでしょう。

黒田=アベノミクスで、株式相場が上昇しているのは、後者の「借りたいという具体的『使途』のある人が多数派である」という前提の動きです。

いっぽうで、黒田=アベノミクスで、債券相場も上昇している(国債の利回りが低下している)のは、前者の「借りることができるからと言って、借りるつもり(≒具体的な資金使途)など無いという人が多数派である」という前提の動きです。

このふたつは矛盾しますから、これはバブルであって、このバブルの解消は、国債利回りが再び上昇するか株式相場が再び下落するかどちらかの経路で行われます。

例えば、日本国債(長期~超長期)の売り、不動産株(またはJREIT)の売り、米ドルの買いという投資戦略が考えられます。

最後の、米ドルを買うというのがなぜ出てくるかというと、有価証券のふたつのアセットクラスを売っているのでその売却代金で何か買うとしたら、、、、財市場との連動も考えて、、、、米ドルを検討してみたのです。

以上の筋道には、海外からの資金(資本)の流出入が考慮されていません。アベノミクスの三本目の矢とされる規制改革次第では、海外から投資資金が流入してきて、「邦銀が国債を換金しなくても、民間投資のファイナンスが可能」という状況が実現します。

さて、外国資本が日本で投資をもう一度してみたいと思える環境とは何でしょうか?この間の、日経CNBCさんのTraders Barの収録直後に、同番組のスポンサーである三菱地所さんと立ち話をしました。三菱地所さんが立てていらっしゃるようなハイスペックのオフィスやレジデンシャルに外国人がもう一度戻ってきてくれるかどうか甚だ疑問だという話をお聞きして、わたくしの反応は「法人税減税、もしもそれができなければ東京都の法人事業税は限りなくゼロにする。英語を第二公用語に、たとえそれができなくても、東京都内および国内のプロ投資家間の金融取引・商取引の契約書類は英語を公用語とすることができる、せめて欧米並の解雇法制の自由化・・・」。

震災や原発のハンディキャップはどうすることも出来ないかもしれませんが、以上をやれば、かつての中国のように、現在のインドネシアのように、外国資本や外国人が戻ってくると思います。最後の解雇法制については議論があると思いますが、正社員と契約社員の区別をなくせとは言いませんが、正社員のほうが契約社員よりも平均給与が高いというのは昔からわたしには理解できませんでした。野球選手が正社員だったら、あんな給料払えるでしょうか???




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2013年3月25日月曜日

キプロス支援合意とイスラエルで海開き

今朝からのこのニュースの確定が微妙であったことは、ウォール・ストリート・ジャーナルの速報と、フィナンシャル・タイムズの速報とを比較しても、数時間のズレがあったことからわかります。

キプロス議会の混乱もあって、先週一週間二転三転したこと、その他の南欧のより大きな国々にとって先行事例の変更になるかもしれない重要な判断となることから、一部有力メディアが慎重な報道姿勢に徹したことも理解できます。

結果をわかりやすく言えば、預金のペイオフの形を、日本型(1000万円以下の預金者を守ること)にしたために、議会が納得して、それによりキプロスとしても応分の痛みをわかちあうということで、当初どおりの外部(ECB、EU、IMF)からの支援が再度決まったというものです。

詳しくは、

ウォール・ストリート・ジャーナル
http://online.wsj.com/article/SB10001424127887324789504578380550995616128.html?mod=WSJAsia_hpp_LEFTTopStories
フィナンシャル・タイムズ
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/03c5e484-94ff-11e2-b822-00144feabdc0.html#axzz2OWlwu9m1
ロイタージャパン
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92O01A20130325

朝から多くのアナリストが、先週週初来のキプロス問題でのユーロ通貨の相場が「行って来い」であったことを過剰なマッチポンプのように評価していて、むしろ本丸はイタリアだスペインだという話になっています。「本来、日本株には影響の少ない材料のはずだった」などなど。

市場の振れが大きすぎることに対して冷静な見方を伝えることには一理あります。しかし、キプロスが、ユーロ圏の破綻懸念国の救済の歴史のなかで前例を踏襲しないかどうかというのは極めて重要だったのです。ここまで揉めた最大の理由は、ロシア人たちをダントツの筆頭とする海外マネー(その多くが外交的にもユーロ圏であることはおろかEUとも距離がある国々だったりする)からの租税回避を目的とした銀行預金の肥大化という現象があって、これが特に事実上唯一の債権国であるドイツからは、アイルランドやポルトガルやギリシャと同様の処理ということでしかたがないとはいえなかったわけです。

国の大きさや金額の多寡とは意味の異なる次元の問題で、許されるモラルハザードと許されないモラルハザードとの間に線が引かれる可能性はあったのです。許されない敵に塩を送ってまで信用秩序を守ってやろうなどというお人好しは大陸の国々には存在しないのであります。

キプロスへの裁定によって、イタリアとスペインが安全圏に入ったと考えるのは理に叶うと思われます。ただし、それらの国々のなかで特にパフォーマンスの悪い銀行は、ユーロ圏防衛のための人身御供として、スムーズにして大胆な破綻処理が適用されるリスクは残るでしょう。

こちらは、まるで対岸の火事と言った風情のイスラエルはテルアビブの一足早い海開きの写真だそうです。
http://jp.reuters.com/news/pictures/rpSlideshows?articleId=JPRTR3FANW#a=8

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2013年3月22日金曜日

Yes, we can.からIt's possibleへ。オバマ大統領のイスラエル演説

オバマ大統領は、政権交代となる2008年秋からの数々の選挙演説や就任演説で、スピーチの才能を遺憾なく発揮し、本国だけでなく日本でも過剰気味なブームをもたらしました。大統領スピーチで英語を勉強しようというような便乗本も書店に並びました。

かく言うわたくしもちゃっかり便乗させてもらい、当時務めていたFX会社で、「イェス、ウィ キャンペーン」というのをやりました。結果は、オバマ大統領の似顔絵がいまいちだったのと、時まさにリーマン・ショック直後で、さっぱりでした。

当時から言われていたように、オバマ大統領の演説原稿は、コピーライティングスキルに長けたスピーチライターによるものらしいです。このことはオバマ大統領への評価を下げるものではまったくなく、あらかじめ他人が用意したランゲージであるにもかかわらず、それをあたかもその場で迸った言葉であるかのように発話するというスゴ技はまさに天晴です。

よく言われているように、日本ではこういう芸当ができる政治家を寡聞にして知りません。落語という、その才能で以って競演する伝統話芸があるにもかかわらず、です。

このオバマ大統領が過去4~5年至る所で行なってきた演説のなかでも、ダントツに最高傑作となったのが、日本時間昨夜深夜のイスラエルの、パッと見では体育館のようなところで若者中心に集められたなかで行われた平和演説だと思います。

http://thelede.blogs.nytimes.com/2013/03/21/highlights-from-obamas-speech-in-israel/?ref=middleeast

2009年に誰が見ても時期尚早であるノーベル平和賞を受賞してしまい、いっぽうで前政権のイラク戦争の負の遺産の処理を任さえるという、ミッション・インポッシブルに挑戦しつつ、支持率の低下を余儀なくされた一期目とはがらりと異なるスタートを象徴しているのが、今回のイスラエル訪問です。

隣国のキプロスと並んで、今まさに中東はかつてないほど熱いと言えます。

昨夜深夜の演説の凄みは、まず表面的には使用されている表現が実に巧みであって、イスラエル人のプライドを傷つけないように十分配慮しながらパレスチナ入植を抑えるように主張を譲らない点がまず挙げられます。そのためには彼の演説の特徴である抽象論や家族の喩えがくりかえし使われています。印象的で拍手を呼びスタンディングオベーションで締めくくらせる仕掛けが見事に機能しています。アカデミー賞受賞作品のリンカーン顔負けの言語力と演技力です。

しかし、今回の演説を、リンカーン並に、人種や民族の壁を乗り越える民主主義と平和主義の誓いであると捉えてお仕舞いとは言えません。

第二期目就任後も何度も財政の崖と格闘しているオバマ大統領にとって、イラク戦争に代表される中東紛争への軍事的な介入は、もはや予算オーバーになってきてしまっているのでしょう。

イラク戦争への負担額はこれまでの累積(だけ)でも3兆ドルにのぼるという説があり、これは米国の国家予算の1年分を上回っています。たった一年分かと安心するところではありません。仮に戦地からの完全撤収ができたとしても帰還兵への補償はずっと続くからです。敢えて比較するために例示すると東日本大震災の被害総額を内閣府は約17兆円と試算しています。これが巨額であることは論を待たないですが、それでも日本の国家予算の2割程度なのです。

オバマ大統領のイスラエル訪問と名演説は電撃的でもありタイムリーでもあります。と同時に、その内容もタイミングも、ほかに選択肢はなかったという理解も必要でしょう。

戦後、日本は米国の妾であると多くの政治家が自虐的に言ってきたところ、今回のオバマ大統領のイスラエル訪問の言葉の端々から、日本は確かに妾でも3号以下であることがはっきりしました。それはそれで歴史的な意義があります。問題はここまでイスラエルをおだててパレスチナ問題やイラン問題、さらに周辺国のイスラム強行派との雪解けが進まないときに、もうなすすべがないことを警戒しておかねばなりません。

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2013年3月18日月曜日

アベノミクスに水を差すキプロス島の取り付け騒ぎ

土日の海外メディアは、バチカンの新法王フランチェスカ一世による現代イタリア語での演説や、インドや中国など、様々な話題がひしめく中、何と言っても、かれこれ4年に及ぶユーロ危機のなかでもはじめての一般大衆預金のペイオフ強制実施の決定と、それに憤慨してATMに列をなすキプロス島の人々の話題を繰り返し報道していました。

債権カットの率で言えば、ギリシャのほうが派手でしたが、こちらはギリシャ国債が対象。キプロスについては、大口と小口で若干比率がことなるものの、全預金者を対象とする一律カットです。

欧州時間の土曜日未明に、その案を飲んだキプロス政府は、用意周到にも週明け(キプロスは月曜日も祝日で、銀行営業日は火曜日)にも預金の現金引き出しが出来ないように措置を講じたとされています。

したがって、理論的にはATMに並んでも仕方がないところですが、示威行動を起こすには小さい島の銀行窓口が並ぶ目抜き通りはうってつけ。直近の報道では、現在示されている預金カット率(6.75%~9.9%)の再見直しをかけて同国首脳がドイツ、ECBを含む「預金者負担を条件にした金融支援」を主張してきた向きと、もう一晩二晩徹夜に付き合ってくれと言わんばかりに掛け合おうとしているようで、小国の大騒ぎは効果があったのかも知れません。

2008年以来、金融危機が起こるたびに、モラルハザードと致命的かつ瞬間的デフレとのあいだでどのようにしてバランスをとるかを分析議論してきた当ブログ。欧州危機においては、先例となるアイルランド、ポルトガル、ギリシャでは手を付けなかった預金者のモラルハザード問題についに手が付けられてしまったというから、たいへんです。

健全な金融システムと成長可能なマクロ経済を導くために必要な教訓を得るための実験かも知れませんが、実験室が小さくて密閉されているから爆発しても平気だというのは大きな間違い。例えが悪いですが、これは実験は実験でも、核実験みたいなものです。

スペインやイタリアなどに飛び火しかねないということを十分に恐れておく必要はあるのです。取り付け騒ぎとは、そういう性質のものであり、あってはならない風説の流布と大いに関係します。

「七転び八起き 毒入り餃子」で記事を検索してみてください。

それでも、わたしは、この週明けのユーロその他の通貨のギャップダウンの始まりは恐れていたよりはまだ小幅で良かったと胸をなでおろしています。欧米の報道機関によっては、「これは終わりの始まりだ」というコメンテーターもいるのです。しかし、個人的には9割以上の確率で、ドイツもその他債権国も国際機関も、理屈をつけてキプロスは例外にしようと主張すると考えています。さまざまな背景によってキプロス経済は異常だったのです。アイルランド以上にGDP規模に比較しての金融セグメントが肥大化しすぎていたこと、預金者の多く(もっと言うと住民の多く)がロシア由来であることなどなどです。
  人口       (百万人) GDP   (兆円) 銀行預金 (兆円) 銀行預金/GDP (参考:ひとりあたり 預金残高)
日本 126.5 475 590 1.2
4,664,032
キプロス 0.8 2 84 42.0
105,000,000
(注)出典:全国銀行協会、ウィキペディア、ウォール・ストリート・ジャーナル


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2013年3月13日水曜日

Trader's Bar、来週開店

バーはバーでも乃木坂のワインバーではありません>゜))彡

ヴィレッジはヴィレッジでも、乃木坂のおとなの隠れ家イタリアン(わけあってフランス語読みの「ヴィラージュ」を名乗っています)ではありません(●^o^●)

東京・大手町に新しく出来た「東京金融ビレッジ」
http://www.fine-tokyo.com/
に、一晩限り営業する市場関係者だけが集うTrader's Barに、光栄にも参加させてもらいました。

昨夜収録が無事終了、その様子は、

<日経CNBCでの放送>
3月22日(金)21時~21時30分初回放送
同日23時~
23日(土)10時~
24日(日)18時~


プラス、予定では3月25日(月)からNIKKEI CHANNELという日本経済新聞社の映像サイトで視聴可能だそうです
http://channel.nikkei.co.jp/

わたくしは、イスラエルの国情のことを聞かれるかと思っていたところ、アメリカ経済の今後という質問が飛んできて、ハイボール見立てのウーロン茶を片手に、喋らせてもらいました。参加者多数で30分番組ゆえ、どの程度編集されているかわかりませんが、機会がありましたら、御覧ください。

この番組を通じて、また多くの個性的な市場関係者の方々と再会を果たし、出会うことが出来ました。重ね重ね、日経CNBCさんに感謝です。

本業であるはずのわたくし顔負けのバーテンダーを見事に演じられていた、小川まどかさん、岡村友哉さん、お疲れ様でした&ぶらあヴぉ。


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2013年3月5日火曜日

行動ファイナンスは面白い

たとえば、イチローとか落合博満のような打者が、前の打席までで既に3打数3安打で迎えた第4打席、多くの野球解説者は「きょうは特に当たってますからねぇ。うちとられる確率は低いでしょうね。敬遠でしょう」とコメントするでしょう。いっぽうこのような実績のある打者が3打数無安打で迎えた第4打席だったらどうでしょう。「そろそろヒットが出てもおかしくないですね。ピッチャーもそのように不安に感じるものです」というコメントも良く聞かれます。

サイコロに代表されるように、一投毎の試行が独立の事象と考えられる場合には、上記のような野球解説者のコメントはナンセンスとなります。野球の場合は、一打席ごとが独立事象とは考えられません。その日の体調が全打席までの結果に現れていることとか、先発投手との相性や、先発投手が早々に降板して敗戦処理級の投手が次々と打たれている等々の試合展開とか、前打席までヒットが(何本か)出ていればプレッシャーが減るとか自信が増すとか、いろいろと複雑な事情が含まれるので、野球解説者の薀蓄話を楽しむ余地があるというものです。

行動ファイナンスという学問が照準を当てているのはたとえばこういう現象です。さきほどのサイコロで、「6」が続けて3回も出た(この時点で確率0.46%)のだが、更に4回目に「6」が出る確率が、なんだか過去3回さまざま出鱈目な数字が出たのだが(「1」「4」「3」とか、「6」「5」「2」とか)、次の4回目に「6」が出る確率より低いように思えてしまうのが人情だが、これは合理的ではない。えてして人間というものは合理的に物事を考えられないことがあるのだと説いているわけです。

問題は、これを相場とか投資に当て嵌めようとしてみた場合どうなのか、ということです。1分か、1時間か、1日か、どれでも良いのですが、どれかの単位区間で、例えばユーロドルの相場が、「下落」「下落」「下落」と続いた場合に、次の区間が「上昇」となるか「下落」となるか、半々の確率と言えるのかどうか??言えたとして、それは我々人間の直感とずれていないかどうか???もしもずれていたら、売買を機械化・自動化することで直感を修正するメリットを投資の成果として回収できるかどうか????これが課題です。

☆☆☆☆

実は、直前の記事でご報告した慶応義塾大学の特別授業にわたくしを招聘してくださったのは、わたくしが以前に務めた会社の同僚で、同大学院経営管理研究科(ビジネススクール)林高樹教授でして、彼の専門分野こそ、わたくしが行った授業のないようとはあまり関係のない、この行動ファイナンス、、、より厳密には「意思決定分析」なのです。

より具体的に他己紹介させてもらえれば、「高頻度データを金融意思決定(リスク管理やトレーディング)に活用する(ための統計的方法論の研究開発および実証研究」をなさっているのです。

これは、まさしく、アヴァトレードジャパン代表取締役としてのわたくしのビジネスパートナーの皆さまがありとあらゆる形でやってくださっていることです。

わたしは、自動売買のプログラムを開発したりそれを販売したりする立ち位置の方々のほかに、アカデミックな研究課題として、ややもすればちょっと生臭く感じてしまいがちなオカネの話に取り組んでいらっしゃる林教授といっしょに、システムトレードがどういう意味において裁量トレードよりも優位であって、したがってシステムトレードの普及によって投資分野におけるプロとアマの垣根の開放、投資の民主化みたいなものが出来ればと、特別講義の前後に雑談し大いに盛り上がったところでした。
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2013年3月4日月曜日

酸っぱいプレゼンテーション

何かと批判の多い日本放送協会と日本銀行ですが、臍曲がりのわたくしとしては理屈の通る限り精一杯弁護してきたつもりがこのブログでした。

一方で、海外のメディアと日本のメディアとで、ニュースの扱い方がどのように違うかに注目してもきました。

ニュースの優先順位や報道の切り口が違うのは当たり前。土曜日の正午のNHKニュースで、北海道の暴風雪の被害状況を一番に報じていたのは至極妥当だと思うのです。しかし、わたくしが注目していたのは、日本時間の当日午前中、英国放送協会や米国ケーブルニュースネットワークあたりは、毎時報道していた「米国議会が8兆円相当の財政削減を決定するか覆すか?」という緊迫した状況で、その期限が日本時間の午前11時に迫っていて、議論が暗礁に乗りあげていた挙句の果てに、オバマ大統領が共和党議員団に妥協する形で、財政支出削減が決定したと臨時ニュースで大々的に報ずるに至るなか、果たしてNHKはこれを何番目にどの程度の重みで伝えるだろうかということでした。

答えは、取り扱い無し。暴風雪のあとは、吉祥寺の殺人事件、陸前高田の奇跡の一本松。そして毎度お決まりの誰も注目していない地方の朗らかな話題、で終了です。

日曜日のサンデースポーツも、事前にサッカー中心に番組が組まれてしまっていたのがかえって悪かったのかも知れませんが、どう考えても香川真司のハットトリックをトップで伝えるべきところ、J2の試合からはじまって、J1も開幕しましたねぇ、という流れ。

それでもわたしは言いたいのは、空気を読めないのは、国営機関にとって強みでもある一面があるということです。

最近のNHKで注目しているのは、米国TEDで行われているスピーチを題材にした「スーパープレゼンテーション」という教育テレビの番組。

http://www.nhk.or.jp/superpresentation/

TEDにリアルで参加するには高額の入会金が必要らしいですが、ネットでスピーチを聞いて、ものによってはスクリプトを読んだり、日本語訳を読んだり、更に多機能に対応しているコンテンツもあり、これらが無料で提供されているわけですから、英語の教材と見るだけでも、たいへんな時代になったものだなぁと感心してしまいます。

http://www.ted.com/

そこで、日本語ではありますが、わたくしも先週、既報のとおり、慶応義塾大学のビジネススクールで酸っぱいプレゼンテーションをしてきたという話です。こちらもまた高額の授業料を払って、また社会人入学の大学院生のほとんどは会社を辞めてコースに来ているという気合のはいった人達を前に話をするので、こちらも気合負けをしてはいられません。と同時に、そのような状況ゆえ、話の内容を詳しく網羅してお伝えすることはできません。

ひとつだけ、ビジネススクールらしいやりとりを申し上げたいと思います。教室設例ならぬ本当にあった話で、「大王製紙の二代目社長がマカオのカジノで大損して会社の純資産を毀損させた」事例を踏まえて、「これは大王製紙が、オーナー系企業であるにもかかわらず公開会社になってしまっていて、少数株主が(市場を通じて)存在するので、そのひとたちの利害を蔑ろにしえいるから悪いのであって、非公開会社のままで、大損した経営者(一族)が100%株式を持っていたままであれば、これは悪いことではない。公私混同ではない。」とわたしは思うが反対意見はありますか???

という質問でした。

質問や意見がちゃんと飛び交うところも、慶応義塾大学のビジネススクールの実に良いところだと思いました。

わたくしは、債権者が居なければ、かつ会社法上許される範囲であれば、株主=経営者の場合、株主がタコ配だろうとなんだろうと純資産を幾ら払いだしても問題はないというのが答えだと思っているので、大王製紙の事例も、少数株主との利害相反に問題は帰すと考えています。読者のみなさんの意見はいかがでしょうか?

・・・この話、続く。

2013年2月26日火曜日

イタリア危機でまさかの円高

日々相場と格闘されている皆さんからは、ヒートアップし過ぎていた円安株高を小休止させるためのガス抜き材料が欲しくてたまらなかったので、イタリア総選挙の結果が人身御供とされたとの冷静な分析も聞こえてきます。

何とか辻褄を合わせようとしても、単独与党が存在し得ないというニュースだけでは納得が行きません。日本もアメリカもねじれ国会はあたりまえ。それだけで自国通貨安の材料にされるというのは違和感があります。

統一通貨ユーロの初心を守るために、国民の人気を犠牲にしてでも、財政緊縮を政策に掲げてきたモンティ派の大幅な後退にこそ理屈を求めるべきでしょう。

それにしても、ユーロの急落と株価の急落、そして危険指数として認知を得てきているVIX指数の急上昇を見るに、今回のイタリア・ショックが、過去のドバイ・ショックやサブプライム・ショック並のマグニチュードがあるというのは違和感があります。

ドバイの場合のドバイワールドや、サブプライムの場合の、BNPパリバやベア・スターンズは、定義上債務危機であって、想定外の支払不能事由からシステミックに蔓延した信用不安によってもたらされるものです。今回のイタリアを同類にするのはかわいそうな気がします。

本件を過熱相場のガス抜きの一言で片付けてもあまり問題はないのですが、敢えて付け加えると、アベノミクスが可能な日本とそうではない(金融政策の独立性を奪われている)ユーロ圏諸国(のひとつであるイタリア)の差が出たという点かと思われます。

実際に、ドバイの状況というのは、2009年のドバイ・ショック以降、あまり日本語メディアでは語られて来ませんでした。いろいろあって、現在のドバイは、なぜかほとぼりが覚めて、リーマン・ショック前のような、平均的な日本人が観察すると「バブっているんじゃない」と思えるような風景なのです。一方で貧困や格差の問題はあり、それも昔のままです。何が言いたいかというと、ドバイ・ショックもまたアラブ首長国連邦版のアベノミクスによって、誤魔化され、治癒されたのであります。

スペインのデモの激化も然り、ユーロ圏諸国で、緊縮財政で強いヨーロッパをもう一度というのはたいへんなウルトラCなのです。


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2013年2月24日日曜日

FX酒場とはちょっと違う乃木坂ヴィラージュ

まもなく開業1週年を迎えるおとなの隠れ家イタリアン乃木坂ヴィラージュ。初めてお越しくださるお客様の多くから隠れ家過ぎて道に迷ったとご指摘を受けっぱなし。そんな場所の悪さにもかかわらず常連のお客様を中心に大いに盛り立ててくださり無事一年やって来られたのはほんとうに皆様のお陰です。

とくに、ここ数ヶ月は、外国為替証拠金(FX)取引の業界やその周辺の業界のお客様からどんどん気に入ってもらっています。単純に考えると、アベノミクスのお陰なのかなと思ってしまいますが、株価が上がらなければ敷居を跨げないような怖い店では決してありません(笑)。

また、おカネの話が飛び交う下品な店でもありません(爆笑)。どこぞの「FX酒場」のように、お店で、文字通り(!)店頭取引なるバイナリーオプションを開帳しているわけでも当然ありません(爆沈)。

外食産業とFX業界。ひとつだけ似ているのは、生存競争が驚くほど厳しいということです。ですが、創造的破壊を含めた変化の速さ、相場だけでなく規制についても先が読めないゲームの難しさ、運不運や浮き沈みの激しさでは、外食産業にそれらがないわけではないですが、FX業界は極端であり、業界または周辺業界で一匹狼で全身全霊経営をしてきた方々ほど、その辛さを感じて来られたと想像するのです。

そんな21世紀版企業戦士にとって、安らぎとくつろぎの場になっているのであれば、オーナー呑むリエとしては本望です。

バイナリー、、、規制、、、と気になる言葉が並んでしまいましたが、わたくしたちだけでなくお客様である投資家にとって、金融商品取引法は憲法のような存在です。アベノミクスの次には規制緩和と憲法改正の議論が予想される今日このごろ。日本の強みは平和を独占できたことだったとも考えられることから、憲法改正には慎重でなければなりません。

しかし、日本国憲法に比べて大日本帝国憲法が好戦的憲法だったから良くなかったという決めつけはもう古すぎる見方でしょう。泥沼の戦争に導いたのが天皇個人であるとか旧憲法のせいであるというのは事実錯誤も甚だしく、国として反省すべきは、国民自体でありまた敢えて言えばマスコミでしょう。

ただ、旧憲法の欠点として看過できないのは「法律の留保」、すなわち「憲法で認められているはずの人権が下位の法律で制約される」ことを認めてしまっていたということです。ここを覆した現憲法はこの点優れているのです。

それでも私権は公共の福祉に従うのであり、それが立法府で制定されたものであれば、まだ問題は小さいです。

わたしが問題としたいのは、わたしたちの金融商品取引法は立派な憲法だし、それ自体をいい加減な先入観でもって規制強化だと騒いでいたひとたちは不勉強だと思っているのですが、法律の留保どころか行政の留保、つまり政令・府令~行政裁量では、法の精神も法の支配もあったものではありません。

金融業界に限らず、どの産業も、国際競争のなかで生き残り、できれば諸外国から有力な投資家や有能な人材が集まってくるような産業にするためには、合理的な範囲での規制とその透明性の確保が一番有意義で、それさえあれば決して重商主義的政策は不必要なのです。新たな規則の制定や法律の解釈適応が裁量的にされてしまっているフィールドにはプレーヤーは集まってこないのです。


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2013年2月20日水曜日

税金のように重く伸し掛かる社会保険料

年金問題、少子高齢化、100年安心、消費税増税、、、、いささか聞き飽きた議論のようにも聞こえます。

アベノミクスで薄明かりが見えたかと期待したい今日このごろ、しかし暗いニュースもあります。


貿易赤字最大1兆6294億円 1月、円安で膨らむ



朝日新聞の主成分分析が正しいかどうかはなんとも言えませんが、もしそうだとすると、昔懐かしい日米貿易摩擦の時代のJカーブ効果です。

きょうの本題はそれとは別で、社会保険の問題です。


協会けんぽ、全都道府県で保険料率維持



産経新聞の記事ですが、すでに先週末に日経新聞で既報のとおりとなりました。最近はじめて協会けんぽのお世話になることが決まったわたくしとしては個人的にうれしいかぎりで、安倍政権に感謝しています。

それでも、これまで(協会けんぽのホームページ上でデータがとれる4年間)の保険料率(これを更に被保険者と雇用主とで折半※)の上昇ペースにはうんざりさせられます。

全国平均からするとややましな東京都の例をとると、

8.18%(2009年度)⇒9.32%(2010年度)⇒9.48%(2011年度)⇒9.94%(2012年度)

・・・わたくしは、何から何まで民主党政権が悪かったとは言いませんけど、野党時代の後期高齢者医療制度の導入の邪魔をしたことは万死に値すると思いました。

個人的には、これまで約12年ほどお世話になったのが、東証健保という組合けんぽです。これはまた得意な存在で、リーマンショックまでは、全国のあらゆる健保組合のなかでも最優等生でした。やはりここ4~5年の保険料率の上昇は極端ですが、証券外務員の高齢化よりもむしろ、外務員の絶対数の減少(過去20年で約半分に、リーマンショック直前比で約2割減)、外資系の日本からの撤退等による給与の減少(総額も平均も)など、日本の社会保険制度が抱えるストレスとはまた別のストレスが存在していることが特徴的です。

協会けんぽのホームページには「日本が世界に誇る国民皆保険・・・」という件(くだり)があります。それはよくわかるのですが、年金だけでなく医療についても大胆な改革がなされなければ、歓迎すべき円安が歓迎されない円安に変質してしまいます。もうちょっと時間は残されていますが・・・

(※)ひとくちに折半と言っても、協会けんぽと東証健保とでは、雇用主の負担割合が全然違うのです。なぜでしょう???


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2013年2月14日木曜日

ジョージ・ソロス氏、アベノミクスで10億㌦を稼ぐ

またしてもソロス氏か。。。。いま出たウォール・ストリート・ジャーナルの「号外」によれば、1992年のポンド危機でのポンド売りによる荒稼ぎで有名なショージ・ソロス氏のファンドが、昨年11月以降の歴史的速度での円安で10億㌦相当を稼ぎだしたとのこと。

ほかにも、知る人ぞ知るファンドマネージャーが巨額の利益を出したと報じています。

ようやく今頃になって、通貨戦争という言葉が出始めた状況です。ドル高よりも更に深刻なユーロ高でドイツ・フランスは不満タラタラです。それにしても、日米間がこれほどまで冷静平穏だったのは、有力ファンドマネージャーの影、さらにはもしかすると、長らく失業気味だったエリート通貨マフィアたちの意気揚々とした活躍が背景にあるのかも知れません。

元の記事はこちら。

http://online.wsj.com/article/SB10001424127887324432004578302461873792762.html?mod=djemalertNEWS

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2013年2月12日火曜日

アベノミクスの行方~投資家セミナー無事終了

結果報告だけとはまた何事かとのお叱りを承知で書かせていただいております。今回も主催者はわたくしどもではなくて、かれこれ8年ほどお付き合いのある生命保険会社ご出身で最近は独立をされて様々な事業主をされている方です。年齢層さまざまな方々が約30名ほど集まり、1時間ちょっと好き勝手なことをお話させてもらいました。

その後、多くのみなさまと壇上で雑談。これが楽しかったです。国の中枢にいらっしゃる憂国の官僚、超をつけるのは失礼ながらも超ベテランの不動産鑑定士、日中を股にかけてアパレル事業を創業された実業家、などなど、何に投資をしたら良いのかというテーマを発展させて、これから世界はどうなるのか、ということで大いに盛り上がりました。

為替のリアルのセミナーを行うのはちょうど1年ぶり。一年前の今頃は、ユーロ圏の財政危機の解決法がそう簡単には見つからないという話をしました。今回は、ユーロ圏とそれ以外のEUとの間での移民の流れに変化が出てきていること。さらに、アメリカ、アジアを見渡して、人口移動という観点から国力、為替力、とアプローチしてみました。なんだかアベノミクスの評価と無関係に思われるかも知れませんが、マクロ経済学の範疇でのアベノミクスに対する評価はすでに百家争鳴状態。あえて奇妙な切り口を提供させてもらいました。

是非次回も、という話になり、わたくしのほうからは不動産市況から見た為替というテーマを提案したところ、反応は上々。ゲストもお呼びしたいところですが、この点は主催者さまどう思われるでしょうか。

次回こそこちらのブログからお知らせしたいと思います。
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2013年2月1日金曜日

アヴァトレード・ジャパン株式会社(MT4、ミラー、CFD,,,)

読者のみなさま、たいへんご無沙汰しております。年末のごあいさつも、年始のごあいさつも出来ずに、寒中お見舞いどころか、本日を以って2月を迎えてしまいました。節分です。鬼は外、福は内でございます。

非常に唐突ではありますが、本日付で、アヴァトレード・ジャパンというイスラエル系のFX会社の日本法人の社長に就任しました。上司とも言えるイスラエル人たちと何度か会話をして本日に至ったわけですが、そこから感じたこの会社のマネジメントの性格や民族性というのは、、、

★(わたくし自身を上回る)ケチ、
★(もしかしたらわたくし以上かも知れない)ワーカホリック、
★(それと関係しますが)よく食べるのによく頭を使ってよくしゃべるせいか太ってはいない、うるさくて管理志向は強いが論理的で理不尽ではない、、、

というところです。

もちろん本日以降このような第一印象は変化していくでしょうし、ネガティブな面もいっぱいでてくるのでしょう。まだ、シリア問題についても、イラン問題についても話をしていません。年末もメリークリスマスとは言いませんでした。。。

アヴァのイスラエル人たちとの出会い以上に、7年半、やはり雇われ社長という立場で悪戦苦闘してきたフェニックス証券が、金融商品取引業廃業(2013/1/28付)のみならず、解散・精算、役職員全員解雇となった理由のほうが不可思議で複雑で分析と解説に値するテーマだと思われ、ほとぼりが冷めたころに(?)また情報発信を行い、そういうことが健全な資本主義の世の中に貢献するのであれば、ちょっとはよいかなと思っているところです。

ここのところ経験しているユニークな境遇がいろいろな形で伝わった結果、今月、都内某所の超有名大学の大学院(ビジネススクール)で、さすがに本日現在ではこのブログでは書くことが憚られるそのような内容について、とくに(上場)企業のガバナンスがどうあるべきか、講義をさせていただく機会を得ました。

日本の企業が業態を問わず元気になるために、アベノミクスもカンフル剤となりうると期待しますが、より抜本的には、これまで当ブログがしつこく書いてきたガバナンス欠如やモラルハザードの問題に切り込まなくてはならないと考えています。それを、抽象論ではなく、自らの具体的な経験に基づいて、ただし固有名詞は伏せながら、解説、伝道していきたいと考えています。

あらためて、これからもよろしくお願いいたします。

アヴァトレード・ジャパン株式会社
代表取締役社長 丹羽広


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