2008年8月21日木曜日

引受責任とインサイダー

オバマ氏のリード殆ど無くなる―共和党マケイン候補に対して(8/21WSJ)
WSJ/NBCの最新調査。マケイン氏の反撃、クリントン夫人支援陣営取り込み失敗に加え、グルジア情勢がオバマ氏の足を引っ張っている。REUTER調査では逆転とも。

やはり米国人の多くはマッチョな指導者がお好きなんでしょうか?

なお、このWSJの速報記事にはファン・フレッド問題について言及がありません。新旧FRB理事(含むグリーンスパン前議長)が丁丁発止を繰り広げているなか、クリントン政権時代の財務長官だったサマーズ氏の見解は、以前CNBCでのインタビューを聞く限り、経済学者らしくない要領を得ないものでした。

●ファニーとフレディの危機、深まる(8/20FT)
新たな信用枠供与、資本注入の権限を握った米財務省。だが、ここに来て政府の介入=モラル・ハザードという批判を受け、ついに財務省報道官も事態を静観と態度変更を表明。両社の株価は今週初から35%前後下げている。

リーマンブラザースの50%増資-秘密の話し合いは物別れに終わっていた(8/20FT)
韓国と中国の投資家を相手に8月第一週に話し合われていたが、リーマン側が主張する条件(新株の株価)が高すぎたらしい。リーマン側はノーコメント。

リーマンと言えば、旧ライブドアのMSCB(転換価格下方修正条項付新株予約権付社債)800億円超の引受(資金使途はニッポン放送買収)とか、アスクレピオス詐欺(丸紅の偽保証書)に引っ掛かるとか、日本では椿事が続いていますが、リーマン勤務の方々に言い分を聞くとやはり「自分達は可愛いもの。BNPパリバのアーバン転換社債でスワップ裏取引の隠し技には度肝を抜かれた」ということでした。本件、今後は、裏取引の存在と内容について転換社債の発行⇒引受⇒払込と同時に適時開示するべきとして発行会社アーバンに指導しなかった(不作為犯)のか、適時開示をするなと指導した(作為犯)のか、が当局捜査の焦点になってくるでしょう。
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2008年8月20日水曜日

縄文時代の資本市場

月曜日のブログ白馬の騎士は誰なのか?に対してコメントを頂いた読者の方が、米国内にこんなサイトもあると指摘して頂き、わざわざ日本語訳を送って下さいました。大手マスコミからは全くと言って良い程聞こえて来ない論調ですので、長文ですが敢えて引用します。

(以下引用)
ブッシュ、チェイニー、ライスと議会に告ぐ「アメリカはロシアとグルジアから手を引け!新たな戦争反対、NATOはすぐ終わりにせよ」

アメリカ政府は、こんどはロシアに対して、新たな戦争の危険をもたらす新たな軍事行動でもって、脅迫し始めています。私たちはこれに深く関心を寄せています。

ブッシュ政権とアメリカの商業メディアはロシアに対する中傷活動に乗り出しました。しかしアフガニスタンとイラクの占領や、イランへの脅迫と同様、直面するロシアとの軍事対決もまた、ウソなのです。

商業メディアのほとんどが隠している真実は「グルジア大統領ミハイル・サーカシビリは南オセチアという小さな自治州に対し、アメリカとイスラエルによる装備と訓練を受けた彼の軍隊を展開し、市民を殺し、そこに駐留していたロシアの平和維持軍を攻撃した」ということです!そのあとで、ロシア軍が応戦したのです。

サーカシビリはアメリカ主導のイラク占領にグルジアの若者2000人を派遣した大統領で、アメリカは彼の軍隊に武器を支給しています。そして米特殊部隊、イスラエル軍事顧問、傭兵請負会社がグルジア軍を指揮しています。7月には、グルジア軍は米陸軍、米海兵隊と3週間の合同演習を行いました。私たちは、イラクやイラン同様、グルジアもまた、アメリカ石油会社の「獲物」 だということに、気づかねばなりません。グルジアは中央アジアの石油の、重要な中継地点なのです。

アメリカによるグルジアの武装とNATO加盟への圧力が、グルジア軍の南オセチア侵攻の背景にあること、そしてそれが新たな大きな戦争の脅威を創り出したことはたしかです。また、現在ワシントンは、ポーランドとチェコに、その国民の圧倒的反対に逆らってミサイル基地をおくことで、ロシアに脅威を与えています。
新しくNATOに加盟した国々による軍事同盟でロシアを包囲することは、地球全体の平和と安定にとって、最大の危機です。

例えば、以下を思い出してください。

○ ユーゴスラビア= 弱小国民を守るためというウソに基づくアメリカーNATO軍の介入と空爆が、多民族国家ユーゴスラビアを崩壊させ、バルカン諸国をアメリカと西欧列強に支配される小国の集合に変えた。

○ アフガニスタン= テロリストに対する警察行為だというウソに基づき、アメリカーNATO軍は、この国を荒廃と奴隷状態におきながら7年間の占領を推し進めてきた。

○ イラク= ここに来てようやく、大量破壊兵器というウソが明らかとなりアメリカの立場が弱くなったので、NATOのほとんどの国々は、イラクの酷い破壊と占領に加わることを拒否した。

プッシュがグルジアに平和を押し進めるなどということは、誰も信じれません。今や、この(戦争)拡大を止めるだけでなく、NATOを消滅させることで、NATOという戦争マシーンを止めるときが来ています。

グルジアの人びとが自らサーカシビリ勢力を非難する声明を発したことは、戦争に反対する世界中の人びとを勇気づけています。グルジア平和委員会は、こう述べています。「亡くなった数千の子ども、女性、高齢者たち、そして南オセチアとグルジアの住民たちという、この同胞殺しの全責任は、現大統領とその議会とグルジア政府にあります」 (8月11日)

原文は下記サイトから
http://www.iacenter.org/anti-war/handsoffcaucasus
(引用終了)

決して筆者がロシア寄りだから上記引用をしたわけではないことは読者の皆さまにはご理解いただいていると思います。大切なことは、通説という名の“勝てば官軍”歴史観を疑えということ、ナチスのホロコーストや旧日本軍の南京大虐殺のように誰が見ても「悪いのはお前だ」という事案でさえ、軍事裁判で断罪されてはならず、せめて国選弁護人は付けてあげなきゃいけないということです。

●不信を招いた破綻前の起債(8/20日経社説)
アーバン⇔BNPパリバの裏取引付き転換社債。音無しの構えを続けてきた日経新聞が何と社説で牙を剥く。

●ATL社長に呉氏が昇格(8/20日経12頁)
日本アジアホールディングスが筆頭株主であるATLが株式交換で同社の完全親会社に。同社は完全子会社の
社名に変更し、子会社の呉社長が社長に。

念願だった裏口上場が遂に実現。おめでとうございました。
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2008年8月19日火曜日

猿も木から落ちる⇔猿蟹ばなし

筆者がコラムを連載させてもらっている月刊FX攻略。その第3号(9月号)の発売が明後日21(木)に迫りました。全国有名書店で発売予定ですので是非お買い求め下さい。

9月号の筆者コラム「築城3年、落城3日-FXのキャリートレード」の極一部をご紹介しますと、、、

(前略)
FXのキャリートレードは次の理屈で「築城」されるバブルだ。つまり、

①インフレ指標の悪化⇒②政策金利の引き上げ⇒③高金利目当ての資金流入による通貨の上昇⇒④投資過熱による更なるインフレ悪化⇒②に戻る

この循環が起こっているのが現在のユーロ圏であり、しばらく前まで起こっていたのが多くの新興国である(原稿〆切時点7月4日現在)。

(中略)

円キャリーのドル高が信用問題をきっかけに崩壊したように、ドルキャリーのユーロ高も時間の問題だと思うのは筆者だけだろうか?「原油高ドル安=負の連鎖」と囃し立てるマスコミ・エコノミストの気持ちもわかるが、ドル売りを決め付ける一辺倒な“不美人投票”は余りに危険だ。どの国もそれぞれ醜い欠点を持っているのが実情なのだから。
(以下略)

続く10月号の原稿「猿も木から落ちる-それがFXの魅力!?」は筆者が力み過ぎて割り当て文字数を大幅に超えてしましました。月刊FX攻略の編集長に泣く泣く削除された部分をコッソリお見せします。

(前略)
猿も木から落ちる・・・だからFXは個人にとっても魅力的なのだ。ただし、同じ猿でも「猿蟹合戦」の猿は駄目。アーバン・コーポレイション倒産直前の転換社債の引受・払込前後の株価を見るが良い。典型的なインサイダー的、相場操縦的な株価推移。倒産直後にようやく“種”明かしされたのは発行体(アーバン)と引受人(BNPパリバ)の裏取引(スワップ契約)だった。懸命な個人投資家はこんな柿の“種”を喰らいたくはない。今後、監督当局や司法が介入する事態が考えられる(原稿執筆時点8月18日)が、本件が如何に争われようと、情報の非対象性が放置される市場が参加者に次々と見放されることは間違いないのだ。
(以下略)

ちなみに「情報の非対称性が放置される市場」というのは日本株や商品先物のことを言っているつもりです。
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ハリケーン再び上陸-その名も“ファン・フレッド”

●ファニーメイ・フレディマック、米国株の足を引っ張る(8/18WSJ,FTほか)
先週のWSJとのインタビューでグリーンスパン氏から「一時国有化⇒分割民営化」しか道は無いと駄目出しを喰らった“ファン・フレッド”。同じくWSJ系列のBarrons誌が、これら2つのGSEについて「公的資金投入の見通し⇒既存株主・劣後債権者の権利は紙屑になるかも」と報じたことで、両社の株は再び大きく下落。

グリーンスパン氏に無能呼ばわりされたポールソン氏は、Barrons報道を否定(但し、両GSEに対し資本増強を急ぐよう公式に要請している事実は認めた)。

モラルハザードを嫌がるブッシュ政権との擦った揉んだの末、予算面で全権を掌握したポールソン氏だが、グリーンスパン氏からの政策批判に対するメンツなのか、今後の出方がハッキリしません。

株式相場的には、公的資金導入が決まるのか見送られるのか、どちらが買い材料なのか?為替についても、株安+ドル安+原油高というシナリオが予想通り崩れた後、ファンフレッド問題こそが次なる台風の目だと考えられます。

我が国知識人の間では「米国発“サブプライム問題”は日本のバブル崩壊後の失われた10年と問題の所在は似ているが対応するスピードが違う」というのが略共通の論調。住専問題の6850億円ぽっちで何を喧々諤々してたんだと言うのです。果たしてそうでしょうか?確かに、日本の金融機関が不良債権処理+赤字決算を先送りした背景に護送船団を率いた金融当局の天下りの誘惑などなど独特の問題はありました。しかし、不動産市況は単なる景気循環ではなく、不動産バブルを意図的に起こさなければ肥大したホワイトカラー組織を食わせていけないという金融業界の弱みという点では実に日米共通なのではないかと筆者は考えます。市場参加者は未だそこまで達観していないでしょう。この段階に来ると、グリーンスパン氏の意見は正論だとしてポールソン氏がすんなり受け入れるというシナリオがもしあったとしても相当程度時間が掛かるのではないでしょうか?
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