経済学を学ぶには数学が必要、と断言すると、一部のコテコテのマルクス経済学者に叩かれますが、高度な数学を使えるお利口さんにとっては経済学は朝飯前という、「逆」は、必ずしも成り立ちません。
政府紙幣や無利子国債の是非についての議論。高等数学が正論を導くとは言えません。万人を納得させる論理を積み重ねても、意見が分かれるのが経済学の面白いところでもあり難しいところ。尤も、数学にも不確定性原理(ゲーデル)というのがあります。経済学の場合は、日常の具体的なテーマですら十分に不確定なのです。
政府紙幣については先週十分叩きました。これは与謝野経財相も同意見。その与謝野氏もバッサリとは斬らない無利子国債。
まず一言、「七転び八起き」の意外な考えを申し上げれば、本来は同様にばら撒き政策に他ならない政府紙幣という政策に比べて、経済上の効果や国民の反応が判りにくいという特徴があり、目眩まし政策としてやってみる価値だけはあるのではないか。。。
30兆円にも上ると日銀が推計するタンス預金。信用創造サイクルから脱線したベースマネーを何とかしなければ経済が浮揚しないというのが政策意図。先月の日経CNBC生出演とオンラインセミナーで使った米国のベースマネーとマネーサプライのグラフ(出所:FRB)をご覧頂くと、リーマンショック後の米国は同様の病気に侵されていることが見てとれます。中央銀行が国債に限らず形振り構わず民間資産を買い上げ“お札”を市中に供給しても、家計は銀行を信用しない、加えて銀行は融資先を信用しないゆえに、マネーサプライが意外と伸びないという現象。難しい用語を使いますと、信用創造の乗数や通貨の流通速度は、政策当局が調節できないほど落ち込んだままになっているのです。
マネーサプライさえ増やせば良いという政策が正しいかどうかは、「“為替力”で資産を守れ」に譲ります。
仮に政策目標が正しいとすれば、タンス預金に照準をあわせて無利子国債を発行しようが、引き続き中央銀行に金融緩和策をやらせようが、差はない。問題は、中央銀行が民間のどんな資産を買うか?無利子国債の発行代金という新たな財源で政府がどんな資産を買うか(どのような公共投資をするか)?つまりは、採算性を重視しない事業主に、予算の使い道をどこまで任せられるのかということがより深刻だと考えられます。
最後に、30兆円のタンス預金が、ペイオフ解禁のせいか、断トツに高い我が国の相続税率のせいなのか、わかりませんが、無利子国債の発行が万が一決まれば、現金の還流だけでなく、預金の解約も進んで、預け渋り対策+貸し渋り対策としては効果が中和されてしまう可能性も指摘しておかざるを得ません。ただし、やってみないとわからない。ゆえに、目眩まし効果だけは認める、と書いたのであります。
ところで、今、イギリスでは家庭用金庫が空前のヒット商品になっているそうです。無利子国債は家庭用金庫産業をクラウド・アウトする可能性はあります。それと、無利子とは言っても、政策当局が発行量を調節することによって、家庭用金庫の購入費用程度のプレミアム発行(無利子どころかマイナス金利になる)にすることも出来るし、相続税の軽減策をケチれば、ディスカウント発行(事実上有利子になる)にすることも出来ます。
貧乏家系の「七転び八起き」としては、無利子国債が実は「泥船」であって、無利子国債を買った人の多くは、過去に相続税や贈与税だけでなく諸々の脱税を犯してきた可能性が低くないと推定し、税務署に現金の出所を調べさせ、様々な不正蓄財を一網打尽に暴くきっかけになるとすれば、モラルハザードのない公正な競争社会と財政再建を同時に実現できると考えますが、二世議員を中心とした我が国の世襲政治にこれを期待するのは絶対に無理でしょう。
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