2020年3月23日月曜日

アジア人は「コロナ耐性遺伝子」を受け継いでいるのか



各国比較ーあてにできない感染比率から何を読み解くか???
新型コロナウイルス感染症のメインステージが中国(・韓国・日本)から欧米へと急速に遷移しました。

欧州に関しては、前回ブログを更新していた時点ではイタリアが断トツであったのが、2週間も経たずに、欧州全域に広がりを見せ、ほとんどの国々で国境閉鎖、原則外出禁止(食料品と薬品の買い物を除く)状態になっています。

 イタリアだけが(欧州で)例外的な特徴があったわけではなかった理由???

 中国が震源地でありながら、東南アジア、南アジアの諸国では感染者や死者について(今のところ)深刻な統計が上がってきて来ない理由???

欧米と同様に、国境閉鎖、外出禁止の政策がとられている南米諸国では、実は、上記同様、統計上はまだ欧米やほんの少し前までの中国ほど深刻ではないように見えます。

週末三連休で急に箍が緩んだ感のある日本人の多くに、なんとなくアジア系、厳密にはモンゴロイドは今回のウイルスに対しては強いのかもという楽観が蔓延してはいなかったかと???そして、前回のブログ更新時の課題であった、

 各国統計で、感染者数の数値は当てにならないという問題。つまり、死者の数は正確だったとしても、感染者数となると陽性だが無症状にとどまる人をどれだけ補足できているかが検査態勢で違いすぎる問題を克服できないか???

きょうは、新型コロナウイルス感染症についての続報として、を掘り下げると同時に、について、新型コロナウイルスが中国以外で騒がれ始めた2月、対応の悪さについて欧米諸国から批判されたクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」の統計もあわせて検討してみます。


この数表は、本日2020323日現在の、主な国々の感染者数、死者数に、参考目的で人口を加えたものです。さらに参考として、イタリアにはサンマリノ共和国ロンバルディア州を、米国にはューヨーク州を加えました(出典:日本経済新聞社、Wikipedia、国立感染症研究所など)。

フィルターの掛け方で様々な示唆が出てきます。初期状態としては、死者の数を感染者の数で割った数値で悪い順に並べています。

さすがにまだフェイクニュースにすらなっていない《モンゴロイド大丈夫説》の観点からは、非常にざっくりと、モンゴロイドの比率が高そうな東アジア~東南アジア(インド周辺と島しょ部を除く)と南米の一部について黄色でハイライトしています。良い加減で楽観にもほどがある仮説を棄却するほどではないものの、結論付けられるにはほど遠い状態であると言えます。

むしろ警戒すべき要因として《ソーシャル・ディスタンス》との関係で人口密度と都市化率を取り上げたいところです。

イタリア就中ミラノを州都とするロンバルディア州の医療崩壊が話題となっています。ニューヨークやロンドンの首長たちが言う通り、医療崩壊の閾値の問題は深刻です。トーマス・ロバート・マルサスの「食糧は算術級数的にしか増えないが人口は幾何級数的に増える」を捩れば、「ワクチン未開発の感染症患者と死者は幾何級数的に増えるが医療機関は算術級数的にすら増えない」という現実があるからです。

そのうえで、行政区分(厳密には国家)で行くと、サンマリノ共和国のほうがロンバルディア州よりも数値が悪いのです。注目されていない事実の背景として、医療環境に加えて、人口密度要因が考えられそうです。

米国はおろか、日本であろうと、行政単位が大きすぎると人口密度だけではこの問題には太刀打ちできません。ここでは「都市化率」という概念が役に立ちます。日本だけを見れば、時系列で、人口が増えていないなかでも、中山間地などの過疎化と東京など都市部への集中は同時に進んでいるところ、その都市部の全人口に占める割合が「都市化率」と言われるものです。日本の都市化率は世界と比べてどうでしょうか???

出典は、日本銀行ワーキングペーパーシリーズ「我が国の「都市化率」に関する事実整理と考察」20097月)という古い論文です。

都市化過疎化の問題は人口集中の問題と必ずしも同義ではありません。市町村単位の集中過疎、都道府県単位の集中過疎、そして地方中核都市と大都市、大都市間の人口の奪い合い(東京VSその他など)など、階層的でフラクタルな問題です。そこを思いっきり捨象すると、日本の都市化率は、G7の中では低いのです。東海道新幹線に乗って、東京または新大阪から何十分経っても、車窓から地平線まで田園風景にはお目にかかれません。必ず民家集落が視野のどこかにあります。G7の他の国ではこんなことはありえない、というくらい、日本と比べて都市化が進んでいる。。。これがグラフが意味するイメージです。

経済効率から言えば、集中のメリットのほうが集中のデメリットより大きいと考えられてきました。

が、パンデミック(や戦況次第で戦争)となると形勢が逆転します。「東京は人口も集中しているが病院も集中している。お茶の水の近くに住めばどの病院に行くか迷うくらいだ」なんてのは平時の話です。

ほんの一か月前には、「東京でオリンピックができないならロンドンが代わりにやってあげる」みたいな侮辱をうけていたわけで、黄色人種として反撃したい気持ちもありますが、ここは謙虚に、東京は、ミラノやマドリッドやロンドンを笑えないことを自戒する必要はあります。

京都大学山中伸弥教授の個人サイト

そのうえで、モンゴロイド(全員ではない)が農耕文明のなかで敢えて取り入れた酒に弱い遺伝子、つまりアセトアルデヒドを分解できない体質がある種の除菌には作用するというところが、上記数表の傾向と関係しているかも知れないなどなど、研究を進めていきたいところです。

前回の繰り返しながら、フェイクニュースに紛らわされないことが最重要です。現時点で、最もフェアでアンバイアスな情報整理がなされていると思われるもののひとつとして、京都大学山中伸弥教授が個人で運営されているサイトがおすすめです。「論文から見る新型コロナウイルス」というページに、

「武漢の3つの病院に入院した204名の解析。99人(48.5%)の種所(原文ママ)は消化器症状であった。消化器症状としては食欲不振83名、下痢29名、嘔吐8名、腹痛4名であった。7名は消化器症状のみで、呼吸器症状はなかった。消化器症状を示す患者は重症化する傾向にあった。」

という記載があります。読者の皆様のまわりにも、こういう傾向があったが病院に行かずに自然治癒したという方々もいらっしゃったりはしないでしょうか。さらには、前回ブログの繰り返しですが、検査していないため実は陽性だが症状はまったく出ないという人が少なくありません(それでも濃厚接触の度合いによっては人に感染させる能力を持つ)

山中教授によれば、「年齢にかかわらず感染者の約半分が無症状」ということで、この貴重な研究結果は、クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号に関わった大勢の皆さんの犠牲のもとに得られたものです。

もう一度数表に戻ると、クルーズ船は検査が悉皆的であったため無症状陽性の感染者が全員カウントでき、これに近いのはだいぶ離れて韓国ということになります。クルーズ船での致死率が約1%、日本と中国の致死率が約4%ということは、「未検査陽性無症状」の人は「症状あり」の人()と同数程度というのでは計算が合いません。無症状陽性の人が同数以上いるか、軽い症状だからとかさすがに新型コロナウイルス感染症ではないと高を括って自然治癒を果たした人、さらには前回ブログで例示した病院にかかったが新型コロナウイルス感染症とは診断されず風邪薬と胃薬を処方されて回復したひとの合計が統計上の感染者数の1~2倍ほど潜在していることになりはしないでしょうか???

通院または入院実績あり、診断結果陽性、含む回復済み・死亡

日本の人口の三分の一を死に追いやった天然痘ー温故知新

ワクチンが手に入らないパンデミックが人口のどれだけを死に追いやるのか有史以来の情報をまとめたサイトがウィキペディアにあるのでご紹介します。

List of epidemic 日本語訳サイトなし
感染症の歴史 英語サイトなし

今回巷間でよく比較対象としてあげられる第一次世界大戦末期のスペイン風邪や、12世紀の中世ヨーロッパを襲った黒死病よりも、天平年間の日本を襲った天然痘735-737のほうがより壊滅的だったという驚きの事実があります。高校で日本史を選択して日本史で受験もしたという大学の同級生も、本件知らなかったとのこと。

では世界史はどうかというと、ローマ帝国の五賢帝の最後を飾るマルクス・アウレリウス・アントニヌス在位中に中近東出兵によりもたらされた天然痘(諸説あり、日本語サイトなし)で、直後のローマ帝国は、民間、兵士をあわせて、500万人もの人口を減らしてしまうこととなった。ローマ帝国の人口統計は、税金目的のおかげ(上記の奈良時代も同様)で、ある意味しっかりはしているのですが、身分別、属州別のデータは取りづらく、これが当時のローマ市民の何割なのか、属州を含めた帝国全体の何割なのかははっきりしません。しかしながら、教科書で書かれている五賢帝以降の愚帝が続いたことや、ゲルマン民族の大移動と比べても、このパンデミックは政権の流動化や帝国東西分裂(諸説あり)、キリスト教の取り込み(取り込まれ)などに与えた要因としてもっと注目されるべきでしょう。

そして、マルクス・アウレリウス・アントニヌスの使節が、当時の中国すなわち後漢の皇帝に謁見したのはほぼ事実で(中国の史書に安敦と記載)、この一連の動きのなかでだれがだれとどのように濃厚接触したかはわかるよしもないですが、その後後漢は間断なく天然痘禍になやまされたそうです。天平年間に日本に天然痘を持ち込んだのは南蛮船説と遣唐使説があります。(後)漢と唐とでは時間に開きがあるものの、この東西交流と関係がないかどうかはわかりません。

国民の三分の一も殲滅する天平年間の天然痘禍を凌ぐのは、16紀メキシコのサルモネラ禍(全人口の8割!)くらいしかないのです(出典ウィキペディア、日本語訳サイトなし)が、これはスペインによる侵略と、500年に一度という規模の旱魃が重なったせいでもあると指摘されています。

ウイルス感染は、ワクチン未開発状態では、人類は、記録にあるだけでも、流行地域の何割もの人口を調整してしまう能力があることを思い起こさせる温故知新でした。


2020年3月10日火曜日

新型コロナウィルス感染症

トイレットペーパーだけでないフェイクニュース
わたくしどもアヴァトレードグループのイスラエルのオンラインマーケティングチームの俊英は、ヘブライ語がいささか苦手なイギリス人です。彼が、昨年日本に来たときに、夜中近所の焼肉屋で熱弁していたことが、ソーシャルメディアがどれだけ人類社会に悪い影響を与えているか、でした。

主要なソーシャルメディアはユダヤ人の創業によるものですが、イスラエル居住者であるわたくしの同僚の多くは、アメリカのビッグビジネスで成功したユダヤ人のことを悪く言うことが驚くほど多いです。会うたびに毎回その話になると言っても過言ではありません。

極端な例が、ユダヤ人であるマーク・ザッカーバーグ創業のフェイスブックが、決して創業者の思想信条ということではないにしろ、ただただ経済的成功のために、米国や欧州での反ユダヤ主義運動の再燃の温床になっている事実とそのメカニズムについて彼は力説をしていました。これは見方によっては、イエス・キリストやカール・マルクスやアドルフ・ヒトラーが思想信条として同胞の逆側の立場に立ったことよりも深刻です。


世に知られているソーシャルメディアの弊害は、2016年後半に絶頂を迎えます。米国でのトランプ政権の成立と、英国のEU離脱を問うた国民投票。両者へのロシア関与の疑惑についてはいまだに100%の証拠はないものの、フェイスブックなどの手助けは明らかとされています。グローバリズムに疲れ切った先進国の中間層にとって、反ユダヤ主義に加え、移民排斥や民族主義、保護貿易などを糾合するポピュリズムは、揮発性燃料として蔓延し充満した。この見立てによる金儲けこそがソーシャルメディアです。切手代の要らない郵便局、入場無料の公園よろしく、まるで公共財のようなその存在は、しばしば目を疑う不快な広告さえ無視すればこんな便利な道具はないと考えてしまいます。ビッグデータを掠め取り分析する、そしてターゲット広告を流す、そのような人工知能神話だけでごまかされたビジネスモデルでは、この規模の経済的成功は説明できません。

このような巨悪の温床となっているソーシャルメディアにおいて、
「トイレットペーパーはマスクと原料が一緒だから」
というフェイクニュースは、むしろかわいい部類です。もっともらしいフェイクニュースは、パニックやバブルを形成します。ジョン・メイナード・ケインズが美人投票や貯蓄のパラドックスで説いた経済恐慌の分析も、また立場は異なるものの、ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス、フリードリヒ・ハイエクなどの切り口は、今で言う行動経済学的な慧眼と言えます。この人類社会の愚かさは繰り返し捉えられているものの、決して撲滅はできないのです。

一帯一路と一蓮托生
ここまでが、恒例、長すぎる前置き、フェイクブックもといフェイクニュースの巻、でした。

これらのエピソードは新型コロナウィルスにあてはまるでしょうか?

感染者や死者の統計が正しいのか?中国の発表を信用して良いのか?

WHO(世界保健機構)の声明は最新の医学生理学の分析結果を反映しているのか?あてにならない大本営発表なのか?

これらのありきたりの命題を論ずるには、ここのブログはあまりにへそ曲がりです。

まず、感染者と死者の統計を各国横断面で比較することの無意味さについて、です。こんなブログにまで目を通してくださっている賢明な読者の皆様はもうお気づきのことと思います。

前提として、新型コロナウィルスの根源は、中国湖北省武漢のじめじめした市場で食用として取引されたこうもりであるという通説に立つことにします。武漢の細菌研究所から故意または過失によって漏れ出た細菌(テロ)説や、イタリア北部とイランも武漢同様の「震源地」であるといううわさは一旦措きます。

そうすると、イタリア北部とイランの感染拡大のペースと規模は異常値だとなり、その説明として巷間言われているのは、

① イタリアとイランは、中国の一帯一路構想に組み込まれているから?
② イタリアとイランは、大気汚染が深刻から?武漢はエピセンターであるだけでなく大気汚染も感染拡大に一役買ったと言われている?
③ 生活習慣が不衛生だから?食事の前に手を洗わない。便所の後に手を洗わない。挨拶におけるハグの習慣など。

このうち、①は、確かにイタリアがG7のなかでは真っ先に一帯一路構想に参加合意した国であること。一帯一路構想の「一帯」つまり陸のシルクロードを具現化した「中欧班列」の根幹をなす中国ー英国ルートにとって、武漢はその最重要拠点駅であり、ミラノは終着点のひとつです。イランもまた敵対するサウジアラビアとともに「中立性」という謳い文句にほだされて一帯一路構想に参加、テヘランもまた鉄道網に組み込まれてはいます(上図には入っていません)。とは言え、一帯一路構想に参加している国は中央アジアにも東ヨーロッパにもいっぱいあって、このことだけでイタリアとイランの特殊性を説明するのは無理があります。

次に、②について。大気汚染(や煙草)と新型コロナウィルスの感染、発症、重症化の関係についてはかなり根拠のある研究があるようです。イタリアはモータースポーツが文化に根付いている国柄からハイブリッド車などが普及していないというのはあるかも知れませんし、ゆえに空気が汚いかも知れないのですが、これは他の欧州のほとんどの国も同様です。同じように、イランを大気汚染で区別するのも無理があります。

最後に、③は、清潔好きな日本人との対比では信憑性のある微笑ましい話ですが、上記②と同じように、イタリアとイランをほかの欧州諸国、中東諸国と区別させるに十分な要素ではありません。

くだらない俗説は枚挙に暇がない今日このごろです。上記①~③のなかで、敢えて殊更くだらない③について掘り下げてみましょう。

新型コロナウィルスは、その国際的な略称(Covid-19)にあるように、昨年すでに発生しているのですが、日本で大きく話題になったのは、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号がきっかけでした。その時点で、中国に次いで感染者?発症者?死者?が多い、危機管理のなっていない国という烙印をおされていたのが、あれよあれよと思ううちに、韓国に抜かれ、イタリア、イランに抜かれ、米国その他にも抜かれようとしているわけです。

この現象を、日本人の清潔さや危機意識の高さに帰すひともいるでしょうが、再び、賢明な当ブログの読者は、「群盲象を撫でる」で安易な真実めいたものに飛びつくことはないと思います。

トイレットペーパーだけでなくパニック症候群
現時点で知られている限られた事実に基づくしかないですが、それでもはっきり言えることは、

感染者数には、(1)検査を受検し陽性だったが発症はしていない「静かな保菌者」と、(2)発症して診断により陽性が確認された発症者(含む重症患者、死者)の両方が含まれるところ、(1)の受検率は各国でバラバラであるので、(1)と(2)の合算結果を横断面で比較する意味がもともとない。

為政者による故意か過失かはともかく、日本では(1)の受検率が少なくとも韓国に比べると著しく低いことが確かです。この点、イタリアとイラクで何故高い(らしい)のかはわかりません。為政者による云々と書きましたが、個人的には不要なパニックを避けるために、また臨床現場での不要な感染を避けるためには、このままで良い(※理由は後述)と考えます。

いっぽう、(2)について。臨床現場のもうひとつの事情、実は頼まれても検査が出来ないのだが、かと言って患者を不安のまま帰らせないということで、かなり典型的な新型コロナウィルスの症状で受診しても、新型コロナウィルスとは異なるが今流行の別の風邪だから安心しろとして、解熱剤と胃薬を処方されておしまいというケースが多発しているものと思われます。これまた、低レベルの井戸端会議を公共の電波で垂れ流している地上波ワイドショー的には許されない事実かも知れないのですが、上記(1)と同様、同じ理由※でこのままで良いと考えます。

フェイクニュースの話に戻ると、おそらく最大級の嘘は、WHO以下の、「飛沫感染と接触感染」だけ説ではないかと推測します。つまり、空気感染もあること、その分、各国統計(とくに日本の数値)を大きく上回る感染者がいると推測されること、さらにその分、感染しても発症はしないサイレントキャリアの割合が公表されている統計よりもかなり高いこと。このあたりの分析が、パンデミックレベルでない典型的なインフルエンザとの比較でなされると有意義ですが、ニューヨーク・タイムズの一部の記事でやや触れられているくらいで、なかなか入手困難です。

現状ではざっくりしたことしかわかりませんが、通常のインフルエンザと比べると、感染未発症の人の割合は同様に高いが、重症化率、致死率については、もとより年齢差があるところ、新型コロナウィルスのほうが加齢要因による重症化が大きい、、、感じはします。

もう少し、なけなしの事実についてお話します。また非常に面白くも深刻な話だと思ったのが、同じくニューヨーク・タイムズが報じているところですが、今回のワクチンの量産化には少なくとも18ヶ月掛かると言われていますが、米国の大手の製薬会社は、過去のパンデミックでワクチンの開発を迫られた際のトラウマがあって、開発に乗り気ではないという話。感染症のワクチンの副作用や後遺症に関する訴訟リスクが、売上に比べると大きすぎてビジネスにならないと考えられるのだそうです。こうなると社会主義の一面も持つ中国に期待するしかないのかも知れません。

このような状況においては、日本の受検率の低さ、受診率の低さ、意図的誤診率の高さは、嘘も方便と言ったところかも知れません。ただしこれが真実ならば、新型コロナウィルス関連各国統計横断面比較の無意味さについて再度強調に値します。

対処療法についてはHIV薬などいろいろ情報が飛び交う中、ワクチンが上述のニューヨーク・タイムズ報道の通りだとすると、多くの識者が、封じ込め(containment)が最も有効と嘯く気持ちもわかります。いっぽう、個人的には、もはや世界中の空気中には普通感冒のアデノウィルスと同じように、新型コロナウィルスもうじゃうじゃいてもおかしくないと推測します。封じ込めは、経済活動への極端なブレーキになってしまっただけかも知れないとも考えられます。

「落ちてくるナイフを拾うな」
アヴァトレード・ジャパンのMT4では、ライセンス上、発注約定は出来ませんが、外国為替(の通貨ペア)のほか、株価指数や、国債、商品の代表的な店頭デリバティブのチャートが利用できます。ご覧の画像は、原油の日足です。昨日月曜日には、大きなギャップダウンを経て、2016年1月以来の安値1バレル=20ドル台を付けたのが確認できます。

新型コロナウィルスのパンデミック化による世界的な総需要の縮小、中国を事実上のハブとするサプライチェーンの寸断に、OPEC加盟国とロシアによる追加減産協議の決裂が泣きっ面に蜂となりました。

マクロでは減産合意こそが合理的な意思決定であるにもかかわらず、ミクロでは自らの売上を減らしたくないから、価格下落分を数量(≒シェア)で取り戻すという行動に出る。それが更なる価格下落をもたらすというネガティブ・フィードバックです。先述のジョン・メイナード・ケインズの貯蓄のパラドックスに象徴される合成の誤謬です。

※新型コロナウィルスの検査機会を増やすことも、事後的に受検や受診が不要だった非感染者、非発症者が、接触機会が増えたことで感染する、発症者を増やすということにつながり、医療機関へのストレスとなると、同様のネガティブ・フィードバックが発生します。これが「嘘も方便」を個人的に支持する理由でした。

では、1バレル=30ドル前後まで急落中の原油は値頃なのでしょうか?「落ちてくるナイフは拾うな」なのか?「人の行く裏に道あり花の山」なのか?

「三度目の正直」か「二度あることは三度ある」かわからないように、諺や格言は何の助けにもならないわけです。前段の新型コロナウィルスの群盲象を撫でるの巻は、世の中が悲観的過ぎていないか、楽観的過ぎていないか、どちらだろうかという問いについて、疫学的にはもしかすると前者かも知れないとの推察です。しかし、その悲観論に基づいて各国で封じ込め政策が連鎖しています。わたくしは中国バブルは何かはきっかけとなって崩壊すると考えてきましたが、予想してから何年も経つので予想は外れたも同然です。そしてそのきっかけもまた予想外です。個人的には中国経済は国営企業の乱脈経営とその不良債権の逃げ道としてのシャドーバンキングの破綻がきっかけでバブル崩壊と見立てていました。きっかけが間違っていようが、またサプライチェーンが復興したとしても、総需要は回復しないと見ます。

ホモサピエンス小史とインフェルノ
ユヴァル・ノア・ハラリの「ホモサピエンス小史」とダン・ブラウンの「インフェルノ」は、いま人類史上の先端で起こっている不幸に対して驚くほど啓示的、預言的です。

前者のメッセージの一部を自分なりに解釈すると、生態系と言うと、バランスのとれた食物連鎖のピラミッドのようなイメージがあるが、その頂点に立つ人類は部品として不要である(植物や菌類なくして動物は存在できないが逆は真でない。この動物のところを肉食動物や人類と置き換えることもできる)。人類がこのような他の生態系参加者にとって有害無益の存在になったきっかけは農業革命であり、温暖化の現況である産業革命やそれ以降の文明の有害性よりもより根源的である。農業革命をきっかけにした人類の地位向上は、それ以前の、例えばアンモナイト※だとか、恐竜だとかが大手を振るうようになったのとはスピード感がまったく異なったために、生態系に与えてしまった衝撃は甚大で他の生物の進化(突然変異の積み重ねによる緩やかな適応)のための猶予が与えられなかった。その悲惨さが、人類が各大陸に定住したと考えられる推定年代に集中する殺戮された巨大獣の化石からわかる等。です。

※アンモナイトには手はないですが・・・。

後者は、有名なダ・ヴィンチ・コードの続々編で、人口爆発に警鐘を促すカリスマが世界中の女性の一定割合を不妊にさせる空気感染する菌をばらまくという話で、物語は奇しくも北イタリアのフィレンツェから始まります。これは、ダンテ・アリギエーリの神曲(地獄篇)、中世の黒死病との関連で選ばれた舞台です。ダン・ブラウンはこのカリスマを巨悪のアンチヒーローだと単純に描いていないところが妙なのですが、いろいろ物議を醸してしまったようで、扱うトリックは非常に良くできているのに、ダ・ヴィンチ・コードほどの成功とは行かなかったようです。

限られた事実に基づく推測の域を出ない点、繰り返し強調しなければなりませんが、新型コロナウィルスそのものについては過度な悲観論には要注意であるものの、中国バブル崩壊のきっかけとしては十分過ぎたと考えられること。空気感染を覚悟しつつ、人類の宿痾について考えるきっかけにしたいです。


2020年1月8日水曜日

七草粥

七草粥

とかけまして、

大間のマグロ

とときます。そのこころは、

まず、芹(競り)から始まります。



謹んで初春のお慶びを申し上げます。

調子に乗って、もう一丁、七草粥

とかけまして、

女子レスリングのレジェンドたち

とときます。そのこころは、

胃腸に良し、だ!(伊調に吉田。)

ちょうど1週間前は、大晦日、紅白歌合戦の生本番の日でした。
この時点では、カルロス・ゴーン脱走の直後過ぎて、脱走手段の詳細がわかっていない状態でした。

大晦日の日の夕方、東海道新幹線の車内で創作した漫才が以下のものです。

紅白歌合戦

「今年も何とか無事にやって来られました」

「平和が一番ですからね。何と言っても」

「お隣の中国なんて、大変ですよ」

「ですよね。香港のデモとか、ウィグルの強制収容所とか」

「多分ですけど、インターネットのヤホーとか使えなんでしょ?」

「まぁ、ヤフーですけどね」

「中国に限らず、世界中で、戦争や内紛や暴動が、繰り返されているんですよ」

「シリアとかレバノンとかイエメンとかねー」

「レバノンは過去最悪の経済危機と政治腐敗ということで、
暴動が何ヶ月も続いていて、いま治安が最悪なんですね。
やはり日本からも人道支援が必要だということで、
中東派遣を閣議決定!!
我が国の先兵として、カルロスゴーン被告を派兵したんですよね」

「あのひと兵隊さんだったんですか?またまた変装がうまかったと聞いてますが、兵隊さんの格好だったとは知りませんでした」

「まぁ、真相はわからないわけですが、

この平和そうに見える日本でも、毎年のように内戦が繰り返されていることを皆さん知ってますか?」

「戦争なんかやってないでしょ?」

「紅白歌合戦って知ってますか?」

「確かに合戦って言うけど、川中島とか桶狭間とかじゃないからー。」

「別名、櫻井を見る会、とも呼ばれてますけどね。」

「呼ばれてないよ。まぁ、僕らは、ホンモノの桜を見る会にも呼ばれてないけどね。」

「どうして上沼恵美子さんとサンドイッチマンはゲスト審査員で呼ばれているのに、僕は呼ばれていないんだo(`ω´ )o」

「皆さんM-1と掛け持ちで」

「塙、動きます!!」

「ちょっと何言ってるかわからない、、、」

「で、今年のスローガンというのが、、、」

「なんか党大会とかプロ野球の春季キャンプみたいですけど。」

「N国党をぶっ壊せ、第70回NHK紅白歌合戦、というらしいですね」

「絶対違うでしょうけど、確か昔、裏番組で、紅白をぶっ飛ばせと言うので、視聴率争いやってましたよね。コント55号とか、ダウンタウンとか。日テレでしたっけ?」

「生放送で野球拳とかやって、素人の女性がいきなりおっぱいポロリとか、なかなか興奮しましたね。

それで、日テレには抗議の電話が殺到したらしいです。

その抗議活動の中心にいたのが、『日テレから国民を守る党』、略して、N国党だったんですよ」

「違うでしょ。確かに、略するとNHKでも日テレでもN国党になっちゃいますけど」

「それで、紅軍(こうぐん)の指揮官なんですけど、、、」

「それを言うなら、紅組(あかぐみ)の司会者でしょ?中国の人民解放軍じゃないですから」

「あなたと違って、組の者じゃないですからね、僕は」

「ひとを反社会的勢力みたいに言うな!」

「紅軍の指揮官はここのところずっと同じ人なんですね」

「余人を以って替え難いと言ったところですかね」

「習近平さんですね」

「だからそれは紅軍改め人民解放軍の指揮官だっちゅーの」

「対する白組(しろぐみ)ですけど、、、」

「そっちは組(くみ)で良いんだ?」

「えっと、誰だったかなぁ。ああ、思い出せない。」

「さっき、桜を見る会とか言ってたじゃないですか!」

「以前は5人組による『集団指導体制』だったんですよ」

「『集団指導体制』って、また難しいこと言うなぁ。。。」

「その5人組の名前も思い出せない。」

「マジですか」

「確か、日本の伝統的な米菓で、小粒でカリカリっとした食感で、ほんのり塩っぱくって、そのまま食べても美味しいけど、お茶漬けにして、少しふにゃふにゃにしたものもなかなか美味しい。。。」

「それは、あられ、でしょ。」

「いや、ちょっとまだよくわからないんですよ。」

「なにがわからないのよ。はっきりしているじゃないですか!?」

「それが、ぼくのおふくろが言うには、人生最後の食事もそのお茶漬けが良いって言うんです。」

「それだと、あられじゃないね。
最後の晩餐があられのお茶漬けだと、死んでも死に切れないかなー。
せめて鯛茶漬けかひつまぶしじゃないと。

てか、そもそもあられじゃなくて嵐でしょ」

「あー、それそれ。その5人組の集団指導体制から、櫻井翔くんが、おっぱい二つ抜け出したわけですね」

「頭一つだろうが。おっぱいバレーみたいに言うな。どうもありがとうございました」

どうもありがとうございました。
--

2019年1月28日月曜日

DupliTradeの使い方

世の中の技術進歩についていけないと嘆いていてはいけないのですが、

それにしても、ZOOMという道具、便利です。



無料枠もじゅうぶん活用できて、GAFA並に、ただより高いものはないという恐怖も感じるところですが、四の五の言わずに使い始めております。



以下は、1/25(金)収録分。一週間まえよりもかなり使い慣れてきました。



本日月曜日は、ファンダメンタルズ分析の曜日のところ、Youtubeにあげるのが適当かどうか迷いつつ、いまいまの問題意識を整理しますと。。。



①日本の貯蓄率の長期激減

土曜日の「池上彰のニュースそうだったのか!!」では、日本人は貯蓄好き、日本の貯蓄率は世界のトップレベルと思い込んでいたパネリスト(もちろん番組の演出でしょうが 笑)の予想を裏切る現実を暴露。

その主たる要因として高齢化があげられています。

ものごとの本質をあまり毀損することなくわかりやすさを追求する池上彰さんの真骨頂のあらわれですが、それでももうちょっと公平に分析している良いサイトを見つけました。

主要国の家計貯蓄率の推移

レーガノミックス時代の米国を、やれ双子の赤字だ、三つ子の赤字だと馬鹿にしていたバブル経済前夜の日本がかつてあったところ、いつのまにか日本がそんな状況に陥ってしまっているとも読めてしまいます。注意しなければならないところはいくつかあって、



(1)フローとストックを混同してはならない

日本経済全体で毎年の可処分所得以上に消費をしてしまっている(過去の貯蓄を食いつぶし(はじめ)ている)ことと、家計部門全体で他の部門(例えば海外とか国庫←ありえないですが 爆)から借金状態に陥っていることとは異なります。

2010年代の日本は年によっては前者。

1980年代の米国は年によらず後者。



(2)「だから高齢化(少子化)はゆゆしき問題だ」

子供の数を増やさないといけない。貯蓄まで失われてしまったら、世界に誇れる日本の資源は何一つなくなってしまう。。。という言論は果たして正しいでしょうか?(←池上彰の番組でそこまでの意見を引き出しているわけではありませんので念の為。)



(3)なぜここまでもドイツとの差がついたのか?

第二次世界大戦後の経済成長の奇跡と並び要された日本とドイツで、1990年以降の貯蓄率の推移を比較するのは、なかなかに悲しいものがあります。この現実をわたくしたちはどう整理すると良いでしょうか?



(4)貯蓄率と金利の関係???

そんなこんなで、週末は貯蓄率とその推移、各国比較などをテーマにネットサーフしておりました。リンクを貼らせてもらった本川裕(ほんかわゆたか)さんの記事以外は、客観性の点でも包括性の点でもどうかなと思うものばかりでした。特にそのなかで、近年の日本の貯蓄率低下の原因として高齢化以外に後押ししているものとして低金利、ゼロ金利があるという記事がありました。なるほどと思われてしまうかも知れませんが、金利が低いまたは無いから貯蓄しないというのであれば、需給によって金利が上がって、そこそこのところに貯蓄率も戻れば良いようなものです。



なんとなく、貯蓄率と金利水準と物価水準は深い関係があっても良さそうなものなのに、日本では、貯蓄を食いつぶし(はじめ)ながら、金利も物価も抑制できて(!?)いるというわけです。



そこで、インフレと言えば、添付のYoutubeでも最後にちょっと触れたベネズエラとジンバブエ(ほかにもトルコやアルゼンチンなどなど実は枚挙に暇がないのですが)について現状報告したいところです。



②ベネズエラ経済を混乱に陥れたマドゥーロ大統領の反対勢力を、米国および米国同盟国が支持

新しい冷戦の舞台が、米国大統領選やBREXITなどの情報(諜報)空間だけではなくなってきました。アラブの春の終着点としてのシリア、チェルノブイリ原発事故とならぶソ連凋落のきっかけであったアフガニスタンでは、イスラム過激派を巻き込み複雑化している戦闘状況でしたが、ここ中南米においては、旧冷戦さながらの外交対立がはっきりと見えてきてしまいました。



実は、冷戦後半の1970年代には、世界の人口の三分の一、国の数で四分の一が社会主義(陣営)という状態でした。西側はこれをドミノ現象と警戒し、東側はこれは現象ではなくマルクスの唯物史観どおりの歴史展開である(?)と絶賛していました。



しかし、この「社会主義」国のなかには、リビアやジンバブエやその後のベネズエラのように、軍人(将軍)による長期独裁政権が多く含まれておりました。それを言うなら、本家本元のソ連(スターリンやブレジネフ)、中国(毛沢東)も同類かも知れません。彼らは反米でまとまるために、「社会主義」を宗教的イデオロギーとして悪用したところが本質であり、労働者や農民を搾取するという点では、なまじ独占資本主義よりももっとひどいことをしていたのかも知れません。



先週末、「マドゥーロは大統領としてもはや承認しない」という動きが、中南米の多数を含む米国同盟国によってこれまたドミノ倒し的に出てきましたが、ウォール・ストリート・ジャーナル誌(かなり親米、親トランプ)によれば、これらによってもマドゥーロ(前?現?)大統領を現実的に引き下ろすのは難しいのだそうです。中南米の多くの国々がそうであるように、過去の政変において軍事組織が果たしていた役割が非常に大きく、昨年来、いろいろと謀反の動きや反逆の動きが出ていたにせよ、同国軍によるマドゥーロ大統領への支援体制は盤石なのだそうです。



③ジンバブエ

これは法定通貨とは何か、仮想通貨とは何か、そもそも通貨とは何かを考えるうえで見逃すことが出来ない現実を突きつけてくれています。ここもまた、

(1)反政府運動を軍隊が実力で弾圧している、とか、

(2)南アフリカ共和国に金融支援を要請したが断られた、とか、

(3)PayPalに似た「EcoCash」というジンバブエ生まれのスマホ決済の会社が様々な話題を振りまいているようである。

さすがに長くなってきましたので、ベネズエラとジンバブエは回をあらためたいと思います。

2019年1月11日金曜日

@VAチャンネルを開設!平成最後の新年のごあいさつ

読者の皆様、

寒中お見舞い申し上げます。平成最後の今年もどうかよろしくお願いいたします。

平成最後は皆様すでに聞き飽きたかもしれませんね。このブログは平成年間の最後三分の一をカバーしつつ、毎年、更新頻度が低くなっていると自戒しております。

そのせいで、米国金融については、歴代FRB総裁のグリーンスパン、バーナンキ、イエレン各氏のことは書き綴ってきたものの、現総裁のパウエル氏についてはひとことも説明できていませんでした。

相場について言えば、ここ二、三年は、大きな変動があろうとなかろうと、相場のことは相場に聞くしか無いという相場格言が圧倒的に正しくて、ファンダメンタルズ分析をしても詮方ない。テクニカル分析がすべてという思い込みや諦念がありました。

これは極端すぎる考え方だったと反省しています。昨年、途中までは主要通貨のボラティリティが低下するなか(とくにドル円、ポンドやユーロは爆弾を抱えたままです)、トルコリラ危機を始めとするエマージング通貨や、ビットコインなど仮想通貨は絶望的な相場下落を経験しました。仮想通貨やブロックチェーン技術の本質やそれらの虚実については、素人目線で(決して上から目線で素人目線という言い方をしているのではなく、わたくし自身がプロックチェーンを作れない素人なのです)、相場操縦に安易に帰すことなく真相を追求できたような気もしますが、同様の洞察はトルコリラや人民元やイギリスポンドなどにも働かせるべきものでした。

そこで、、、というのは強引ですが、、、昨年こっそりデビューされてもらったわがアヴァトレード・ジャパンのグループのDupliTradeという日本初の少数精鋭型シストレの「エヴァンジェリスト」というか「テレヴァンジェリスト」を自ら務めたほうが良いかなということで、、、ひそかにユーチューバーデビューを図らんとする所存です。

新年の計としては、DupliTradeのなかでもとくに成績の安定したもののご紹介が最終目的とはなりますが、ぶっちゃけ、目的を達成するだけでは物足りないところもあるので、目標として週に一度はそれらの手口だけでなくファンダメンタルズ分析もできればと思っています。

こちらはその新年一回目の初収録分です。昨年来のトルコ(リラ)問題については、米国との深刻な対立から一転してシリア内戦からの米兵撤退までという国際政治のダイナミズムもまた、米中貿易戦争と並行して、日本人として相場人としてしっかり腑に落ちるところまで理解しておきたいという気持ちで駄弁を弄しております。

毎年、年のはじめだけでも少なくともテレビ朝日の「朝まで生テレビ」を観ています。これら国際情勢だけでなく、少子化問題、沖縄問題(ひいては国防問題、対中国、ロシア、北朝鮮などなど)と、くどいですけど日本に平和に住んでいつづけられるかという観点だけでなく、貯蓄率やマクロ経済を通じてそれこそ為替相場や金利にも影響を与えるアジェンダを勢揃いさせてくれているからです。

しかしいちばん気になるのは、平成の30年間を振り返っても、これらのアジェンダのリストはほとんど変わっておらず、というかまったく未解決のまま変わっていないというところです。

もはやそれらを政治家の責任や高級公務員の責任になすりつけでも仕方がないレベルなのでしょう。で、どうしたら良いの?というのは実はないのです。その答えは、国防問題、とくに核や情報(諜報)能力、さらに派生してGAFAのような創業能力のあるなしにかかわる国防問題に帰すことになるのかも知れません。

実は、かつて、わたくしのブログの読者が急増したタイミングや記事がいくつかあるのですけれども、そのうちのひとつが、インフルエンサーとしての金子勝先生(本業は経済学だと理解しています)のブログ(?)への引用でした。

わたくしはかつては金子勝先生の古ぼけたリベラリズムに違和感を感じた時期がありましたが、今年元旦の朝まで生テレビで感じた氏の近年のインプット、国際感覚には、もはや過去のリベラリストのままではこの国を改造できないという信念を感じ取ることができました。もういちど録画を見返したい気持ちです。

キーワードはDARPA(米国防総省高等研究計画局)でした。

もうちょっと勉強を進めてまいりまして、充実したブロガー&ユーチューバを目指して参ります。

2018年9月21日金曜日

Zaif=テックビューロ、仮想通貨67億円分流出

Zaifハッキング問題については、まだまだ調査の余地があり予断は決して許されません。

しかしながら、被害金額の桁の違いを別にして、コインチェック事件とは異なる不自然さが気になってしかたがないという利害関係者や傍観者も大勢いらっしゃいます。

金融市場や資本市場に遠からず身を置く立場として、客観かつ公平に、何が起こっているのか、可能な限り調べておく必要はあります。



古今東西、企業の規模や公開非公開を問わず、様々な企業不正が起きています。

企業不正の多くは、経営者や大株主の強欲に起因するものかも知れませんが、そうでないものもあるとわたくしは勝手ながら思います。

多くの経営者にとっては、従業員をリストラしたり、新しいビジネスモデルを築くというのは簡単なことではありません。内外の環境のせいにすることが許されないなら、単に往生際の悪い無能な経営者と呼ばれるしかないですが、それはしばしば酷すぎるものです。

やむにやまれず、悪事に手を染めてしまうというインセンティブに惹かれる経営者は少なくないと思います。

フォルクスワーゲンのディーゼルエンジン試験データ不正なども、上記の前者の要因か後者の要因が、よくわかりません。両方かも知れません。


ところで、上場株式では、今もなお相場操縦やインサイダー取引に該当するかどうか微妙な事案も含めて仕手戦がさまざまな規模で繰り返されているとも聞きます。今回はコインチェックのときの投稿と異なり、ブロックチェーン技術におけるセキュリティの問題とは違う角度で考察をはじめてみたいと思いました。 くれぐれも、繰り返しますが、Zaif問題はまったく余談を許さず、本件はさらなる調査、場合によってはインタビューやヒアリングを行って分析すべきところ、まずは私的メモということで、整理をしていきます。


親子上場を認めている資本市場は世界中で日本だけともいわれるが、フィスコ>ネクスグループ>カイカ(旧 SJI)は親子孫上場
(ア)  ただし2018年は通年で(1-3月期から)ネクスグループ、カイカとも連結決算からは外されている(どうやって?)
(イ)  ついでに、フィスコ仮想通貨取引所も連結から外れている(なぜ?)
フィスコの財政状態からは50億円の金融支援の現実性
(ア)  営業キャッシュフローと現金同等物の推移

(イ)  のれん代と商標権(資産計上)依存

(ウ)  借入金依存(ただし新株予約権付社債の行方は?無事償還?転換(予約権行使)は残念ながらなされていないものの?)

http://www.fisco.co.jp/uploads/20150213_fisco_tanshin.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20160216_fisco_tanshin.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20170217_fisco_tanshin.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20180214_fisco_tanshin.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20180514_fisco_1Q.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20180814_fisco_2Q.pdf.pdf

2005.06に発生したフィスコによるカイカ(当時SJI)の買収は赤字会社の「負ののれん代計上」を狙ったものか?
(ア)  http://www.fisco.co.jp/uploads/20150630_sji_ir.pdf

(イ)  ほかにも同様の事例が?

テックビューロとの技術提携と資本提携はフィスコ仮想通貨取引所(当初はフィスココイン)設立当初からなされていた。
http://www.fisco.co.jp/uploads/20160112_fisco_pr.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20160316_fisco_ir.pdf (フィスココインはフィスコ本社に引っ越すまでのあいだ設立時の住所が岸和田市)
http://www.fisco.co.jp/uploads/20160509_sji_ir.pdf  (テックビューロの2015年度決算概要も出ている。2016~2018年途中までが最も興味深いがそこはわからない。ただしフィスコ仮想通貨取引所については下記5.)

絶好調のはずの仮想通貨セグメントは、2017年通年で、
(ア)  「8)仮想通貨・ブロックチェーン事業」フィスコ仮想通貨取引所が運営する仮想通貨取引所においては、
①     未だ取引手数料が実装されていないため、主にサンダーキャピタルなどの仮想通貨に対する自己勘定投資によって売上と収益を計上
②     仮想通貨・ブロックチェーン事業の売上高は900百万円、営業利益は750百万円
(イ)  一転、2018年にはいると、フィスコ仮想通貨取引所を「フィスコデジタルアセットグループ」という中間(?)持株会社に移行、フィスコから連結外しされる!!
http://www.fisco.co.jp/uploads/20180110_fisco_pr.pdf

仮想通貨評価損、仮想通貨売却損の計上により経常損失は997百万円(前年同期は経常損失368百万円)

関連IR
http://www.fisco.co.jp/uploads/20180413_fisco_ir.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20180514_fisco_ir2.pdf



このグループがやっていることはいわゆる「会社ごっこ」(M&A+会計操作)?
制度信用による信用売りが出来ないJASDAQ銘柄(赤字会社)を傘下に3社抱えることにより、相場操縦で煙のないところに火をおこしている?

ライザップも同様だとの報道が
https://facta.co.jp/article/201810026.html

このような疑問を解決することこそ、ハッキングされた仮想通貨たちのゆくえの大きなヒントになるのではというところです。

2018年8月15日水曜日

トルコリラは押し目買いのチャンスと言えるのか?

新興国通貨危機のたびに、売り込まれている通貨がその購買力平価に対して割安すぎるという議論が出てきます。

多忙と充電を言い訳にしてめっきり更新をサボっているブログでも、通貨危機ごとに、購買力平価説とそのもっともわかりやすいたとえであるビッグマック指数で「分析」と「予想」を行ってきました。

ブログを始めた2008年はリーマンショック前から割安だったオーストラリアドルやニュージーランドドル、そして何と言っても南アフリカランドは(主要国通貨を売ってでも)買うべし(?)と予想し、大外れして、笑いものになりました。

この経験も活かしつつ、英Economist誌のグラフィックインターフェイスの進化もあり、2014年と2016年のロシアルーブル危機では、軒並み割安になりがちな新興国通貨のなかでも、一人あたりGDPが比較的低いとは言えないロシアの通貨の「売り込まれ過ぎ状態」は数少ない事象だという指摘をさせてもらい、珍しく押し目買い推奨大当たりとなりました。

さて、では今回のトルコリラ危機はどうでしょうか?

購買力平価説は長期的にも成り立たないのか!?

笑福亭鶴瓶さんが出演している医薬品だったか医薬部外品だったかのテレビCMで、「膝が痛いから太るのか?太るから膝がいたくなるのか?」というのがありました。インフレと通貨安も同じような関係で、どちらもどちらの原因であり結果です。

実は、トルコは慢性的にインフレに悩まされていて、米ウォールストリート・ジャーナルのコラムニストの個人的統計によると、インフレ(年)率は年代毎の平均で1970年代= 22.4%、1980年代=49.6%、1990年代=76.7%、そして2000年代=22.3%だったとのことです。

完璧に客観的な物価統計というのは難しいものなので、ほんとうにこれが実態だったのかどうかは良くわかりません。それにしてもこんなものだったとしたら、これを知っていてトルコリラ建ての外国証券を買わされていた日本人リテイル投資家はたまったものではありません。

ここで、話の順番はめちゃくちゃですが、購買力平価説とは何だったかを、やはりビッグマック(照り焼きバーガーでは比較できないため)を例にとって簡単におさらいしておきますと、

”イスタンブールでビッグマックが10.75リラで買えるのなら、そしてUSDTRY=4.71(先月の話です 爆)なら、ビッグマックを2.28ドルで仕入れられることを意味するので、それをニューヨークに持ち込めば、現地相場(1ビッグマック=5.51ドル)との差額3.23ドルが無リスクで稼げる。このような裁定取引(アービトラージ)は差額がプラスマイナスゼロになるまで続くはずなので、いつかはイスタンブールのリラ建てビッグマック価格が値上がりするか、かつまたはニューヨークのドル建てビッグマック価格が値下がりするか、USDTRYが下落(トルコリラが対ドルで上昇)するかが起こるはずである。“

というものです。

ちなみに筆者は2週間前に仕事でイスラエルに行き、帰りの乗り継ぎ地イスタンブールで、空港内という特殊な場所ではありましたが、ハンバーガーを食べました。ドル建てユーロ建てリラ建て表示のあるレシートを持ち帰ったつもりが紛失してしまいましたが、ざっくり10ドル=50トルコリラくらいで、赤坂のバーガーキングよりも割高な感じでした。
もうおわかりのとおり、購買力平価は、自国物価と外国物価を所与(固定)とすると《ある程度》この二国間の為替相場の予想に役立つのですが、前提が固定ではないので、思ったほど役立たないのです。購買力平価だけをもちだして割安(すぎる)云々抜かしている大手金融機関系のアナリストの記事を見たら、そういう金融機関に投資信託や外国債券などを買わされて損をさせられていないかどうか振り返る必要があります。

さて、《ある程度》というところの注釈は、重要ですが後回しにして、ロシア危機後のルーブル反発のような可能性をトルコリラは秘めていないのかどうかについて触れます。

いよいよ時機良く出版してくれた英エコノミスト誌のビックマック指数です。

下のグラフに描かれている赤丸は割安通貨(Undervalued)、青丸は割高通貨(Overvalued)、米ドルが基軸になっています。計算によると、トルコリラは対米ドルの相場が58.5%も割安に放置されているということになります。


これを時系列で追ったのが下の折れ線グラフです。現時点(正確には直近ビッグマック指数発表の2018年7月)でトルコ(リラ)よりも更にひとつ割安国(通貨)にとどまっているロシア(ルーブル)に筆者がマウスオーバーすることでブルーグレイの折れ線グラフと対比して、トルコ(リラ)の割安割高推移をご覧いただくことができます。

トルコリラは2013年から割安度合いが深まっているが、それでも(いまでも)ロシアルーブルの最割安時期の割安度合いにまでは到達していない(良い線行っているが)ということがわかります。

しかし、これだけで、トルコリラの底入れは近いとは言えないのが、ひとつには既述の《パラメータは為替水準だけでなく、自国物価、他国物価と複数ある》および、次のグラフでご説明する上記《ある程度》という購買力平価説留保条件です。

為替相場だけでなく購買力平価にもサポレジがある!?

一人あたりGDPを考慮に入れてしまうと、景色が一変します。この理由はちょっとむずかしいですが、先程引用した筆者ブログを参考にしていただけると助かります。

英エコノミスト誌が、読者からの批判を取り入れて、購買力平価に、一人あたりGDP要因を勘案したもの「も」出すようになったのは、2011年からなので、こちらの時系列は、一人あたりGDPを勘案しない上記のグラフの半分の長さしかありません。注意して比較してみてください。

記事によると、トルコ共和国の一人あたりGDP(の小ささ)をも勘案すると、トルコリラの割安の酷さは緩和されて、さきほどの58.5%から30.7%となる。

そしてまたもしつこくロシアルーブルと比較してみたのですが、過去最も酷かったロシアルーブルの割安時点と比べると、トルコリラの割安はまだまだ底まで言っていないと見えます。

自国通貨の暴落と自国物価の上昇につられて、名目賃金も完全に比例するような状態であれば、この連立方程式体系は解が定まらないということになります。トルコの状況がどうなのか、数年前のロシアの状況がどうだったか、名目賃金がどの程度硬直的な労働市場なのか(実質賃金が可愛そうなくらい下がっているのかどうか)は正確な統計がまだ手に入っていません。察するにハイパーインフレや自国通貨の自由落下状態においては名目賃金はもはや硬直的ではいられないという一般的な傾向があると思います。それまでは名目賃金(自国通貨価値)は(レジスタンス)サポートされるが、いったん名目賃金変動の閾値を超えるとこのサポレジは破られてしまうということが言えます。

《ある程度》という購買力平価説留保条件とは、ペン効果とかバラッサ=サミュエルソン効果(仮説)とか言われるものです。さきほどのハンバーガーの裁定取引(アービトラージ)なんて、かさばるし、日持ちはしないし(防腐剤をどの程度使っているのか知りません)、実際問題運べないだろう。それに比べると、貴金属や高級時計やスマホなど小型軽量高性能電化製品だと、ビッグマックとは違う指数が出てくるよねという話です。

2018年1月28日日曜日

ビットコインも他人事ではない===コインチェック580億円不正送金事件

いまこの投稿をしている2018年1月28日日曜日12時過ぎの時点で、コインチェック社は、NEMの売買停止(金曜日午後12時過ぎ)から補償方針公表(土曜日23時)までの加重平均を用いて、日本円で、自己資金で、返金するとしています。

なぜこのような太っ腹な対応が、週末のたった2日弱のあいだに、また技術者とも思えないしどろもどろの記者会見の間に、意思決定できたのか?

ほんとうに不正に、すなわち仮想通貨交換所の側での(重)過失があったにせよ故意害意なく詐取されたものであるならば、それはそれで疑問です。

半年以上ぶりにブログを更新するのは、そこの真相究明が目的ではありません。

仮想通貨「通」を自称する人たちも呟き合っているSNS参加者の見立てでは、

今回の、マウントゴックス不正送金(?)事件を遥かに超える金額の、仮想通貨「交換所」スキャンダルは、


  1. さまざまな仮想通貨の種類が雨後の筍のように産まれている中で、NEM独特の脆弱性によるもの
    1. コールドウォレットの設定ができなかった=出典「コインチェック社謝罪記者会見
    2. コールドウォレットの設定が「できる」ビットコインなどほかの種類の仮想通貨なら大丈夫?
  2. さまざまな仮想通貨交換所が事業を行っている中で、コインチェック社独特の情報セキュリティ管理の杜撰さによるもの
    1. 改正資金決済法に基づく交換業登録を済ませている他の交換所は大丈夫?

ビットコインは安全。コインチェック社でなかったら安全。と言えるでしょうか?

仮想通貨FXをはじめ、交換業登録も目指すわたくしたちも他山の石としなければならない、論より証拠を。


金額の多寡が問題ではありません。もちろんわたくしは、コインチェック社が580億円相当も盗まれたということ以上に、580億円相当(マイナス値上がり分)も「集金」していたことのほうに実は驚いているのですが!!

(2)そして古いところでは、我が国のマウントゴックスの事件があります。ここでは仮想通貨交換所(注3)が倒産に追い込まれ社長が逮捕訴追されました。サイバー攻撃により不正に送金させられた(詐取された)という当時の社長の言い分が、いったんは聞き入れてもらえず、御白州に。しかし、裁判はまだ終わっていない中、昨年、マウントゴックスからビットコインを詐取した真犯人としてライバル交換所(?)BTC-eの社長が逮捕され、同取引所は米国で口座凍結業務停止処分となっています。

北朝鮮ハッカー集団が詐取した仮想通貨は、同国のミサイルに、BTC-e(所在地ブルガリア)が詐取したビットコインは、昨年の米国大統領選挙に絡み、敗北したヒラリー・クリントン陣営や民主党本部のメールのハッキングなどの資金に使われたという疑惑が出ています。BTC-eはブルガリアに本拠のある世界最古参の仮想通貨交換所ですが、逮捕された社長はロシア人です。ロシアゲートと仮想通貨は隣り合わせだったことになります。

(3)極め付きにもうひとつ。時期的には(1)と(2)の間で場所は日本。仮想通貨交換業登録済のかなり広告宣伝も打っている大手交換所でビットコインが詐取が複数発生していて、その被害総額はコインチェック社の今回の金額には及ばないものの、複数の裁判が継続中です。詐取した犯人が、第三者(外部のハッカー)なのか(?)、同交換所の内部者なのか(!?)、交換所自体なのか(!!??)、まだわかりません。3つの可能性のうちどれであってもそれぞれに事態は深刻であると言えます。

(注1)手口が米国ソニーエンターテインメント社に対するサイバー攻撃と同じであることから米国諜報当局が北朝鮮の仕業であると特定。北朝鮮はこれを否定。
(注2)これもNEMだったか、これはビットコインだったか、それ以外かはWSJの報道には載っていません。
(注3)この時点では本邦でも資金決済法による仮想通貨交換業登録制度はなかった。

ちょうど(1)の報道がWSJ紙でされた週の月曜日、こちらのブログでもしばしばご紹介している異端の経済学者(もともとは数学者)の塩沢由典先生の勉強会で、ビットコインに関するプレゼンテーションを行ったばかりでした。3時間の持ち時間のうち2時間は暗号理論と情報処理論に割きました。

2017年はビットコインをはじめとする仮想通貨(≒暗号通貨)が話題を総なめした一年となり、様々な解説本が出てきました。しかしこれらを複数読んでも、
うーん、わからないなぁ。
腑に落ちないなぁ。
俺って頭悪いのかなぁ。
理系じゃないと無理かなぁ。
・・・・・・
まぁ、背景はわからなくても、安く買って高く売ればそれで良いか???
などなどと自問自答された方がきっと何百万人もいらっしゃったのではないでしょうか???

心配にはおよびません。マイニング(=プルーフ・オブ・ワーク)、公開鍵暗号、ハッシュ関数、ノンス、、、などの核心部分において、ちゃんと理解してもらおうとして(それ以前に著者がちゃんと理解して)書かれているまともな本はほとんどないからです。

そのなかでこれは良かったという稀有な一冊をご紹介します。

「現代暗号入門」神永正博著(講談社ブルーバックス2017年10月20日)

さて、対象がビットコインであれ、NEMなどのその他仮想通貨(オルトコイン)であれ、仮想通貨交換所って何をやっているのでしょうか?

  1. 法定通貨で仮想通貨を買いたい人と、仮想通貨で法定通貨を買いたい人のマッチング
    1. ただし参加者はその交換所に「ウォレット(?)」という名の管理口座を開設している人(および自己勘定としての「交換所」自身)
    2. ライバル「交換所」や、マイナーなど仮想通貨ネットワークにノードを保有している世界中の人たちの売りニーズ買いニーズは反映されない。
    3. ビットコインの入出金の履歴には、ウォレットアドレスやトランザクションIDが記載されるいっぽう、取引所や販売所の取引履歴を見てもそれらは記載されていない(自分のウォレットアドレスでブロックチェーンを検索すると、入出金の履歴はヒットするが取引所や販売所の取引履歴は見つからない)。これぞ論より証拠。
  2. 他人に仮想通貨を送金したいときに、「交換所」に管理口座を開設している仮想通貨保有者(送金人)に《代行》して手続きを行う
    1. 上記(1)と、(2)の相手方(受取人)が同一「交換所」の管理口座保有者ならば、売買の決済(上記(1)の場合)および送金の決済((2)の場合)は瞬時に出来る。なぜなら、取引には公開鍵暗号が用いられずブロックチェーンに書き込まれないから(マイニングに要する「約10分」が不要)
    2. 送金の相手方(受取人)がライバル「交換所」の口座保有者だったり他の独立したノードである場合(注4)は、公開鍵暗号が用いられマイニングを経てブロックチェーンに書き込まれることになる。
    3. しかし、「交換所」はこの場合に、かかる「外部」送金を依頼する口座保有者から《代行》するために備えて、口座保有者から予め預かっていた公開鍵(アドレス)に対応する秘密鍵を「交換所」自らが使用する。
    4. さらに言えば、口座保有者は秘密鍵を「交換所」に預けているどころか「交換所」は秘密鍵(のコード)を口座保有者に明かしていない点がポイント


(注4)ビットコインはパブリックチェーンであるから誰でもノードになれる。その目的はマイニングや「交換所」経営に限らない。投資、送金をする+送金を受け取るなど、「交換所」に依存せず仮想通貨を売買したい送金したい、ネットワークを監視したい等。

きょうのブログの題名、「ビットコインも他人事ではない」のこころは、「交換所」と口座保有者の間では、「外部」送金も含めて、管理口座(≠本来のウォレット)のログイン情報(例:メアド+パスワード≠秘密鍵)だけを以って本人確認し、預かりっぱなしの秘密鍵を用いて、送金代行任務を完遂できてしまうという実態です。

これが、コインチェック社に限られた話ではない仮想通貨「交換所」や、下記の北朝鮮ハッカーによる韓国「交換所」に預けられていた仮想通貨の盗難が(足跡を残さずに)出来てしまうハッカー集団にとっての狙い目だと言えないでしょうか?

仮想通貨を原資産とする派生商品(いわゆる仮想通貨FX)を別とすると、仮想通貨を現物資産として取り扱う業務を行うには改正資金決済法の交換業登録が必要であるという法令規制制度を裏返すと、業登録ができると、取引所や販売所など(上記1.)だけでなく送金代行(上記2.)も出来てしまう、ということになります。果たして制度設計として、なんでも出来たほうが良いのかどうか疑問です。株式取引やFX取引のような利便性を仮想通貨に当て嵌めたいというビジネスニーズは、安全のためビットコインは保有者ひとりひとりがコールドウォレットで保管しましょうと呼びかけるモチベーションと相矛盾するのではないか。売買注文の《取次》が主な収益源だと思われる「交換所」が、主な収入源とは思えない送金《代行》のためにひとりひとり異なる秘密鍵を口座保有者にオフライン管理させあとは自己責任でという業務運営を進んでやる気になるでしょうか。これはもはや「交換業」ではなく、ノード作成代行業です。


2017年5月2日火曜日

今中哲二京都大学原子炉実験所助教の講演録ほか チェルノブイリ子ども基金&未来の福島子ども基金イベント

先週金曜日に、原子力発電所の事故として、31周年のチェルノブイリと、6周年の福島、これら被災地とその子供たちを支援する毎年恒例のイベントに今年も参加しました。


毎年、チェルノブイリ事故が発生した4月26日の周辺で毎年行われるこの「チェルノブイリ子ども基金」(加えて6年前からはその派生ファンドである「未来の福島子ども基金」)のイベント。強制避難か自主避難かにかかわらずその子供たちに対しての理不尽ないじめや差別がおそらくは実態のほんのわずかしか事件化していていないと想像される今日、思うところもあり、アヴァトレードジャパンとして、社格に似合わない(!?)金額の寄付をさせてもらったところです。


今年の目玉は、原子力発電の技術者研究者の立場でありながら、米スリーマイル島原発事故以来、原発の「非現実性」について、原子力村の権力者たちを恐れず警告を続けてこられ、福島第一原発の事故以降は舌鋒さらに鋭くされてきた今中哲二京都大学原子炉実験所助教(ただし今年3月で定年退官。その後も同実験所で研究員として勤務継続と自己紹介されていました)の講演でした。


チェルノブイリ周辺の放射能汚染の地図に見慣れている小職にとっては、汚染の深刻さが事故現場から綺麗に同心円で広がっていくわけではなく、事故当時からの風向きや風速、いつどこで雨や雪が降ったかなどで、極端にその同心円が崩れることを理解していたつもりでした。


しかし、これを福島第一原発の事故に置き換えた時に、南東北、北関東、南関東の各地の宿命も同じように偶然に左右されていただけであったという、特に東京の住民にとっては恐ろしい含意を含んでいることが今中先生の講演で指摘されていました。


具体的には、事故現場から北西方向にあたる飯館村方向に風が流れていた時間帯は雨や雪が降っていた、南西方向にあたる東京に風が流れていた時間帯はたまたまそうでなかったので、放射能の隗は東京上空を通過して太平洋へと流れた、ということです。


今村雅弘「前」復興大臣の「まだ東北で、あっちの方だったから良かった」というのは、政治家としてホンネとタテマエを使い分けるべきところを(身内のパーティーでの講演だったということで)油断しただけであり、ホンネとしては一理あるのではないかと内心思っているひともきっと大勢いらっしゃるのではないかと敢えて申し上げます。「自分さえよければ」という意識が正直小職にもあるからこそ、「東京が飯館村と同じ運命にならなかったのはほんの偶然に過ぎない」という事実は頗る重く感じられます。


ご存じの通り、東京電力が保有する原子力発電所は一基たりとも東京電力が電力供給するエリアにないわけです。今中先生が研究者駆け出しのころに柏崎刈羽を取材したときに地元住民が「東京電力のひとは安全だ安全だというけどそこまで安全だというのをなんでこんな田舎に作らなければいけないのか不思議だよね」と異口同音につぶやいていたという逸話を披露してくれました。


原発事故が単なる人災ということだけでなく確信犯みたいなところがあるという話です。


ただし、小職は、「チェルノブイリ子ども基金」「未来の福島子ども基金」で無償で活動しておられる皆さんと反原発ということで完全に同意しているわけではありません。


福島第一原発だけは、ほかの(東京電力管轄の)原発に比べて明らかに構造上の欠陥があることが従来から指摘されていて、コストの問題で放置されていた。同じ巨大地震で女川、福島第二が(停止はしたが)事故に至らず、そして別の巨大地震で柏崎刈羽が(火災は起きたが)同様の事故には至らなかった。また安全性という面で魅力があるはずの核融合技術が、もんじゅでの度重なるうっかりミスでとん挫するというのも、我が国にとって残念すぎる損失であることも指摘したくてたまりません。


いっぽう、先週こんなニュースもありました。BBCによると、先月22日は、イギリス全体で発電において石炭がまったく使われなくて済んだ一日になったということで、これは1880年代以降はじめてのことで、それだけ再生可能エネルギーの利用が進んでいるという話でした。


小職は、バイオマスが再生可能エネルギーで、石炭がそうではないという意味がいまひとつよくわからないのですが、一定期間におけるCO2を基準に考えるとこの二つは区別して良いということなのでしょうか?


同記事によれば、イギリスの再生可能エネルギー依存度は2015年においてすでに発電量の25%に至っているとのことです。片や日本は、こんな感じです。
新エネ等(3.2%)と一般水力(8.4%)を足しても11.6%にしかなりません。今中先生も、講演の締めくくりとしてこの棒グラフを使われ、個人的にはモノが足りるようになったと思われる1970年代後半(二度の石油ショックから経済が回復して)以降の電力需要は豊かさのバブルなのではないか?人口減少社会を迎える日本としては、原発再稼働などの欲望を捨てて分相応の生活に戻っても良いのではないかと語っておられました。


小職も消費社会という点においては同感です。輸出立国を支えるための製造業を支えるための質の高い電力供給ということにまで話が及ぶと少し違ってくるかも知れません。しかし、廃炉コストや安全コストまで勘案すると、原発再稼働が世界の工場復活の条件というのも絵空事だと思います。

あまりに外国為替相場と無関係な話が長くなりましたので、先ほどの棒グラフと同じ出典サイトに為になる折れ線グラフがありますのでご紹介します。
ふたつのグラフの出典はこちらのサイトです。

「1880年代以来の『石炭なしの日』」というBBCの記事はこちらです。

2017年4月4日火曜日

ドナルド・トランプと習近平の対決は単純な貿易摩擦ではない

以下はUSDCNY(米ドル/人民元)週足のローソク足です。




トランプ新大統領の経済運営については、
    レーガン大統領のそれを彷彿とさせるところはあるが、保護貿易とか公共投資など、共和党らしくない政策と、再軍備などやはり鷹派的なところを併せ持つハイブリッド型(俗に「はちゃめちゃ」「前代未聞」「未来予想不能」など)であること
    レーガン大統領との共通点を強調するならば、小さな政府を理想に掲げた割には、前代未聞の所得税減税と軍事費増大で同氏が忌み嫌ったケインズ政策を結果として実現してしまいそれが好況をもたらした。ドル高を旗印にしたレーガン大統領は、自民党政権と当時の大蔵省に媒介させることで、当時最大の貿易(赤字)相手であった日本の銀行や生損保に無理矢理米国債を押し売りした。ドル高はプラザ合意で外された梯子だった。
    レーガン大統領のドル高政策とプラザ合意という日本(=貿易黒字国=資本輸出国)梯子外しというシナリオは、現在のトランプ政権下においては、まったくは当てはまらない。なぜなら最大の貿易相手であり米国債購入者が中国へと変化しているから
    日本はペリー来航以来、戦争、原発、TPPと梯子を外されまくりだが、同じことは中国のような大国かつ核保有国には通用しないだろう。

いよいよ今週、トランプVS習会談となり、貿易摩擦、為替操作、北朝鮮指導で強硬な姿勢を取ると例によって呟いている状態です。

人民元。社会主義国らしく凝り固まっている時期と激しく上昇トレンド下降トレンドを繰り返す難解な通貨です。先程MT4のチャートで表した週足は、下記の1982年から(天安門事件前)の超長期チャートでいうと長方形で囲った部分に過ぎません。



それぞれの節目で何があったのか考えると何時間あっても飽きがきません。レーガン時代の貿易大国日本とトランプ時代の貿易大国中国では大違いです。核を持つ国連安保理常任理事国か核を持てない非常任理事国がやっとこさの国かということではありません。普通、常識的には、貿易不均衡は資本取引によってファイナンスされますが、日本の場合は、貿易黒字で溜め込んだ外貨準備で米国債を買わされていたわけです。

現在の中国は、一見似てますが、トランプが苦言を呈するように、貿易大国という地位を固めるために、為替操作を続けるために、敢えて米国債を買い込むというのは、最初のMT4のチャートの人民元高ドル安の谷底(2014年初頭)までの説明に過ぎず、そこからは貿易黒字は減りつつも季節要因以外では赤字になったりはしていないにもかかわらず、恐るべきペースで外貨準備高が減っているという日本ではかつて無かった人民元からの(言い換えれば国家または銀行システムからの)逃避が加速している。。。

繰り返すと、貿易黒字はペースダウンしつつも赤字に陥っているわけではない(下のグラフ)。



にもかかわらず、外貨準備高は異常な勢いで減少している(下のグラフ)。



何が言いたいのか?上海に住む友人によると、もともと「投資」が好きな中国人の間でもFXが未曾有の人気となっていて、みんな人民元が紙くずになるまえに逃げ出したい。アメリカも酷い国で米ドルも紙くず度合いは似たものかも知れないけど、直感的に人民元よりはましだと異口同音に語るそうです。もともと厳しかった外貨持ち出し制限や交換制限は更に厳しくなっていて、こういう規制強化があればあるほど余計心配になるという悪循環なのだそうです。

フロリダでどんな会話がなされるのでしょうか???北朝鮮問題は措くとして、トランプ氏が為替操作いい加減にしろと言われたら習近平氏は中国全土に人民元を投げ売りして米ドルを買い漁らないよう規制強化している、やるべきことはやっている、言われなくてもこっちは国家存亡の危機で大変なのだ、って言い訳をするでしょうか。

トランプ大統領の御用新聞になったと言われるウォール・ストリート・ジャーナルですら、ここのところ連日、中国の金融システムの腐食、資本逃避、外貨規制強化をテーマに報道が続けられています。




仮想通貨(暗号通貨)をやっている皆さんが不換紙幣(フィアットマネー)とこき下ろす点で、人民元も米ドルも日本円もすべて紙くずと言えば紙くずなのでしょうが、何となく紙くず度合いでは、人民元>米ドル>日本円という感じがしてなりません。再来する中国ショックに備えた売り方買い方がドル円をやるときも大事です。

2017年1月3日火曜日

トランプ=プーチン=習近平時代に安倍内閣は「真田丸」を築けるか?

2017年の年頭所感~2017年もアヴァトレード・ジャパンをよろしくお願い申し上げます

アヴァトレード・ジャパンでFX取引をされているユーザーの皆さまへ、謹んで初春のお慶びを申し上げます。

アヴァトレード・ジャパンがまったく無名だったことから、貴重な外資系ブローカーだということで応援してくださっていた、またユニークなFX会社だということで新しく加わってくださった投資家のみなさまやパートナーのみなさまのお陰で、じわじわと、成長を遂げることができた2016年でした。

2017年も、アヴァトレード・ジャパンならではのネットワークと独特の問題解決能力を研ぎ澄ませ、新旧パートナーさま方と連携し、裁量トレードのノウハウやアルゴリズムそして人工知能にまでおよぶ「武器」を、金融商品のなかでも最も苛烈な戦場である外国為替の舞台で切磋琢磨するアヴァトレード・ジャパンのユーザーさまにご提供していきたいと考えております。

6月24日の英国EU離脱「内定」、11月9日のドナルド・トランプ「選出」など、一日または瞬時でのドル円やポンド円などの変動率で見ると、リーマンショック級や東日本大震災級の事象が多発した異例の一年が明けました。

BREXITもトランプも、グローバリズムに対してNOを叫ぶポピュリズムの奔流を堰き止めるはずの防波堤が閾値を越えて決壊したという点に注目すべきです。




ポピュリズムと言えば、ナチスドイツを率いたヒトラーこそは20世紀最大のポピュリストだったことに異論を唱えるひとは少ないでしょう。これに対して、我が国のA級戦犯たちは、だれひとりとしてヒトラー級のポピュリストではなかったと言えます。

ウィキペディア東條英機によれば、同氏は「大戦中、戦後を通じて・・・日本の代表的な戦争指導者と見なされることが多く、第二次世界大戦時の日本を代表する人物とされている。一方で戦史家のA・J・P・テイラーは、大戦時の戦争指導者を扱った記述の中で、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、ソ連についてはそれぞれの指導者を挙げているものの、日本については「戦争指導者不明」としている・・・」とあります。

いっぽうで、ウィキペディア総力戦研究所によれば、当時の官僚、陸海軍、民間から内閣が抜擢した若手エリートを集めた同研究所が、「日本必敗」という結論どころか、あらすじまでも言い当てた研究結果をたった3ヶ月でまとめあげ、

「開戦後、緒戦の勝利は見込まれるが、その後の推移は長期戦必至であり、その負担に青国(日本)の国力は耐えられない。戦争終末期にはソ連の参戦もあり、敗北は避けられない。ゆえに戦争は不可能」

と東條英機に報告したにもかかわらず、東條英機はこれを無視、これすなわちハル・ノート(注)を無視し、その半年後に真珠湾攻撃に打ってでたわけです。

一昨日のテレビ朝日の「朝まで生テレビ」は、アヴァトレード・ジャパンの近所でよく見かける田原総一朗さんが、加齢のためか、いよいよ冷静な司会ぶりを発揮、安倍首相真珠湾訪問とその直後の現職防衛相による靖国参拝問題を切り口として、A級戦犯分祀問題(細野豪志氏)や政教分離問題(井上達夫氏)も織り交ぜつつ、陸軍やマスコミや民衆を巻き込む好戦ムードを押さえ込むだけの指導力や「独裁」力がときの東條英機あったとは思えない(小林よしのり氏)という意見も飛び出しました(注:前掲のウィキペディア版「ハル・ノート」によると東條英機はむしろ非戦側に立っていたとの指摘有り)。

トランプ勝利とEU離脱を投票したポピュリズムはこれほどまでにおそろしいものです。

周囲を強国に囲まれ、長いものに巻かれる以外に延命の道が無い国衆として、乱世を生き延びた真田昌幸、信繁(幸村)、真田昌幸(信之)たちの政治センスと軍事センスこそ、いまふたたび、ドナルド・トランプ、ウラジーミル・プーチン、習近平によってもたらされる世界秩序再構築のなかで日本に求められるものなのでしょう。

ウィキペディアついでで恐縮です。真珠湾攻撃陰謀説も検索をしていただかないとバランスを欠くと思うので、急ぎ付け加えます。「東條英機」「総力戦研究所」「真珠湾攻撃陰謀説」、、、これら三点セットを、アヴァトレード・ジャパンからのお年賀に代えさせていただいたいと思います。

それにしても、「総力戦研究所」という企画力、知力、予知能力、素晴らしいですね。今年は更に欧州でポピュリズムの奔流が勢いを増すのか?トランプ相場(トランポノミクス)はどうなるのか?いまこそ、日本完敗を予想した「総力戦研究所」の若き知的エースたちの力を借りたい気持ちです。

さきほどの朝まで生テレビのやりとりを振り返ると、細野氏は、自身が政治家であることから、ポピュリズムを制して、正しい政策を押し通すのが政治家の役目、汚れ役かも知れないが、というのを真珠湾の経緯を学べば学ぶほど意識する(正確な要約ではありません、あしからず)と述べていました。民進党にそれが出来るかどうかはわかりません。が、

ダークすぎる馬だったドナルド・トランプが、如何に巧みに、ポピュリズムを裏切るか。それはいつか。これが2017年の焦点であることは間違いありません。

さらには、レームダック期間の最後っ屁の如く、強制送還させられたロシア外交官の原因となっている米大統領選に関わるロシアのハッカー攻撃とトランプ陣営との癒着は本当なのかどうか。トランプとプーチンが癒着していたら、原油相場とロシアルーブル相場は堪ったものではありません。人工知能を使って、原油とルーブルを売り買いするのは当面見送るべきです。

最後に、トランプ相場のユニークなところは、少なくともこれまで、米株高と米金利高(米国債安)を両立させているところです。これはユーロ圏と日本のマイナス金利政策という薬がまったく効いていないことと対照的です。そしてユーロ圏で言えば、ドイツ銀行やモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行の経営危機も、越年の課題となってしまいました。

不良債権とか一時的な相場のショックで瀕死または即死をするのではなく、どちらかと言えば衰弱死、すなわちIT(情報技術)やFintech(金融技術)の進歩に経営体質が着いていけず、じわじわと襲ってきた構造危機であるという点では、東芝や日本のメガバンクも同様の構造問題を抱えていることに気づきます。

構造問題が顕在化する“すんで”のところで身を切る改革を率先垂範できる伝統的大組織の経営者がどれだけいるでしょうか。社員は家族と同じみたいな文化を育んできた新卒一括採用と終身雇用制を目の前にして、ほとんどの経営者は自分たちの不作為を棚に上げて東條英機の作為が無謀だったと批判できないのではないでしょうか?

個人的には安倍首相がその第一次政権のときに頓挫した労働ビックバン、いわゆる再チャレンジ可能な社会の実現を望みますが、一億総非正規雇用なんて、与野党こぞって潰しまくるのでしょう。

壊滅的な半導体大手や金融機関のビジネスモデルのあとにどのようなぺんぺん草を生やせられるかに日本経済の沈没を救う鍵があり、2017年はいよいよその答えを先送りに出来ない外部環境が整う年になるような気がしてなりません。

春先からの放談をお許し下さい。2017年もアヴァトレード・ジャパンをよろしくお願い申し上げます。

アヴァトレード・ジャパン株式会社
代表取締役社長
丹羽 広