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2009年6月17日水曜日

FX会社の廃業、身売り、だけでなく・・・

この頃、増えこそすれ減らないのがレバレッジ規制に関する各種メディアの皆さまからの取材。大抵長話となり、最後は

「そもそも御上はこの国の金融のカタチをどうしていきたいか?」

に行き着くのが常。

レバレッジ規制(や全額信託規制)を、FX会社や投資家からの「寝耳に水だ」「明日から喰えなくなる」等の反発の声の大きさだけに照らすのではなく、霞が関、はたまた永田町が『金融制度』をどう考えているか、という視座で捉えることは重要であります。

「失われた10年」を含む過去約20年は、証券に有利な局面と、銀行に有利な局面とに大別されていたと感じます。1998年の金融ビッグバン以降は、投信や保険の銀行での窓販解禁など、銀行側に有利な局面か。それ以前の銀行業界は、金融自由化の流れ(金利の自由化、CP解禁、社債発行における適債基準撤廃・・・)の速さに比べて、業態規制の緩和スピードが遅すぎた(銀行は業態別子会社でしか証券業に参入出来ず、1999年までは業態別子会社ですら株式業務が出来なかった)【注】。

繰り返し当ブログで批判してきた「銀行の数が多すぎる」「銀行員の数が多すぎる」「銀行員の平均給与が(まだ)高すぎる」等が、承知の上でバブルに便乗せざるを得ない経営に銀行を追い込み、いつまでたっても金融システムが健全にならない理由であることは確か。しかし、銀行業態側の自助努力の欠如だけでなく、金融自由化の速さと、業態自由化の遅さのギャップによる銀行ビジネスの空洞化と相俟って、と付け加えなければなりません。

業態別子会社に限定した相互参入と厳格なファイアーウォールの論拠は、銀行と証券の利益相反にあります。しかし、

「親銀行のほうでは、こんなに採算の悪い融資をしてあげている。こんなに株を買ってあげていて毎年白紙委任状を提出してあげている。だから、次回主幹事は子会社証券でやらせてもらわなければタダではおかない!」

という“恫喝”営業を招いたのが、我が国にだけしつこく残っているグラス=スティーガル法の“成れの果て”だったら、最初から銀行本体による証券業参入を許し、《貸出から引受まで、余資運用からM&Aまで》何でもござれの営業のプロによる少数精鋭のワンストップ金融機関を制度上促していたたほうが、結局は金融機関の顧客にとっても最終的に払うべき取引費用を極小化できていた筈。これが本当の顧客保護だと思うのは私だけ?

我が国の銀行は、半分は自助努力の欠如のせいで、残り半分は金融制度改革の齟齬により、本来なら少数のプロ集団が捌き切れる仕事を無駄にワークシェアリングしてきた。この不条理に伴う余計な費用を賄うべく、無理矢理“売り上げ”を伸ばそうとして、無理な貸出(想定される信用費用を賄えない低利鞘な貸出、大盤振る舞いな株式持ち合い)を続けたり、“ぼったくり”に近い外貨預金の為替手数料(と低利回り)が続いたりしていると見るべきです。

外国為替証拠金(FX)取引を、外貨預金の代替商品だと考える人は今では殆どいないかも知れません。しかし、前述の金融ビックバンにより窓が開いた、銀行業務の空洞化分野のひとつだと見られるべきです。

銀行本来の業務である個人ローンについても、かつて長らくは、独立系の消費者金融会社はグレーゾーン金利での融資が認められていた(かつての最高裁判例)のに対して、銀行の無担保カードローンは行政指導上認められていなかった。90年代の資産価格バブルの崩壊過程においては、少額無担保の個人向け貸出は数少ない有望分野であり、独立系消費者金融会社は、金融業界において数少ない“勝ち組”ビジネスモデルでした。対するに、銀行がその分野に入るには費用対効果上無理があり、不動産等の資産を担保にした貸出は、企業向けにせよ、個人向住宅ローンにせよ、不良債権の山となったことも記憶しておかなければなりません。

メガバンクが殆どの大手消費者金融を系列化し、そのあとでグレイゾーン金利が規制されたことは甚だ皮肉と言わざるを得ません(大手銀行と霞が関は癒着していない!?)。

かつての最高裁判例《グレーゾーン金利(利息制限法の上限金利と出資法の上限金利の差)は借主の任意で弁済される限り有効》を覆すほどの、銀行”関連”ビジネスモデルの生殺与奪という視点で、消費者金融の来し方行く末は、外国為替証拠金(FX)取引の業界に深い洞察を与えるものです。
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【注】更に以前のバブル期には、銀行取引先が時価発行増資などエクイティファイナンスの発行代金で銀行からの借入を返済する際、「有利子負債利子率を下げたいのだから、文句あるか」と言われ、反論できる銀行員(含む銀行経営者)が余りにも少なかったことが空洞化の始まりだった。「お客様、資本コストを御存じですか?モジリアーニ・ミラー定理を御存じですか?」と。

2009年6月8日月曜日

クライスラーへの暗雲と雇用統計の好転?

先週、お伝えしたフィアット=クライスラーに「ちょっと待った」を掛けたインディアナ州の年金基金。米国控訴院は、「不良債権を安く買い叩いた筈だったのに、足が出た」ために、怒り心頭の同投資家の主張、(営業権のフィアットへの売却)処分禁止の仮処分を認めるという判断をしました。

既報の通り、フィアットは6/15(月)まで処分禁止仮処分が続いていれば、クライスラー購入を敬遠することが出来ます。世界中で54,000人(うち米国内で38,000人)を雇用するクライスラーの受け皿が消えてしまっては、クライスラー清算による雇用へのインパクトは部品メーカーを含め深刻で、オバマ政権が描いた処方箋を脅かす試金石だとWSJ紙は改めて報道しています。

同紙は、クライスラーで発生した「しゃっくり」はGMにも移る可能性があり、事態がより複雑になると予測すると同時に、リストラおよび財務立て直し先行のおかげで旧ビッグスリーのなかで唯一生き残ったフォードは、思わぬ「国営自動車」(Government Motors)の出現で競争上劣勢に立たされる恐れありとも論じています(但し、ゴールドマンサックスの分析は、フォードはGMが喪失したシェアの25%を獲得すると見込む)。

ドライバーを振り回した結果、どんなに左右の深いラフに打ち込んでも、ボールがフェアウェイにまで転がり落ちてくるゴルフ場では、飛距離だけでなく球を真っ直ぐ飛ばす技術を磨いた真摯なゴルファーは馬鹿を見るでしょう。雇用のセイフティネットを声高に叫ぶのは、米国の政権も、日本の野党も似たようなものですが、果たして自動車産業以外の衰退産業と公平に扱おうとしているか冷静に問う必要があります。

ところで、金曜日の雇用統計。NFPRは予想ほど悪くなかった、減少幅が縮小しているということで、ドル高、株高。しかし、雇用主申し出ではなく個人家計から集計した失業率のほうは9.4%と1983年以来の最悪数値。どちらが真実か?というよりも、減少幅縮小で喜んでいる市場参加者は、速度と加速度との区別がつかない人達か?(不動産は動きだしましたが)ドルと株式は一旦売りを推奨。
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2009年6月4日木曜日

FXレバレッジ規制と「ベター・レギュレーション」そして『大証FX』

明日、大証FX参加のための「登録の種別の変更」の申請に行って参ります。取引所FXを取り扱うには、第一種に加え、第二種の金融商品取引業者でなくてはならないのです。

金融庁と言えば、先日の佐藤長官の記者会見
http://www.fsa.go.jp/common/conference/com/2009a/20090601.html

FXについてだけでなく、今日の我が国金融の様々な綻びを走馬灯のように味わえる秀逸なオムニバス。レバレッジ規制に対して、「ベター・レギュレーションという観点から如何か?」という記者の質問への回答の中に、金融ビッグバン(特に、証券会社の登録制と外為法改正)以来の“正流”と逆流、そして国会議員と民間金融ブローカーという登場人物との舞台のうえで狂言回しを演ずる監督当局の思いがジワジワっと読みとれます。
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2009年5月25日月曜日

FXレバレッジ規制-上限25倍-賛否真っ二つ

FX業界に大混乱を巻き起こしつつある「25倍の上限規制」。

関連記事

FX証拠金倍率 25倍の上限規制 行き過ぎ・健全性 賛否真っ二つ

と、関連コラム

FX規制問題について思うこと

後掲のT&C吉田社長のコラムにはグリーンスパン前FRB議長の発言など面白い内容が含まれますが、何故か「落ち」はありません。慌てて執筆されたか。

レバレッジ問題を取り上げるだけでアクセス数が急増するので、俄か記事が乱造されているのかも。残念ながら、レバレッジ規制がどうなろうと、FX業界の過剰社数は調整が不可欠。但し、FX業界以外の広義の金融分野も事情は同じで、銀行、証券、不動産ほか、我が国の「金融系」ホワイトカラーの頭数は今後数年で激減します。

政府によるバラ撒き政策が奏功し意図的インフレが起きリスク資産の相場回復があったとしても。
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2009年5月21日木曜日

FXレバレッジ規制「25倍まで」案を提示

金融庁。今朝の日本経済新聞の記事はスクープでもなければリークでもない。ちゃんとした取材に基づく事実の報道です。

記事の締めくくり部分「個人投資家らが反発する可能性もあり、実現には曲折が予想される」というのは、どうか?確かに、先日引用した「高レバレッジ+低スプレッドのFX業者とは破綻覚悟で付き合っているんだよ!文句あっか!?」というリスク選好と自己責任を兼ね備えた投資家にとっては造反有理。しかし、≪高レバ+低スプ業者は多くの個人投資家を愚弄し搾取している≫というのが監督当局としての事実認識または断固とした判断であったとしたら、業界やユーザーが反発したところで、実現への曲折はありえないのでは。

実は、一昨日大阪に出張し、財務省近畿財務局に2008年度決算の説明を行って参りました(道中、マスクは欠かさず着装)。1時間半に及ぶ質疑応答で思ったのは、証券監督課の皆さんが手抜きなく丁寧に勉強しておられ正鵠をついた質問をされつつ、「七転び八起き」が考えていること計画していることに対するご理解も速いこと。4年前、前任の社長から引き継いだとき言われたのは「証券会社の経営を最も知り尽くしているのは証券監督課の人たち。民間の(M&A等の)コンサルタントより優れている」という言葉。それを思い起こしました。

全ての官庁、全ての官僚が、例外なくGood Jobをしているとは言いません。が、少なくとも金融監督の分野において、「官から民へ」などと雑駁な理想像で官僚批判をしている人たちのなかに、具体的な代替案なり緻密なスタディが出来ているひとがどれだけ存在するか、甚だ疑問。
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2009年5月18日月曜日

グリーンスパンのお株を奪ったミセス・ワタナベ

はい、昨夜のNHKスペシャル「マネー資本主義 第2回“超金余り”はなぜ起きたのか?~カリスマ指導者たちの誤算~」のことであります。

前回の米国投資銀行に代わり、今回はグリーンスパン氏が袋叩きにされるという予告編。ところが、本編では、劇中劇(!?)の藪から出てきたボストンバッグの3000万円を遺失物として届け出た富田靖子さん演ずる“主婦”渡辺みどりさんが、突如主役として踊り出ます。

外国為替証拠金(FX)取引の脱税手段として、「現金を捨てる(失う)⇒拾って届ける⇒拾得物として手に入れる」という技が有効なのかどうか「七転び八起き」は勉強不足で存じません。

番組ではグリーンスパン前FRB議長のほかに、ルービン元財務長官や榊原英資元国際金融局長も登場。95年に1㌦79円をつけた円高ドル安を、強力に修正させたのがこのふたりであると紹介されていました。

ただし、日本版ビッグバンの一翼である外国為替管理法の改正(為銀主義の撤廃等)の主眼が、まさしく外国為替証拠金(FX)取引の解禁であり、(為替介入だけに頼らず)民間の力(≒ミセス・ワタナベ)で米国のドル高政策を応援しようという用意周到な国策であった、とまでの洞察はありません。

何故、今になってレバレッジ規制なのか?国家戦略という観点から見た場合に、オバマ政権がもはや自国通貨高を望んでいないという、明言はしていないものの、十分に推定しうる意向をくみ取る必要はあるでしょう。勿論、直接の原因は悪徳スリッページ業者の排除であることに違いはないのですが。
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2009年5月12日火曜日

手数料下げ競争、FX業者に警告 金融庁(下)

ゴールデンウィーク中に当ブログでも取り上げました

手数料下げ競争、FX業者に警告 金融庁(上)

日経新聞の(再びリーク!?)記事【5/4(月)付「手数料下げ競争、FX業者に警告 金融庁 採算悪化など懸念」について、FX業界の草分け的存在である尾関高さんからも一言ありました。

「手数料下げ競争、FX業者に警告 金融庁 採算悪化など懸念」について

もう何年も前の話になりますが、日本証券業協会の某幹部(当時)から「地場証券を集めてFXの講義をしてもらおうと考えているんだ。講師として誰が良いと思う?」と相談されて、陰ながら(勝手ながら)尾関さんを推薦したことがあります。

「七転び八起き」は上記URLの尾関さんの意見に90%賛成。残り10%は「全額信託保全」の規制の副作用で再びスプレッド競争に拍車がかかる、という部分。区分管理を全額信託にするには、殆どのFX業者では借入または増資が必要となるでしょうが、現在の事業環境で調達に協力する投資家や金融機関は皆無に近い。スプレッド(広義の手数料)ダンピングを改善して利益成長(内部留保)を目指すか、時既に遅しのFX業者なら廃業または身売りということになります。逆に言えば、区分管理規制を強化しさえすれば、本来なら手数料規制やレバレッジ規制は不要なのですが・・・

本来なら・・・と書きましたが、手数料規制やレバレッジ規制を同時並行で具体的に検討せざるを得ないと金融庁が考えている理由と思われる点について、尾関さんも指摘されている≪一部の業者で一日に一回しかカバーしないとか、数時間後とにしかしないといううわさを聞くことがあるが、客が増えて取引量が増えてくるとそれは危険なオペレーションとなる。≫2007年BNPパリバショック直後に金融庁がFX業者に対して行った「一斉点検」では、殆どのFX業者はお客様の注文を≪ほぼ瞬時に≫カバーしていると申告していました。
外国為替証拠金取引業者に対する一斉点検の結果について
ところが翌2008年7月、証券取引等監視委員会が公表した特別検査の結果、市場リスク管理についての申告と実態の重大な乖離が至る処で見つかりました。
外国為替証拠金取引業者に対する検査結果の概要について
金融庁のFX業界に対して抱いている不信、というより裏切られた感情の核心部分は此処でしょう。
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2009年5月11日月曜日

全額信託保全と自動ロスカットの義務化で金融庁説明会

金曜日の午後、如水会館で行われた金融先物取引業協会主催の金融庁幹部による説明会の内容と質疑応答の様子をブログのような場でお伝えすべきかどうか???筆者独特の克明な描写は差し障りがあると考え、ここでは、「今後パブリックコメントを経つつも、金融庁の意向が曲げられることはない」という予想に留めさせて下さい。

あまり、同業者の悪口は言いたくないので・・・・・・

さて、週末の日経新聞で、一番しみじみと読ませてもらったのは、日曜日の「大収縮」特集の右側コラム。スズキ自動車の鈴木会長の「気が付けばコスト削減意識が甘くなっていた」と並んで、「欧米銀行に比べて有利、は幻想」と題して、モルガンスタンレーへの出資の決断が正しかったかどうかは歴史に判断してもらうしかないとの三菱UFJ銀行の頭取の告白。

最近の日経新聞は、経済危機からの底打ち感を演出すべく、なるべく明るいニュースを並べようと努力しています。日経新聞に限らず、経済報道は得てして「順張り」になりがち。かつて80年代のバブル形成過程でも、90年代の同崩壊過程でも、日経新聞の報道姿勢は行き過ぎを助長したと批判を受けました。今回の局面では「逆張り」報道によって贖罪しているかに見えます。

先週末の米国雇用統計も、米国国勢調査の調査員の雇用を前倒しした効果が出ているだけで、失業率は1983年以来の最悪記録を更新しています。危機からの脱出は意外と早いという株価・為替の反応は、意外と長くは続かない可能性があります。正直過ぎる前掲の頭取が、もし立場上許されるのなら、株は空売り、為替は「オセアニア通貨売り・米ドル買い」または「円買い」なのでしょう。
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2009年5月6日水曜日

レバレッジ規制でどうなる?FX業界

去る4月24日の日本経済新聞朝刊のリーク記事以来、FX業界はレバレッジ規制の問題で大揺れ。
http://phxs.blogspot.com/2009/04/fx_24.html

業界関係者によるオンラインのシンポジウムも行われています。
http://www.gci-klug.jp/kisei/

上記はオン・デマンドでもご覧になれます。フェニックス証券もお世話になっているグローバル・インフォの樋山さんが大活躍。「若いのに(!?)知的」との好意的なチャットコメントもありました。

チャットでは後半やっと出てきた悪質なスリッページ(当ブログで言うスプレッド偽装)の問題が、シンポジウムでは取り上げられなかったのが残念(但し、オンライン・セミナー経験者としては、チャットを見ながら視聴者の質問や意見に合わせて話題を調整していくのが如何に大変か理解出来ます)。「高レバレッジは低レバレッジとワンセットで問題であり、悪質業者は確かに存在する」とダイヤモンドZaiの浜辺編集長も指摘。

自由競争を確保するためにも悪質業者を徹底排除することが必要。レバレッジ規制という副作用付き劇薬を撒くしかないのか、現行法の広告規制で検査監督をしっかりやれば十分なのか?レバレッジ規制への反対意見は確かに多いですが、金融庁を批判するなら悪質業者を排除するための具体的な代案を!

尤も、「高レバレッジを楽しんでいる以上、業者の破綻は覚悟しているんだ」とのチャットコメントも!自己責任の徹底した日本人離れした人格者ばかりならば、情報の非対称性や弱者保護を目的とした金融商品取引法も消費者保護法も、そして公務員も不要ということになりますが・・・
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2009年5月4日月曜日

手数料下げ競争、FX業者に警告 金融庁(上)

日曜日の日本経済新聞の朝刊、何と3頁目に外国為替証拠金(FX)取引のお話が堂々登場です。

手数料下げ競争、FX業者に警告 金融庁 採算悪化など懸念

「手数料」とありますが(対面取引中心の古色蒼然とした業者を除けば)手数料無料は当たり前(ついでにロスカットルールも)。日経の見出しは「スプレッド競争」を判り易くするために敢えて「手数料」という言葉を用いたのだと思われます。

スプレッド競争についての、「七転び八起き」の予てからの考え方は、コチラ。

“スプレッド偽装″

金融庁が、全額信託保全の義務化とレバレッジ規制に続き、矢継ぎ早にスプレッド規制にまで言及しようとしている理由として、

①「スプレッドはゼロ銭から」だとか「1銭固定」だとか宣伝している業者について、成り行き注文の実際の約定の値段が表示された値段と著しく違う(故意のスリッページが疑われる事例)が頻出しているとのクレームが金融庁に多く寄せられていたらしい・・・

②低スプレッドに見合うリスク管理の実態がないために、巨額損失を招いて、お客さまに返還すべき証拠金に手をつけたという事例が相次いだらしい・・・

などが考えられます。レバレッジ規制について、証券取引等監視委員会から金融庁への建議という異例の文書にも、その背景が読みとれます。

外国為替証拠金取引業者に対する規制のあり方に係る建議について

これまで、低スプレッド業者の殆どは高レバレッジをセット商品にして、「高レバ」「低スプ」競争を煽る比較サイトやアフィリエート等の“寄生虫”と結託することで、FX業界の勝ち組を装って来ました。

「低スプ」「高レバ」業者の反論も載せておかないと不公平でしょう。故意のスリッページを一旦措くとして、「お客様の注文が増えれば増えるほど、注文を一々外国銀行等にカバー(ヘッジ)しなくても、FX業者内で、より瞬時に売り買い相殺(社内マリー)のチャンスが高まる。よって、一時的な過当競争(採算の放棄)は長期的には投資回収が可能だ」という理屈。しかし、それなら遥かに多い注文数や出来高を捌いている大手銀行やECNと呼ばれるプラットフォーム会社(私設取引所と呼んでも良いでしょう)が、「低スプ」業者ほどスプレッドをタイトに出来ないことを説明できません。

お客様と業者が共存共栄できるための商品設計は、言うは易し、行うは難しのファインチューニング。外国為替証拠金取引そのものを外為法改正の徒花だと見下し一切合財否定する規制緩和批判も、それが銀行では未だに往復2円も払わされる外貨預金などの商品設計を擁護するための理屈だとすれば説得力はないでしょう。理想を言えば、スプレッド競争もレバレッジ競争も規制が入りこまないほうが良い。しかし、財務体力(それは基本的に注文から発生する手数料やスプレッド収益の積み重ねの筈・・・)に見合ったリスク管理が出来ているかどうか?故意のスリッページを収益源にしていないかどうか?という“瞬間芸”を検査や監督の現場に委ねるには、もう一段のルール作りが必要というのは残念ながら現実的だと言わざるを得ません。
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2009年4月24日金曜日

ついに出た!FXレバレッジ規制

(現段階ではリークに過ぎないかも知れませんが・・・)「FX業者は絶滅するのか!?」シリーズ等でお伝えして参りました①全額信託保全の義務化、②自動ロスカットの義務化、よりも大きな衝撃と考えられるのがレバレッジ(預けた証拠金の何倍分の代金の外貨取引が出来るか・・・)規制です。

2005年~2008年にかけて、FXが驚異的なブームになった背景の一つに過度なレバレッジがあります。金融規制が緩いと言われるシンガポールですら、レバレッジは20倍までに規制されていたり、米国においては20倍以上のレバレッジを提供するFX業者は資本金2000万㌦以上でなければならない(FX以外の店頭デリバティブ-所謂CFDはご法度)という規制が存在します。

現在FX業界は、このような規制が準備されている現段階で既に大きな曲がり角にぶち当たっています。リーマン破綻後の信用収縮によるヘッジコストの上昇とお客様のリスクアペタイトの減少。とりわけ、スワップ(金利差)狙いの取引でレバレッジを掛けることは正真正銘『金の生る木』だと思い込ませていたタイプの業者は大手・中小問わず瀕死の状態のようです。

業者の数は3割程度にまで減るという当ブログの予想はいよいよ現実味を帯びて来ました。これはFX業界だけではないでしょう。証券会社も銀行もノンバンクも全てひっくるめて、日本の経済規模を所与とすれば肥大化し過ぎていたのです。虚業が整理・淘汰されることは決して悪いことではありません!

毎回このような話を書きますと、フェニックス証券が廃業をするつもりなのかと親しいお客さまから問い合わせを受けます。宣伝のためのブログではないので(!?)少々気が引けますが(笑)、2009年度のフェニックス証券の事業計画を申し上げます。

今年度、特に上期中に、フェニックス証券は、“2銭でGo!”現在の『Active Zero』を発展させる形でCFDに参入します。フェニックス証券は大証会員ですが、日経225先物・オプションはCFDで参入するのです。

加えて、最速7月、『大証FX』を開始したいと考えております(現在、申請中&システム会社選定中)。『大証FX』は、今朝のテーマ(レバレッジを30倍程度までに規制)に適っているため、今後我が国のFXのスタンダードになる可能性を秘めています。そして何と言っても分離課税というメリットがあります。

高レバを自慢してこなかった店頭FXもしっかり設備投資します。『Forex Line』は主要通貨1000通貨単位の小口取引が同一プラットフォームで可能となります。また、約定スピードが飛躍的に向上する予定です(現在、3段階予定している投資の1段階が完了しており、これでも随分処理能力が上がっています)。

つまり、、、

1000㌦から始めるお手軽FX!⇒フォレックス・ライン
CFDで225や原油などに挑戦!⇒アクティブ・ゼロ
分離課税が魅力、次のスタンダード!⇒大証FX


廃業と身売りが加速しているFX業界において、何故フェニックス証券は攻めの姿勢で居られるのか?それは、レバレッジ規制等が緩かった時代、金利差を狙うのが当たり前だった時代に、FX業者とアフィリエートが結託して安易に新規開拓するという風潮に乗っからなかった。それゆえ、ストイックな経営が保て、固定化された資産や費用が少なくて済んだからです。その証が、2009/3末のフェニックス証券の自己資本規制比率。871.68%という数値は業界内断トツの最高水準です。
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2009年3月18日水曜日

覆面座談会

面白い「覆面座談会」のサイトを発見しました。
http://fx.manepoke.jp/zadan/index.html
覆面・・・すなわち匿名なのが残念(!?)ですが、それゆえの本音トーク!胸が空く思いです。
これからいよいよFXやCFDを始めようと思われている方が増えていますが、その前に必ず読んでいただきたい内容です。
(注意)「七転び八起き」自身はこの座談会に招かれておりませんので、くれぐれも誤
解のないようお願い致します。
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2009年3月10日火曜日

どうなるFX業界!?

“食肉偽装”や“産地偽装”と同じような巨悪がFX業界にも存在するとして、遂に金融庁も腰を上げました。

それは「スプレッド偽装」です。

見た目、つまり広告やデモ画面上の低スプ(+高レバ)に惹かれた多くの投資家が、実際の約定の際に度々大きく価格が不利な方向に動かされ、損失を被ったことから、被害者の多くが被害の実態(価格のスリッページ【注】)をブログにコピー&ペーストしたり金融庁や金先協会に告発したりしたことが背景にあります。

当ブログで予てから指摘してきたこの問題は、冒頭に例示した食肉偽造や産地偽造と同様、真面目な業者を逆淘汰させてしまう巨悪、もっと言えば、真面目な業者ですら「スプレッド偽造」に手を染めないと生き残れないのではないかと疑心暗鬼にさせる不公正競争の温床です。

FX業者は絶滅するのか!?(其の参)
FX業者は絶滅するのか!?(其の壱)
FX業者は絶滅するのか!?(其の弐)

低スプ(+高レバ)の不健全な競争を煽ってきたアフィリエイト(あたかも第三者【多くはブロガー】が心から推薦しているように見せかけているが、実態はリベート付きの“やらせ”広告≒提灯記事)が、故意の【注】スリッページの常態化という約定の実態を隠匿してきたことに対しても、金融庁は牙を剥いています。

「全額信託義務化」に向けて内閣府令改正のパブリックオピニオンを始める予定がどうやら延期になっている金融庁ですが、「スプレッド偽装」は現行法令でも十分矯正出来ると思われます。

不公正競争で取引シェアを急拡大させた「ネオFX会社」への矯正は、影響が甚大。真面目なFX業者も火の粉を被るかも知れません。しかし、痛みを伴う改革なしに、FX業界の健全な前進は不可能。業界全体への不信という火の粉に耐えて経営することもまた今日FX会社に求められているチャレンジだと自認しつつ、金融庁の断固とした対応を期待します。

【注】(故意の)スリッページ⇔発注と約定の時間差により相場が投資家に不利な方向に変化した場合に、それを投資家が事前に容認したうえで約定する価格スリップと区別しなければなりません。
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2009年1月30日金曜日

為替操作国呼ばわりされた中国と偽ドル工場呼ばわりされた北朝鮮

●為替操作国と名指された中国、米国新政権に対して、最大級の非難-欧州外遊中の温総理(1/29FT)
ダボス会議出席をはじめとする欧州各国歴訪で、自国に次ぐ世界2番目の輸出大国ドイツを訪れた温家宝総理。メルケル首相との対談後の記者会見で「人民元政策は市場のニーズに合致したものであり、柔軟性に富んでいる。

先週、ガイトナー米財務長官が、長年の“タブー”を破り、中国に対して、輸出を保護するために人民元を人為的に操作していると批判したことに対する声明。世界の為替相場がジェット・コースターのようなボラティリティに晒されているが、それが中国のせいにされるとはけしからん、と。

ところで、温首相が訪ねたドイツは、ほんの20年弱前までは半分は共産圏でした。2月号のFACTA(月刊:ザ・ファクタ)で、人気コラムを連載中の手嶋龍一さんは、東ドイツ出身の欧州中央銀行(ECB)政策担当者をベルリンまで訪ねてきた北朝鮮高官が、

「わが朝鮮民主主義人民共和国が偽ドルを刷っていると中傷するものがいる。笑わせてはいけない。偽ドルというが、ニクソン・ショックで金とドルの兌換をやめてしまったドル紙幣のどこがホンモノだと言うのか」

と語ったという話を伝え聞いたと書いておられます。偽物のようなホンモノ、ホンモノのような偽物。このテーマは、昨年来、当ブログで追っかけていたものですが、北朝鮮高官の「不換紙幣自体が偽物」発言はさすがに詭弁。しかし、通貨とは何ぞや?不換紙幣とは何ぞや?基軸通貨とは何ぞや?なかなか痛いところを突いた、見事な詭弁です。

西側社会への意外にも太い地下水脈、贋金作りという大罪を平然と弁護する詭弁能力。勿論、皮肉で申し上げているのですが、北朝鮮の国力はあなどれないと感じます。

【本日最大のニュース】
わが処女作「“為替力”で資産を守れ!」(アスキー・メディアワークス、1,260円)が、いよいよ本日発売開始となります。昨日今日のブログの土台となっている、深くてわかりやすい経済その他の読み解き術が満載の書籍。

今日の東京はあいにくの雨ですが、傘をさしてさっそく「書店へGo!」

ついでに、

外国為替証拠金取引をやるなら、フェニックス証券。主要通貨ペアのスプレッドが「2銭でGo!」
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2009年1月28日水曜日

FX業者は絶滅するのか!?(其の参)

昨年の日本経済新聞、今週の読売新聞、NHKの報道にもありました

「FX会社の顧客資産に、《証券会社並みの》全額信託保全を義務付けへ」

の話。いよいよ来週にも、内閣府令改正案が金融庁から公表され、同時にパブリックコメント募集となりそうです。

改正のポイントは3つ。

①FX顧客から預った証拠金(=顧客資産)は、全額、信託銀行で区分管理されなければならない。

これまでの区分管理ルールは、預金(但し別名義口座)、一部信託(残りはカバー先の外国銀行等への差入証拠金)という方法が許されていたのが、今後は駄目になるということ。

最大の論点だったLG(Letter of Guarantee=信託銀行がカバー先の外国銀行等に差し入れる保証書)方式が認められるかどうか、の結論も、原則駄目ということになりました。原則に対する例外は、債務不履行時のLG実行の際、カバー先債権が顧客返還債権に劣後する信託保全のみ。

LGに依存して《全額信託だぁ!》と顧客保護をアピールしていたFX会社にとっては、茫然自失となるルール改正なのです。

②ロスカットルールが存在しない業者、または機能していない業者に対する取締り。

対面中心のFX会社に該当業者が存在するらしく、当然のルール改正だと思われます。

③極端な低スプレッド、極端な高レバレッジを標榜しているFX会社に対して、適正なリスク=リターンのビジネスになっているのかどうか監督監視を強める

最後のポイントは内閣府令改正ではなく、監督指針改正で対応するそうです。

金融庁としても、上記のうち特に①が、FX業界に凄まじい激変をもたらすことは承知のうえです。すなわち、
①’LG方式は認めるが、全額信託は義務付け
①”一部信託(+カバー先預託)は認めるが、預金は認めない
という比較的緩やかな規制強化案と比較検討していたものの、まさしくリーマンショックにより、LG方式を特別扱いする道理は消えた。よって最も厳しい規制強化案に落ち着いたと考えられます。

今後の猶予期間中に、増資等により自己資本規制比率を増やせる業者がどれだけあるかにもよりますが、現時点では、区分管理に関して①”に落ち着いていたとしても、業界の3分の1以上が、①’であれば3分の2以上が廃業または業務停止に追い込まれるという意見があります。

ましてや、今回の結論①では、生き残れるのは健全経営の極々僅かなところに留まってしまう
でしょう。パブコメで大手を含む殆どの業者からの反論-特に《LGだけは全て認めろ》等-が予想されますが、逆に、「有事でのカバー先優先のLG」は認められなくなるぞ、と金融庁に指導され、わざわざ高コストな区分管理方法に変更した優良業者にとっては中途半端な妥協は許されないでしょう。

今日のブログはフラッシュニュース。本来はもう少し背景なり、区分管理の意味合いや重要性、そして上記③の「向こう見ずなスプレッド競争やレバレッジ競争」への影響について解説をしたいところです。私自身は、幸いにも、こうした動向を相当適度予見することが出来て、FX会社を経営してきたつもりです。

おかげさまで、明後日発売の『“為替力”で資産を守れ』で、今日のフラッシュニュースと同時に解説申し上げたい内容を、一章を割いて、たっぷり書かせていただくことが出来ました。FX取引に関わりのある皆様、どうぞ書籍をお手にとってご覧になってください。

参考過去記事:
FX業者は絶滅するのか!?(其の壱)
FX業者は絶滅するのか!?(其の弐)
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2009年1月8日木曜日

FXで夢を叶えよう

今日のタイトルは、珍しく、フェニックス証券の宣伝コピー。年初から2月いっぱいまでのキャンペーンです。口座開設をしていただき、どの通貨でもいいので、一回取引をしていただくと3000円のキャッシュバックというもの。宣伝コピーは、東欧通・中央アジア通で知られる(?)フェニックス証券の外国為替部長が考えたものです。

プレスリリースもしました。

プレスリリースでは、同時に、毎日お読みいただいているこの「七転び八起き社長のFXダイアリー」が1月31日に書籍化され出版されることもアナウンスしています。書籍の題名は、

『為替力』で資産を守ろう~世界を見る、経済の先を読む力がつく~

というものです。ブログの内容を抜粋し、現時点でも古びていない記事を中心に、テーマ毎に整理しつつ、日々ブログを読んでいただくときと同様の臨場感や緊迫感を失わないように、原則加筆訂正は殆ど行なわっておりません。森永卓郎さんや宋文洲さんとの対談、『為替力』が身につく用語解説など、書籍ならではの構成をお楽しみいただければと思います。

書店やネットでお買い求めいただければとても嬉しいですが、ちなみに冒頭のキャンペーン「FXで夢を叶えよう」の特別プレゼント企画にもなっております。どうぞご活用下さい。

今週は書籍の準備作業が大詰め。ブログの更新が順調ではなくて、まことに申し訳ございません。
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2008年12月19日金曜日

米ドルはどこまで腐敗するのか?為替介入はありやなしや??

●原油価格が急落、米国政府は自動車産業の破綻処理を熟考(12/18IHT+Reuter)
原油価格は9%下落し、過去4年の最安値を更新(1バレル36㌦)。OPEC減産合意と米国ゼロ金利政策導入にもかかわらず、世界経済の落ち込みが長く、そして深いとの懸念で。

米国自動車産業は、原油価格の乱高下の一番の犠牲者とも言えるが、政府による救済のプロセスの一部として破綻処理が持ち上がってきた。ブッシュ現大統領の「無秩序な破綻では衝撃が大きすぎる」との発言が、管理された破綻処理を現政権が真剣に検討し始めたとの憶測を呼んでいると。

一方、
●オバマ政権の新経済閣僚候補、最大で8000億㌦の財政出動を議会に提出(12/18WSJ)
減税、社会保障、学校建設、エネルギー効率化投資、ブロードバンド接続、健康情報分野の技術開発・・・と大枠が示されている。

米国の国内総生産は約12兆㌦と日本の約2.5倍。これに対する米国の公的債務は、今世紀に入ってからは対国内総生産比で40%弱を維持しており、同比率が160%~180%の日本と比べて遙かに健全。0.8兆㌦の追加財政出動など全く問題ない、と勘違いしてはなりません。

伝統的なマクロ経済学では、財政政策と金融政策の違いを強調し過ぎてきましたが、国債をどれだけ買うか売るかという調節手段に留まらず、民間企業の債務や株式、不動産(含む証券化商品、不良債権)まで中央銀行の貸借対照表に乗っかる可能性がある「代替的金融政策」の時代にあっては、財政と金融を区別することが殆ど無意味になってきています(我が国の「財政と金融の押し付け合い」やら「政府発行通貨が景気対策の起爆剤になる」という議論も、いつぞやのデノミ同様、意味の無いお祭騒ぎに過ぎません)。

つまり、米国の国家管理債務の金額を洗い出すうえで、FRB絡みのバランスシートの膨張もきっちり合算しなければ、米ドルという通貨の腐敗度合いを査定することは出来ないということです。

今年だけで、FRBはCP買い入れ枠1兆8000億㌦、入札方式による資金供給枠9000億㌦、住宅ローン消費者ローン対策枠8000億㌦をなし崩し的に意思決定しています。当ブログ独特の表現で金融機関モラルハザード案件では、FRBと政府とあわせて、AIG向け1500億㌦、シティグループ向け2500億㌦という超大口案件の影に隠れてベアスターンズ救済関連290億㌦も、今から思えば大した金額ではないものの3月当時は随分物議を醸したことを忘れてはならないでしょう。

以上は、未使用枠もあるので合算が難しい部分ですが、コミット済み(枠取り済み)の財政政策絡みではファニーメイ・フレディマック支援2000億㌦(住宅関連法案)、不良債権救済プログラム7000億㌦(金融安定化法案)が2大モラルハザード案件は当然のことながら合算されなければなりません。

今、筆者の手元にはないのですが、FDIC(連邦預金保険機構)をはじめとする公的機関や地方公共団体等の債務も考慮に入れる必要があります。この点、FDICはダントツに大口であり、今年、銀行債務と決済性預金の保証枠1兆9000億㌦が決定しています。

繰り返しになりますが、枠取りはされても未使用部分があちこちにあるため全部を合算させては可哀想ですが、以上がなし崩し的に使用されると、公的債務/国内総生産の比率は、どんどん我が国の水準に収斂すべく悪化すると見るべきです。

ただし、公的部門の「バランスシート」と呼ぶくらいで、負債があればその反対側には資産があるわけで、資産の質を問わずして負債の額だけで通貨の腐敗を決め付けることは論理的ではありません。《銀行の不良債権を時価以上で政府または中央銀行が買い上げてやり含み損または実現損部分を増税ではなく赤字国債でファイナンスし、その国債を中央銀行が買い切りオペで現金化する》タイプのポリシーミックスが財政出動策に占める割合が大きければ大きいほど、その国の通貨はハイパーインフレ等の経路を通じて坂道を転げるように腐敗すると言わざるを得ません。

昨日夕刻以降、中川財政相の為替介入を仄めかす発言等で、一時急激な円高是正がありました。但し、為替介入が日銀単独に留まり、協調介入が成立しないとなると、「(欧州や中国を見習って)米ドルの“腐敗化政策”を意図的に取ろう(政権交代のドサクサに紛れて、敢えて明言は避けつつ、ドル高政策を180度転換しよう)」という自国通貨の切り下げ合戦Dirty Floatへの宣戦布告だと読み取らなければならないでしょう。

今朝の二つの記事は、米国の政権交代が保護主義に向けて思い切った舵取りが切られるかも知れないという文脈で読み解く必要があります。
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2008年11月27日木曜日

ボルカー元FRB議長が現役復帰

●オバマ次期大統領、元FRB議長のポール・ボルカー氏を経済回復諮問会議の議長に指名(11/27WSJ)
グリーンスパン氏の前任者である御歳81歳のボルカー氏。レーガン政権のもとで、FRBの独立を守る数々の施策と発言が記憶に新しい。

さて、昨日ブログをお休みさせていただいたのも、またまた地方出張が言い訳。金融庁幹部の皆さんからのお話は主に証券行政がテーマでしたが、驚いたのはやはりFX業者の話。自己資本規制比率をわざと高い数字で申告していたが実際は債務超過。破綻後はもちろんお客様への預託金返還が不能という事態がここのところ頻発している。FX業者を監督している立場として「情けない」というご発言までありました。

それを言うなら、私は同業者の立場としても「情けない」し「腹立たしい」気分。FX業者のビジネスは真面目にシステム設計をし、忠実にFX注文をカバー先にヘッジしている限り(カバー先がリーマンブラザースのような事態にならない限り【注:但しリーマン日本法人は破綻したものの資産超過】)、大儲けも出来なければ大損して自己資本を毀損するビジネスではない筈。なのに、ドル円で1銭だのゼロ銭だの、レバレッジが300倍だの400倍だのと競い、異業種からの参入が絶えず、気が付けば130社を超える業者が蠢くのは、証券会社の(上場株式の)信用取引においては決して許されない、、、

×××信託銀行による「全額区分管理」が義務付けられていないこと×××

×××お客様の注文に対する「向かい呑み行為」が禁止されていないこと×

この「車の両輪」を悪用し、失敗すれば「破綻⇒顧客資産返還義務不履行」を覚悟すれば、大儲けできるという算段に基づいている点を指摘せざるを得ません。インターバンクのドル円のスプレッドをどんなに忠実に「良いとこ取り」をしても、エンドのお客さまにゼロ銭やら1銭を提示することは無理。「向かい呑み行為」という、《業者が勝つには顧客が負ければよい》という利益相反の発想を前提としているからこそ、FX先進国の欧州アジアで考えられないスプレッド競争とレバレッジ競争が我が国で過熱してしまったと見られます。

リーマンショック後の2ヶ月で金融庁の幹部の皆さんは上記指摘を迅速にご理解していただけたのだと拝察します。これから急速に起きるといわれるFX業者の淘汰が、どのような物差しで実現するのか、大きなヒントになると思われます。
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2008年11月20日木曜日

広告宣伝する余裕があるなら借金を返せ!

「債務超過で余命幾許かと噂される自動車会社が新車を発表したのか?」と勘違いさせるようなバナー広告がウォール・ストリート・ジャーナル紙オンライン版に出ていました。

広告担当を兼務しているFX会社の社長としては、このメディアのトップページのこの場所の広告料が莫大なものであることが想像できます。自動車に電源コードがくっ付いている写真をクリックすると、GMを救済しないと大変なことになるというYouTubeの動画などが出てきます。

ユーチューブですので、コメント不可の設定にも出来るのですが、あえてコメントを開放し、スパムメール、無関係な話題、名誉毀損以外は削除しないとGM側は書いております。それにしても、名誉毀損とまでは行かないとGM側が判断したのか、閲覧回数やコメント件数が多すぎて削除が追いつかないのか、米国経済を人質に取ったかのようなGMの態度に露骨な怒りを表しているコメントが消されず目立つのは皮肉です。

我が国なら、ネトウヨ(私も実名を明らかにしていなければ主張的には近いかも^^;)、チャネラーの如きと一笑に付されてしまうのかも知れません。日米ネット文化の違いをちゃんと理解せずに申し上げるのは危険ですが、この期に及んでGMが行なった広告投資の効果と反響を、米国国会議員たち(特にオバマ次期大統領を含む)がどう受け取るか、資本主義陣営の長年の牽引役としての矜持を示すのかどうか、大いに注目です。

今朝のブログで、GM破綻で株安ドル安と書きましたが、GM救済でも結局ドル安なのではないでしょうか?

最後に、先週末から今週にかけて2度にわたり書かせていただいたFX業者は絶滅するのか!?が大変反響を頂いております。FXのお客さまからもお客さまでない方々からも応援のメールや電話を頂いております。案の定誤解を招いてしまった部分が廃業する勇気を持つ社長の件。謙遜のつもりで書かせていただいております。決して廃業する予定はございませんし、現状ではFX会社130社のなかで8割が廃業または倒産したとしても残りの2割のなかに入ろうとずっと努力してきており、また勝算もございます。ご心配をお掛けし申し訳ございませんでした。
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2008年11月17日月曜日

FX業者は絶滅するのか!?(其の弐)

●ロンドンでは12人に1人が失職(11/17FT)
2010年末までの約2年間で、370,000人程度が職を失うと予想されるロンドンこそが、イギリス全体のなかで景気後退recession(2連続四半期経済成長がマイナスになること)の影響を激しく受けると、英地方自治協会the Local Government Associationの分析。

首都ロンドン以外の都市、例えばニューキャッスル、リーズ、マンチェスターは意外と景気後退の影響をうまく凌げるのだそうです。イギリス全体は1,700,000人が失職すると予想される中、地域格差は相当のものだと同レポート(失職率ではロンドンの7.9%が最悪で、次いで北西部6.7%、南東部6.3%、南西部5.1%)。

朝のブログにもありますとおり、ここでは地域格差は都市部が金融で潤い、地方が汗と油と土に塗れて働けど働けど・・・じっと手を見るという意味とは逆だということに注目です。

またこれまで、当ブログやオンライン・セミナーで繰り返し申し上げていたイギリス(ロンドン)こそが金融危機(信用収縮)の悪影響を最も激しく受けるということを反映したレポートではありますが、当然、日米とも他人事ではありません。国民所得に対する金融業の貢献度はイギリスが9%で最も高く、次いで米国8%、日本7%ではあります。この数字、素直に五十歩百歩だと認めるべきでしょう。

話が逸れるようですが、先週金曜日に選ばれるFX会社とは、社長が廃業する勇気を持っている会社だと書かせていただきました。勿論、自分が経営する会社の寿命は業界のなかでは相当長いほうだという自信を背景に言ってはいるのですが、外部環境次第でどんなに努力しても廃業せざるを得ない、業界全体が絶滅するという可能性はなくはないからです。そのときに《悪あがきして倒産》ではなく《潔く廃業》というのが望ましいという考えです。

で、その万が一の場合に貴方はどうするのですか?この答えは、一緒に働き戦ってきた従業員の仕事を最大限確保し、自分を含めた全員にとって働き甲斐のある職業、きっとその場合は金融以外の仕事となるでしょうが、それを築くことだと考えています。その心構えや準備まで出来ているというと、本当に廃業してしまうのかと心配されるので具体的には書きません。繰り返し申し上げますが、フェニックス証券程度の自己資本規制比率がないと、FX業務を継続できないかも知れないくらいに、規制を含めた外部環境は厳しくなっています。

すみません。結局、またまた宣伝になってしまいました。
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