2012年1月23日月曜日

2012年を大胆予測-FX攻略.com最新号

FX攻略.comの最新号(3月号)がいよいよ書店に並びました。
わたくしのコーナーでは、2012年を大胆に占う予言集となっております。
新年ということで、いつもよりもグンと読みやすい内容となっていますので、是非ご一読をお願いいたします。
雑誌全体の特集内容は「確定申告」です。

さて、過去記事をご紹介します。2011年8月下旬に発売された同年10月号から・・・

ヨーロッパではギリシャに端を発した財政危機が桁違いに病巣の大きいイタリアとスペインに蔓延したことで、ユーロが導入以降最悪の危機に直面しました。一方、米国では、すったもんだの末、米国債の発行上限の問題を議会がクリアしたものの、その直後の米国債格下げ(スタンダード&プアーズ)で基軸通貨(?)ドルの存在感を取り戻し損ないました。金融市場が大混乱したなかで、日本は前人未到の円高のお盆を迎えています。


国民とマスメディアとが「内向き」な島国根性を競っているような日本ですから、大震災でも原発事故でもリーダーシップを発揮出来ない政権を血祭りに上げることしか能が無いわけです。こんな体たらくのメディアに洗脳されてしまっては、国内外でどんな種類の危機が起こっても、種類を問わず何でもかんでも超円高というのが理解できなくなってしまいます。しかし、そんな日本円よりも高騰を繰り返している金(ゴールド)の存在は謎を読み解く大きなヒントです。

リーマンショックから3年近く経ったので、サブプライムなる言葉すら死語に近づきました。「内向き」のメディアたちがリーマンショック前に繰り返していたのは「金融技術の革新とグローバリゼーションで日本を除くアジアと米欧は好景気が加速していて、日本だけ蚊帳の外」という論調でした。今考えれば、ひとつはサブプライムを一例とする詐欺的手法でレバレッジされた不動産バブル、もうひとつはユーロという通貨統合によって期待された不動産バブルに過ぎず、その宴のあとの後始末の厄介さの本質は、日本の90年代、2000年代と変わらず、しかもどうやら欧米のほうが重症なのではないかということです。

実は、わたしは、リーマンショック後に緊急出版した「『為替力』で資産を守れ」で予想を外していました。リーマン倒産による金融市場の混乱はなかなか収束しない。金融市場のチョンボを財政出動で取り返そうとしても抜本解決にはならない。能力以上の生活水準を追求してしまったツケは節約と緊縮(オーステリティ)でしか解決できないから当分景気は悪い、等々。小国ゆえ一番目のモデルケースになってしまったのがギリシャでした。大国の多くも、財政出動やらイカサマの銀行ストレステストなどで約3年誤魔化してきましたが、財政も破綻気味、金融機関も破綻気味となると、もうあとは本質に回帰するしかない、つまり「清貧の思想」を国民に要求する以外にないのです。これが受け入れられるかどうかは人生観、文化の違いが大きいでしょう。日本はいまのところ例外的な国家のひとつのようですが、多くの先進国や新興国では暴動がまだまだ多発する恐れがあるのです。

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2012年1月5日木曜日

ストラディヴァリウスと「食べログ」と尾上縫

明けましておめでとうございます。

新年早々の三題噺、「ストラディバリと『食べログ』は、わかるけど、尾上縫(おのうえぬい)は何故だ?」と思われるでしょう。

正月明け、ネットとメディアを騒がせているのは、「一個(一台?一本?)何千万円~何億円もすると言われるヴァイオリンの名器『ストラディヴァリウス』や『グァルネリ』が、現代の安い量産ヴァイオリンと比べて音色の差が殆どない。場合によっては現代のもののほうが評価が高い」というニュース

そして続いて出たのが上場会社カカクコムが運営していて飲食店や「地域名 ランチ」などで検索するとほぼ間違いなく上位に出てくる口コミサイト「食べログ」のやらせ疑惑です。

フェイスブックなどソシアルメディアの閲覧数や「いいね!(Like)」ボタンの押される回数みたいなものですら、ワンクリック幾らとかで売り買いされる時代だそうですから、SEO対策などで宿敵ぐるなびを戦慄させてきた「食べログ」に限らず、およそ「口コミサイト」なるもの、多かれ少なかれ「やらせ」はあるのだろうと読者の皆さまは既に賢察のことと思います。

現状、記事によれば、カカクコム自身はインフラを提供しているだけであり、やらせ業者を取り締まり監督規制する立場であることを明確にしています。

ここは実に重要で、外国為替証拠金(FX)取引の世界で、広告の大半を占めているアフィリエイトは、個人ブロガーはさておき、比較サイトや口コミサイトは、それ自体がやらせであり、人気順位を売買させていることがはっきりしているからです。

そのことの是非については、金融先物取引業協会でも、のらりくらりと議論されているようなのでそちらに譲るとしましょう。アフィリエイトという何となく洗練された外来語が「やらせ」という直截な言葉に置き換えられようとしている事実だけで、アフィリエイトモデルに依存してきた多くの業者や周辺産業の人々は「ああ、来るべき時が来たな」と観念することでしょう。

ヴァイオリンの話に戻すと、東京の郊外にあり、比較的多くのヴァイオリン奏者を育成輩出することで知られる音楽大学では、一個(一台?一本?)500万円以下の単価のヴァイオリンのことを“ゴミ”と称する習わしがあると聞いたことがあります。そういう価値観を成り立たせている教員や学生の耳こそまさしく“ゴミ”であるとわたくしは言いたいです。

・・・・・ヴァイオリンは一個でも一台でも一本(※)でもなくて、一丁と数えるそうです。豆腐と一緒です。。。。。(※)「あるオーケストラのなかでヴァイオリストが何人いるか?」という文脈では何本と使うようです・・・・・

良きにつけ悪しきにつけ、スティーヴ・ジョブズが圧縮音源によってアナログ音楽や生の音楽のビジネスモデルを破壊した一面があります。が、その敗者の代表格ソニーは、プロモーション・ビデオ(≒MTV)で「口パク(くちパク)」の歌と音楽を一般大衆に許容させてしまっていて、いまや天下のNHKですら平気で「口パク」歌手を紅白歌合戦の大舞台に立たせるほど寛容になっています。

メット文明の便利さは捨てがたい反面、良質なマスメディアの生存確率は劇的に低下したため、ネット上で「やらせ」産業が跋扈し、大衆の耳や舌や価値観につけいる隙を与えてしまっています。

それで、何故に尾上縫なのだ?と続くところですが、後半は後ほど。要すれば、ほんとうの金持ちはブランドでは騙されない、よって自身をブランドで飾らないことによって(普通のオバサンのように振る舞うことによって)ほんとうの金持ちはこういうものだ、ほんとうにこの人はおカネを持っているんだと思わせようとした一級の詐欺師であったというお話です。

2011年12月30日金曜日

割れかけたコロンブスの卵

昨日、12/29(木)のブログで、

「欧州の危機には、統一通貨ゆえに急成長し過ぎたツケと、個別国国債の買い切りには(独立通貨国以上に)抵抗がある中央銀行の存在という特殊要因があるものの・・・・・・」

と書きました。日本のような独立通貨国でも、日銀総裁が頑固だからというだけでなく、中央銀行による国債の直接の引き受けは原則禁止なのです(「国債の市中消化の原則」財政法第5条)。

この「原則」は先進各国共通のようです。しかも「例外のない原則(で)はない」というところも似ています。つまり、いったん市中の銀行に消化された国債を、金融調整目的で、中央銀行が買い上げることは可能であり、結果としてそれを満期まで持つことも可能であり、償還と同時に借換債を購入することも可能なのです。

この抜け道に注目したのが、今月、欧州で決定されたLTRO(長期リファイナンス・オペレーション、または長期レポ・オペレーション)だと言えます。

借り換えが困難な国の国債をECBが直接買えないのは、市中消化が原則であるだけでなく、健康な国の税金で運営されている(欧州)中央銀行を病気(の国の国債)のリスクに曝(さら)すことへの愛国心的な抵抗があります。そこを、やや健康な国の銀行にまで病気のリスクが蔓延していることを奇貨として、今回はまずイタリアの国債でしたが、これを買って担保に入れることを条件に(?)、それらの銀行に金を貸してあげるという枠組みになったのです。

中央銀行が助けたいのは国の財政だが、それが直接できないから、民間の銀行を導管として使う(使われた銀行も悪い気はしない)というのは見事な抜け道ですし、コロンブスの卵です。

このコロンブスの卵、ユーロ圏では、(市中消化の原則だけでなく)自らは健康だと思っている国の愛国心を回避するためのアイデアであったわけですが、愛国心の問題を気にしなくても済む日本でも米国でも応用できるかも知れず、そうであれば、消費税のことで与党内で揉めたり、離党議員や支持率の低下で悩まなくても良いのです。

ほんとうにそうでしょうか?イタリア国債の入札が、上記理由で順調であったにもかかわらず、ユーロは対ドルでも対円でも大きく下落しています。
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2011年12月29日木曜日

2012年を占う

フェニックス証券による2012年の「公式」占いについては、来月発売の月刊FX攻略にバッチリ載せておりますので、それまで暫くお待ちください。

今朝ご紹介するのは、フィナンシャルタイムズの論稿のひとつで、元国連事務総長補(当時の国連はアナン事務総長)など国際機関の重要ポストの経験を複数持つユニークなジャーナリストであるマーク・マロック・ブラウン氏によるものです。

氏の予想は至極一般的な悲観論で、①対策の打ちようがないユーロ圏危機、②過熱してしまった中国不動産市況、③先細るインドの改革とブラジルの経済成長、④アメリカの失業と債務、、、これらすべてが来年より悪くなることはあっても、良くなることはないと言い切っています。

ただ、このような普通の結論も、単に来年一年についての占いではなく、過去何十年もの間、糊塗し誤魔化し続けようとした西側経済(※)の病巣に帰するところに、氏の達観があります。

一時しのぎの連続に遂に耐えられなくなった西側経済(※)の病巣とはなにか?

氏はグローバル化はグローバルな優勝劣敗を作り上げた。つまり、二種類の勝ち組(技術革新の担い手たちと新興国の製造業の担い手たち)と負け組(西側の中間層とブルーカラー)が産まれた。問題は、負け組連中が劇的に失った競争力と所得を、それぞれの先進諸国の政治家が、回収不能な(!)ソブリンローンと消費者ローン(または住宅ローン)で取り繕おうと、もがいててきた「成れの果て」であると分析しています。

私自身の仕事を考えてみても、パソコンからインターネット関連サービスの技術の恩恵を受け、新興国の低賃金なのに高意欲でしかも高能力の働き手のサービスを直接・間接に利用出来てきたことで、二十数年前に社会人になった頃の私の上司の働き振り「これコピーしといて」「清書しといて」・・・みたいなコスト構造が是認されていた時代・・・とは隔世の感があります。

欧州の危機には、統一通貨ゆえに急成長し過ぎたツケと、個別国国債の買い切りには(独立通貨国以上に)抵抗がある中央銀行の存在という特殊要因があるものの、ツケの本質は、一度手にした物質的に豊かな生活は失われないものだと勘違いした国々にとっては共通なのです。

ちなみに、氏の予言によれば、経済的にはより悪くなる2012年だが、政治的には意外にも静か、ただし「嵐の前の静けさ」とのことです。

(※)ウェスタンという言葉を使っていますが、日本を含みドイツを含まないようです。
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(2012年3月16日追記)昨年のノーベル経済学賞受賞者の考え方【合理的期待仮説など】と似た切り口です。2011年10月11日の記事もあわせてお読みください。