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2011年9月29日木曜日

月刊FX攻略11月号、もうお買い求めになりましたか?

雑誌ですので1ヶ月程度前に書かせていただいた原稿ですが、今まさに焦点のユーロ問題について書いております。

立ち読み程度に・・・

ヨーロッパではギリシャに端を発した財政危機が桁違いに病巣の大きいイタリアとスペインに蔓延したことで、ユーロが導入以降最悪の危機に直面しました。一方、米国では、すったもんだの末、米国債の発行上限の問題を議会がクリアしたものの、その直後の米国債格下げ(スタンダード&プアーズ)で基軸通貨(?)ドルの存在感を取り戻し損ないました。金融市場が大混乱したなかで、日本は前人未到の円高のお盆を迎えています。

(中略)

ひとつはサブプライムを一例とする詐欺的手法でレバレッジされた不動産バブル、もうひとつはユーロという通貨統合によって期待された不動産バブルに過ぎず、その宴のあとの後始末の厄介さの本質は、日本の90年代、2000年代と変わらず、しかもどうやら欧米のほうが重症なのではないかということです。

(中略)

財政出動やらイカサマの銀行ストレステストなどで約3年誤魔化してきましたが、財政も破綻気味、金融機関も破綻気味となると、もうあとは本質に回帰するしかない、つまり「清貧の思想」を国民に要求する意外にないのです。これが受け入れられるかどうかは人生観、文化の違いが大きいでしょう。日本はいまのところ例外的な国家のひとつのようですが、多くの先進国や新興国では暴動がまだまだ多発する恐れがあるのです。」

是非書店等で手にとってご覧になってください。定期購読に値する月刊誌です。
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2010年6月25日金曜日

ジョージ・ソロスの思考実験

昨日付の英フィナンシャル・タイムズ紙にヘッジファンドの王様、ジョージ・ソロス氏が「ドイツは想定不能なこと(the unthinkable)を考察(reflect)しなければならない」という題名の論稿を載せています。

ゴールデンウィーク明けにブログ掲載したわたしの「思考実験」は、「ギリシャのユーロ離脱⇒ドラクマの復活があったとしたら・・・」でした。

http://phxs.blogspot.com/2010/05/blog-post.html

ソロス氏がドイツに強く奨める思考実験(thought experiment)は、「ドイツのユーロ離脱⇒マルクの復活」です。

この似て非なる現実離れした仮定から導かれるものは、明らかにマルクの高騰とユーロの暴落だから、ドイツは(現在ユーロ安を享受することで可能になっている)貿易黒字が枯渇し、マルク高によるデフレで雇用が悪貨し、おまけにユーロ安により国内銀行のバランスシートが更に悪化する。。。

(但し、悪いことばかりではなくて、ドイツの年金生活者は自国通貨高を享受してスペインで王様のような引退生活を送る動きなどを通じて、スペインの不動産不況が治癒されるという「経路」も紹介されています。円高デフレと闘って(結果円高バブルとその崩壊を帰結させた)80年代後半、当時の通産省がスペインやオーストラリアで老後生活を送ることを勧奨していたことを思い起こさせます)。

「現実離れした仮定」が、まさか現実のものとならないようにするためにも、ドイツがこのような思考実験することに意義があるのだというのがソロス氏の主張です。東西ドイツが統一できた(ドイツ周辺のヨーロッパ各国が支持した)のは、ひとえに、ヨーロッパ自体の統一であった(ヨーロッパの統一なくして、ドイツだけが統一化し強大化することはナチスドイツの反省からヨーロッパ全体のコンセンサスを得られない雰囲気があった)にもかかわらず、ユーロ危機(ギリシャ危機など)に際しては、他の有力国と比較しても、ドイツの非協力的態度が目立っていたことを受けての論稿になっています。

私の予想は、上掲のブログ

ユーロ、ギリシャ国債は押し目買いのチャンスなのか!?

の執筆時点から全く変わっておらず、(ドイツや)ギリシャなどの統一通貨離脱の動きは瀬戸際まで行くことはあっても、臨界点を超えて、ユーロ崩壊が現実化することはないという予想です。瀬戸際までは行く可能性がある理由は、ドイツ自体が実は既にソロス氏の言う思考実験を実施済みであると考えられ、自国の貿易戦略と金融戦略の最適化を狙って虎視眈眈とユーロの水準を調整しようとしており、その目的が達成されることが確実になれば、打算的なソブリンリスクの引受は屁の河童と考えている節があるからです。
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2010年5月31日月曜日

リーダーの賞味期限

みずほ、JAL、そして日本
このようなタイトルの論説が各種メディアを賑わすのもそう遠くない日かも知れない鳩山首相の周辺であります。勿論、このブログの趣旨は、鳩山首相の退陣を煽ることではありません。「“政権交代”があったにもかかわらず、、、」という言い方を敢えて控えましょう。“出身政党”は違うのに(元は同じ?)、安倍、福田、麻生、そして或る程度の確率で鳩山と、賞味期限が1年の内閣(総理大臣)が4回も続くかも知れないという《絶望的既視感》は、もはやリーダーひとりひとりの個性や、政党の組織や人材の問題など、特定の原因に帰することが出来ない段階にまで来てしまっております。

メガバンクで言えば、みずほグループ。事業会社で言えば、日本航空。これらの病理が経営者一人の力ではどうしても治癒も切除も出来ないのと同じように、この国の政権中枢もまた、そこ自身の問題だけでなく、選挙制度や国民の気質、そのどうしようもなく低い民度に迎合することでしか生き延びることが出来ないビジネスモデルを知っていて続ける大手マスコミの揚げ足取りと出る杭を悉く打つ戦略、これらのドロドロとした総竦み状態に陥っており、これを断ち切らなければ日本航空と同様に国家が墜落するという危機感と実行力を持つ人材は、そういう性格故に、たとえ政治家を志したとしても、なかなか首相の座までには至ることができない構造にあるわけです。

大統領制、または首相公選制、なら、、、否、少なくとも全国区かつまたは比例代表制を重視すれば、と単純に主張するものではありません。

絶大な支持率を誇っていた英国ブレア首相とポンド相場
拙書“為替力”で資産を守れ のなかでソフトブレーン創業者の宋文洲さんが「安倍さんも福田さんも1年で辞めても日本は大丈夫だ。と思われるから、平気で辞められるんだ。。。日本は世界でも稀な『鼓腹撃壌』を謳歌している住みやすい国だ」という趣旨の発言をしておられます。いつまでそんな天下泰平が保たれるかという問題はありますが、宋文洲さんとの対談の内容には一理あります。圧倒的かつ持続的な人気を背景とした強力な個性のリーダーが、一見眩(まばゆい)い政策を続けた結果、取り返しのつかない禍根を残すという話が、ここのところ私のブログでご紹介した舞台演劇「ザ・パワー・オブ・イエス」で描かれておりました(英国の「新」労働党政権下で進められた「歪んだ」市場原理主義と金融依存、、、それに、演劇の範囲外ですが、イラク戦争も無縁ではありません)。

議員内閣制の英国ですらそうです。トニー=ブレアとゴードン=ブラウンの組み合わせで「17年連続の経済成長を果たした」(上掲「ザ・パワー・オブ・イエス」)英国は、ピーク時のポンドが対円で250円にも達し、円貨換算でロンドンの地下鉄の初乗り運賃が1000円を超えるという、常識で考えれば何か変という状態から、現在為替は「半値」近くになっているのです。英国経済の実態は、南欧経済が他人事と言えない深刻な状況です。

まして、米国の大統領制を真似て、力強いリーダーシップを、と単純に唱えれば良いというものではありません。

鼓腹撃壌と古代ギリシャ
日本の民主主義は、その最も醜いところ、リーダーの支持率下落で御祭騒ぎをすることしか脳のない「衆愚」と大胆な政策が一切取れない「事勿れ主義」が竦み合っている状態であるが故に、致命的に間違った政策も実行されない・・・世界で何か激震が起こると必ず円高になることと無関係ではありません・・・日本円は政府がこれだけ借金をしていても、金利を生まない金(ゴールド)と同様、金融ショックでは最も好まれて買われる「通貨」の位置を確実にしています。

日本はこれから先も、没個性のリーダーを一年毎に更迭し続け、衆愚と事勿れ政治にどっぷり漬かって天下太平をエンジョイして行けるのかどうか?これが難しいところです。今話題のギリシャは、言わずと知れた古典古代に於ける民主主義の原点です。つまりそれは衆愚政治の原点でもあり、それゆえ共和制の崩壊と多民族による支配を経験したのち、近現代のヨーロッパ大陸の中でも、国家の独立と民主政治を勝ち取るまでに最もエネルギーを要した国のひとつに陥ったと言えます。この因果関係は些か強引ですか、現在の日本に住む我々が最も重視しなければならない教訓のひとつでしょう。
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2010年5月12日水曜日

もう一度観に行きます!!「ザ・パワー・オブ・イエス」@ザ・スズナリ(下北沢)

下北沢の小劇場初体験だった私にとって、批判精神に満ち溢れた燐光群の舞台演劇「ザ・パワー・オブ・イエス」は期待を上回る素晴らしいものでした。
http://www.alles.or.jp/~rinkogun/Next.html
http://www.alles.or.jp/~rinkogun/Next_files/Yes%20ura.pdf

なるほど、英国のナショナルシアター(収容人数800人以上)を半年以上も沸かせ続けた舞台だけのことはあります。

サブプライムローン問題やリーマンショックを扱った舞台演劇の日本語版の難しさは金融という「形の無いもの」を表現することの難しさだけではありませんでした。

我々日本に住んでいる以上は比較的馴染みのある(?)「米国発」の情報(グリーンスパン、ポールソン、ゴールドマンサックス・・・)に比べると、英国市場の登場人物(マーヴィン=キング、ゴードン=ブラウン、スコットランド王立銀行・・・)というのは多少耳に馴染みがある程度であって、彼らがどういう経緯で何が悪かったのかハッキリと思いだすのは難しいものです。

そこで勿論必須ではないのですが、参考になればと思い、七転び八起きブログで、過去にイギリス特有の事情について取り扱った記事を以下にまとめさせていただきます。
2009年3月17日火曜日「中国、外貨準備の運用で巨額損失」

2009年1月22日木曜日「ポンド危機、再び」

2008年10月7日火曜日「臨時ニュース【夕刊】」

2008年9月18日木曜日「♀♂性の起源♂♀」

NHKのドラマ「ハゲタカ」や「監査法人」のように、特定の悪徳企業(?)に関する情報を毎日シャワーのように浴びたあと具体的なイメージを想起させつつエンターテインさせる手法に比べると、脚本家、演出家、そして何と言っても役者さんたちの苦労は甚大です。しかし、単に島国ということだけが共通点ではないという意味で、イギリス事情を探求しつつ、敢えて直訳的に、直球勝負で輸入されたこの翻訳劇を、今の日本で鑑賞することは大変意義深いと思いました。
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2010年5月7日金曜日

ザ・パワー・オブ・イエス

平均寿命が3年乃至4年との説もあるインディーズ系オペラの主催者たちに翻弄されている(?)身分としては、設立30周年が間近という劇団「燐光群」の気骨に感銘を覚えます。その「燐光群」が来週5月10日(月)から東京・下北沢ザ・スズナリで(追って大阪~名古屋とロードショー)、先月まで英国National Theatreで好評を博していた演劇「ザ・パワー・オブ・イエス」を上演します。

http://www.alles.or.jp/~rinkogun/Next.html

劇団「燐光群」からのメッセージの一部を御紹介します。

「2008年9月、リーマン・ブラザーズ破綻から始まった未曾有の経済危機は、世界中に広がりました。日本でも企業倒産、失業者増加など、今なお私たちの生活に影響を及ぼしています。・・・アメリカの投機家ジョージソロス、元金融庁長官ハワード・ディビス等、劇作家デイヴィッド・ヘアーに直接取材を受けた金融界の大物たちが劇中人物として続々登場、「世界金融危機で何が起こったか」が語られます。またヘアーの助手としてナショナル・シアターに雇われた女子大生を通じて、英金融サービスの誕生と成長、崩壊の過程を辿ってゆきます。・・・ヘッジファンドの投資を熱狂的に支えた「ブラック・ショールズ方程式」についても知ることが出来ます。経済危機について視覚的、感覚的に捉えることを可能にした、ジャーナリズム演劇の新しい成果と言えるでしょう」

リーマンショックは良くも悪くも「七転び八起きブログ~為替力」の原点です。これをメインテーマに据えるという難しくも丁寧な作業を施した戯曲が、金融依存経済の治癒に手を拱くロンドンでロングランを成功させ、劇団「燐光群」の創設者であり演出家でもある坂手洋二さんの手により日本語上演されるのが、奇しくも、ギリシャショック、否、シティショックの直後の来週からというのも不思議な縁であると思われます。

私も来週、出張等の合間を縫って、下北沢まで観劇に赴くつもりです。感想は改めてブログにアップさせていただく所存です。

チケットのおもとめは、まず会員登録から。
https://www.e-get.jp/rinkogun/howto/rule.html

または、お電話にて、、、
燐光群/(有)グッドフェローズ 〒154-0022 世田谷区梅丘1-24-14 フリート梅丘202
TEL03-3426-6294 FAX03-3426-6594
rinkogun@alles.or.jp
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2010年5月6日木曜日

ユーロ、ギリシャ国債は押し目買いのチャンスなのか!?

昨日は、連休中唯一休暇を頂きまして、東京大学の本郷キャンパス内を散歩しました。久しぶりの三四郎池には、オタマジャクシは居らず、鴨と亀と鯉が我が物顔で群れ遊んでいました。「亀釣り」を楽しむ親子連れと、東大病院の患者さんたちや見舞いの方々に囲まれた長閑で平和な昼下がりでした。安田講堂も然り。70年安保やら全共闘から40年(以上)たった現在も聳えるその名建築は、さながらにして「兵どもが夢のあと」と言わんばかりの、初夏の陽気に包まれておりました。

さて、そこから無理矢理、普天間の話にもっていこうとしているのではないのです。安保闘争や米騒動のような草の根の実力行使、平たく言えば暴力に訴えた革命志向というのは、わが国においては随分と過去のものになった。という思いを、債務問題で全く落ち着きを見せないギリシャのゼネストを見て考えてしまうのです。

「日本にとっても他人事ではない」「ギリシャ(+ポルトガル+スペイン)の次は日本の番だ」などと、危機意識を煽る政治家が少なくありません。

その主張が正しいとしても、そういうことをおっしゃる政治家に限って、日銀がもっともっと国債を含めた民間市中の資産を買って金融緩和をすべきなのに、サボっているともおっしゃっているのが滑稽なのですが。

仮に、ギリシャの二の舞を日本が演ずることになるとして、IMFなどから、消費税率の急増や公務員給与の引き下げを求められたとして、ギリシャ同様のストライキや暴動が起こるでしょうか?

大衆の行動様式の違いは、国のリーダーの気質の違いと対をなしています。パパンドレウ首相は、同政権が進める財政緊縮措置が「国を救うために導入を決定したもの」とし、「これに代わるものは、破たんのみだ」と述べ、またパパコンスタンティヌ財務相は「多大な政治的代償を支払う用意がある。一歩も後退しない」と述べる(ロイター)など、暴動やそれによる人命犠牲に動じない態度は、鳩山首相に何も限った話ではなく、短命政権を繰り返す歴代首相の八方美人的な軸のぶれ方と対照的に映ります。

ギリシャの過去の政権の腐敗について詳しくない私たちから見ると、ゼネストに参加しているギリシャ国民は随分と往生際が悪いという風に見えます。ユーロ参加のメリット(デンマークがリーマンショック直後にユーロ非参加を後悔していたことを思い出させます)を享受しているのだから、その裏返しとしてのデメリット(通貨発行権【シニョリッジ】の放棄)も甘受しなければならない(ギリシャ国債をギリシャ中央銀行が買い切りオペしてマネタイズするわけにはいかない)ので、ギリシャの救済は、あたかも日本における夕張のような財政緊縮を停止条件とした(財政)金融支援という形を取るほかにないのであります。

場合分けをするならば、

①ゼネストが鎮圧されて、ギリシャ現政権の財政緊縮案が実行され、よってEU、そして9(日)総会の予定のIMFでの融資が決まる。

または
②鎮圧に失敗するなどして、財政緊縮案が破綻し、ユーロ建てギリシャ国債の借り換え【リファイナンス】が失敗⇒ギリシャがユーロ離脱(新ドラクマ導入!?)

となるか、、、

私個人は以下の理由で②の可能性は余り高くないと思っておりますし、その場合もテクニカル的には、ギリシャ国債のデフォルト宣言とユーロ離脱宣言がどういう順番になるかで現実随分変わってくるのですが、ここでは詳述を控えます(ちなみに、ギリシャのユーロ離脱自体は、ユーロ圏の毅然たる態度表明の現れであるので、本来はユーロの買い材料だということも忘れてはなりません)。

EU各国の首脳は、異口同音に、「ギリシャ危機という“山火事”の鎮火を怠ると、火の気のない筈の域内健全国(???)にまで火災が蔓延してしまうから」と、結束を呼び掛けています。しかし、彼らは義憤や同胞愛から本気でギリシャを助けようと発言を繰り返しているのでしょうか。米国やIMFの動きは措くとして、域内の意思決定の鍵を握るドイツでは、議会の承認に苦労しつつも「財政緊縮案の実行を停止条件としたギリシャへの金融支援」の批准に漕ぎ着けた状況です。この金融取引が如何に通常の市場取引よりも有利であるかを考えてみてください。「ユーロが120円を割れそうだ。そろそろ買い場だろうか?」とか「ギリシャ国債が暴落、続落し、利回りが13%を超えた。流石に破綻はないと読むならば、絶好の買い物だろうか?」という設問に対しては、当たるも八卦、当たらぬも八卦としか言いようがないのですが、ドイツが決定した停止条件付き融資というのは、ノーリスク、ハイリターンの取引です。私がもしドイツのリーダーであったならば、ギリシャ国内が大いに揉めて、最後に言いなりの条件で助けてやるという交渉をすれば、貿易黒字の使い道としては最高の運用となるし、また揉めている間のとばっちりとしてユーロ安がありますがこれも国内の輸出産業にとっては、生産拠点を国外に移転させなくても実質賃金を下げることが出来て競争力が増し、製造業の経営者が喜ぶので、一石二鳥なのです。寧ろ、ギリシャが債務不履行に陥り新ドラクマ導入となって美味しい金融取引を取り逃がすやら、国庫や民間金融機関で運用していたギリシャ国債が紙屑になることを嫌がるでしょう。ドイツ以外のユーロ圏の主要国も概ね同じような魂胆であると考えられます。

一言で言えば、現在のユーロ相場とギリシャ国債相場には巨大なインサイダーないし相場操縦が存在しているので、この情報の非対称性を打ち破って無防備に参加をするのは得策でないと思うのです。このような「取引を煽らない」発言は、FX会社の社長としては相応しくないのですが(爆笑)。「それでも相場に参加したいから、売りか買いかどちらか教えてほしい」と言われたら、前述の如く、当たるも八卦、当たらぬも八卦、なのですが、押し目買いの領域に来ているとは思います(対ドル、対円。但し、最下点ではないかも)。
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2010年2月26日金曜日

悪貨は良貨を駆逐する(第二回-前編)

またしてもゴールドマン=サックスか?
何しろ、今月は1月後半からのユーロ暴落を受け継いだ一ヶ月でありました。通貨ユーロの激震の震源地は、少なくとも今のところはギリシャです。
2009年12月17日「ギリシャの悲劇」
2009年12月18日「ギリシャの悲劇-その第二幕は?」
今、何やらゴールドマン=サックスの関与が調査され始めているデリバティブを通じたギリシャの「粉飾」疑惑に対して、統一通貨の矜持を示すべくモラルハザードの恐れの高い支援に後ろ向きなのが、統一通貨の産みの親とも言えるドイツの立場であり正論です。

驚嘆に値するギリシャの言い訳
しかし、物事はそう単純ではないというのが、一昨日ツイッターでも呟きました英フィナンシャルタイムズの報道内容です。

ギリシャの副首相が「ナチスドイツが大戦中に強奪したギリシャ中央銀行の金塊をまだ返してもらっていない」と。

ユーロ通貨導入の立役者である以前に、東西ドイツの通貨をも含む統合の立役者でもある、ヘルムート=コール首相(当時)は、政治信条としては、レーガノミクスやサッチャーリズムに近い保守主義であります。現在、日本をはじめ多くの国々で、規制緩和路線の保守主義は「市場原理主義」というレッテルを張られ、評判が頗る悪いようです。

しかし、通貨統一の大前提は、各主権国家の通貨発行権(シニョレッジ)の放棄であります。文系エリートの人気就職先である各国中央銀行(?)の機能放棄という犠牲を求めてまでして、自国通貨下落競争を根絶させ、自由競争のための公平な土俵を確保するという考え方。これは、「嘘ではない」金本位制が現代資本主義社会では非現実的になってしまった以上、ぎりぎり実行可能な次善策であり、正論なのであります。

EUが「多民族国家」であることを忘れてはならない
ワルシャワ機構が自壊する中で、コール首相(当時)の主張が、英サッチャーだけでなく、むしろより一層、社会党の仏ミッテランに受け入れられ、独仏の一枚岩が東西ドイツ統合と欧州統合のエンジン部分だったというのが、極々最近まで報じられてきた「現代西洋史」でした。

ですから、昨年9月にFT紙がスクープした英国の秘密文書は、とても意外な事実の暴露であったわけです。
2009年9月10日ベルリンの壁崩壊はヒトラーの再現より酷い

ドイツの首相(Chancellor)としては、かのオットー=ビスマルクに次ぐ在任期間を誇るヘルムート=コールの政治手腕が、ギリシャ危機(はたまたPIIGS危機)の今日こそ、問われているとも言えます。次回はいよいよ、当時の実勢をまったく無視した「1東独マルク=1西独マルク」という交換ルール(但し、東独国民1人あたり4000マルクまで、それを超える部分については実勢に近い2:1という交換比率が適用されていた)を、西ドイツ政府、西ドイツ中央銀行(ブンデスバンク)の猛反対を押し切って政治決断した考え方の根拠とその影響について書いてみようと思います。
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