日本のメディアが不思議なほど取り上げない史上空前規模の詐欺事件がウォール街で発覚。先週既に逮捕された元会長は、TIME誌によれば若い頃救命員として稼いだ僅かな貯金を元手に株の仲買人を始め、マーケットメーカーとしてウォール街を代表するファミリービジネスにまで伸し上がった。上場株式と異なり流動性の低い店頭株式の売買に一般投資家が参加してもらうためには、仲買人が値付け(つまり現在のFXのように業者がこの値段なら買います・売りますを提示すること)機能を背負うことが期待される。そのビジネスを成長させた功績によりナスダックの会長という名誉が与えられたと。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、逮捕された元ナスダック会長は、集めたファンドの運営会社の幹部社員達に「このスキームはネズミ講だった」と告白したと報じています。また、昨夜のNHKニュースをご覧になった方はご存知の通り、被害総額は4兆5000億円相当にのぼり、被害者の中には野村證券も含まれている(被害金額は未だ不明)とのことです。WSJ紙によれば、野村證券のほか、仏BNPパリバ、西バンコ・サンタンデール等、欧州の名だたる銀行が名前を連ねている他、米国の著名富豪も被害者リストとして明らかになっています。野村證券もBNPパリバも被害金額や被害に遭った経緯などの取材に対し固く口を閉ざしているとのこと。
サブプライムも詐欺だという人がいます。詐欺の定義は兎も角、金満社会が膨張している途中では詐欺ディールは深く潜行できるのですが、バブルが崩壊して信用収縮し始めると、潮が引くようにして汚いものが地上に現れてくるというのは、90年代の我が国においても枚挙に暇がありません。東京ニ信金事件や尾上縫事件もその例でしょう。後者は私が非常に近いところにいましたが、野村證券さんも同じく接近戦を戦いつつ偽装セレブに騙されなかった、その嗅覚は流石と思っていたのですが、今回は残念でした。
ヘッドラインニュースだけで早合点してはならないのが、元ナスダック会長の証券会社やファンドが設立当初からネズミ講だったわけではないということ。毀誉褒貶の激しい気まぐれな御仁だったらしい(TIME誌)けれど、最初はS&P500銘柄等大型株とそのストックオプションとで運用する年利10%程度を目標とする安定運用を志していたらしく、昨年当たりから運用不振と解約増に見舞われ、挽回を図るべく、配当が維持できていると偽装するために、新規顧客の資金が解約顧客の元本に回ってしまったというのが真相らしい、つまり4兆5000億円を丸々この元会長が私財にしたわけではないのでしょう。
これが本当だとすると、倒産が時間の問題であるFX会社が悪足掻きして区分管理されなければならないお客さまの資産に手をつけて運転資金に転用するという行為も、ネズミ講だということになります。
米国にも存在したネズミ講Ponzi Scheme。殆ど全ての金融サービスは意図するかせざるかは別としてネズミ講と背中合わせであることを現状信用収縮の真っ只中にいる我々は自戒しなければならないでしょう。FXだけではない、伝統的な銀行業だって、どんなに健全な銀行でも要求払い預金を全額引き出されたら取り付け騒ぎで倒産してしまう。庶民が預けた要求払い預金はすべて銀行の本支店の巨大金庫に眠りつつ利子を産んでいるわけではないのですから。
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