2013年4月5日金曜日

黒田=アベノミクスをちゃんと理解して、日本を取り戻す

長期金利0.3%割れ目前というのは、さすがにバブルだろうと思いつつ、住宅ローンを借りようにもまずは物件探しからはじめなければならない状態で、しばらくこの状態が続くとありがたいものです。

それにしても、OECD加盟国の中でも最悪水準の対GDP比での財政赤字または国債発行残高の日本の金利が、短期~長期問わず、ダントツに低いというのは、皮肉であることを通り越して、ちゃんとその理屈を理解しておきたいところです。

今こそ、外国為替証拠金(FX)取引を始めよう、(時間がないから順張りタイプの自動売買ソフトを購入しよう)、金や株式や不動産に投資をしたいという方々が急速に増えています。が、どれを買って、どれを売れば良いのかというアセットクラスの選択を考えるうえで、この「不健康な国債利回りの不気味な低さ」を説明づけることは重要です。

読者のみなさんが、もしも土曜日の朝、電話で叩き起こされて、出てみたら街の金融業のコールセンターからで、「突然ですがあなたはいま無担保で100万円借りることができますよ。どうぞお借りください」と言われたとします。「これはラッキー」と思って、すぐに借用書に判子を押すというひとが何人いるでしょうか?

ほとんど居ないでしょう。

ただし、もともと「貸家を追い出されそうなので住宅を取得しなければならない」とか「仕事またはプライベートで自動車を購入しなければならない」状況で、常日頃から、どこかローンを下ろしてもらえる金融機関はないかなあと探しまわっていたという状況では、結論が全く変わってくるでしょう。

黒田=アベノミクスで、株式相場が上昇しているのは、後者の「借りたいという具体的『使途』のある人が多数派である」という前提の動きです。

いっぽうで、黒田=アベノミクスで、債券相場も上昇している(国債の利回りが低下している)のは、前者の「借りることができるからと言って、借りるつもり(≒具体的な資金使途)など無いという人が多数派である」という前提の動きです。

このふたつは矛盾しますから、これはバブルであって、このバブルの解消は、国債利回りが再び上昇するか株式相場が再び下落するかどちらかの経路で行われます。

例えば、日本国債(長期~超長期)の売り、不動産株(またはJREIT)の売り、米ドルの買いという投資戦略が考えられます。

最後の、米ドルを買うというのがなぜ出てくるかというと、有価証券のふたつのアセットクラスを売っているのでその売却代金で何か買うとしたら、、、、財市場との連動も考えて、、、、米ドルを検討してみたのです。

以上の筋道には、海外からの資金(資本)の流出入が考慮されていません。アベノミクスの三本目の矢とされる規制改革次第では、海外から投資資金が流入してきて、「邦銀が国債を換金しなくても、民間投資のファイナンスが可能」という状況が実現します。

さて、外国資本が日本で投資をもう一度してみたいと思える環境とは何でしょうか?この間の、日経CNBCさんのTraders Barの収録直後に、同番組のスポンサーである三菱地所さんと立ち話をしました。三菱地所さんが立てていらっしゃるようなハイスペックのオフィスやレジデンシャルに外国人がもう一度戻ってきてくれるかどうか甚だ疑問だという話をお聞きして、わたくしの反応は「法人税減税、もしもそれができなければ東京都の法人事業税は限りなくゼロにする。英語を第二公用語に、たとえそれができなくても、東京都内および国内のプロ投資家間の金融取引・商取引の契約書類は英語を公用語とすることができる、せめて欧米並の解雇法制の自由化・・・」。

震災や原発のハンディキャップはどうすることも出来ないかもしれませんが、以上をやれば、かつての中国のように、現在のインドネシアのように、外国資本や外国人が戻ってくると思います。最後の解雇法制については議論があると思いますが、正社員と契約社員の区別をなくせとは言いませんが、正社員のほうが契約社員よりも平均給与が高いというのは昔からわたしには理解できませんでした。野球選手が正社員だったら、あんな給料払えるでしょうか???




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2013年3月25日月曜日

キプロス支援合意とイスラエルで海開き

今朝からのこのニュースの確定が微妙であったことは、ウォール・ストリート・ジャーナルの速報と、フィナンシャル・タイムズの速報とを比較しても、数時間のズレがあったことからわかります。

キプロス議会の混乱もあって、先週一週間二転三転したこと、その他の南欧のより大きな国々にとって先行事例の変更になるかもしれない重要な判断となることから、一部有力メディアが慎重な報道姿勢に徹したことも理解できます。

結果をわかりやすく言えば、預金のペイオフの形を、日本型(1000万円以下の預金者を守ること)にしたために、議会が納得して、それによりキプロスとしても応分の痛みをわかちあうということで、当初どおりの外部(ECB、EU、IMF)からの支援が再度決まったというものです。

詳しくは、

ウォール・ストリート・ジャーナル
http://online.wsj.com/article/SB10001424127887324789504578380550995616128.html?mod=WSJAsia_hpp_LEFTTopStories
フィナンシャル・タイムズ
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/03c5e484-94ff-11e2-b822-00144feabdc0.html#axzz2OWlwu9m1
ロイタージャパン
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92O01A20130325

朝から多くのアナリストが、先週週初来のキプロス問題でのユーロ通貨の相場が「行って来い」であったことを過剰なマッチポンプのように評価していて、むしろ本丸はイタリアだスペインだという話になっています。「本来、日本株には影響の少ない材料のはずだった」などなど。

市場の振れが大きすぎることに対して冷静な見方を伝えることには一理あります。しかし、キプロスが、ユーロ圏の破綻懸念国の救済の歴史のなかで前例を踏襲しないかどうかというのは極めて重要だったのです。ここまで揉めた最大の理由は、ロシア人たちをダントツの筆頭とする海外マネー(その多くが外交的にもユーロ圏であることはおろかEUとも距離がある国々だったりする)からの租税回避を目的とした銀行預金の肥大化という現象があって、これが特に事実上唯一の債権国であるドイツからは、アイルランドやポルトガルやギリシャと同様の処理ということでしかたがないとはいえなかったわけです。

国の大きさや金額の多寡とは意味の異なる次元の問題で、許されるモラルハザードと許されないモラルハザードとの間に線が引かれる可能性はあったのです。許されない敵に塩を送ってまで信用秩序を守ってやろうなどというお人好しは大陸の国々には存在しないのであります。

キプロスへの裁定によって、イタリアとスペインが安全圏に入ったと考えるのは理に叶うと思われます。ただし、それらの国々のなかで特にパフォーマンスの悪い銀行は、ユーロ圏防衛のための人身御供として、スムーズにして大胆な破綻処理が適用されるリスクは残るでしょう。

こちらは、まるで対岸の火事と言った風情のイスラエルはテルアビブの一足早い海開きの写真だそうです。
http://jp.reuters.com/news/pictures/rpSlideshows?articleId=JPRTR3FANW#a=8

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2013年3月22日金曜日

Yes, we can.からIt's possibleへ。オバマ大統領のイスラエル演説

オバマ大統領は、政権交代となる2008年秋からの数々の選挙演説や就任演説で、スピーチの才能を遺憾なく発揮し、本国だけでなく日本でも過剰気味なブームをもたらしました。大統領スピーチで英語を勉強しようというような便乗本も書店に並びました。

かく言うわたくしもちゃっかり便乗させてもらい、当時務めていたFX会社で、「イェス、ウィ キャンペーン」というのをやりました。結果は、オバマ大統領の似顔絵がいまいちだったのと、時まさにリーマン・ショック直後で、さっぱりでした。

当時から言われていたように、オバマ大統領の演説原稿は、コピーライティングスキルに長けたスピーチライターによるものらしいです。このことはオバマ大統領への評価を下げるものではまったくなく、あらかじめ他人が用意したランゲージであるにもかかわらず、それをあたかもその場で迸った言葉であるかのように発話するというスゴ技はまさに天晴です。

よく言われているように、日本ではこういう芸当ができる政治家を寡聞にして知りません。落語という、その才能で以って競演する伝統話芸があるにもかかわらず、です。

このオバマ大統領が過去4~5年至る所で行なってきた演説のなかでも、ダントツに最高傑作となったのが、日本時間昨夜深夜のイスラエルの、パッと見では体育館のようなところで若者中心に集められたなかで行われた平和演説だと思います。

http://thelede.blogs.nytimes.com/2013/03/21/highlights-from-obamas-speech-in-israel/?ref=middleeast

2009年に誰が見ても時期尚早であるノーベル平和賞を受賞してしまい、いっぽうで前政権のイラク戦争の負の遺産の処理を任さえるという、ミッション・インポッシブルに挑戦しつつ、支持率の低下を余儀なくされた一期目とはがらりと異なるスタートを象徴しているのが、今回のイスラエル訪問です。

隣国のキプロスと並んで、今まさに中東はかつてないほど熱いと言えます。

昨夜深夜の演説の凄みは、まず表面的には使用されている表現が実に巧みであって、イスラエル人のプライドを傷つけないように十分配慮しながらパレスチナ入植を抑えるように主張を譲らない点がまず挙げられます。そのためには彼の演説の特徴である抽象論や家族の喩えがくりかえし使われています。印象的で拍手を呼びスタンディングオベーションで締めくくらせる仕掛けが見事に機能しています。アカデミー賞受賞作品のリンカーン顔負けの言語力と演技力です。

しかし、今回の演説を、リンカーン並に、人種や民族の壁を乗り越える民主主義と平和主義の誓いであると捉えてお仕舞いとは言えません。

第二期目就任後も何度も財政の崖と格闘しているオバマ大統領にとって、イラク戦争に代表される中東紛争への軍事的な介入は、もはや予算オーバーになってきてしまっているのでしょう。

イラク戦争への負担額はこれまでの累積(だけ)でも3兆ドルにのぼるという説があり、これは米国の国家予算の1年分を上回っています。たった一年分かと安心するところではありません。仮に戦地からの完全撤収ができたとしても帰還兵への補償はずっと続くからです。敢えて比較するために例示すると東日本大震災の被害総額を内閣府は約17兆円と試算しています。これが巨額であることは論を待たないですが、それでも日本の国家予算の2割程度なのです。

オバマ大統領のイスラエル訪問と名演説は電撃的でもありタイムリーでもあります。と同時に、その内容もタイミングも、ほかに選択肢はなかったという理解も必要でしょう。

戦後、日本は米国の妾であると多くの政治家が自虐的に言ってきたところ、今回のオバマ大統領のイスラエル訪問の言葉の端々から、日本は確かに妾でも3号以下であることがはっきりしました。それはそれで歴史的な意義があります。問題はここまでイスラエルをおだててパレスチナ問題やイラン問題、さらに周辺国のイスラム強行派との雪解けが進まないときに、もうなすすべがないことを警戒しておかねばなりません。

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2013年3月18日月曜日

アベノミクスに水を差すキプロス島の取り付け騒ぎ

土日の海外メディアは、バチカンの新法王フランチェスカ一世による現代イタリア語での演説や、インドや中国など、様々な話題がひしめく中、何と言っても、かれこれ4年に及ぶユーロ危機のなかでもはじめての一般大衆預金のペイオフ強制実施の決定と、それに憤慨してATMに列をなすキプロス島の人々の話題を繰り返し報道していました。

債権カットの率で言えば、ギリシャのほうが派手でしたが、こちらはギリシャ国債が対象。キプロスについては、大口と小口で若干比率がことなるものの、全預金者を対象とする一律カットです。

欧州時間の土曜日未明に、その案を飲んだキプロス政府は、用意周到にも週明け(キプロスは月曜日も祝日で、銀行営業日は火曜日)にも預金の現金引き出しが出来ないように措置を講じたとされています。

したがって、理論的にはATMに並んでも仕方がないところですが、示威行動を起こすには小さい島の銀行窓口が並ぶ目抜き通りはうってつけ。直近の報道では、現在示されている預金カット率(6.75%~9.9%)の再見直しをかけて同国首脳がドイツ、ECBを含む「預金者負担を条件にした金融支援」を主張してきた向きと、もう一晩二晩徹夜に付き合ってくれと言わんばかりに掛け合おうとしているようで、小国の大騒ぎは効果があったのかも知れません。

2008年以来、金融危機が起こるたびに、モラルハザードと致命的かつ瞬間的デフレとのあいだでどのようにしてバランスをとるかを分析議論してきた当ブログ。欧州危機においては、先例となるアイルランド、ポルトガル、ギリシャでは手を付けなかった預金者のモラルハザード問題についに手が付けられてしまったというから、たいへんです。

健全な金融システムと成長可能なマクロ経済を導くために必要な教訓を得るための実験かも知れませんが、実験室が小さくて密閉されているから爆発しても平気だというのは大きな間違い。例えが悪いですが、これは実験は実験でも、核実験みたいなものです。

スペインやイタリアなどに飛び火しかねないということを十分に恐れておく必要はあるのです。取り付け騒ぎとは、そういう性質のものであり、あってはならない風説の流布と大いに関係します。

「七転び八起き 毒入り餃子」で記事を検索してみてください。

それでも、わたしは、この週明けのユーロその他の通貨のギャップダウンの始まりは恐れていたよりはまだ小幅で良かったと胸をなでおろしています。欧米の報道機関によっては、「これは終わりの始まりだ」というコメンテーターもいるのです。しかし、個人的には9割以上の確率で、ドイツもその他債権国も国際機関も、理屈をつけてキプロスは例外にしようと主張すると考えています。さまざまな背景によってキプロス経済は異常だったのです。アイルランド以上にGDP規模に比較しての金融セグメントが肥大化しすぎていたこと、預金者の多く(もっと言うと住民の多く)がロシア由来であることなどなどです。
  人口       (百万人) GDP   (兆円) 銀行預金 (兆円) 銀行預金/GDP (参考:ひとりあたり 預金残高)
日本 126.5 475 590 1.2
4,664,032
キプロス 0.8 2 84 42.0
105,000,000
(注)出典:全国銀行協会、ウィキペディア、ウォール・ストリート・ジャーナル


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2013年3月13日水曜日

Trader's Bar、来週開店

バーはバーでも乃木坂のワインバーではありません>゜))彡

ヴィレッジはヴィレッジでも、乃木坂のおとなの隠れ家イタリアン(わけあってフランス語読みの「ヴィラージュ」を名乗っています)ではありません(●^o^●)

東京・大手町に新しく出来た「東京金融ビレッジ」
http://www.fine-tokyo.com/
に、一晩限り営業する市場関係者だけが集うTrader's Barに、光栄にも参加させてもらいました。

昨夜収録が無事終了、その様子は、

<日経CNBCでの放送>
3月22日(金)21時~21時30分初回放送
同日23時~
23日(土)10時~
24日(日)18時~


プラス、予定では3月25日(月)からNIKKEI CHANNELという日本経済新聞社の映像サイトで視聴可能だそうです
http://channel.nikkei.co.jp/

わたくしは、イスラエルの国情のことを聞かれるかと思っていたところ、アメリカ経済の今後という質問が飛んできて、ハイボール見立てのウーロン茶を片手に、喋らせてもらいました。参加者多数で30分番組ゆえ、どの程度編集されているかわかりませんが、機会がありましたら、御覧ください。

この番組を通じて、また多くの個性的な市場関係者の方々と再会を果たし、出会うことが出来ました。重ね重ね、日経CNBCさんに感謝です。

本業であるはずのわたくし顔負けのバーテンダーを見事に演じられていた、小川まどかさん、岡村友哉さん、お疲れ様でした&ぶらあヴぉ。


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2013年3月5日火曜日

行動ファイナンスは面白い

たとえば、イチローとか落合博満のような打者が、前の打席までで既に3打数3安打で迎えた第4打席、多くの野球解説者は「きょうは特に当たってますからねぇ。うちとられる確率は低いでしょうね。敬遠でしょう」とコメントするでしょう。いっぽうこのような実績のある打者が3打数無安打で迎えた第4打席だったらどうでしょう。「そろそろヒットが出てもおかしくないですね。ピッチャーもそのように不安に感じるものです」というコメントも良く聞かれます。

サイコロに代表されるように、一投毎の試行が独立の事象と考えられる場合には、上記のような野球解説者のコメントはナンセンスとなります。野球の場合は、一打席ごとが独立事象とは考えられません。その日の体調が全打席までの結果に現れていることとか、先発投手との相性や、先発投手が早々に降板して敗戦処理級の投手が次々と打たれている等々の試合展開とか、前打席までヒットが(何本か)出ていればプレッシャーが減るとか自信が増すとか、いろいろと複雑な事情が含まれるので、野球解説者の薀蓄話を楽しむ余地があるというものです。

行動ファイナンスという学問が照準を当てているのはたとえばこういう現象です。さきほどのサイコロで、「6」が続けて3回も出た(この時点で確率0.46%)のだが、更に4回目に「6」が出る確率が、なんだか過去3回さまざま出鱈目な数字が出たのだが(「1」「4」「3」とか、「6」「5」「2」とか)、次の4回目に「6」が出る確率より低いように思えてしまうのが人情だが、これは合理的ではない。えてして人間というものは合理的に物事を考えられないことがあるのだと説いているわけです。

問題は、これを相場とか投資に当て嵌めようとしてみた場合どうなのか、ということです。1分か、1時間か、1日か、どれでも良いのですが、どれかの単位区間で、例えばユーロドルの相場が、「下落」「下落」「下落」と続いた場合に、次の区間が「上昇」となるか「下落」となるか、半々の確率と言えるのかどうか??言えたとして、それは我々人間の直感とずれていないかどうか???もしもずれていたら、売買を機械化・自動化することで直感を修正するメリットを投資の成果として回収できるかどうか????これが課題です。

☆☆☆☆

実は、直前の記事でご報告した慶応義塾大学の特別授業にわたくしを招聘してくださったのは、わたくしが以前に務めた会社の同僚で、同大学院経営管理研究科(ビジネススクール)林高樹教授でして、彼の専門分野こそ、わたくしが行った授業のないようとはあまり関係のない、この行動ファイナンス、、、より厳密には「意思決定分析」なのです。

より具体的に他己紹介させてもらえれば、「高頻度データを金融意思決定(リスク管理やトレーディング)に活用する(ための統計的方法論の研究開発および実証研究」をなさっているのです。

これは、まさしく、アヴァトレードジャパン代表取締役としてのわたくしのビジネスパートナーの皆さまがありとあらゆる形でやってくださっていることです。

わたしは、自動売買のプログラムを開発したりそれを販売したりする立ち位置の方々のほかに、アカデミックな研究課題として、ややもすればちょっと生臭く感じてしまいがちなオカネの話に取り組んでいらっしゃる林教授といっしょに、システムトレードがどういう意味において裁量トレードよりも優位であって、したがってシステムトレードの普及によって投資分野におけるプロとアマの垣根の開放、投資の民主化みたいなものが出来ればと、特別講義の前後に雑談し大いに盛り上がったところでした。
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2013年3月4日月曜日

酸っぱいプレゼンテーション

何かと批判の多い日本放送協会と日本銀行ですが、臍曲がりのわたくしとしては理屈の通る限り精一杯弁護してきたつもりがこのブログでした。

一方で、海外のメディアと日本のメディアとで、ニュースの扱い方がどのように違うかに注目してもきました。

ニュースの優先順位や報道の切り口が違うのは当たり前。土曜日の正午のNHKニュースで、北海道の暴風雪の被害状況を一番に報じていたのは至極妥当だと思うのです。しかし、わたくしが注目していたのは、日本時間の当日午前中、英国放送協会や米国ケーブルニュースネットワークあたりは、毎時報道していた「米国議会が8兆円相当の財政削減を決定するか覆すか?」という緊迫した状況で、その期限が日本時間の午前11時に迫っていて、議論が暗礁に乗りあげていた挙句の果てに、オバマ大統領が共和党議員団に妥協する形で、財政支出削減が決定したと臨時ニュースで大々的に報ずるに至るなか、果たしてNHKはこれを何番目にどの程度の重みで伝えるだろうかということでした。

答えは、取り扱い無し。暴風雪のあとは、吉祥寺の殺人事件、陸前高田の奇跡の一本松。そして毎度お決まりの誰も注目していない地方の朗らかな話題、で終了です。

日曜日のサンデースポーツも、事前にサッカー中心に番組が組まれてしまっていたのがかえって悪かったのかも知れませんが、どう考えても香川真司のハットトリックをトップで伝えるべきところ、J2の試合からはじまって、J1も開幕しましたねぇ、という流れ。

それでもわたしは言いたいのは、空気を読めないのは、国営機関にとって強みでもある一面があるということです。

最近のNHKで注目しているのは、米国TEDで行われているスピーチを題材にした「スーパープレゼンテーション」という教育テレビの番組。

http://www.nhk.or.jp/superpresentation/

TEDにリアルで参加するには高額の入会金が必要らしいですが、ネットでスピーチを聞いて、ものによってはスクリプトを読んだり、日本語訳を読んだり、更に多機能に対応しているコンテンツもあり、これらが無料で提供されているわけですから、英語の教材と見るだけでも、たいへんな時代になったものだなぁと感心してしまいます。

http://www.ted.com/

そこで、日本語ではありますが、わたくしも先週、既報のとおり、慶応義塾大学のビジネススクールで酸っぱいプレゼンテーションをしてきたという話です。こちらもまた高額の授業料を払って、また社会人入学の大学院生のほとんどは会社を辞めてコースに来ているという気合のはいった人達を前に話をするので、こちらも気合負けをしてはいられません。と同時に、そのような状況ゆえ、話の内容を詳しく網羅してお伝えすることはできません。

ひとつだけ、ビジネススクールらしいやりとりを申し上げたいと思います。教室設例ならぬ本当にあった話で、「大王製紙の二代目社長がマカオのカジノで大損して会社の純資産を毀損させた」事例を踏まえて、「これは大王製紙が、オーナー系企業であるにもかかわらず公開会社になってしまっていて、少数株主が(市場を通じて)存在するので、そのひとたちの利害を蔑ろにしえいるから悪いのであって、非公開会社のままで、大損した経営者(一族)が100%株式を持っていたままであれば、これは悪いことではない。公私混同ではない。」とわたしは思うが反対意見はありますか???

という質問でした。

質問や意見がちゃんと飛び交うところも、慶応義塾大学のビジネススクールの実に良いところだと思いました。

わたくしは、債権者が居なければ、かつ会社法上許される範囲であれば、株主=経営者の場合、株主がタコ配だろうとなんだろうと純資産を幾ら払いだしても問題はないというのが答えだと思っているので、大王製紙の事例も、少数株主との利害相反に問題は帰すと考えています。読者のみなさんの意見はいかがでしょうか?

・・・この話、続く。

2013年2月26日火曜日

イタリア危機でまさかの円高

日々相場と格闘されている皆さんからは、ヒートアップし過ぎていた円安株高を小休止させるためのガス抜き材料が欲しくてたまらなかったので、イタリア総選挙の結果が人身御供とされたとの冷静な分析も聞こえてきます。

何とか辻褄を合わせようとしても、単独与党が存在し得ないというニュースだけでは納得が行きません。日本もアメリカもねじれ国会はあたりまえ。それだけで自国通貨安の材料にされるというのは違和感があります。

統一通貨ユーロの初心を守るために、国民の人気を犠牲にしてでも、財政緊縮を政策に掲げてきたモンティ派の大幅な後退にこそ理屈を求めるべきでしょう。

それにしても、ユーロの急落と株価の急落、そして危険指数として認知を得てきているVIX指数の急上昇を見るに、今回のイタリア・ショックが、過去のドバイ・ショックやサブプライム・ショック並のマグニチュードがあるというのは違和感があります。

ドバイの場合のドバイワールドや、サブプライムの場合の、BNPパリバやベア・スターンズは、定義上債務危機であって、想定外の支払不能事由からシステミックに蔓延した信用不安によってもたらされるものです。今回のイタリアを同類にするのはかわいそうな気がします。

本件を過熱相場のガス抜きの一言で片付けてもあまり問題はないのですが、敢えて付け加えると、アベノミクスが可能な日本とそうではない(金融政策の独立性を奪われている)ユーロ圏諸国(のひとつであるイタリア)の差が出たという点かと思われます。

実際に、ドバイの状況というのは、2009年のドバイ・ショック以降、あまり日本語メディアでは語られて来ませんでした。いろいろあって、現在のドバイは、なぜかほとぼりが覚めて、リーマン・ショック前のような、平均的な日本人が観察すると「バブっているんじゃない」と思えるような風景なのです。一方で貧困や格差の問題はあり、それも昔のままです。何が言いたいかというと、ドバイ・ショックもまたアラブ首長国連邦版のアベノミクスによって、誤魔化され、治癒されたのであります。

スペインのデモの激化も然り、ユーロ圏諸国で、緊縮財政で強いヨーロッパをもう一度というのはたいへんなウルトラCなのです。


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2013年2月24日日曜日

FX酒場とはちょっと違う乃木坂ヴィラージュ

まもなく開業1週年を迎えるおとなの隠れ家イタリアン乃木坂ヴィラージュ。初めてお越しくださるお客様の多くから隠れ家過ぎて道に迷ったとご指摘を受けっぱなし。そんな場所の悪さにもかかわらず常連のお客様を中心に大いに盛り立ててくださり無事一年やって来られたのはほんとうに皆様のお陰です。

とくに、ここ数ヶ月は、外国為替証拠金(FX)取引の業界やその周辺の業界のお客様からどんどん気に入ってもらっています。単純に考えると、アベノミクスのお陰なのかなと思ってしまいますが、株価が上がらなければ敷居を跨げないような怖い店では決してありません(笑)。

また、おカネの話が飛び交う下品な店でもありません(爆笑)。どこぞの「FX酒場」のように、お店で、文字通り(!)店頭取引なるバイナリーオプションを開帳しているわけでも当然ありません(爆沈)。

外食産業とFX業界。ひとつだけ似ているのは、生存競争が驚くほど厳しいということです。ですが、創造的破壊を含めた変化の速さ、相場だけでなく規制についても先が読めないゲームの難しさ、運不運や浮き沈みの激しさでは、外食産業にそれらがないわけではないですが、FX業界は極端であり、業界または周辺業界で一匹狼で全身全霊経営をしてきた方々ほど、その辛さを感じて来られたと想像するのです。

そんな21世紀版企業戦士にとって、安らぎとくつろぎの場になっているのであれば、オーナー呑むリエとしては本望です。

バイナリー、、、規制、、、と気になる言葉が並んでしまいましたが、わたくしたちだけでなくお客様である投資家にとって、金融商品取引法は憲法のような存在です。アベノミクスの次には規制緩和と憲法改正の議論が予想される今日このごろ。日本の強みは平和を独占できたことだったとも考えられることから、憲法改正には慎重でなければなりません。

しかし、日本国憲法に比べて大日本帝国憲法が好戦的憲法だったから良くなかったという決めつけはもう古すぎる見方でしょう。泥沼の戦争に導いたのが天皇個人であるとか旧憲法のせいであるというのは事実錯誤も甚だしく、国として反省すべきは、国民自体でありまた敢えて言えばマスコミでしょう。

ただ、旧憲法の欠点として看過できないのは「法律の留保」、すなわち「憲法で認められているはずの人権が下位の法律で制約される」ことを認めてしまっていたということです。ここを覆した現憲法はこの点優れているのです。

それでも私権は公共の福祉に従うのであり、それが立法府で制定されたものであれば、まだ問題は小さいです。

わたしが問題としたいのは、わたしたちの金融商品取引法は立派な憲法だし、それ自体をいい加減な先入観でもって規制強化だと騒いでいたひとたちは不勉強だと思っているのですが、法律の留保どころか行政の留保、つまり政令・府令~行政裁量では、法の精神も法の支配もあったものではありません。

金融業界に限らず、どの産業も、国際競争のなかで生き残り、できれば諸外国から有力な投資家や有能な人材が集まってくるような産業にするためには、合理的な範囲での規制とその透明性の確保が一番有意義で、それさえあれば決して重商主義的政策は不必要なのです。新たな規則の制定や法律の解釈適応が裁量的にされてしまっているフィールドにはプレーヤーは集まってこないのです。


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2013年2月20日水曜日

税金のように重く伸し掛かる社会保険料

年金問題、少子高齢化、100年安心、消費税増税、、、、いささか聞き飽きた議論のようにも聞こえます。

アベノミクスで薄明かりが見えたかと期待したい今日このごろ、しかし暗いニュースもあります。


貿易赤字最大1兆6294億円 1月、円安で膨らむ



朝日新聞の主成分分析が正しいかどうかはなんとも言えませんが、もしそうだとすると、昔懐かしい日米貿易摩擦の時代のJカーブ効果です。

きょうの本題はそれとは別で、社会保険の問題です。


協会けんぽ、全都道府県で保険料率維持



産経新聞の記事ですが、すでに先週末に日経新聞で既報のとおりとなりました。最近はじめて協会けんぽのお世話になることが決まったわたくしとしては個人的にうれしいかぎりで、安倍政権に感謝しています。

それでも、これまで(協会けんぽのホームページ上でデータがとれる4年間)の保険料率(これを更に被保険者と雇用主とで折半※)の上昇ペースにはうんざりさせられます。

全国平均からするとややましな東京都の例をとると、

8.18%(2009年度)⇒9.32%(2010年度)⇒9.48%(2011年度)⇒9.94%(2012年度)

・・・わたくしは、何から何まで民主党政権が悪かったとは言いませんけど、野党時代の後期高齢者医療制度の導入の邪魔をしたことは万死に値すると思いました。

個人的には、これまで約12年ほどお世話になったのが、東証健保という組合けんぽです。これはまた得意な存在で、リーマンショックまでは、全国のあらゆる健保組合のなかでも最優等生でした。やはりここ4~5年の保険料率の上昇は極端ですが、証券外務員の高齢化よりもむしろ、外務員の絶対数の減少(過去20年で約半分に、リーマンショック直前比で約2割減)、外資系の日本からの撤退等による給与の減少(総額も平均も)など、日本の社会保険制度が抱えるストレスとはまた別のストレスが存在していることが特徴的です。

協会けんぽのホームページには「日本が世界に誇る国民皆保険・・・」という件(くだり)があります。それはよくわかるのですが、年金だけでなく医療についても大胆な改革がなされなければ、歓迎すべき円安が歓迎されない円安に変質してしまいます。もうちょっと時間は残されていますが・・・

(※)ひとくちに折半と言っても、協会けんぽと東証健保とでは、雇用主の負担割合が全然違うのです。なぜでしょう???


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2013年2月14日木曜日

ジョージ・ソロス氏、アベノミクスで10億㌦を稼ぐ

またしてもソロス氏か。。。。いま出たウォール・ストリート・ジャーナルの「号外」によれば、1992年のポンド危機でのポンド売りによる荒稼ぎで有名なショージ・ソロス氏のファンドが、昨年11月以降の歴史的速度での円安で10億㌦相当を稼ぎだしたとのこと。

ほかにも、知る人ぞ知るファンドマネージャーが巨額の利益を出したと報じています。

ようやく今頃になって、通貨戦争という言葉が出始めた状況です。ドル高よりも更に深刻なユーロ高でドイツ・フランスは不満タラタラです。それにしても、日米間がこれほどまで冷静平穏だったのは、有力ファンドマネージャーの影、さらにはもしかすると、長らく失業気味だったエリート通貨マフィアたちの意気揚々とした活躍が背景にあるのかも知れません。

元の記事はこちら。

http://online.wsj.com/article/SB10001424127887324432004578302461873792762.html?mod=djemalertNEWS

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2013年2月12日火曜日

アベノミクスの行方~投資家セミナー無事終了

結果報告だけとはまた何事かとのお叱りを承知で書かせていただいております。今回も主催者はわたくしどもではなくて、かれこれ8年ほどお付き合いのある生命保険会社ご出身で最近は独立をされて様々な事業主をされている方です。年齢層さまざまな方々が約30名ほど集まり、1時間ちょっと好き勝手なことをお話させてもらいました。

その後、多くのみなさまと壇上で雑談。これが楽しかったです。国の中枢にいらっしゃる憂国の官僚、超をつけるのは失礼ながらも超ベテランの不動産鑑定士、日中を股にかけてアパレル事業を創業された実業家、などなど、何に投資をしたら良いのかというテーマを発展させて、これから世界はどうなるのか、ということで大いに盛り上がりました。

為替のリアルのセミナーを行うのはちょうど1年ぶり。一年前の今頃は、ユーロ圏の財政危機の解決法がそう簡単には見つからないという話をしました。今回は、ユーロ圏とそれ以外のEUとの間での移民の流れに変化が出てきていること。さらに、アメリカ、アジアを見渡して、人口移動という観点から国力、為替力、とアプローチしてみました。なんだかアベノミクスの評価と無関係に思われるかも知れませんが、マクロ経済学の範疇でのアベノミクスに対する評価はすでに百家争鳴状態。あえて奇妙な切り口を提供させてもらいました。

是非次回も、という話になり、わたくしのほうからは不動産市況から見た為替というテーマを提案したところ、反応は上々。ゲストもお呼びしたいところですが、この点は主催者さまどう思われるでしょうか。

次回こそこちらのブログからお知らせしたいと思います。
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2013年2月1日金曜日

アヴァトレード・ジャパン株式会社(MT4、ミラー、CFD,,,)

読者のみなさま、たいへんご無沙汰しております。年末のごあいさつも、年始のごあいさつも出来ずに、寒中お見舞いどころか、本日を以って2月を迎えてしまいました。節分です。鬼は外、福は内でございます。

非常に唐突ではありますが、本日付で、アヴァトレード・ジャパンというイスラエル系のFX会社の日本法人の社長に就任しました。上司とも言えるイスラエル人たちと何度か会話をして本日に至ったわけですが、そこから感じたこの会社のマネジメントの性格や民族性というのは、、、

★(わたくし自身を上回る)ケチ、
★(もしかしたらわたくし以上かも知れない)ワーカホリック、
★(それと関係しますが)よく食べるのによく頭を使ってよくしゃべるせいか太ってはいない、うるさくて管理志向は強いが論理的で理不尽ではない、、、

というところです。

もちろん本日以降このような第一印象は変化していくでしょうし、ネガティブな面もいっぱいでてくるのでしょう。まだ、シリア問題についても、イラン問題についても話をしていません。年末もメリークリスマスとは言いませんでした。。。

アヴァのイスラエル人たちとの出会い以上に、7年半、やはり雇われ社長という立場で悪戦苦闘してきたフェニックス証券が、金融商品取引業廃業(2013/1/28付)のみならず、解散・精算、役職員全員解雇となった理由のほうが不可思議で複雑で分析と解説に値するテーマだと思われ、ほとぼりが冷めたころに(?)また情報発信を行い、そういうことが健全な資本主義の世の中に貢献するのであれば、ちょっとはよいかなと思っているところです。

ここのところ経験しているユニークな境遇がいろいろな形で伝わった結果、今月、都内某所の超有名大学の大学院(ビジネススクール)で、さすがに本日現在ではこのブログでは書くことが憚られるそのような内容について、とくに(上場)企業のガバナンスがどうあるべきか、講義をさせていただく機会を得ました。

日本の企業が業態を問わず元気になるために、アベノミクスもカンフル剤となりうると期待しますが、より抜本的には、これまで当ブログがしつこく書いてきたガバナンス欠如やモラルハザードの問題に切り込まなくてはならないと考えています。それを、抽象論ではなく、自らの具体的な経験に基づいて、ただし固有名詞は伏せながら、解説、伝道していきたいと考えています。

あらためて、これからもよろしくお願いいたします。

アヴァトレード・ジャパン株式会社
代表取締役社長 丹羽広


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2012年11月15日木曜日

TPPと穀物法とレオンチェフ・パラドックス

いよいよ衆議院選挙。へそ曲がりのわたくしは、その結果そのものよりも、「TPP参加賛成だが脱原発」という政党と、「TPP参加反対だが、脱『脱原発』」という政党と、どちらを支持するのかという意思決定のほうに関心があります。

究極の選択になるかも知れませんが、財界には優秀なブレイン、企画スタッフがいますから、数字で以って、良き参謀役を務められると思います。

尤も、現時点で、最大野党の自民党が「TPP反対だが、脱『脱原発』」政党ですよ、と自らをハッキリさせたわけではないし、ハッキリさせるのかどうかも良くわかりません。民主党も同様でしょうが、開き直った人間の強みとは恐ろしいもので、野田首相は、今なら、自らの政党を定義づけるというリスクを取れてしまうのかも知れません。理想は、第三極なるものも含めて、これらをハッキリさせること。現役議員の政党間リシャッフルというのは、今となってはなかなか“忙しい”でしょうけど、あっても良いと思われるし、あるべきだと思います。

TPP参加に賛成と言っても、直ちに関税が撤廃されるわけではないし、それどころか、いまさら議論にすら参加させてもらえないかも知れません。しかし、今やシェールガス大国としてエネルギーの雄として躍り出たオバマ大統領率いる米国とすれば、脱原発を騒ぐことはもはや減点対象ではなくて、TPP賛成は勿論加点対象で、そっちの政党を支援するでしょう。

何処の誰からカネを貰っているのかよくわからないネトウヨは別として、支持率が1%割れたとしても、ここ数日の野田首相の立ち居振る舞いは、愈以って、松下政経塾の面目躍如というところです。

松下、、、と言えば、今日の日の丸家電の惨憺たる状況。証券業界や商品先物業界と大差ないように見えて、ひとつ大きく違うのは、20世紀後半の英国車メーカーの如く、無くなれば良いと言い捨てられるものではないことだと思います。

家電メーカーの経営者にも様々な判断ミスはあったにせよ、経営に失敗は付き物です。円高、最低賃金、整理解雇要件の厳しさ、これらのうちひとつだけでも自由度があれば、失敗の修正は可能だったと思います。

整理解雇要件の厳しさは、法律上のタテマエとしては労働者の人権を守ってきたと言われていますが、実態はそうではなく、労使ともに不幸にさせる、ルーズルーズの関係(ウィンウィンの真逆)にあるということを、このブログで繰り返し書いて参りました。

そこできょうは残りの2つをセットで。。。円高について日銀だけを犯人にしてもどうにもなりません。最低賃金を政治で弄るのは、何となく、無理でしょう。これらふたつを一挙に“裏道経由”で解決する緒がTPPです。

このような議論は、200年も昔のイギリスで、穀物法闘争として経験済み、実証済みです。経済学者リカードのプロパガンダとちょっと違ったのは、自由貿易は、産業革命のドライバーたる産業資本に味方して工業品の輸出を更に伸ばしただけでなく、イギリスの農業にも黄金時代をもたらしたということです。産業資本家と地主階級という対立するふたつのセクターをウィンウィンの関係にさせたようです。

日本の農業は、後継者不足による就農人口の低下、自給率の低下というプロパガンダで覆い尽くされています。実際のところは、前者は農業の効率化の証でもあり、後者はカロリーベースで計算された誤謬の結果です。

農業でしか喰えない、、、と嘆く工場労働者やサービス業従事者、産業資本化も出てくるでしょう。しかし、農業では喰えない、、、という嘆きは(植民地時代の後遺症で内戦状態だったり、コーヒー豆やゴムの木や綿花しか植わっていない農地を別とすれば)言語矛盾になります。

変化への対応を国民に求められない政党に、強い日本を語る資格はないでしょう。さて、そういう議論がこれから1ヶ月でできるかどうか。

と、偉そうに書いているわたくし自身も、柔軟性と瞬発力を身につけていかなければいけないと、自戒しているところです。

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2012年10月1日月曜日

薄煕来と毛沢東と反日デモ

スペインの国債の利回り以上に心配なのは、中国の景気後退が想定外のハードランディングとならないかどうかだ。多くの真面目な企業経営者や投資家は共通しているのではないかと思います。

薄煕来の公職追放の主たる原因は、不正蓄財とその財産の海外逃避の画策に関わった妻によるイギリス人協力者殺害疑惑です。

この不正蓄財の金額は、我が国で毎年夏と冬にジャンボ宝くじの一等賞を取り続けたとしても、何十年も掛かるという、まさに日本という小宇宙においては天文学的数字なのです。

たぶん99%以上の日本人は、人間が一生にどんなに贅沢な暮らしを続けても食い潰すことができない程度の蓄財にはさすがに関心がないと思います。そのレベルの何十倍、何百倍の蓄財をしたくなる心境というのを無理矢理想像すると、日頃顔を突き合わせている「同僚」とのあいだで、嫉妬と競争を繰り返しながら、モラル劣化を増幅させつつ、不正蓄財の表面上の数字を膨らませてきたということでしょうか。

もしそうだとすると、中国共産党のエリート部分の貯金は大変なレベルであり、中国の国内の貧富の格差は、一般に公開されているジニ係数よりもっとひどい数字ということになります。

共産主義を錦の御旗としつつも、実際には、暴力と陰謀によって中原を支配した過去の王朝となんら変わらなかったのが毛沢東そのひとです。しかし、貧富の格差が問題となり不平不満として実感されるときに、ひとびとが求めるのが、あの大躍進や文化大革命のころのほうが良かったという幻想とそれに基づく集団催眠的な示威活動です。

それをまた確信犯的に利用しようとしたが最後は挫折したのが薄煕来だったのかも知れません。

聖人君子たちによる禅譲の時代が終わったあとの、殷の時代以降の中国の王朝の変遷は、上述のごとく、地球上の他の地域には見られない抜本的で暴力的な政権交代の連鎖です。その歴史の端末に位置するのが中国共産党になります。共産主義の仮面を被った私利私欲の重商主義者集団の蛮行は、さすがにここまでインターネットが発達した社会のまえでは脆いように思えます。

尤も、毛沢東回顧のトレンドと集団催眠の力は大きい。尖閣問題も、そこに対する絶好のアシストになっているとの反論もあるでしょう。

日本の場合は、バブル崩壊を失われた20年の真犯人のように呼ぶのが一般的ですが、わたしはバブルの崩壊は富の再分配に大きな役割を果たしたと思ってもいます。しかし中国で同じことが起こった場合、日本のような「実質的共産主義」的世界が実現するでしょうか?

わたしは全く逆で、格差問題が臨界点を超す恐れがあると考えています。

日本の場合は、バブルとその崩壊は、ほとんどの知的エリートと経済エリートは翻弄されたほうの立場だったのに対して、中国の場合は、エリートたちによる集団的かつ確信犯的な相場操縦であったと見られ、リスク資産の分布は、意外なほど、(超)富裕層には少ない、、、つまりもう逃げ切りが図られている、、、と考えられ、もしそれが本当だとすると、これからの中国は、既に許しがたい貧富の格差がさらに広がり、政治と経済のインフラがぶち壊される前代未聞のリスクがあると思われます。
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2012年9月7日金曜日

道産子トマトの変身術

天気予報が見事に的中して、夕方から急速に雲行きが悪くなった東京の空は、乃木坂の隠れ家の中庭の石畳を、しっとりと濡らしてくれました。

ドビュッシーの「雨の庭」が聞こえてきそうな風景。

・・・・・・

なんて言っている場合じゃなくて、足元が悪いなか、足をお運びくださったお客さま、ただただ感謝です。

きのうお注ぎしたグラスワインの、ぶどうの品種を、時間潤に並べてみますと、、、

①ガリオッポ(イタリア・カラブリア州)
②ネレッロ・マスカレーゼ(イタリア・シチリア州)
③サンジョヴェーゼ(イタリア・トスカーナ州)
④シャルドネ(フランス・コートドール県)
⑤ペコリーノ(イタリア・アブルッツォ州)
⑥ソーヴィニヨン・ブラン(スロバキア!!!)
⑦ピノ・ノワール(ルーマニア!!!!!!!!)
⑧シャルドネ・ピノノワール(イタリア・トレンティーノ・アルト・アディジェ州)・・・スプマンテです。
⑨カリカンテ+カタラット(イタリア・シチリア州)
❿ネロ・ダーヴォラ(イタリア・シチリア州)

・・・・・・

あとは忘れてしまいました。それと、番外編。琥珀エビスに、ベルギービール(ただし、和歌山県産の山椒と高知県の柚子が使われています)。

さてさて、今週のあたまに、読者のみなさまにお知らせした北海道からお越しくださったボンジョルノ・トマトたち。無事に見事に変身しています。

①イタリア風夏のサラダ



②ブルスケッタ



③カプレーゼ



このほかに、グリル料理で、すごいのがあります。是非、乃木坂ヴィラージュで出会ってくださいませ。

隠れ家イタリアン
乃木坂 ヴィラージュ

東京都港区南青山1-15-22ヴィラ乃木坂1階

03-3405-6585


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2012年9月4日火曜日

北海道からボンジョルノ・トマト御一行様が御到着

北海道から、「ボンジョルノ・トマト」が10キログラム到着しました。

あまりの美味しさに、個人でも追加購入することを決めたところですが、、、




乃木坂ヴィラージュでは、北海道産トマト特集を、昨日のディナータイムからはじめました。アップが今朝になってしまい申し訳ございません。

ボンジョルノ・トマトのカプレーゼ
(モッツアレラチーズとバジリコの葉っぱを使ったカプリ風のサラダです)

ボンジョルノ・トマトのイタリア風の夏サラダ
(もちらの具材はご来店時のお楽しみに!!!昨夜は、7時台で完売となってしまい、重ね重ね申し訳ありませんでした)

などなど。。。




期限は、なくなるまでです。お問い合わせは・・・

東京都港区南青山1-15-22ヴィラ乃木坂1階
「隠れ家イタリアン
乃木坂“ヴィラージュ”」
03-3405-6585

まで、お気軽にお問い合わせください。『呑むリエブログ』を見たんだけど・・・と電話口でひとことおっしゃっていただくと、わかりやすいです。



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2012年8月17日金曜日

ワイングラスを傾けながら、無伴奏バイオリンに浸る♫♫

乃木坂ヴィラージュ オーナー呑むリエ にわひろし♪でございます。

今回は、9/22(土&秋分の日)16:00から(※)の企画、、、ヴァイオリニストの徳島由莉さんをお招きしての、

「土曜日の薄暮に、ワイングラスを傾けながら、無伴奏バイオリンに浸る」

の御案内です。

ミュージックチャージ1000円+要ドリンクオーダー
https://docs.google.com/file/d/0BwgrfnQ5u6EubUpraTd3anNiMzQ/edit
詳しくは、素敵なチラシをごらんください。ピアソラに無伴奏ヴァイオリンの曲があったんですねヽ(゚∀゚)ノ ☆

☆☆☆☆☆

ご予約は、お店のほうまで、お電話にてお待ちしております。
03-3405-6585
東京都港区南青山1-15-22ヴィラ乃木坂1階

隠れ家イタリアン「乃木坂 ヴィラージュ(Village

(※)16:00~開場+(ドリンク)受付開始
16:30~徳島由莉さんによるヴァイオリン演奏(第一部)
・・・途中20分程度の休憩を入れさせていただいて、、、、
ヴァイオリン演奏(第二部)~
17:40頃、終演予定+(ご希望のお客さまに)ディナー受付開始


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2012年8月2日木曜日

完売御礼と次回ワイン勉強会【9/30(日)】の御案内

旧盆を含む週の週末という無理なスケジュール設定であったにもかかわらず、次回のワイン勉強会「ピノ・ノワールで世界周遊」は瞬く間に完売となりました。
素早くお申し込みをくださった皆さまに御礼を申し上げるとともに、検討中だった皆さまには、お詫びを申し上げます。

さて、次なる第三回ワイン勉強会@乃木坂ヴィラージュは、「トスカーナのワインたち」と題して、行ないます。

トスカーナはフランスの美食文化の原点であり、また現代イタリア語の原型がトスカーナ語であるという説が有力だったりして、ワインや美術を含めた文化全体において偉大な小宇宙を形成しています。

テイスティングの内容についてはこれからとなりますが、時期將にソムリエ試験の直前だということらしく、いつもはソムリエ試験とは無縁の内容の個性的なワインをご提供している当店も、たまには受験勉強の一助となるような、まともなラインナップを、とも考えております。

第三回 乃木坂ヴィラージュ ワイン勉強会

「トスカーナのワインたち」

9/30(日)18:00(←過去二回と異なり開始時刻が遅めである点、ご留意ください)

参加費:3000円

お申込み、その他お店のご予約は、
03-3405-6585
まで、お待ちしております。


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2012年7月31日火曜日

第二回ワイン勉強会のご案内【8/19(日)16:00~乃木坂ヴィラージュ】

先週は未曾有の忙しさで、ご注文を受け付ける呑むリエのCPUもフリーズしかけた季節はずれの寒い乃木坂ヴィラージュ。それでも、案の定、ロンドン・オリンピックも始まり、繰り返し覆る判定で蒸し暑さもパワーアップ!?乃木坂らしい静けさが戻ってきた昨夜の営業でした。

そんなときにも、テレビのひとつもない乃木坂ヴィラージュにお越しくださった常連のお客さま、ほんとうにありがとうございました_m(v v)m_

さてさて、お盆の殆どド真ん中で、夏休みのご予定もお決まりの方々も大勢いらっしゃると思いますが、従業員から何かやってくれという突き上げを喰らいまして(!?)、またまた突然ですが8/19(日)に第二回ワイン勉強会を開催させていただくことになりました。

第一回目は、知られざるオーストリアワインを、、、ということで、若干のイタリアンな前菜もご提供させていただきました。

今回もまた、隠れ家イタリアンとは殆ど関係のないテーマで、「ピノ・ノワールで世界周遊」と題して、ニュージーランドを含む新大陸系から、イタリアのピノ・ネロを含む旧大陸系まで、いろいろご用意させていただこうと思っております。

いまでは入手が極めて困難になっているブルゴーニュのコートドールのグランクリュの古酒も奮発してみようかと。

会費は3000円です。

8/19(日)夕方16:00~18:00

募集人数8名~12名・・・6種類お飲みいただけるように、いつものように企業努力して参ります。


写真はイメージですが、この銘柄、この年代に近い、値段を聞いてビックリするようなものもご用意します(※)。

お申込みは、

東京都港区南青山1-15-22ヴィラ乃木坂1階
「乃木坂 ヴィラージュ」
03-3405-6585

まで、「ワイン会」の件でということでお知らせください。

乃木坂ヴィラージュは、8月も、通常通り営業いたします。定休日は日曜日のみ(ただし上記「ワイン会」を除きます)。

(※)保存状態には万全を期しておりますが、かなりの古酒のご提供となり、瓶差(含むブショネ)についてはどうかご容赦ください。
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2012年7月27日金曜日

ハッキリと物事をいうこと

「あなたは脱原発ですか?それとも原発推進派ですか??」

「消費税増税に反対ですか?賛成ですか??」

些か、懐かしいのが、、、

「郵政民営化に反対ですか?賛成ですか??」

新聞、テレビなどのマスメディアから、ブログやツイッターなどのインターネット系ソーシャルメディアへと、媒体の移転に歯止めが掛からないのに、既存メディアの高給取りたちは、少しでも空洞化を阻止しようと悪あがきをして止みません。

視聴率を死守したい報道番組という名のワイドショーは、素人へのわかりやすさや単細胞的な熱狂、パンチだけを効かせたコンテンツ、言説の先鋭化を売り物にしており、その傾向は既存メディアの退潮とともに悪化の一途を辿っています。

つまり、司会者も専門家らしいパネラーも、YesかNoかをハッキリいうタイプの下品な人物がより好まれるというわけです。

だから、旧態依然のマスメディアが駄目で、インターネット系ソーシャルメディアが良いのだと言っているわけでは全然ありません。たぶん、インターネット環境で好まれる(ページビュー数を稼ぐ)コンテンツ、、、カリスマブロガーやカリスマツィッターというのは、複雑な世相を複雑なまま提供していたのでは商売上がったれであって、物の見方を単純に切り捨てて、敢えてイエスノー世論に迎合して成功を収めているものと思われます。

既存メディアは、単純で短小な言説を売り物に出来るインターネットにより一層対抗しなければ生き残れないので、上記ロジックで、低俗化を極めていかなければならないのであります。

ハッキリと物事をいうことが美徳とは決して言えません。

象牙の塔と揶揄される学術的な言説のなかには、ハッキリとは物事を断じない美学があります。

きょうは、原発の分野でもなく、消費税の分野でもなく、オスプレイや普天間の話でもなく、何故かブログの原点に立ち返り、デリバティブ問題について、優れた言説(物の見方を網羅している・公平で客観的である・本質をついている)をふたつご紹介します。

ひとつは、もう10年以上も前に出た
「金融デリバティブ取引と賭博罪に関する論点整理」
http://www.flb.gr.jp/jdoc/publication05-j.pdf


もうひとつは、昨日付けの白川日銀総裁の講演内容
「先物取引市場と業界の課題」
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120726a.pdf

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2012年7月10日火曜日

7/14(土)~16(月・祝)の営業時間ごあんない【乃木坂ヴィラージュ通信】

おかげさまで、乃木坂ヴィラージュも、完全リニューアルオープンから3ヶ月、無事に続けることができております。大勢のお客さまにご支援していただいているおかげです。ブログ上にて恐縮ですが、ほんとうにありがとうございます。

さてさて、梅雨明け宣言があったのかなかったのか知らないくらい、無我夢中でお酌をしている毎日ですが、青空を見上げれば、どう考えても夏本番の、昨日今日の東京ですね。

今週末の三連休ですが、ほとんど通常どおりの営業時間とさせていただくことに致しました。

7/14(土)ランチなし、ディナー18:00~22:00ラストオーダー

7/15(日)お休みをいただきます

※7/16(月・祝)ランチ11:30~14:00(※ディナーまでの間もカフェ営業)ディナー18:00~22:00ラストオーダー


そして、わたくし、呑むリエひろしは、7/16(月・祝)昼夜ベタで出勤いたします。

休日でもありますし、ランチタイムからグラスワインのご提供をさせていただきます(平日ご提供していないわけではありませんので念のため・・・あれっ)。

それとは別に、7/16(月・祝)だけの、

「イタリアワイン 4種類 利き酒セット 1000円ぽっきり」


というのをご用意いたします(次回は8月のお盆の前後に実施予定)。



イタリアワインは地域性が強い地ぶどうから作られる個性が売り。暑さ本番のこの季節にピッタリの爽やかでフルーティな白ワイン2種類、スパイシーだが決して重過ぎない赤ワイン2種類をご用意しています。

カフェ営業時間でも、パルマ産生ハムやピクルス、サラダ、バーニャカウダ、などなどご用意いたします。

さらにさらに、ゴールデンウィーク期間中大好評だった(?)、国立新美術館のチケット半券お持ちの方に、グラススパークリングをご奉仕⇒7/16(月・祝)も、終日実施させていただきます。





エルミタージュ美術館展、たいへんな混雑が予想されますが、なんとこの日が最終日。展覧会会場で、近現代ヨーロッパの時空を彷徨っていただいたあと、乃木坂ヴィラージュにてイタリアを田舎から田舎へと旅していただければと思います。 


※隠れ家イタリアン「乃木坂ヴィラージュ」は千代田線乃木坂駅3番出口から徒歩1分です。
※エルミタージュ美術館展の会場となっている国立新美術館へは、同じく千代田線乃木坂駅の6番出口が地下鉄直結で便利ですが、お帰りの際は「星条旗通り」側の「正門」から外苑東通りを目指して、左折し、乃木公園を目指してください。「乃木坂ヴィラージュ」は下記の地図の乃木坂駅(現在閉鎖中の)4番出口の印のところにあります。
http://www.nact.jp/information/access.html

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2012年6月15日金曜日

嬉しかったこと

読者のみなさま、たいへんご無沙汰をしてしまいました。

この間、欧州情勢など、何もなかったわけではありません。それでも、ブログを更新しなかった理由は幾つかあります。

そのうちのひとつが、新しいニュースのように見えて、実は新しくもないニュースが繰り返された数ヶ月であったこと、です。

実は、昨夜うれしいことがありました。二人連れのお客さま、三名様のビジネスの会合、八名様の若き団体様、などなどに混じって、おひとりで乃木坂ヴィラージュにお越しくださったお客さま。カウンター席で、美味しそうにボンゴレビアンコを食事されている姿を見て、3ヶ月前に、八重洲でやらせていただいたセミナーに参加され、そのあとの居酒屋での懇親会でも、一番語り合った、というかほぼ一方的に教えていただいた、日本語完璧な中国料理店経営者の方です(お店は相模原と麻布十番)。

「ようこそ、お越しくださいました。外食産業を成功されてきたプロの目から、是非是非、苦言提言をお聞きしたいです。」

わたしのなかでは、改善点は幾つもあるのです。謙遜では全くなく、具体的に修正中、実行中なのであります。

「苦言提言??何もない。敢えて言えば、この味、この食材、このサービスと雰囲気からしたら、ひとりあたり2000円以上安すぎるよ!!」

というありがたいお言葉でした。

実は嬉しかったのは、それだけではありません。3ヶ月前のセミナーでは、ネット上で半分炎上して物議を醸したマネーポストの取材記事をテキストにして、「欧州危機は小康状態を保てない。雇用情勢の悪さ、特に失業率の絶対水準だけでなく、若年失業率に相対的悪さこと、、、日本も他人事ではない、、、ヨーロッパ社会の病理なのだが、これを敢えて規制緩和で荒療治するという気概は政治家にも一般大衆にもない。よって、破綻懸念国の緊縮策は選挙民の信任を得られず、ギリシャのユーロ圏離脱など、通貨ユーロのマイナス材料が強まる」というお話をしたのですが、それが丸切り当たってしまったことで、握手を求められたのです。

包丁一本で異国日本にお越しになり、ゼロから中国料理屋を立ち上げ成功させたその腕と気合には、人間一人の力では如何ともし難い景気や相場への鋭い関心が満ち溢れています。これまで、いろいろな形で、相場を語り、相場を外してきてしまいましたが、所詮当たるも八卦、当たらぬも八卦の話で、これほどの手応えを感じたのははじめてのことでした。

さて、これから先はどうか?
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2012年4月17日火曜日

出会い系サラリーマン金融「貸し出し倶楽部」

「出会い系」という翻訳が的確かどうかは読者のみなさまの判断にお任せいたします。

栄光と挫折、失脚と復帰を繰り返した経営者と言えば、真っ先に、昨年亡くなったアップルの創業者スティーブ・ジョブズを思い出します。

虚業、いや失礼、金融の世界にも、そういう立派な経営者がいます。かつての私の上司の上司の・・・上司で、このブログでもリーマン・ショック前後に取り上げてきたジョン・マック氏こそそのひとです。

リーマン破綻への専門家コメント集

カインの末裔であってはならないモルガン家

モルガン・スタンレーのCEOを二度も辞めたマック・ザ・ナイフが、最近次々と社外重役のポジションを積み重ねている(KKR、CIC)なか、今回ボード入りが決まったのがレンディングクラブというピア・ツー・ピア・レンダーの大手です。

ピア・ツー・ピア(P2P)は、普通は、ネットワーク(パソコン絡みや通信絡み)で使われる言葉で、荒っぽい言い方をするとクライアント-サーバー方式ではない、つまり端末と端末の間にサーバーが介在しない(端末にIPアドレスが付されない、ホストにURLが付されないなど)ものです。

常識的には、あって当然の、サーバーを廃して、クライアント同士が直接、金銭の貸し借りを取り決めるということで、ピア・ツー・ピア レンディングが従来型金融業を創造的に破壊するかどうかが注目ポイントとなります。

ジョン・マック氏が何故このビジネスを選んだのか、FT紙の記事の原文がコチラですが、

記事のなかで、わたくしが個人的に面白いと思ったポイントは、

☆レンディング・クラブ社のシステムはサンガード社が動かしている(証券取引所接続システムの世界的な大手)

☆P2P貸金業の発祥は英国(2005年)だが、ヨーロッパでは伝統的銀行業の勢力を脅かしていない。

☆米国では2006年にプロスパー社が事業を立ち上げ、次いでこのレンディングクラブが2007年に事業を開始した(両社を合わせた貸金残高は現状10億㌦程度)。

ヨーロッパと違ってノンバンクの存在が小さくなかった米国では、リーマンショック以降、中小金融機関の倒産が相次ぎ、また大銀行の経営再建も思うように進んでいないなかで、P2Pの拡大余地は比較的大きいかも知れません(他の成長市場の候補として、中国、ドイツ)。

ジョン・マックを社外取締役として向かい入れた同僚役員が、彼の経営能力を”inspirational leadership”と称賛しています。これは何と訳せばよいのでしょう。そしてそれは落合博満型でしょうか?長嶋茂雄型でしょうか?

ただし、記事の締めくくりの一言「毎日はゴルフをやっていたくないから」というのには失笑します。
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2012年4月2日月曜日

エイプリルフールを迎えたジャックポット-あるいは宝くじと税金

身内に宝くじ関係者、いや、宝くじ出身者が居る割には、この方面のことに疎いのです。

わたくし本人も何年か前に、義理で宝くじを買わされたことがありました。学校を出て最初に入った会社が、宝くじを扱うことで有名な会社と合併したことが、義理の「遠因」でした。義理くじゆえ、それなりの大人買いをさせられたせいか、綺麗に「大数の法則」が働いたようでした。当選金額の合計が、購入金額の合計のちょうど半分に終わった記憶があります。

賭博産業では、この「ちょうど半分」だとか何割だとかのことを、ペイアウト、とかペイアウト率と言います。賭博産業だけではありません。外資系投資銀行のバンカーから地場証券の歩合外務員まで、会社にもたらした収益のうち何割が給料やボーナスになるかというのもペイアウト(率)であります。

先週末あたりから、英BBCや米CNNでは、アメリカの宝くじが1月以来当選者が出ておらず賞金がキャリーオーバーされ続け、656百万ドル(注)というジャックポットに至った。いよいよ当選者が出るかどうか世界中が注目したその結果は、当選者3名出たことが判明しているが、4月1日(日)の時点でまだ一人も「名乗りをあげていない」(注)ということなのだそうです。

(注)アメリカは州によって法律がかなり違っており、宝くじの当選者が匿名扱いで賞金を受け取れるかどうか?当選くじを扱った売店がどの程度のボーナスを貰えるか?州ごとにマチマチのようです。

過去に大金を掴んで家族ともども身を滅ぼした人もいる。が、統計的に見れば、自己破産に至る確率はとても少ない(イギリスでは、同国の当選者の「幸福感」が「改善」していることが広く観察されている)。。。などなど、逸話なのか真面目な研究なのかよくわからない話題も含め、お時間の許す限りWSJの記事をご参考にしてください。

この記事から知ったことは、アメリカの宝くじも、日本のそれとほぼ同様、ペイアウト率は5割程度であること。つまり、寺銭(=1-ペイアウト率)が5割ということですが、内訳は35%が州財政に、15%が宝くじのインフラ(と上記ボーナスなど)に使われているということ(これらも上記のように州によって違いがあります)。それと、アメリカの宝くじは、さらにその賞金に税金が掛かること(「一括」で受け取るか「年金」で受け取るかで税率に差あり)。

最後のポイントは、当たりくじや賞金を譲渡しない限り税金が掛からない日本のそれに比べて、アメリカのそれが更にペイアウト率が低いことを示しています。ジャックポットの大きさが、その欠点を補って余りあるということでしょうか?

それで、わたしは、世界中の宝くじについて、ペイアウト率や税制がどうなっているのか調べてみようと思い、まずグーグルで「宝くじ ペイアウト率」と検索してみました。

そうしたら、知りたい情報は全然出てこず、検索にあがってきたサイトは殆どすべて「オンラインカジノ」の宣伝でした。

そのなかにひとつ紛れて、FXの「バイナリーオプション」のアフィリエイト広告がありました。

しかし、寺銭がこんなに良心的で良いのか?という観点で言えば、我田引水のように聞こえるかも知れませんが・・・というか正真正銘我田引水ですが・・・通常のFXに勝るものはないと思うのですが、反対意見はあるでしょうか?

ただ難しいのは、ドル円0.4銭だ、ユーロ円0.9銭だ、というスプレッドを自慢する際に、宝くじや競馬は論外としても、ランキングされるようなオンラインカジノやバイナリーオプションに比べて、明確に、客観的に、寺銭が低い、良心的過ぎる、と数値化できないことです。わかりやすい例で、ひとつ考えられるのは、過去1年、一週間ごとの通貨ペアの値幅(最高値と最安値の差分)の平均を取り、それでスプレッドを割るという方法を思いつきました。もちろん、過去1年とか、一週間ごとという時間の長さに何か根拠があるわけではありません。
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2012年3月21日水曜日

創造的破壊とFX攻略5月号

先週、フェニックス証券の外国為替証拠金(FX)取引のお客様が、わざわざ八重洲までご来店くださり、しばし時事放談を楽しませていただきました。そのなかで特別に印象に残った一言が、

「好不況や円高円安はたいした問題ではない。経営者が本当に恐れるのは技術革新だ」

技術革新すなわち創造的破壊こそが、資本主義の裏と表の実像であり、その裏表がオセロのように一挙に入れ替わることが企業家にとって夢でもあり悪夢でもある、、、という話を、最近ブログ等で取り上げるようにしております。

只今発売中のFX攻略最新号にも、そのような話を書かせていただきました。是非ご一読ください。


それでは、恒例と言いつつしばしばサボっている、過去記事(2011年11月号)から。

「ことりFX」で為替の新時代を迎え撃とう、なんて言うとまたフェニックス証券の宣伝かと思われそうですが、この時期に為替新時代を宣言することには大きな意味があります。

「ヨーロッパ全域を統一通貨圏に」という試みは21世紀初頭の壮大な実験だったと後の歴史家が評価するかも知れません。ナチスの第三帝国とは関係ない話ですが、ユーロ構想は、ローマ帝国の膨張やフランク王国の成立に続く偉業でもあり暴挙でもある・・・逆にそれ以外の時期のヨーロッパは、戦争や小国(含む都市国家)の分裂に明け暮れており、大雑把過ぎる大局観をお許しいただければ、地域全体の統一のメリットとデメリットの比較評価で何十世紀も揺れ動いてきた後の“一旦の”結実が統一通貨圏構想だった。。。

過去の巨大帝国との違いは、もちろん“平和裏に”各参加国の財政政策と金融政策の裁量を“奪った”ところにあります。ドイツ哲学の伝統の一端を担う弁証法で言えば、過去の分裂と統一のメリットデメリットを止揚(アウフヘーベン)したものにも見えます。

これらのうち、金融政策の放棄は自明です。が、財政政策については「毎年の財政赤字はGDPの3%までよ」などのルールは「表向きだから、裏で色々やりようがあるからね」という、ただただ参加国を増やすための二枚舌が、統一理念の土台自体を腐らせる欺瞞であることを“改めて”白日の下に曝したのが、ギリシャ危機、改め南欧危機、更に改めフランスまでも含む「ドイツ以外のユーロ圏危機」だったのです。

そこまで無理をして騙し騙し欧州全体に固定相場制を広げるメリットが域内唯一の貿易黒字国(=資本輸出国)であるドイツに集中していたことに注目すべきであるし、しかもそのドイツ国内の論調としては「公務員が58歳で退職し、現役時代の8割の年金をもらえる。政府は破綻寸前なのに、国民の大部分はまともに税金を払っていない。そんなギリシャを筆頭とする怠け者の国に、なぜ我々の税金を使わなければならないのか」(月刊ファクタ10月号:「欧米金融機関『三年目の断崖』より」ということらしいです。気持ちは判りますが・・・冒頭で、ナチスは関係ないと書きました。それは兎も角、第四帝国なんて、手を変え品を変えだけで簡単に成立するいうことではありません。為替に関して言えば、欧州関連資産の相場暴落は、根拠のない相場操縦で所詮マッチポンプだと矮小化するのは間違いでしょう。過去の民族間の戦争の傷跡や遺恨、一旦手にしてしまった豊かで安定した生活にしがみつきたいという大衆の感情に政治がメスを入れられないという文明国の末期現象など、解決困難な根の深い問題であると考えるべきだと思います。

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2012年3月15日木曜日

ゴールドマンサックス退職社員の捨て台詞

チャールズ・チャップリンの自己評価としては最高傑作だったという「殺人狂時代」という映画。不世出の映画監督 兼 喜劇俳優 兼 ・・・・ が「赤狩り」に遭い、ハリウッドを追い出されるキッカケになったともされる作品の最後の部分で、死刑台に登る主人公が発する言葉が、

「一人殺すと殺人犯、百万人殺すと英雄、、、」

One murder makes a villain; millions a hero.

というものです。

いまでは代表的な構造不況業種となってしまった証券業界や商品先物業界ですが、かつては大儲けした時代もありました。その時代に巡り逢っていたかったとは必ずしも思わないし、またその時代も、方法も、業種、規模、個社によりけりで、決して一括りにしようとは思いません。

が、ある時期、あるカルチャーを共有していたグループは、証券と先物共通の「方法」を濫用してきたこと(で資本蓄積に成功したが、いまはそれを食い潰しているだけであること)を多くの経験者や内部者が認めていると思われます。今様に格好良く言えば、ビジネスモデルの一種なのかも知れません。

良くもあしくも投資家の自己責任というカルチャーが根を下ろしていない我が国では、自称人権弁護士の動きもあり、立法行政の対応も早く、このようなビジネスモデルは殆ど死に絶えています。

それはそれで良かったのだと思いますが、何故それが世界規模で行われていると無罪放免なのか、否、それどころか就職人気ランキングも含めた超セレブ企業と崇め奉られるのか、ここ5~6年腑に落ちない状態でした。

そこに来て、今朝飛び込んできたニュースが、題意の告発文。悪徳資本主義批判はニューヨーク・タイムズの真骨頂です。
http://www.nytimes.com/2012/03/14/opinion/why-i-am-leaving-goldman-sachs.html

この内部告発か外部告発かの端境とも言える動きに対して、ゴールドマンサックスの対応の状況をウォール・ストリート・ジャーナルが報道しています。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304692804577281252012689294.html?mod=WSJ_hp_us_mostpop_read

日本のメディアもこの時間帯それぞれ取り上げていますが、一番早かったのはコチラのブログか。
http://markethack.net/archives/51808686.html
きょうのブログのテーマである「マペット」とは何ぞやを動画で解説してくれています。

ちなみに、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事の中でも、「マペット」の解説がありまして、

"Muppet" is a British slang term for "idiot" and is sometimes used on Wall Street trading floors to denigrate an opposing trader.

英国の俗語で「馬鹿な奴」を意味し、しばしばウォール街のディーリングルームで売買相手となるディーラーを指して(つまり自分が売りたいものを買ってくれる相手に対して)使われる

とのことです。
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2012年3月1日木曜日

それでもユーロは・・・・「マネーポスト」2012年春号本日発売

ユーロの問題は、政治が結束して域内劣等生を助けてあげるかどうかという意思決定の切り口ばかりが報道されているようです。

赤字を垂れ流している国に対して補填を決めたとしても、不均衡の解消は一時的なものにとどまるにもかかわらず、市場はその場しのぎの意思決定に左右されています。

より根本的には、「金融政策が一本化されているのに、財政政策が一本化されていないことが、ユーロの矛盾であり不備である」という根強い論調があります。では財政政策を統一すれば、ユーロ圏は蘇るでしょうか?

わたしは、より実体経済、特に失業問題、中でも若年失業率に注目して、統一通貨下で不均衡を抱えながら経済運営を続けていくことはミッション・インポッシブルではないかという切り口を提示したいと思いました。

その論稿が、本日発売の「マネーポスト」2012年春号に載っております。是非、書店で手にとって御笑読ください。

ところで、他の先生方が書いた記事で、これは面白いと思ったのがあと(?)ひとつありました。日本の年金制度・・・少子化だから年金制度が崩壊していくのではなくて、年金制度自体が少子化を推奨していることが国策上の問題という指摘です。
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2012年2月17日金曜日

沈黙は金、雄弁は銀

日銀の白川総裁が俄に雄弁です。

今週、月曜日火曜日に行われた金融政策決定会合で「長期国債の買い入れペースを、従来の月5000億円から三倍に引き上げる」という金融緩和策の強化を決断したことが、(米国株の上昇や欧州危機の小休止ムード(?)と相俟って、)日本株はさしずめミニバブル状態。

七転び八起きブログでさんざん批判し揶揄してきた「日銀が金融緩和を徹底さえずればデフレと不況が収まるのに、それをサボっている総裁は日本経済のA級戦犯である」的批判を繰り返してきたB級エコノミストたちも、さぞ喜んでいることと思われる一方、真面目な日銀ウォッチャーのなかには、頑固冷徹理路整然の総裁の変節を疑う人も出てきます。

まずは、金融政策決定会合の直後の総裁記者会見の内容と質疑応答

前半、物価安定(≒インフレ率1%)を「目標」とよぶか「目処」とよぶか「理解」とよぶか、に関するQ&Aでは、その長さとしつこさが、官僚の言葉遊びのように思われてしまいがちです。わたしはここは、日銀はこれまでインフレターゲットを拒絶してきたものの、いま思えばインフレターゲット採用国も経済が滅茶苦茶になっているではないか。それにインフレターゲットとハッキリ言って来なかっただけで日銀がしてきたことも実質的にかなり近かったと、《怖いデータ》の数々を見せつつ何度も言っているじゃないか。今後もそれを連続的に強化していきたいだけで、矛盾も変節もないというのが根底にあるのだと思われます。この点、本日先程リリースされた日本記者クラブでの講演が更に雄弁で、趣旨がわかりやすいです(この講演録の末尾添付のチャートとグラフこそ、上記《怖いデータ》の数々そのものです)。

最初に引用した2/14(火)の記者会見に戻りましょう。お時間の少ない方に最優先で読んでもらいたい箇所は、9ページ目の質問からのところです。つまり、

「財政ファイナンスが目的でない・・・とおっしゃっても、財政政策に一段と近づいてきていると思われるリスク・・・日本銀行がこれまで一番避けてきたマネタイゼーションに近づいているのではないかという疑念を・・・総裁はどう思われますか?・・・・・・政治的圧力に屈したのではないかとの見方・・・?」

生で会見に立ち会ってなくても、ここが質疑応答のなかのクライマックスであると容易に想像がつきます。

ところで、白川総裁はこれらより前の1月にロンドン・スクール・オブ・エコノミクス主催の講演で『デレバレッジと経済成長 ―先進国は日本が過去に歩んだ「長く曲がりくねった道」 を辿っていくのか?―』と題して話をされています。イギリス人相手に、ディケンズやビートルズを引用しながら、政治からの圧力、衆愚(B級エコノミストを含む)からの圧力と向かい合いながら、のらりくらりを演じながらも理路整然かつ分かりやすく金融政策の手綱捌きをしなければならない立場の苦悩が延々と語られています。

ぶっちゃけて言いますと、燻し銀の日銀総裁が、理不尽にもデフレの元凶と罵られ続けて、逆切れしての雄弁、という感じもします。

以上、強引にまとめまして「雄弁は銀」。多かれ少なかれ西側先進国経済はこのような体たらくだから、通貨(為替)で言えば、日米欧の不美人投票はより酷く続くだろう、と考えれば、黙って金を買うのがベストの選択だ、、、という立場がどうやら中国の公共セクター(含む中国人民銀行)のようで、英FT紙によると、2011年の最後の3ヶ月間で、金の購入を更に加速させている とのことです。


世界最大の外貨準備高を誇る中国。米国債を買うのは資本輸出(=資本赤字要因)ですが、金を買うのは輸入(=貿易赤字要因)という国際収支の表の見方の落とし穴から露呈した現実であるところが面白い記事の内容となっています。

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2012年2月14日火曜日

ドッド=フランク法の生みの親ボルカー氏大いに吠える

1927年生まれのポール・ボルカー氏が実に元気です。

欧州ソブリン危機の元凶だとの批判は、荒稼ぎができなくなった投資銀行によるお門違いの戯言(たわごと)だと一刀両断です(英FT紙)。

フェニックス証券の「ことりFX」は、実質的に見て、業界で最も有利な水準のスプレッドを提供していると思うのですが、それでも先週あたりから、ドル円で0.4銭とか、これでもか!これでもか!という業者が約2社ほど出てきています。

譬えが婉曲的で恐縮ですが、1990年代、大店法緩和のなかで地方スーパーを競って買収して、シェア拡大を狙った大手から先に倒産して行ってしまい、実は寡占大手の買収を断った地方スーパーは小規模ながら今でも結構生き残っているという皮肉な小売業界が彷彿とされます。

小売における大店法と、FXにおける信託やレバレッジの規制とは比較できませんが、一般に業界の内部の人間というものは、規制に対する意見(賛成意見・反対意見)が一枚岩になる傾向があります。電力業界で、発電・送電・配電の分割やら総括原価方式の見直しやら、規制緩和に賛成という経営者はいないでしょう。大手スーパーや百貨店が相次いで倒産した5年~10年前、大店法は本来大手がスケールメリットを活かして零細商店主のシェアを奪える筈のところを邪魔していて、大手にとって不利な規制であるとして、チェーンストア協会は一貫して撤廃または規制緩和を訴えていたものでした。しかし結果を見るに、実は大店法が大手同士の喰い合いを防いでいて寡占利益を温存していたという事実が判明したのです。

さて、本題。FX業界と証券業界とでは業界利益がかなり違うのですが、証券業界という立場で、ボルカー・ルールに賛成だ、なんて主張すると、村八分になるかも知れません。

しかし、このブログでは、サブプライムショック、リーマンショック、ギリシャショックなどなど、節目節目でモラルハザードを容認する規制にも規制緩和にも反対してきました。

モラルハザードとファイアーウォール

ボルカー元FRB議長が現役復帰

米国にボルカーあり、日本に白川総裁あり

多くの主要国でリーダーが変わるかも知れない2012年、選挙直前のリーダー達は、増税で有権者から嫌われたくないというホンネと、第二、第三、第四・・・のギリシャにしてはならないというタテマエの間で苦悩し、結果として、ボルカールールの受け入れや有価証券取引税の導入など「コレ以上大銀行の血税による救済は許されない」という大衆に受け入れやすい増税方法を選ぶ流れが出来てきています。

フランスも英国の印紙税を真似た有価証券課税が具体化へ と、同じく本日の英FT紙が報じています。

様々な点で金融規制では欧米に先行していた日本は、金融庁に先見の明があったと言えるかも知れません。しかし、全く安心はしていられないのです。「大きすぎて潰せない」金融機関の存在を断固として認めない、そして中央銀行に当座勘定を持つ金融機関は(定義上、商業銀行なのだから)有価証券関連の自己取引は認めない、、、というボルカールールが国際的に抜け目なく適応されるべきだとなったときに、どうすることもできない金融機関が、我が国にも2つや3つはあるのではないでしょうか。
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2012年2月8日水曜日

欧米の資本主義と大東亜の資本主義

英FT紙の論稿。資本主義それ自体が危機なのではない。欧米の資本主義が危機なのである。欧米の資本主義は、アジアからもっと学ぶべきだ、という主張です。

日本型資本主義のように政府が程よく市場に介入するやり方がアジアでは主流であって、これまで余りにも市場に任せ過ぎてきた欧米の政策担当者やオピニオンリーダー達は、日本、韓国、中国、台湾、香港、シンガポールを視察し学習すべきだ、と言われると、20年以上も自信喪失一本槍だった日本人としては嬉しくなくもありません。しかし、上記の各「国」の資本主義を一口に「アジア型」と括るのは流石に無理があります。

ただ、この論稿のなかで最も刺激的なのが、当ブログで長年一貫して主張している金融業の肥大こそが資本主義のメリットを台無しにするという主張。明快にして雄弁です。

「同じ知能を持つエンジニアが二人いたとして、金融エンジニアの給料が製造業のエンジニアの給料の5倍から10倍という馬鹿げた事態が何故起こるのか?」

それは、

「(ナショナルブランドの)金融機関はリスクマネーにレバレッジを賭けて実力以上に儲けられた反面、10年ごとの危機で生じるお決まりの損失については税金で救済されるからである」

「中央銀行によって負債が保証されている金融機関は、いつの時代も最大級のフリー・ライダーとなった」

わたしは、この主張は100%正しいと思いますが、よって欧米の金融行政が間違っていて、日中の金融行政が正しいとは全く言えない点は注意を要すると思います。

我が国の金融当局の公的資金について、そのものが間違いだと(モラルハザードの観点から、、、非金融セクターへの相当な痛みを覚悟してでも、、、潰れるべき銀行は潰れていくのを放置したほうがよいと)までは言わないにしても、公的資金の入れ方には工夫の余地があっただけでなく、そのような事態を招いたのがそもそもオーバーバンキング(銀行が多すぎる、銀行員が多すぎる、銀行員の給与が高すぎる)に原因があり、本論考のコンセプトとは逆に、政府が金融業界に介入しすぎた(護送船団方式)ゆえの過保護の結果であることをより重要視しなければならないと思います。

以上がポイント(欧米の資本主義の戦略的誤り)の一つ目・・・

《欧米は資本主義を人々の幸福度を高めるための実用的な道具としてではなく哲学的な意味で(共産主義よりも)良き概念であると看做してきた・・・》

で、残り2つの戦略的誤りは、《20世紀初頭の共産主義の脅威を体験したことからの教訓を忘れてしまったこと》と、《アジアを含む第三世界に資本主義を「伝道」してきたときに、「創造的破壊」の功罪について十分な教育を施さなかったこと》としています。

前者は、欧米の多くの国々で悪化している雇用問題と貧富の格差を、後者はデジカメの普及で倒産したコダックを見れば、それはそれでなるほどなと思います。が、これらふたつについても、中国の日本という似ても似つかぬタイプの資本主義が元祖資本主義の欧米のお手本だと言うのは余りに無理があります。

実はこの論稿の著者は、国立シンガポール大学のリー・クアンユースクールの学長なので、我田引水もあるのかなと思います。しかし、論稿そのものは修辞学上も優れていて説得力に富みます。

みなさんのご意見はいかがでしょうか?もしお時間と余裕があれば、是非ご一読ください。
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2012年2月6日月曜日

アラブの春が中国に近づきつつある

ニューヨーク・タイムズ紙オンライン版のなかのブログです。

http://rendezvous.blogs.nytimes.com/2012/02/05/the-arab-spring-is-coming-to-china/

ミュンヘンで開催中の世界安全保障会議の中での一幕。よくもまあ、こんなパネルディスカッションが成立したなあと思わせる構成員は、4年前の米大統領選でオバマ現大統領の対立候補だった共和党のマケイン上院議員と中国の外務副大臣、そしてなんとコーディネーターを、かのキッシンジャー元国務長官(筆者の世代以前には極めて印象の強いニクソン政権の最重要人物のひとり)が務めています。

ベトナム戦争の終結、金兌換停止、変動相場制への移行という当ブログが扱うべき重要テーマにおいてもニクソン=キッシンジャー体制は大いに研究すべきテーマであるし、最近話題の映画のタイトルロールであるエドガー・フーバーとの絡み合いもまた米国史の暗部ということで熱い視線を送りたい部分です。
http://phxs.blogspot.com/2010/02/blog-post.html
http://phxs.blogspot.com/2010/02/blog-post_05.html
http://phxs.blogspot.com/2010/02/blog-post_26.html
http://phxs.blogspot.com/2010/03/blog-post_08.html

それにしても、核開発疑惑でイラン経済制裁という点でも、米国(+欧州+日本)と対立している中国(+ロシア+インド)が、事実上の戦争である(BBC)とも言われるシリアにおいても安保理決議でロシアとともに拒否権を発動している状況のなかで、この企画が中止にならなかっただけでも十分有意義ですが、マケイン氏が「敵国」の外務官僚のナンバー2に面と向かって「(チベットで相次ぐ焼身自殺が、チュニジアのジャスミン革命の触媒となったのと同じように)中国にアラブの春がもたらされつつある」と言い切ったのは非常な重みがあると思います。

さて、中国の外務副大臣はどう言い返したでしょうか?「中国でアラブの春というのは幻想を超えるばかげた発想だ。。。中国は100年以上も外国勢による侵略と占領に屈してきたのだから、内政干渉に対しては黙っていないぞ」。

後段の部分は、北朝鮮からもよく聞こえてくる科白です。

イランとシリアを契機とした大国間の対立軸は、ソビエトやベルリンの壁が壊れる前の構図に戻った感もあります。ただし、もちろん大きく違うのは経済や情報技術であり、今は中国は、深刻なバブル崩壊の真っ只中かも知れませんが、社会主義が建前、資本主義が本音、より正確には半奴隷制、という2つないし3つの顔を持つ得体の知れない国へと変貌していることに注意が必要です。
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2012年2月1日水曜日

増収減益のアマゾン・ドット・コム

独占・寡占の仲間入りを賭けて薄利多売に専心するのはFX業界だけではないと思い知らされる決算発表でした。

2010年のアマゾンの売上は前年比35%の上昇。にもかかわらず、利益は57%の減少でした。原因は、ウェアハウス投資(本の倉庫のことなのか、クラウドサーバーのことなのか、両方か?)、技術投資、そしてキンドルであるとしています。

キンドル関連の数値はすべてが公表されているわけではありませんが、ホリデーシーズンの売上は前年比177%増とのこと。しかし、キンドル一台売るたびにアマゾンは15ドル赤字だという推計もあるようです。それを将来、デジタルブックや音楽配信などで取り戻すという考え方なのですが、日本の携帯端末と同じようなモデルが成り立つのかどうか、iPadもあり、不透明と言わざるをエません。

無制限即時発送を約束している「プライム・プログラム」も、年会費79ドルを徴収しても尚11ドル(一会員あたり)赤字なのだそうですが、同会員はプログラム加入後は従前比3倍もアマゾンを使うという推計もあります。

詳しくは、WSJの記事を御覧ください。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052970204740904577195371567545142.html?mod=WSJ_business_LeftTopHighlights
日本語の記事は例えばこちら。
http://japan.cnet.com/news/business/35013651/

全然話が変わりますが、今朝一番気になったのは、ユーロ圏が通貨統一後失業率が最悪になったという記事です。こちらはFT。
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/dca5fe48-4bf3-11e1-98dd-00144feabdc0.html#axzz1l5fAlXZ0
特にひどいのが若年失業率で、スペインとギリシャは50%に接近しています。このような状況が放置できないと政治や民意が動くとなると、ユーロ危機問題の解決の経路として、救済基金の増額の可能性(もともと低い)よりも、ユーロ分裂(による各国の財政金融政策の柔軟性の取り戻し)の可能性に振れると見るべきかも知れません。
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2012年1月25日水曜日

ビッグマック指数の最新版

今月は英エコノミスト誌恒例のビッグマック指数が更新され発表されています。
http://www.economist.com/blogs/graphicdetail/2012/01/daily-chart-3
もともと何か特殊要因でハンバーガーの「相場」が割高だったブラジルは、欧州危機後のレアル暴落にもかかわらず、「平均値的通貨」であるドルや円に比べて依然極端な割高が続いていること、1ユーロ=1.2スイスフランまで無制限介入を約束して度肝を抜いたスイスもまだ、割高さトップの地位に君臨していることなど、様々なことが見えてきます。

2008年に、この「七転び八起き」ブログを始めたときに、同時にオンラインセミナーも始めており、当時からユーロの割高をしつこく指摘してきました。その論拠の一つが、購買力平価であり、その簡易版であるビックマック指数もプレゼンに活用させてもらいました。

オンラインセミナーのオンデマンドは期限か切れておりますが、より詳しい内容は、このブログの過去記事にもあります。一例がこちら

先々週ついに97円割れ寸前まで下落したユーロも、その後の一週間半で101円台まで急速に買い戻され、対ドルでも1.3台を回復しています。しかし、OECDの指摘(新興国への警告)の通りで、ユーロが最悪期を脱したと見ているひとは殆どいないでしょう。それだけ、円キャリー(またはドルキャリー)によるユーロバブル(またはポンドバブル)が常軌を逸していたわけであり、その治癒には相当の時間がかかるものと思われます。

その反面、デレバレッジ、金融機関の機能の低下が世界中に蔓延しそうな今日この頃、ハンバーガーの値段が極端に安い国の通貨はもっと見直されてもよいと思います。

ビッグマック指数は、他にも面白い切り口を提供してくれています。ずっと円高だったため、割安感もなくなってしまった日本(円)ですが、実は、最低賃金で買えるビッグマックの個数は世界一なのだそうです。何かと、生活保護の給付水準に比べて最低賃金が安すぎると議論されることが多い現在、日本の最低賃金の高さを目立たさせる事実になっています。ただ、ここで大変失礼ながら、マクドナルドのパートの皆さんの給与水準が法定ぎりぎりに近いと仮定すると(注:それでもマックのバイトが人気なのは、時間の柔軟性にあります。これ、重要)、高い最低賃金で作られる日本のハンバーガーが安いのは、効率性(労働者がテキパキしている。ひっきりなしにお客さんが来るので原材料のロス率が低い)の高さや、または諸外国比でビッグマックの大きさが小さい(日本が本当にそれに該当するかどうか知りませんが、オーストラリアのビッグマックはカナダのそれよりかなり小さいらしい)、材料をけちっている(本部のバイヤーの買い叩きが特に強烈であるとか、質を「選んでいる」とか)などなどの要因も考えられます。

ファーストフードのパート店員の給与水準が最低賃金レベルであるという事実が概ね世界共通であるという仮定から、エコノミスト誌自身も、実際の為替レートと、ビッグマック指数が乖離するのが、一人あたりGDPの違いによるところが大きい と分析しています。

この点、わたしが重要だと思うのは、「逆は必ずしも真ならず」であって、今日、ファーストフードのパート店員だけが最低賃金レベルではなくなってきており、製造業の現場では部品のモジュール化が、非製造業の「現場」ではIT化が、それぞれどんどん進み、これにグローバル化を掛け算すると、「われこそは最低賃金とは無縁の中流ホワイトカラーだ」と思い込んでいた中途半端な知性の人たちの雇用がどんどん失われていく傾向にあることです。ビッグマック指数が平均以上の国の「中間層」のひとたちは注意が必要です(この議論には、貿易黒字国・貯蓄超過国の海外からの配当利子などの所得が一人あたりGDPや実際の為替に与える影響について含めておりません)。

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2012年1月23日月曜日

2012年を大胆予測-FX攻略.com最新号

FX攻略.comの最新号(3月号)がいよいよ書店に並びました。
わたくしのコーナーでは、2012年を大胆に占う予言集となっております。
新年ということで、いつもよりもグンと読みやすい内容となっていますので、是非ご一読をお願いいたします。
雑誌全体の特集内容は「確定申告」です。

さて、過去記事をご紹介します。2011年8月下旬に発売された同年10月号から・・・

ヨーロッパではギリシャに端を発した財政危機が桁違いに病巣の大きいイタリアとスペインに蔓延したことで、ユーロが導入以降最悪の危機に直面しました。一方、米国では、すったもんだの末、米国債の発行上限の問題を議会がクリアしたものの、その直後の米国債格下げ(スタンダード&プアーズ)で基軸通貨(?)ドルの存在感を取り戻し損ないました。金融市場が大混乱したなかで、日本は前人未到の円高のお盆を迎えています。


国民とマスメディアとが「内向き」な島国根性を競っているような日本ですから、大震災でも原発事故でもリーダーシップを発揮出来ない政権を血祭りに上げることしか能が無いわけです。こんな体たらくのメディアに洗脳されてしまっては、国内外でどんな種類の危機が起こっても、種類を問わず何でもかんでも超円高というのが理解できなくなってしまいます。しかし、そんな日本円よりも高騰を繰り返している金(ゴールド)の存在は謎を読み解く大きなヒントです。

リーマンショックから3年近く経ったので、サブプライムなる言葉すら死語に近づきました。「内向き」のメディアたちがリーマンショック前に繰り返していたのは「金融技術の革新とグローバリゼーションで日本を除くアジアと米欧は好景気が加速していて、日本だけ蚊帳の外」という論調でした。今考えれば、ひとつはサブプライムを一例とする詐欺的手法でレバレッジされた不動産バブル、もうひとつはユーロという通貨統合によって期待された不動産バブルに過ぎず、その宴のあとの後始末の厄介さの本質は、日本の90年代、2000年代と変わらず、しかもどうやら欧米のほうが重症なのではないかということです。

実は、わたしは、リーマンショック後に緊急出版した「『為替力』で資産を守れ」で予想を外していました。リーマン倒産による金融市場の混乱はなかなか収束しない。金融市場のチョンボを財政出動で取り返そうとしても抜本解決にはならない。能力以上の生活水準を追求してしまったツケは節約と緊縮(オーステリティ)でしか解決できないから当分景気は悪い、等々。小国ゆえ一番目のモデルケースになってしまったのがギリシャでした。大国の多くも、財政出動やらイカサマの銀行ストレステストなどで約3年誤魔化してきましたが、財政も破綻気味、金融機関も破綻気味となると、もうあとは本質に回帰するしかない、つまり「清貧の思想」を国民に要求する以外にないのです。これが受け入れられるかどうかは人生観、文化の違いが大きいでしょう。日本はいまのところ例外的な国家のひとつのようですが、多くの先進国や新興国では暴動がまだまだ多発する恐れがあるのです。

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2012年1月5日木曜日

ストラディヴァリウスと「食べログ」と尾上縫

明けましておめでとうございます。

新年早々の三題噺、「ストラディバリと『食べログ』は、わかるけど、尾上縫(おのうえぬい)は何故だ?」と思われるでしょう。

正月明け、ネットとメディアを騒がせているのは、「一個(一台?一本?)何千万円~何億円もすると言われるヴァイオリンの名器『ストラディヴァリウス』や『グァルネリ』が、現代の安い量産ヴァイオリンと比べて音色の差が殆どない。場合によっては現代のもののほうが評価が高い」というニュース

そして続いて出たのが上場会社カカクコムが運営していて飲食店や「地域名 ランチ」などで検索するとほぼ間違いなく上位に出てくる口コミサイト「食べログ」のやらせ疑惑です。

フェイスブックなどソシアルメディアの閲覧数や「いいね!(Like)」ボタンの押される回数みたいなものですら、ワンクリック幾らとかで売り買いされる時代だそうですから、SEO対策などで宿敵ぐるなびを戦慄させてきた「食べログ」に限らず、およそ「口コミサイト」なるもの、多かれ少なかれ「やらせ」はあるのだろうと読者の皆さまは既に賢察のことと思います。

現状、記事によれば、カカクコム自身はインフラを提供しているだけであり、やらせ業者を取り締まり監督規制する立場であることを明確にしています。

ここは実に重要で、外国為替証拠金(FX)取引の世界で、広告の大半を占めているアフィリエイトは、個人ブロガーはさておき、比較サイトや口コミサイトは、それ自体がやらせであり、人気順位を売買させていることがはっきりしているからです。

そのことの是非については、金融先物取引業協会でも、のらりくらりと議論されているようなのでそちらに譲るとしましょう。アフィリエイトという何となく洗練された外来語が「やらせ」という直截な言葉に置き換えられようとしている事実だけで、アフィリエイトモデルに依存してきた多くの業者や周辺産業の人々は「ああ、来るべき時が来たな」と観念することでしょう。

ヴァイオリンの話に戻すと、東京の郊外にあり、比較的多くのヴァイオリン奏者を育成輩出することで知られる音楽大学では、一個(一台?一本?)500万円以下の単価のヴァイオリンのことを“ゴミ”と称する習わしがあると聞いたことがあります。そういう価値観を成り立たせている教員や学生の耳こそまさしく“ゴミ”であるとわたくしは言いたいです。

・・・・・ヴァイオリンは一個でも一台でも一本(※)でもなくて、一丁と数えるそうです。豆腐と一緒です。。。。。(※)「あるオーケストラのなかでヴァイオリストが何人いるか?」という文脈では何本と使うようです・・・・・

良きにつけ悪しきにつけ、スティーヴ・ジョブズが圧縮音源によってアナログ音楽や生の音楽のビジネスモデルを破壊した一面があります。が、その敗者の代表格ソニーは、プロモーション・ビデオ(≒MTV)で「口パク(くちパク)」の歌と音楽を一般大衆に許容させてしまっていて、いまや天下のNHKですら平気で「口パク」歌手を紅白歌合戦の大舞台に立たせるほど寛容になっています。

メット文明の便利さは捨てがたい反面、良質なマスメディアの生存確率は劇的に低下したため、ネット上で「やらせ」産業が跋扈し、大衆の耳や舌や価値観につけいる隙を与えてしまっています。

それで、何故に尾上縫なのだ?と続くところですが、後半は後ほど。要すれば、ほんとうの金持ちはブランドでは騙されない、よって自身をブランドで飾らないことによって(普通のオバサンのように振る舞うことによって)ほんとうの金持ちはこういうものだ、ほんとうにこの人はおカネを持っているんだと思わせようとした一級の詐欺師であったというお話です。