2009年4月30日木曜日

豚インフルと悪性インフレのストレステスト

Googleでの検索順位が急上昇の「パンデミック」と「フェーズ5」。パンデミックな感染症とインフレーション(通貨の紙屑化)は、伝染が伝染を呼ぶ(期待が期待を呼ぶ)スパイラル現象を起こしつつ蔓延しうるという共通点があります。

ワクチンで意図的に抗体を作ったり、抗生物質(効かないものもある・・・)で対処療法を試みても、ウィルス側が進化することで耐性を確保し、人類側とのイタチゴッコが収まらない。インフレ(デフレ)期待の蔓延を喰い止めようと政策側が関与しても、期待通りの効果が得られない(不発に終わるか、副作用が強すぎるか、何れかの極端に陥る)等、万能の処方箋が無いことに酷似しています。

パンデミック退治も、インフレ(デフレ)退治も、すべて政府の責任だ。。。と論ずるのは簡単。しかし、いずれも人類が互いに接点を持ちながら或る程度自由に経済行為を続けるための宿命または自由社会の対価との覚悟も必要。

「伝染が伝染を呼ぶスパイラル」と書きました。相場に譬えれば、ロスカットがロスカットを呼ぶクラッシュ。「市場は需給が均衡することを前提として機能しているので、均衡しない場合には介入する必要があるのだ」という考え方で、株価のPKOや、為替介入がしばしば正当化されます。しかし、バブル崩壊過程が痛みを伴い過ぎるとして、それを反省材料として、そこまで酷いクラッシュは再現させないように、今後は預金保険というモラルハザード下にある銀行にはレバレッジ規制を掛けるという政策の介入はあり得るでしょう。が、別のモラルハザード(良いとこ取り)を市場参加者に助長させるような相場介入を正当化する理由にはなりません。

バブルに塗れなかった禁欲的な投資家が自らの利害で相場に登場するタイミングは、政策の介入の可能性で疑心暗鬼にさせることで、政策意図とは反してかえって遅くなる。このことこそが、日本の失われた10年の教訓であり、現在、米欧が他山の石とせねばならない点。

ワクチンも抗生物質もなかった中世後期のヨーロッパでは、確かに黒死病で人口が激減しました。感染する人が増えれば増えるほど自らも感染する確率が加速度的に増える状況で生き延びることが如何に困難かという実例です。しかし、黒死病を生き抜いたヨーロッパ人が現実少なからず居た(居る)こと、そして彼らは黒死病に犯されなかった地域の民族と比べて、人類にとって未解決の別の感染症、例えばHIVに対する抵抗力を有している(これは抗体が遺伝しているわけではなく、もともとの遺伝子が両感染症に抵抗力があったという意味。欧州全域の全人口が黒死病の“ストレステスト”を受けたわけではないので、ヨーロッパ人が決してHIVに感染しないということは意味しません)ことも同時に見逃してはならないと思われます。

パンデミックな感染症も、インフレ/デフレも、いずれも人類(の豊かさ)をゼロまたは無限大にまで収縮/発散するようなパニックにはならないという腹を括ることも、一面の真理。敢えて衒学的な言い方をすれば、ウィルスの拡散は、インフレ(デフレ)期待と同様、局所的にはしばしば不安定だが、広域的には安定する微分方程式だということです。

昔から、周りの誰かが風邪をひいていたら必ずうつされるという感染症に弱い筆者にとっては、パンデミックはそうでなくても腹を括らざるを得ない問題。優秀な中高生諸君には、構造不況の金融界など目指さず、絶対に喰い扶持が無くならないウィルス研究の分野を目指して勉強してもらいたいものです(笑)。
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2009年4月28日火曜日

世襲議員を選ぶ側の責任

日曜日朝のフジテレビ「新・報道2001」は最近議論が喧しい世襲議員(立候補制約)問題について、現職国会議員等が賛成反対に分かれて喧々諤々。でも、番組としては「世襲議員は日本の政治が良くならない原因」という論調だったと拝察(快哉!)。

世襲議員問題は、 “為替力”で資産を守れや、月刊FX攻略等の雑誌記事でも昨年来批判的に取り上げて参りました。今月21日を以って休刊となるマネージャパン“為替力”アップ道場でも、

「冷戦時代には、減反政策も反共目的にかなっていたし、中選挙区制度にも地域エゴイズムを支える余裕があった。冷戦終結後の政治改革と政界再編は、不幸にも、自民党と民主党それぞれのなかに、守旧派と構造改革派を包含する経緯を辿ってしまった。小選挙区制度地域エゴイズムさえ満足させていれば良い世襲議員を蔓延らせたことと相俟って、世界的にも稀な無政府状態を作り上げている。

と書かせていただいております・・・この他にも、マネージャパン“最終号”は渾身の記事が満載です。まだ間に合いますので今すぐ「書店へGo!」。

新・報道2001の論調の核心部分は、世襲議員は政治資金団体(だけでなく選挙地盤そのものも、なのだが・・・)の相続税が免除されているので、「優秀なのに世襲ではない議員(予備軍)」が競争上不利に立たされるというものでした。それはその通り。しかし、国政選挙の地方選挙区におけるこのような理不尽は、地方公共団体の首長選挙においては必ずしも成り立たない点に着目せねば。世襲議員が跋扈する日本独特の怪奇現象は、何故に田舎の有権者が世襲議員を推挙したがるのかという観点で分析する必要があるのです。

国政の政策論争の場でなければならない選挙が、他の地域に比べ自分たちが暮らす地域が良い思いを出来るようにするための人選になっている。弁舌爽やかな革新政党を封じ込めるためには一定の機能を果たした利益誘導メカニズム(中央と地方のパイプを保証すること)の制度疲労が遂に臨界点に達したということでしょう。

民主党岡田副代表が発表した世襲制限には快哉を叫びたいですが、本来は三位一体改革を貫徹させたのち、全国区比例代表制を中核に据えた選挙制度改革をすべき(脱線しますが、三位一体改革の言いだしっぺが世襲議員候補の親馬鹿になってしまったのは残念。。。)

世襲議員問題について巷間議論されている論点に戻ると、「世襲議員には御坊っちゃまが多くて叩き上げに比べて優秀ではない」という批判も絶対ではないでしょう。世襲議員批判の発端が、安倍⇒福田⇒麻生各総理だとしても、3人の政治家としての質は批判されるほど悪くないと私は思っています。このような個人レベルの知能や才覚の問題よりも、自民党全体として世襲議員が多すぎることにより、例えば「減反制度は限界に来ている。見直すべきだ」という正論が党内から出て来ても押しつぶされてしまうという組織疲労の問題のほうが深刻であるということです。世襲議員は頭が悪いかどうか?仕事をさぼっていないかどうか?等の次元の話に矮小化すべきではない、とフジテレビの同番組に出演されていた各々方に申し上げたい。
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2009年4月24日金曜日

ついに出た!FXレバレッジ規制

(現段階ではリークに過ぎないかも知れませんが・・・)「FX業者は絶滅するのか!?」シリーズ等でお伝えして参りました①全額信託保全の義務化、②自動ロスカットの義務化、よりも大きな衝撃と考えられるのがレバレッジ(預けた証拠金の何倍分の代金の外貨取引が出来るか・・・)規制です。

2005年~2008年にかけて、FXが驚異的なブームになった背景の一つに過度なレバレッジがあります。金融規制が緩いと言われるシンガポールですら、レバレッジは20倍までに規制されていたり、米国においては20倍以上のレバレッジを提供するFX業者は資本金2000万㌦以上でなければならない(FX以外の店頭デリバティブ-所謂CFDはご法度)という規制が存在します。

現在FX業界は、このような規制が準備されている現段階で既に大きな曲がり角にぶち当たっています。リーマン破綻後の信用収縮によるヘッジコストの上昇とお客様のリスクアペタイトの減少。とりわけ、スワップ(金利差)狙いの取引でレバレッジを掛けることは正真正銘『金の生る木』だと思い込ませていたタイプの業者は大手・中小問わず瀕死の状態のようです。

業者の数は3割程度にまで減るという当ブログの予想はいよいよ現実味を帯びて来ました。これはFX業界だけではないでしょう。証券会社も銀行もノンバンクも全てひっくるめて、日本の経済規模を所与とすれば肥大化し過ぎていたのです。虚業が整理・淘汰されることは決して悪いことではありません!

毎回このような話を書きますと、フェニックス証券が廃業をするつもりなのかと親しいお客さまから問い合わせを受けます。宣伝のためのブログではないので(!?)少々気が引けますが(笑)、2009年度のフェニックス証券の事業計画を申し上げます。

今年度、特に上期中に、フェニックス証券は、“2銭でGo!”現在の『Active Zero』を発展させる形でCFDに参入します。フェニックス証券は大証会員ですが、日経225先物・オプションはCFDで参入するのです。

加えて、最速7月、『大証FX』を開始したいと考えております(現在、申請中&システム会社選定中)。『大証FX』は、今朝のテーマ(レバレッジを30倍程度までに規制)に適っているため、今後我が国のFXのスタンダードになる可能性を秘めています。そして何と言っても分離課税というメリットがあります。

高レバを自慢してこなかった店頭FXもしっかり設備投資します。『Forex Line』は主要通貨1000通貨単位の小口取引が同一プラットフォームで可能となります。また、約定スピードが飛躍的に向上する予定です(現在、3段階予定している投資の1段階が完了しており、これでも随分処理能力が上がっています)。

つまり、、、

1000㌦から始めるお手軽FX!⇒フォレックス・ライン
CFDで225や原油などに挑戦!⇒アクティブ・ゼロ
分離課税が魅力、次のスタンダード!⇒大証FX


廃業と身売りが加速しているFX業界において、何故フェニックス証券は攻めの姿勢で居られるのか?それは、レバレッジ規制等が緩かった時代、金利差を狙うのが当たり前だった時代に、FX業者とアフィリエートが結託して安易に新規開拓するという風潮に乗っからなかった。それゆえ、ストイックな経営が保て、固定化された資産や費用が少なくて済んだからです。その証が、2009/3末のフェニックス証券の自己資本規制比率。871.68%という数値は業界内断トツの最高水準です。
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2009年4月22日水曜日

フレディマック現役CFOの自殺

複数の米紙の報道によれば、自殺であることは明らか(自殺偽装の他殺ではない)らしいですが、動機原因については究明途上とのこと。

CFOに就任したのは、(ファニーメイと並んで)事実上の不正融資や尋常ではない額の不良債権が発覚して連邦政府管理下に置かれた後の9月の話。ただし、外部から招聘されたCFOではなく、同公社の財務経理の生え抜きであった点は、自殺原因と大きく関わるのかも知れません。

理由が何であれ自殺は良くない、とは倫理上の正論。しかし、自殺する人に悪い人は居ない、悪い奴ほど良く眠るというのもまた真理であります。「七転び八起き」同様、アラフォーの早すぎる死に、足元の根拠なき円安株高では読み取れない米国金融の恥部を垣間見た気がします。
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2009年4月21日火曜日

ジャッキー・チェン発言とチェルノブイリ原発事故

ジャッキー・チェンの「中国人は管理されるべき」発言。波紋を呼んでいる割には、断片的な報道が多く、言論の自由について語っているのか、経済活動や金融ビジネスの自由のことを語っているのか良く判りません。もしかしたら両方なのかも知れません。

ブログや著書を長い間御愛読くださっている皆様は御存知の通り、「七転び八起き」は、必ずしも規制強化が弱者を保護しない限り、経済や金融は自由なほうが良いという考えです。「必ずしも」と書きましたが、「少なからず」と本当は言いたいところ。それでもなお、規制は或る程度必要だという考え方にも一理あることは認めます。

一方の言論の自由については、昨夜お邪魔したチェルノブイリ子ども基金主催フォトジャーナリスト広河隆一さんの最新チェルノブイリ報告会で、その大切さを改めて思い知らされました。

史上最悪の原発事故から25年が経過している現在ですら、甲状腺ガンや骨腫瘍等の被害者、放射能に汚染された土壌などの被害が収まらないどころか、むしろ増えている被害者。そのことを認めたくない国家権力(敢えてここではロシア、ベラルーシ、ウクライナを特定しませんが・・・)は被害者増大を訴える良心的な医師を更迭する。そして何よりも驚いたのが、放射能を大量に含んだ雨雲(所謂「黒い雨」)が人口密集するモスクアにまで襲いかかろうとしているとの予測で、せめて現在のベラルーシの人口閑散地域あたりで被害を喰い止めようとして人口雨を降らせたという事実。政治判断の是非は兎も角、そのことを証言できるパイロットは、インタビュアーであるフォトジャーナリスト広河さんに対し「録音テープを回すのはやめてくれ」と制止したとのこと。

北京オリンピック開会式直前の人口雨、はたまた四川大地震で子どもを失った親御さんが西側ジャーナリストに(学校倒壊は人災だと告発するも)「名前は出さないで」と制止したエピソードと相通ずるものがあります。

加えて、日本人として何とも情けないのが、ヒロシマで原爆からの直接の放射能照射は兎も角、「黒い雨」に打たれた被災者の病気は原爆症とは認められない。『病は気から』だ」と判断した広島出身の医師が、IAEAのチェルノブイリ調査団長に選ばれ、大本営発表を展開したという話。但し、IAEAが原子力に太鼓判を押させたい背景は、世界中の原子力産業を背景としており、旧東側特有の言論統制だけの問題ではないでしょう。

ドイツのように、原発政策で二転三転する国もあります。我が国で原発の是非を民主主義プロセスの中で健康に議論できるでしょうか?「生活水準をウンと下げてでも自然エネルギー依存の社会を作るべきだ。GDP信仰を捨てろ。経済成長なんて気にするな」という強烈なメッセージとリーダーシップを持った政治と行政が必要でしょう。これは必ずしも民主主義と無矛盾ではありません。

原発は安全か危険か?このような二項対立の問題として捉えるならば、広瀬隆さんの言うとおり「東京に原発を」という考え方が正しいでしょう。しかしチェルノブイリの酷過ぎた実態と、例えば東京電力の柏崎刈谷原発のようにあれほど苛烈な地震でも最小限の事故(反論はあると思いますが・・・)に留めた安全設計を、「事故は事故だ」と片づけ同列に扱うのは不当。原発を全面肯定するか全面否定するか、という衆愚的な結論を避けるためにも、言論の自由は必要です。但し、これは多数決が真理であることを必ずしも意味しない。民主主義が衆愚政治に陥り、定義上は否定していなかった筈の言論の自由を自発的に葬ることは歴史上しばしばあります。私は言論の自由の価値を民主主義よりも上に置きます。経済と金融の自由は、その中間?

上述の広瀬隆さんの本は、80年代、書店から消えた(消された)と噂されました。日本にも実は言論の自由がないのだという人に私はしばしば出会います。ところで、拙書“為替力”で資産を守れ!も最近書店で見ないと友人に言われます。そう言えば、「こんなことまで書いて良いの?」という内容を此処彼処に書いてしまったので・・・否、こちらは単なる返品かも知れません(笑)。
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なか見!検索

アスキーさんのご協力を得まして、発売後2ヶ月半経ちました『“為替力”で資産を守れ』「なか見!検索」アマゾン・ドット・コム上で可能となりました。

『為替力』の産みの親であるアスキー・メディアワークスの野口編集長殿、多大なる御手間に心より感謝致します。

「なか見!検索」の開始を祝うかのように、アマゾンの順位も急上昇しているようです。著作権保護コンテンツ「なか見!検索」がどのようなものか、是非ご覧いただきたいと思います。

無料で公開しているのは、目次に続く数ページで「リーマン破綻直後の有名エコノミストの意見」や「金融安定化法案(7000億㌦⇒その後“TARP"という略語が定着)の下院否決」に関する記述。実は『為替力』のなかでは、最もとっつきにくく、最も風化されやすい部分で、この先に面白い箇所が出て来始めるのですが、そこはやむを得ません。

本日、休刊前の最終号として発売のMoney Japanでも大々的に広告宣伝をしていただいております。是非これを機に書店でお手にとっていただくか、アマゾン等オンライン書店でお求めください。
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2009年4月20日月曜日

アメリカ投資銀行の興亡

昨夜は、多くの読者の皆さまの予想通り、NHKスペシャル

マネー資本主義 第1回
“暴走”はなぜ止められなかったのか
~アメリカ投資銀行の興亡~

を視聴。その感想は、当ブログの過去記事の至る処に散らばっていますが、特に番組の感想というと、

☆一生懸けても使い尽せないほどの年収を貪り、寄付するでもなく、立派な豪邸を建てたところで、わざわざ訪ねて来てくれるのは泥棒か“打ちこわし”デモくらい。蓄財することが家族や子供の幸せに繋がるとも思えない、というのが常識人の感覚。

☆逆に言えば、非常識な人間に“暴走”させ、GDPの牽引役を果たさせたところが、米国の凄いところだったのか。日本のメガバンクは、アメリカ投資銀行の真似を出来なかったが、真似をし損なったにもかかわらず、“怪我の功名”にすら預かれていない。

☆ポールソン前財務長官(ゴールドマンの元CEOでもある)がリーマンを破綻と決めたのは感情的に当然。GSに対して身の程知らずの競争を挑んだファルド氏が「優れたCEO」ランキングでポールソン氏を抜きん出たという経緯。

☆リーマン破綻を選べば、出身“母体”のゴールドマンも致命的な返り血を浴びる(公的資金と銀行持株会社化で過度なレバレッジを利用できなくなる・・・等)というシミュレーションと、リーマン破綻という劇薬を提示することで以降は(公的資金利用による無難な金融機関救済策に対して)モラルハザード批判をかわせるというもう一つのシミュレーション。そのような深慮遠謀で米国金融当局の中枢が動いているというのは買い被りかもしれません。

それにしても、レバレッジ競争をやれば良いというものではないというのは現在の我が国FX業界にも当て嵌まるというのは、無理矢理のこじつけか。
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2009年4月17日金曜日

ウクライナ大使館を初訪問

昨日は、ウクライナ大使館の通商貿易代表部ヴァデム・シジャチェンコ通商貿易代表長とお会いすることが出来ました。日比谷線六本木駅から歩くこと10分少々、ウクライナ大使館は西麻布の閑静な住宅街の中にありました。瀟洒な邸宅ですが、広い応接も電気は消えていて、エコというよりは節約していらっしゃるご様子が伺えます(失礼ながら、当方客人であるとは言え、全く皮肉ではありません)。

つい数週間前に来日されたティモシェンコ首相は、麻生首相、与謝野大臣、財界人と殺人的なスケジュールでの面談をこなされたとのこと。その最大の目的は代替エネルギー、特に太陽光など自然エネルギー技術の供与。太陽光パネルの主要メーカーはこぞって興味を示してくれたが、最後はやはり投資やお金の話になると前に進まないと、通商貿易代表長は嘆いておられました。

日本におカネがないわけではない。寧ろ、世界的に見れば、日本には投資余力は集中しているほうだが、それが一部の個人層に偏在していることと、金融機関、事業法人を問わず、サラリーマン組織は信用収縮トレンドを断ち切ってでも投資に前向きになることができないことが問題だと指摘。眠っている個人資産を目覚めさせ、ウクライナの強み(農業・アウトソーシング)を掘り起こすことは、「株屋」改め「直接金融」の役割だと、大見得を切りました。

天下太平の世であれば、このような大それた仕事は、公的にはIMF、私的には大手金融機関の仕事だと思います。わけあってそのようなタイプの法人組織が機能しないのであれば、フェニックス証券がしゃしゃり出ようというわけです。

世界金融危機で加速した新興国からの資本引き揚げで最も被害を被ったのがウクライナ。ロシアとの関係で天然ガスが工業経済の隘路になっている点も泣きっ面に蜂。それでも、ヨーロッパ一恵まれた黒土(チェルノーゼム)と教育水準の高さ故の情報技術分野のアウトソーシング(実にフェニックス証券のFXのシステムも間接的にお世話になっているのです)等々、足腰のしっかりした産業は比較的悪影響が少なかったとのこと。太陽光発電だけで輸入依存のエネルギーの隘路を打開出来るとは言いません。が、耕地(可能)面積が絶望的に狭い我が国とWIN-WINになりうる分野という予感に頼り、“海外投資のパイオニア”フェニックス証券のFX業務の付随業務として、取り組んで行きたいと決断した一日でした。
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2009年4月16日木曜日

ロシア化する米国

一昨日FT紙に掲載されたマーチン・ウォルフ氏の

「大きくて複雑な金融機関は潰せない、という考え方は間違っている。肥大化しすぎた金融機関(金融セクター)を構造的に解決するためには無担保債権者の犠牲もやむを得ない」

という正論だが政治的には恐らく適用不能と思われる論稿を詳しく取り上げようと思っていた今朝のブログですが、予定を変えます。というのは、「七転び八起き」の「お勧めブログ」に入れている田村耕太郎参議院議員のブログに経済学者の青木昌彦スタンフォード大学教授が登場、私がこれまでブログや雑誌記事、テレビ等で申し上げてきた日米中の話と、これほど一致するご意見に遭遇するのは初めてなので、余りにうれしく、まずこちらを先行させてください。

詳しくはこちら

田村議員要約による骨子を御紹介させていただくと、

★アメリカ経済はスタグフレーションに陥る可能性大
★そして、やがて世界はかなりのインフレに
★最も早くよくなる経済は中国
★米中経済はさらに親密度を増す
★日本は米国との次世代技術革新競争と中国との補完関係を活かせば活路有!

私が田村議員のブログをお気に入りに入れているのは、私が彼を応援しているからではありません。それに、ブログを読む限りは(←ここ重要)、彼の意見に賛成の部分は半分程度に留まるかも知れません。政治家が国民に対して発するメッセージは、当然、選挙を意識したものであり、そのメッセージに一々私が一々同感できる筈がないし、田村議員もそれを期待していないでしょう。その中で、今回の青木教授の“断言”は目から鱗でした。

著者が著名な学者やタレント等であるという理由だけで大型書店に平積みされる殆どの経済本やビジネス本。その殆どは紙屑に等しい。片や、何故に青木教授の意見が断トツに優れた洞察を与えてくれるのか。恐らくそれは、マルクス主義と新古典派経済学という両極を極めた稀有な研究家かつ努力家でいらっしゃるからだと拝察します。
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2009年4月15日水曜日

最新チェルノブイリ報告会in東京

先週ブログで御紹介したチェルノブイリこども基金から「写真家 広河隆一さんによる、最新チェルノブイリ報告会 in東京」のお知らせです。

チケット:前売り1,000円 当日売り1,300円
2009年4月20日(月)19時開演
  「広河隆一 最新チェルノブイリ報告会」
   文京シビックホール 小ホール(※)

   ゲスト:詩人 石川逸子、 ピアニスト 須山真怜
◇同時開催 チェルノブイリ最新 写真展(小ホールロビー)
〔主催〕チェルノブイリ子ども基金 Tel&Fax 03-5228-2680
〔後援〕ウクライナ大使館 ベラルーシ共和国大使館 ロシア連邦大使館

中央アジアと東欧に造詣の深いフェニックス証券外国為替部長と私も、チェルノブイリ報告会に行く予定にしています。上記プログラム以外に、ここだけの話、ウクライナ大使さんのお話も聞けるらしく、楽しみにしているところです。

拙著“為替力”で資産を守れ!をお買い求めになった読者の皆さんで、チェルノブイリ報告会にお越しいただける方がいらっしゃいましたら、喜んでサインをさせていただきますので、是非本をご持参ください。

前売チケットその他詳細についてのお問い合わせは、チェルノブイリこども基金まで。

(※)文京シビックホール 小ホールは、文京区役所(文京シビックセンター)2階。丸ノ内線、南北線後楽園または三田線春日から徒歩ゼロ分です。
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ゴールドマンサックス決算発表から一夜明けて

私の読解力不足から、何故1日早かったのか?時価会計免除の効果がどの程度だったのか?理解できず、ブログの更新を一日滞らせたゴールドマンサックスの市場予想を上回る黒字決算。

大手“投資銀行”のアナリストは決算を評価する一方、中小またはオンラインブローカーからら含み損不明の黒字決算で時価発行増資に踏み切った暴挙を皮肉るアナリストも。

そこまでして増資を決行したいGSの意図は、公的資金の返済。つまり、昨年までと同様、巨額のボーナスを貰いたいということだと米国各紙は報じています。30人に一人は、100万㌦以上のボーナスを享受していたと言われるGSの執念と、公的資金の返済計画を懸念する米金融当局が睨みあっている最中。公的資金注入金融機関のボーナス支給制限問題については、AIGの事例で、「不特定多数とは言えない」幹部社員だけに極端な税率を課す法令が成立したものの合憲か違憲か疑わしくなったことやら、クレジットデリバティブとは無関係の部署で“まともに”稼いでボーナスを約束されていたがゆえに、クレジットデリバティブの部署の残務処理を買って出てあげた(転職の機会を自ら放棄)あげく、ボーナス支給にあずかれなかったとして「退職願」をニューヨークタームズ紙に投稿した事件やら、色々ありました。

昨夜、珍しく早帰りをして観たNHKの番組プロフェッショナル。人気番組「プロジェクトX」の後釜として、時には“作り”に無理があるなと思うケースもありましたが、昨夜登場されていた慈恵医大の血管外科医の先生の、番組慣例の締めの質問「プロフェッショナルとは」に対する

「金銭的な利害や報酬で動くのではなく、患者やその家族の笑顔や感謝で報われることが、また次の仕事や試練に立ち向かい動機になるという意識。つまり究極のアマチュアリズムこそがプロ」

とのお答えが、金融界や芸能界にも当て嵌まると気づき、一日遅れでGSボーナス問題(=公的資金問題=公募増資問題)に触れようと思った次第。ちなみに、番組の血管外科医の先生は、米国の実力社会・競争社会の中で最年少で教授となり、年収1億円というニューヨークの生活を捨て、母校からの三顧の礼で帰国したのだそうです。
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2009年4月13日月曜日

FX会社経営から見た本格底入れ宣言!?

この週末も嬉しい出会いが3件ありました。意図してお会いしたわけではないのに、話を伺うとFX(外国為替証拠金)取引と関係が深いお仕事で活躍されている方々。シンガポールまたはイギリスの大手銀行だったり、オーストラリアのB2B専門ブローカーだったり。わたくしどもフェニックス証券のように個人のお客様中心ではなく、取り扱っている商品も為替よりはクレジット物中心。リーマン破綻後の信用収縮はFXのほうはまだまし、クレジット・デリバティブは壊滅的、ヘッジファンドからの商売も細る一方であると、三者三様に教えてくれました。

景気も相場も本格底入れと言えるのか?ここ数週間「七転び八起き」ブログで繰り返しておりますように、金融機関もメディアもこぞって底入れムードを醸しだしている動きに或る程度素直に乗っかることは重要。しかし、土日にお会いした「プロ同士で鎬を削っているプロ中のプロ」の方々は、日々の生業(なりわい)がチキンレースに他ならない(世界の大手の金融機関のあちこちに巨大な不発弾があることを前提とした“黒ひげ危機一髪”だ)と異口同音に語っていました。

FX会社からの広告宣伝や情報提供、アフィリエートブログでも滅多に語られないプライム・ブローカーの話題を当ブログではタブー視せずに取り上げて参りました。リーマン危機までは我こそPBにという状況だったのが、同危機後は「PBは出来ません」とのドタキャン、「どこかでPBをしてもらわないとスポーク銀行(PBにギブアップする銀行)にはなれません」等々、潮が引くように態度を豹変させた外国銀行にFX業界は翻弄されました。その背景にあった、信用収縮(銀行同士が信用できない状況)とヘッジファンド危機が解消されたかというと、そのような予兆も感じるものの、本格回復はまだまだというのがFX会社社長の観察結果です。

しかしながら、世の中の注目はやはり米国大手企業の決算でしょう。黒ひげに気をつけつつ、これから数週間決算に注目しましょう。
<13―17日>
14日インテル、ゴールドマン・サックス、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)
16日JPモルガン・チェース、ノキア、グーグル
17日シティグループ、ゼネラル・エレクトリック(GE)
<20―24日>
20日バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)、IBM、テキサス・インスツルメンツ(TI)
21日メルク、コカ・コーラ、ユナイテッド・テクノロジーズ、デュポン、キャタピラー、アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、ヤフー、サンディスク、ブロードコム、アルテラ
22日アップル、マクドナルド、AT&T、イーベイ、ウェルズ・ファーゴ、ボーイング、クアルコム、ザイリンクス
23日マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、UPS
24日スリーエム(3M)
<27日―5月1日>
27日ベライゾン・コミュニケーションズ
28日ファイザー、サン・マイクロシステムズ
29日スターバックス
30日エクソンモービル、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)
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2009年4月10日金曜日

ウェルズ・ファーゴ好決算-株高円安はまだ続く?

昨夜の米国株式連騰を演出したウェルズ・ファーゴの決算。全米4位の同商業銀行は、当ブログでは全く信頼をしていない米系格付機関から唯一AAAを取得している「世界で最も安全な米銀」だそうです。

ウェルズ・ファーゴは、昨年10月3日にワコビアを事実上救済。この頃、先に手を挙げていたシティグループから「横取りだ」と訴えられるという事件がありました。後から思えば買収する余裕などなかったシティグループにとって横取りされて結果オーライ。銀行M&Aの横取り事件は、ソシエテジェネラル⇔BNP⇒パリバ、住友信託⇔三菱東京(MTFG・・・懐かしい)⇒UFJ(信託)、など枚挙に暇がないDEJA-VU(既視体験)です。

リーマン破綻直後は、米銀の合従連衡がどのような形で進むかまだ見えておらず、様々な憶測が流れていました。極端な言い方をすれば、不動産(関連融資)のように恐慌下で全く値がつかない状態であれば合従連衡の参加者は全員が実質債務超過の筈。買う側に回って勝ち組宣言したいという動機が働く、ポーカーゲームです。時価会計凍結下での銀行決算は、いわば金融当局がポーカーフェイスを勧奨しているようなものでもあります。

ところで、昨日、日本の大学生は大手銀行のモラルハザードを喝破しているのか?と書きました。銀行のモラルハザード≒半永久的ゾンビ化を見抜いているのは若者に限らないことを表しているのが、2月に相次いで発行されたメガバンク各行の個人向劣後債が馬鹿売れした事実。2月と言えば、当ブログで最近頻繁に話題にしている3月10日以降の株高円安トレンドが始まる直前で、多くの有識者が3月末の日経平均は6000円台だとか5000円台だとか悲観論をぶちまけていた頃。株価が二桁になろうと、個人向金融商品は元本保証してくれるだろうという楽観は過去の金融危機と公的資金注入の繰り返しがストレステストになっている証左でしょう。

ただし、気になるニュースもあります。CNBC-REUTERが、GMは債権者(含む社債保有者)に対して、GM株との交換(すなわちデット・エクイティ・スワップ)の条件提示を始めている(大口債権者を手始めに、か?)と報じています。GMは連邦破産法11条申立てか私的整理かで大詰めを迎えていると見られます。来週本格化する米銀決算よりも、GMの動向が、約一ヶ月続いている株高円安トレンドの曲がり角になるかも知れません。
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2009年4月9日木曜日

真水15兆円、モラルハザードと就職ランキング

モラルハザード政策に文句を言うひとがどんどん減ってきています。

★米国金融安定化法(TARP)を生保にも適用へ

★来週から始まる米国金融機関の決算、時価会計凍結で悪材料化を回避か?

★我が国の追加経済対策、真水は15兆円に

一つ目は、昨日東京時間の昼間に飛び込んできたニュース。二つ目は、4/3(金)のブログG20、ECB1.25%へ利下げ、そしてFASB で御紹介。三つ目。15兆円という規模は、90年代後半、小渕政権~森政権の約3年間でばら撒いた総額に及ぶ程の巨額。「需給ギャップが問題なのではない。売れないものを作ってきた工場設備は無価値だ」と喝破する経済学者が居ないわけではないものの、少数意見。有権者も株式投資家もモラルハザード政策を支持する限り、暫くは世界的なトレンドというかブームに乗る必要はあります。

もうひとつ、このブームに乗っかろうとしているのが日本の若者。

今朝の日経新聞で2009年の大学生就職志望企業ランキング(リクルート調べ)が報道されています。
初の首位に躍り出たJR東海、同じく順位を急伸させた2位のJR東日本は理解できます。驚いたのはメガバンクが殆ど順位を下げていないこと。この現象は、97~98年の金融危機、2000~02年の危機と大きく異なります。

世界では「100年に一度」(?)らしい金融危機が、我が国では20年に3回も4回も起きている事実は、モラルハザード政策をばら撒いたとしても、金融サービス業が適度な規模に縮まないと同様の危機は何度でも繰り返されることを教えてくれています。いよいよオーバーバンクにメスを入れざるを得ない局面に来ている我が国金融界の先を読めないのか?何度危機を迎えようとメガバンクは公的資金で助けられるので公務員感覚で勤められると見切っているのか?若者読者の皆さん、どちらですか?

筆者としてはどちらでも良いです。このご時世でメガバンクが人気企業だというこの国に将来は無い。長期円安の見方を、筆者は変えておりません。
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2009年4月8日水曜日

円>ドル>ユーロ

まずは市況から。円はドルに対して強く、そのドルもユーロよりは強い。これはリスク選好の後退サインだとWSJ紙。危険水域を知らしめたのはやはり企業業績への不安でした。

REITの話も、今朝の日経新聞に詳しい。それにしても破綻REITのニューシティ。民事再生法で初となる負債全額弁済は快挙だとして、投資口ひと口あたり3万5000円での買い取りとは、開示書類での鑑定価格は何の意味があるのか。

それでもこれはREITのお話。負債の弁済率と言えば、当ブログでしばしば問題視してきたアーバン・コーポレイションの弁済率が幾らに決まったがご存知でしょうか。たった15%です。黒字倒産で、もしかしたら資産超過倒産かも知れない事例だっただけに残念。これが不動産取引の実態です。

さて、話題をガラリと変えます。フェニックス証券が昨年末チャリティ・オペラ・コンサートを行ない、出演者の皆さんと観客の皆さんの御支援のお陰で、義捐金の一部をチェルノブイリ子ども基金に寄付させていただいております。同基金の事務局がある神楽坂に昨日訪問。あちらこちらで満開の桜を他所目に、道に迷いながら、新しいオフィスに辿り着きました(汗;)。ウクライナ名物のホワイトチョコを頂きながら、最近の私の問題意識、ウクライナ、ベラルーシ情勢を御教授いただく。反ロ、親ロで、ウクライナとベラルーシは180度異なり、故に工場労働者や都市労働者が大量失業しても、キエフでは赤旗を振ってデモ行進が起きるのに、ミンスクではデモが起きない(一部例外で敢えて捕まりたい人は大暴れをするらしい)。ただし、ウクライナもベラルーシも、失業は必ずしも飢餓を意味しない点では一緒。つまり、農村というバックボーンがある故、失業しても大抵の人は自力で農業をやるか、やっている血縁地縁を辿って生活できるのだそうです。以前の日本の田舎にはあった相互扶助のコミュニティが存在すること。日本の都市労働者の殆どが抱いている恐怖感「お金がなければ生きていけない、豊かになれない」という感覚とは真逆、お金に無頓着でも生きていける楽観、達観があるのだそうです。

両国とも独自の通貨を持っており、外国資本の引き揚げで、相場は崩落しています。しかし悪性のスタグフレーションに立ち向かう両国民の心の支えになっているのは、政治のリーダーシップではなく、農村というバックボーン。両国の農業従事者一人当たりの耕地面積は13~14ha。日本ではたったの2.2haです。

この話に落ちをつける必要はないのですが、最後にウクライナ、ベラルーシ両国と日本の共通点をひとつ。合計特殊出生率は3国とも1.2近傍と少子化まっしぐらです。
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2009年4月7日火曜日

円安と株高、どこまで続くか?

根拠なきトレンドでも、トレンドに乗ることが相場の定石だと、自戒も込めてお伝えして来た当ブログ。それでも、

★銀行の不良債権の実態

★絶望的に低調な不動産取引

を知る投資家にとって、3月以降のトレンドに乗るのは勇気が要ること。一方、トレンドに乗れている側の意見としては、「知らぬが仏」と言ったものから「根拠は兎も角、円安も株高も、皆がハッピーなんだから、結構なことではないか」というものまで聞かれます

先月10日に日中最安値7,021.28(終値では7,054.98)をつけた日経平均は、その後、殆ど上昇基調で、一ヶ月弱の間で、3割弱も値を戻しています。根拠なき熱狂が永遠に続く道理はないものの、何時熱狂が剥がれ落ちるのかこそ皆が知りたいところ。

常識的には、上場会社の決算発表が本格化する今月中下旬以降。実際には、下方修正の発表、特に欧米銀行の決算予想の発表が年度決算シーズンを牽引する形となり、相場の冷や水はもうそこまで来ていると見るべきかも知れません。

ところで、株高、株安と、株式相場を十把一絡げにすることには限界があります。3月10日以降の相場急回復について来られなかった銘柄の代表格として、NTT、JR、電力が挙げられます。根拠なき反騰の代表例が銀行とノンバンクだとしたら、GWに向けては金融VS公益のロングショートには妙味あり。但し、アップティックルールあり。

続いて不動産。破綻REITのスポンサー決定で、REIT相場は堅調ですが、出来高の少なさはまだまだ解決されていません。公的枠組みでのREIT買い上げも政治主導で検討されている最中。しかし民間の禿げ鷹に出来ることがREITにこそあります。破綻の前後を問わず、複数のREITに対して増資に応ずることで経営を掌握しつつ、LTVを下げてノンリコースローンの貸し渋りを回避し、合併を進める。アセットマネジメントの規模の利益が拡大するわ、出来高が増えるわ、良いことだらけです。破綻前の増資が有利発行の判定等の問題で時間が掛るのであれば、ノンリコースローンを提供している銀行がデットエクイティスワップに応じるという手もあるのですが、これが進まないとするとどういう理由があるのでしょうか。ここから先はブログの範囲を逸脱しますので、今日はこのあたりで。

円安の話まで入れませんでした。
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2009年4月6日月曜日

北朝鮮“ミサイル”報道と台湾統治

ブッシュ前大統領が、イラクとイランと北朝鮮を悪の枢軸と呼んでから7年以上経ちます。緊迫と混迷の連鎖から抜け出せない中東情勢に比べて、極東情勢は極めて対照的です。

ミサイルか衛星か?流石のグーグルアース、もとい、米国の軍事衛星でも識別は不可能。中国とロシアの拒否権発動の可能性は高く、イラク戦争のように国連安保理決議なしで米国が戦闘状態に入るとは考えにくい。その理由は、北朝鮮が核を持っていること。日本にも朝鮮半島にも油田がないこと。これら二つの前提が中東と異なるからでしょう。

日本が(現在の技術と資源相場を前提にすれば)無資源国であることは、地政学上は、不幸中の幸いと言わざるを得ません。

北朝鮮“ミサイル”報道で終始した週末の地上波テレビ。そのなかで、NHKは日曜夜9時、NHKスペシャルで、我が国による台湾の植民地統治を取材していました。第二次大戦敗戦により我が国では廃棄焼却された台湾統治の資料が、台湾総督府には残っていた。その古文書を手掛かりに、日本政府に協力した台湾人、台湾議会設立運動を企てるも挫折した台湾人の御子息を探し当て、インタビューに応じてくれていました。証言が上手な日本語で語られていただけでなく、難しい話をしたり、学術的な文章を書くことは今でも日本語でしか出来ないことを目に涙を浮かべて告白するご老人の姿。第二次世界大戦で日本の臣民として南方戦線に駆り出された人達、夥しい数の同僚の戦死を目の当たりにしつつ生き残った元台湾人“日本兵”の方々が教育勅語を諳んじている姿。

朝鮮半島や中国と比べて、台湾は反日感情が薄いという“常識”を打ち砕く内容。但し、この番組、決して南京大虐殺的な歴史観を押し付けるものではありません。先進国の仲間入りをしたい(しなくてはならない)明治政府にとって初体験の植民地統治のモデルを(当初は同化政策だった)フランス⇒アルジェリア型にするべきか、逆にイギリス⇒インド型にすべきか議論の末、当初は折衷案と取ったこと。ところが日中戦争突入により、漢民族が敵性民族となったため、同化政策に切り替えられた、という展開。

昨日のテレビ朝日の番組で「“ミサイル”発射は国威高揚と体制維持だけが目的」と言い切った田中均元外務審議官。氏の北朝鮮との交渉は、当時、生温いと批判されたものでした。消されることのない歴史、不可抗力により与えられた各国の状況を考慮すれば、生温い対話という物言いは当て嵌まらない。寧ろ、批判を繰り広げては、北朝鮮の面白映像を興味本位に流して視聴率を狙う地上波テレビのビジネスモデルが未だに生き残っている規制環境こそ生温い。
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2009年4月3日金曜日

G20、ECB1.25%へ利下げ、そしてFASB

G20金融サミット閉幕、0.25%に止まった欧州中央銀行(ECB)の利下げ幅、そして今夜は注目の雇用統計と材料目白押しの今週末。昨夜の米国株連騰のMVPは、G20でもなければ、ECBでもなく、FASB(米財務会計基準審議会)です。

早い話が、「金融機関の不良債権や塩漬け有価証券の含み損をちゃんと出さなくても良い」というニュースに株式投資家が好感したということ。

御上が銀行の粉飾決算を黙認するから、時価総額が上がるという現象に、納得の行かない読者の方々も少なくない筈。

しかし、相場はトレンドが一番大事。理屈は頭の片隅に仕舞っておき、祭りには参加したほうが賢明です。

見た目の株価がどうであれ、びくとも動かない大型不動産の売買や、改善の兆しがない雇用情勢、そしてその背景にある世界の各大型金融機関が抱える不発弾の数々。この厳然たる事実がある限り、どこかで大規模調整はあります。株式や外貨を買い遅れたと嘆いていらっしゃる方々。後悔する必要は全くないと思います。

とまれ、我が国の「失われた10年」1990年代の金融敗戦のMVPこそ、押し付けられた時価会計です。押し付けておいたルールが自国に不利となると、あっけらかんと変更する。このような大国主義に文句のひとつも言えず、「これで株価が上がった。英断だ」と褒めちぎり、我が国も真似してみますか?という政策担当者の体たらくを批判する前に、迎撃ミサイルはすべて日本製で賄っていない現状を直視する必要はある。しかし現実は甘くはありません。一昨日来ブログで取り上げているウクライナこそ、屈指の豊かさを誇る穀倉地帯を背景に、気骨を以って大国と向かい合い、よってまた慢性的に経済危機とも向かい合っている実例です。
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2009年4月2日木曜日

シティグループ株に群がる米国個人

★落ちてくるナイフを拾うな!

というウォール街の古い諺を無視しているとウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている現象とは、シティグループ株の人気の過熱振り。昨年10月末から80%下落した同銘柄は、去る3月5日に底(1.02㌦)を打ち、昨夜の引け値は2.68㌦(↑5.9%)。

某ネット証券一社だけの数字ですが、同株式の出来高は、3月が9.3百万株と、2月の3.4百万株から倍以上に人気化しているとのこと。

★値が飛ぶから面白い。

株価下落で「小口化」したことだけでなく、その「投機性」が魅力なのだとWSJ紙。値段が飛ぶから面白いのだと。外国為替証拠金(FX)取引で、かつて英国ポンドが人気だったのと同じ理屈で根拠なき熱狂ということか。

シティグループ株がどれくらい値が飛ぶのかと言いますと、月曜日が11%下落、火曜日が9.5%上昇。で、昨日は上述の通りですから。

ちなみに、(最初で最後の!?)三角合併のお陰で、シティグループ株は東京証券取引所にも上場しており、我が国の普通の証券会社でも取引可能です。しかし、七転び八起きとしては読者の皆さまに銘柄推奨はしません。オバマ政権のモラルハザード政策は国内でも人気を失いつつあるだけでなく、今週末のG20でも叩かれそうです。金融システムの安定とモラルハザード回避と両立は大変難しいうえ、イベントリスクと情報格差に挑戦してこの種の投機に向かうのはリスクリターンのバランスが悪すぎる。

★お勧めは??

それでも何か宝くじ的な適当な投資対象は無いですか?と聞かれたら、同じシティグループでも半値近くまで下落した社債(ユーロ円債やサムライ債)がお勧め。完全国営化で株券が紙くずになっても預金と債権は保護される可能性が高い。

これでも十分なモラルハザードですが、預金債権保護まで否定すると世界は修羅場となります。それから、我が国のREIT

残念ながら、いずれも出来高が少なく、シティの普通株ほど短期売買には向きません。ただし、REITについては倒産したパシフィック・ホールディングス系の二投資法人が例外的に出来高が多くまた極端に割安なため、シティ株と同じ現象が起きています。REIT分野は銘柄が多すぎて、今後規制緩和により合従連衡は必定と考えられています(合併時の負の暖簾代を配当に回さなくても法人税が掛らないように税制改正は既に決定済)。
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2009年4月1日水曜日

過去最悪の日銀短観、国家破綻危機に学ぶ

朝8:50に発表された日銀短観。特に注目されていた大企業製造業の業況判断指数は▲58。予想以上の悪化で1974年以来の短観の歴史で最悪の数値。

為替は直ちに円安に反応するも、一瞬にして買い戻され、その後は短観発表前に比べ寧ろ若干の円高水準。

日経平均は朝からプラス圏。

エイプリルフールねたに落とすつもりはありません。それを言ってしまえば、四回に一度は短観は四月馬鹿になってしまいますから・・・

大企業製造業の閉塞感と、物質には満ち溢れているが雇用不安から逃れたい=年金が出るまでクビになりたくないという怯え。これは大いに関係があるようです。

松下幸之助氏が二股ソケットを開発し、安藤百福氏が即席めんを開発したころ、意欲ある日本人は「こんなものがあったら便利だな・・・」というヒントを探しまくり、夢をひとつひとつ実現していったのだと思います。ドラえもんの人気は衰えないにもかかわらず、もう一歩上の物質文明のステージにあがることが死活問題だという意識は日本人にもなければ、これまでのメイド・イン・ジャパンの御得意様諸外国にもないという事実から目を背けるわけには行きません。

児童ポルノで摘発された問題のアフィリエート広告。先ほど、アフィリエートのASP会社のご担当と話をしたら、最近伸びている分野は化粧品と健康食品を始めとするEコマースだそうです。

「歴史は繰り返す」という諺と対立するのが「人類はその叡智によって果てしなく発展し豊かになれる」という歴史観。しかし、英国産業革命に端を発する工業文明は、繰り返しもなければ、際限なき発展も有り得ないのではないかという、上記ふたつとも異なる歴史観もあるのではないでしょうか。

ところで、国家破綻危機の事例として、七転び八起きブログではアイスランドを徹底的に取り上げて参りました。これは似非金融立国の熟れの果て。金融が(原則として)虚業であることを忘れていい気になる国・企業・役職員にとっては他人事ではありません。問題は工業立国、貿易立国もまた他人ごとではない事例があることです。

それはウクライナ。19世紀まではヨーロッパの穀倉地帯と呼ばれ、20世紀はソ連の穀倉地帯と呼ばれた、大農業国という印象の強かったウクライナは、21世紀に入り急速に工業化します。昨今の失業率、自国通貨下落、経済成長率のマイナスは、世界の最悪水準であり、10年弱の工業化の恩恵を逆回転させるほどの勢い。混乱の陰には、殆ど常に、積年のロシア関係という外交等の要因が控えているとは言え、それ故、我が国には参考にならないとは言えません。ちなみに、我が国の貿易依存度は10%程度と決して高くないことは以前より当ブログで強調して参りました。対するウクライナは、50%近くにのぼっており、穀倉地帯の印象とは大きく異なります。

当ブログでは、ウクライナ問題を定期的に取り上げていくことにします。
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