2011年10月27日木曜日

ギリシャ債務元本削減率、50%で決定

米ウォールストリートジャーナルの速報記事です。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052970203687504576654901570712070.html?mod=djemalertNEWS
仏サルコジ大統領が、「マラソン」協議の末に、合意に至ったと発表。自主的な債権放棄を促すに至る討議の過程では、乱闘もあったようで、記事中の写真をご覧ください。

経済が萎むとき、損を誰が負担するかという問題に直面すると、人間は醜さが出ます。

50%~60%の債権放棄を民間債権者に強いるという根回しが先週末から始まっていましたが、この合意過程を見ると、わたしは90年代中盤の、住専問題を思い出さざるを得ません。

民間負担の裏返しである「公的負担」が6850億円に決めるために、政治的にも世論的にも夥しい時間とコストを費やしたものの、後から思えば、血税が負担した金額規模は桁違いに終わった。

同じことがヨーロッパで起きることは略間違いなく、今回の合意は序章に過ぎないでしょう。
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2011年10月25日火曜日

「現金の海」を泳ぐ銀行

ほとんど金利がゼロなのに、(家計部門などが)銀行に預けている預金の残高は未曾有の水準。ところが、銀行はリスクの高い貸出を控えようとする。信用力の高い大企業は借りてくれない。

銀行全体の預金量に対する貸出の比率(=預貸率)のグラフを見てびっくり!!

90年代以降の、デフレ、大企業の債務リストラ、低金利~ゼロ金利が概ね20年続いた日本のことではありません。ニューヨークタイムズ紙が、「銀行たちが現金のなかを泳いでいる」と譬えたグラフィック記事は、昨今の金融危機以降、急速に「カネ余り」状態に陥った米国の商業銀行の姿を現しています。

このグラフィックが付属している記事本編では、預金の「洪水」を歓迎できない商業銀行のなかで、とくに高飛車な大手のなかには、ニューヨークメロン銀行が一部不採算預金客に対して0.13%ポイントの口座管理料の徴収を計画しているほか、JPモルガン・チェース、USバンコープ、ウェルズファーゴが当座預金だけでなく譲渡性預金の金利を殆どゼロに下げたうえで預金保険料を中小企業向けの貸出金利に上乗せする形で転嫁する動きが出ています。

昨日アップのウォールストリートジャーナルの記事にありますように、一方では、オバマ政権が緊急対策を打たなければならないほど、住宅ローンの借り換えが(ちゃんと約定どおり元利払いをしてきた善良な人々ですら)ままらなぬほど銀行の貸出姿勢が厳しくなっている。その結果が、預貸率の「悪化」です。

金融危機以前は、どの商業銀行も預金獲得に躍起になっていて、3%以上の金利を付けるだけでなく、iPadを無料で配るまでして、また支店の増設も盛んだったのが、一転、支店閉鎖、何千人という桁での解雇という状況に陥っていると同紙は報じています。
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2011年10月24日月曜日

住宅ローンで債務超過の借り手を救済へ-米国政府

米ウォールストリートジャーナルの臨時ニュースです。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052970204346104576638931114550132.html?mod=djemalertNEWS
資本主義陣営である米・欧・日などのなかでは、モラルハザード的な政策が最も受け入れづらい米国で、極めて異例な「自己責任・結果責任を問わない」手段が取られようとしています。

共和党側、とくにティー・パーティーの出方、反応にも注目ですが、オバマ政権の動きに、しのごの言ってられない、のっぴきらない状況を感じざるを得ません。

ギリシャという国が相手か、住宅ローンを借り過ぎた相手か、随分異なるように見えますが、稼ぐ力以上の生活に嵌ってしまった浪費家を助けざるを得ないという事情ではほぼ共通です。

米国財政の更なる不健全化という意味では明らかにドル安要因、ただし景気悪化に歯止めがかからない程度であればマネーサプライは上昇せず、ドル高要因と減殺されます。
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【追記】今朝10/25(火)朝のNHKニュースで、ウォールストリートジャーナルのスクープを追認する報道がありました。そのサイトを添付します。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111025/t10013482551000.html

「ことりFX」いよいよ始まる⇒始まりました【フェニックス証券】

七転び八起きブログの外枠で、密かに(?)お知らせしていたフェニックス証券の新サービス「ことりFX」、、、いよいよ本日10/24(月)サービス開始&新規口座申し込み受付開始となりました。

10月に入ってから、毎週末、役職員全員で土日出勤してテストを繰り返し、昨日一昨日でフェニックス証券の既往のお客さまの口座移管を無事完了。本日からログイン可能となり、また新規のお客さまの口座開設申し込みも予定通り開始することが出来ました。

デモ口座も従来通り機能しております。

利便性(パソコン~スマホ《iPhone/Android》・・・)でも取引条件でも、これまでより格段に改善し、業界トップクラスになっていると自負しています。どうぞお試しください。

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2011年10月21日金曜日

破綻したデクシア銀行の大胆過ぎる粉飾

今朝のフィナンシャルタイムズが臨時ニュースで、欧州危機による最初の破綻銀行、デクシア(仏蘭西・白耳義)が、取引先2社に対して巨額の融資を行ない、その資金がデクシア自体の株式の購入に使われたと報道しています。

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/6c89260a-fb29-11e0-8756-00144feab49a.html#axzz1bHEleE7L

融資額は2社分合わせて2000億円程度。EUをはじめ多くの文明国では禁止されている行為だが、ベルギーではOKかNGか、記事によると微妙です。

禁止行為が行なわれたのは2008年以前の増資の時期だったということで、これはギリシャに端を発する欧州危機どころか、リーマンショック以前であったことにも驚きを隠せません。

しかし驚いてばかりいられません。この事案が、粉飾や架空増資という意図を以って行なわれたことかどうかもさることながら、間接金融の規模の割に直接金融の市場が小さく、金融機関が優越的地位の濫用を起こしやすい経済圏で起こりやすいわけでして、そういう意味では日本の金融制度も他人事ではないのです。

「預け合い」と並ぶ架空増資のやり口である「見せ金」も、もともと(「見せ玉」と同じく!?)、抜け道がいくつも存在していました。最低資本金制度などの改正や、自己株(≒金庫株)取得の解禁など規制緩和も拙速だったという商法学者(会社法学者)の見方もあります。一方で、銀行の優越的知の濫用については規制が強化されているとも見られますが、銀行の融資先への劣後債等の引き受け要請、自行株担保の融資、株式持合など、架空増資と紙一重の行為は、失われた20年でもまだ十分失われたとは言いづらいのが現状です。

リーマンショック直後に批判した銀行による政策保有株式の話、、、預け合いと株式持ち合いもこれまた紙一重です。
http://phxs.blogspot.com/2008/10/blog-post_21.htm

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FX攻略.com12月号が発売開始

http://www.fujisan.co.jp/product/1281682947/
唯一の外国為替証拠金取引の専門誌(月刊誌)FX攻略.comで新連載「『為替力』で資産を守れ!」を始めて約半年経ちました。ブログとは異なり執筆後約1ヶ月ディレイとなりますが、最新号12月号も是非お読みください。

「ことりFX」10月24日サービス開始を記念して(!?)、これから毎日過去記事を御紹介して参ります。


「『為替力』で資産を守れ」



新連載第1回


東日本の太平洋岸に未曾有の被害をもたらした地震と津波から2ヶ月以上経ちました。犠牲者の方々の尊い魂を沈め、被災者の方々の苦難と努力に報いるには、義援金や「いっしょにがんばりましょう!」などのメッセージだけでなく、おそらく明治維新にまで遡るであろう錆びついた国の形や既得権益を打ち砕くこと、敢えてこの国難を好機だと捉える思考と行動が重要だと確信しました。


震災直後、再び大規模システムトラブルを引き起こしたみずほフィナンシャルグループでは、みずほ銀行とみずほコーポレート銀行の統合や、頭取・社長経験者の特別顧問の引退、行政処分などが次々と発表されています。社内外の何処から見ても間違っていることを改めるのに10年以上掛っているという事態は、霞が関や永田町の出来事ならまだ多少は理解できるものの、民間のしかも一応は上場している会社での実態だと思うと、ただ呆れるばかりです。社内外の正論をひたすら粛清し続け、旧体制にしがみつき既得権益の甘い汁を吸い続けようとしてきた権力構造は、巨額融資や政策保有株式という形で、東京電力をはじめとする「原子力村」と固く結びついていました。


巨大銀行や電力各社だけでなく、日立、東芝のような原発メーカー、そして勿論、経産省とその下にぶら下がり点在する保安院等の原子力関連団体には、偏差値エリートが多数巣食っています。彼らの殆どが有事に際して無能力であり、人生の或る時期だけ、頭の器用さを発揮してレールに乗っただけに過ぎず、大企業や官僚組織は彼らのポテンシャルを削ぎ落としただけだったことを大衆の前に曝け出したことも、先述の「国難のなかの好機」であると、私は思うのです。


それでも巨大銀行には遅かれ早かれ公的資金が入るでしょう。これはやむを得ないことかも知れません。一方、証券会社やFX会社についてはどうでしょう。震災だけではない様々な改革や環境変化を経て、例えば我がフェニックス証券と、その桁違いのバランスシートを持つ最大手数社と比べて、倒産確率は比べ物にならないと6年前の社長就任当初は思っておりました。今はどうでしょうか。


個人中心の外国為替市場と規制強化という特徴で、我が国のFX業界は独特の進化を遂げて来ました。正直、金融業界の端くれだとは思いますが(笑)、銀行や大企業と異なり、努力が成果となって現れやすいFXという分野の特色は、より一層、業界側もユーザー側も喜んで共有すべきであると思われます。
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2011年10月18日火曜日

リスクヘッジに悩まされたモルガンスタンレーと零細トレーダーの夢と希望

大手外国銀行の四半期決算の内容が株式相場や為替相場に大きな影響を与える時期に突入しています。

しかし、洋の東西を問わず、大手銀行の決算の中身というのはよくわからないものです。

そのなかで、ウォールストリートジャーナル紙の記事
Hedges Haunt Morgan Stanley
Bets Backfire as Exposure to MBIA Dogs Wall Street Firm.
は、今年に入って株価を44%も下げたモルガンスタンレーの苦悩を鋭い切り口で描いています。
 
リーマンブラザーズが今のギリシャだと譬えれば、保険大手のAIGや信用保証の巨大企業MBIAはイタリア、スペイン級だったわけで、信用不安が蔓延して連鎖倒産によって世界金融がメルトダウンしていた可能性は大いにあったのです。
 
逆に言えば、そのメルトダウンが喰いとめられて現在に至っているように、現象的には、見えます。しかし、米国どころか世界を代表する第一級の金融機関であるモルスタが、夥しい金額の信用リスクについてMBIAへ「ヘッジ依存」してきたために「往復びんた」を浴びている姿からは、リーマンショックがいつのまにか収束していたという漠然とした印象を抱きがちな我々の目を覚まさせる実態が見え隠れします。
 
幸か不幸かリーマンショックが官民挙げての巨悪の相場操縦ではなかったこと、一流の人材を大量に集めて情報機関としても第一級の組織であっても相場を操縦するどころか逆に相場に翻弄されることがあるということ、などなど、多くのヒントを得られる記事です。
 
巨額の利益を上げ続けられるというのは本来不可能であり目に見えない(または敢えて隠された)リスクがあること、利益率は低い中小零細の組織であっても真っ向勝負を続ければ生きていく道があることも意味し、考えようによっては大変勇気を与えてくれる事実にも思えます。
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2011年10月14日金曜日

中国資本主義のメルトダウンが始まった

町工場のオーナー社長が高利貸しからの借金取り立てに敵わず夜逃げ、自殺が急増しているという事態をニューヨークタイムズが渾身レポートしています。

http://www.nytimes.com/2011/10/14/business/global/as-chinas-economy-cools-loan-sharks-come-knocking.html?_r=1&ref=global-home&pagewanted=all

「社員旅行に不参加ならば罰金だ」などという何だか高度成長期の日本の企業文化を彷彿とさせるような脅しで総従業員の休暇を強制したオーナー社長が、自分ひとりその旅行に参加せず、従業員が休み明け工場に戻ってきたら、工場のなかの設備が空っぽになっていてオーナー社長も行方不明になっていた、というエピソードから始まる長文の記事。

低価格による輸出競争力の縁の下の力持ちである筈の町工場を、大手国営の銀行は相手にせず、中小メーカーは高利貸しに日々の資金繰りを頼るしかないというのが中国資本主義の実態であるが故の悲劇が顕現化しはじめているとニューヨークタイムズは言います。

傾斜生産方式に端を発し護送船団方式によって温存された間接金融優位の金融制度が我が国独特の歪んだシステムであり、産業の二重構造と相まって戦後経済の復興と高度成長の原動力となった事実を顧みると、我が国には対岸の悲劇を笑う資格はありません。

機会均等が確保されていない資本主義がメルトダウンしかかっているのが、金融引き締めでバブル退治をせざるを得ない中で最大の輸出相手EUのスローダウンに直面した中国の姿であろうと思います。

ところで、機会均等が確保されていない点では日本も中国と五十歩百歩であり、その処方箋がセーフティネットの拡充であると誤解し続けているのが日本であるというのが私の意見です。
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2011年10月13日木曜日

ジョージ・ソロス氏のユーロ防衛発言は続くが・・・

ここ数カ月続いたユーロ危機が小康状態になった一週間ですが、この間フィナンシャルタイムズに幾度もユーロ防衛(応援)発言を繰り返してきたジョージ・ソロス氏。(ロンドン時間の)今朝も

「まだまだ(現在のEFSF合意だけでは)不安である。・・・

・・・地雷原を潜り抜けてユーロが守られるために各国首脳が取るべき手段はこの狭い道しかない」

という論稿をあげています。

不世出のヘッジファンドのマネージャーによる執拗なまでの「ユーロ圏はかくあるべき」発言は、自らのユーロ買い越し(かつまたは南欧系諸国の国債のキャリー)ゆえのポジショントークとも考えられ、だとするとこの1週間の戻りでもまだ満足できない水準だということでしょうか。

1997年のアジア通貨危機や、更に遡って1992年のポンド危機の時の振るまい、その背景に「通貨が売られるには合理的な理由がある」という正論染みた哲学と比べると、この間の氏のFTへの論稿には違和感を覚えました。

尤も、氏のポジショントークは、好意的に捉えれば、アジアやイギリスでやったことをユーロ圏(≒EU)で繰り返して三匹目のドジョウを狙うのは、世界平和の観点から洒落にならないという人道的な配慮とも見られなくもありません。が、いずれにしてもその中身は、その執筆意図に反して、何故この先もヨーロッパは危機と背中合わせなのかを明確に示しています。

氏が描いている処方箋を裏読みすれば、欧州の銀行は乾布摩擦をする予定だったのが、国立病院のなかで肺炎が蔓延してしまっているという状況のようです。
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2011年10月11日火曜日

ノーベル経済学賞にサージェント氏とシムズ氏

ウォールストリートジャーナルは、受賞者であるふたりの米国人の功績を、いわゆる合理的期待形成理論を打ち出したことだけにとどまらず、統計学の応用によって、マクロ経済学は、「サージェント=シムズ以前」と「以降」に分類されるほどだとの称賛を引用しています。

一方、フィナンシャルタイムズは、インフレターゲットや量的緩和(QE2などの時間軸効果)のコミットなど、中央銀行の政策目標がガラス張りであることの良し悪しについての分析において、このふたりの受賞者の研究成果が大いに役立つことを指摘しています。

財政・金融による恣意的な景気刺激策は、長期的には勿論、短期的にも意味が無いと説く、合理的期待理論は、レーガン政権下の経済運営に大きな影響を与えていた筈ですが、実際には、社会保障費などの削減以上に国防関係費が嵩むという経過を辿り、当時の米国経済は、オールド・ケインジアン的な枠組みで景気を回復させてしまいました。

80年代後半の我が国のバブル経済が崩壊してから、財政政策は平時経済では有り得ない程度の赤字を続け、昨今財政破綻の問題が起きている欧米諸国のどこよりも悪い水準に至るまでになっています。この20年間、合理的期待理論が日本経済の失速をどのように解説できるか?本質を穿つ難問ゆえ、別の機会に譲らせていただきたいと思います。

より現実的でわかりやすい実例は、リーマンショックからの米国経済の立ち直り、世界経済の立ち直りに、惜しみない財政・金融政策は、大いに貢献していたのではないかという観察です。幸いなるかな、労働市場も、金融市場の参加者も、サージェント氏が想定していたほど、合理的に行動はしていなかったということです。

しかし、それが長期的に、恒久的に有効ではない、、、、という至極当たり前のことが、欧米両側で発生している債務危機(ソブリン危機)です。

民間銀行の問題を国家権力(の協力)によって一時しのぎは出来た。が、問題の所在が国家権力のレベルに格上げされると難易度は比較になりません。

欧州通貨の相場については、一時しのぎで対円または対ドルで戻っているときは、売りから入るチャンスだと考えられます。収束にはかなりの時間を要し、相場の変動幅が大きい状況が意外と長く続くと予想します。
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2011年10月3日月曜日

ベートーヴェンとヘーゲルが同い年だったという浅田彰氏の指摘

止揚(アウフヘーベン)としてのユーロ圏

前回このブログにアップした「月刊FX攻略」の記事「為替力で資産を守れ」の“チラ見”(”立ち読み”)ですが、既に来月号の原稿を編集長にお送りしております。

やはり、ユーロ問題を、さらに掘り下げようと思って書きすすめた直近号の続編です。このなかで、「ユーロ圏」という統一通貨構想が、過去延々と民族間の対立・戦乱のなかで繰り返されてきた分裂と統一の長所短所の止揚(アウフヘーベン)としてぶち上げられたものではなかったかと、指摘いたしました。

止揚(アウフヘーベン)というのは、ヘーゲル(1770~1831)哲学(など)の弁証法(ディアレクティーク)で、相対立するふたつの命題(テーゼとアンチテーゼ)から、その矛盾を乗り越えて一段階上の命題(シンテーゼ)が作られる過程を意味します。

対立を乗り越えた和解のようなイメージです。

ソナタ形式と弁証法

10/1(土)11:00から、NHK教育テレビで再開した坂本龍一「音楽の学校(スコラ)」は、前回シリーズでバッハが取り上げられていたのを踏まえて、ハイドン(1732~1809)、モーツァルト(1756~1791)、ベートーヴェン(1770~1827)を中心とする(ウィーン)古典派の作曲家がテーマになっています。

この新シリーズ(シリーズ2)の初回は「古典派の歴史的位置づけと音楽的特徴」と題して、「ソナタ形式」とは何かについて、坂本龍一氏とその「仲間たち」である、浅田彰氏、岡田暁生氏、小沼純一氏と、作曲を勉強中の高校生たちとともに、探っていくという試みでした。

教科書的な音楽史には見られない斬新な切り口が各々の発言から読み取れ、30分ではとても足りないテーマながら凝縮した番組内容。その中で、特に注目したのが、浅田彰氏の指摘

「ベートーヴェンとヘーゲルが同じ年に生まれている。」

「ソナタ形式の大家と弁証法の大家の生涯が重なっていることは偶然とは思えない。」

「弁証法というと難しいが、ドイツ語の意味としては『対話』ということ。ソナタ形式も(第一主題と第二主題の)対話ではないか。」

というところでした。

浅田彰氏の名言の数々

実は、前回シリーズ(バッハ)で、岡田暁生氏が「ソナタ形式という音楽用語は、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン(たち)よりも後の時代の評論家が名付けたものである」と指摘していたのが印象的でして、ウィーン古典派の大家の3人が、形式を洗練しようとか守ろうとかいう意識と、第一にパトロン(スポンサー)や一般聴衆の信認を得たいという意識と、どのように混在していたのかハッキリしないのです。

以前ブログで譬えに使った俳句の五七五と似ていると思います。

つまり、才能を発揮したい、才能を認めて貰いたい、その結果として名声と生活を確立したいという動機がない筈はない天才作曲家たちが、過去の巨人の形式を(、、、敢えて、または知らず知らずのうちに、、、)踏まえたうえで、独創性を訴えたいというのは、矛盾した、二律背反した、苦しい作業のようにも見えます。

この矛盾をあっさり読み解きたいと思い、浅田彰氏の切り口を振り返ってみることとしました。

浅田彰氏は知の巨人であり名言の天才です。まず、ウィキペディアによれば、

「財務省のエリートは、数学か経済学の博士号くらいは持っていて、5時にはサッと仕事を切り上げて小説を執筆するなりオペラを鑑賞するというスタイルを持つレベルであってほしい」

と述べているそうです。ほんとうにおっしゃるとおりであり、勿論、能力が低いから残業しているわけではないとわたしは推測していますが、政治主導だけでなく、人事院主導でも、この国の行政はずいぶん良くなる余地があると思います。

勉強しろ!!!ということで言えば、昭和59年(西暦1984年)の春、大学の入学式の直後の学部の茶話会で、氏は新入生に向かって、

「女遊びなどは半年一年ガンガンやれば飽きる。早く飽きてしまって勉強してください。」

という発言がありました。ご本人は覚えていらっしゃるかどうか判りませんし、また、ご本人がそのような時期に飽きるほど集中的にお遊びになったのかどうかも判りません。

勉強好き(だが商売が苦手)なわたしにとっては、これまた我が意を得たりという名言ですが、今日の日本の状況では、飽きるほど集中的に遊べる男性諸氏は殆ど皆無に近いと推察されます。

ところが、需要があるところには供給があるものです。個室ビデオ鑑賞なるものが町のどこにでもある。こんな国は、わたしが知る限り、日本だけではないかと思いますが、何かと閉鎖的と言われるこの国も、外食産業など一部のサービス分野には自由主義経済の良い面が発揮されているのです。

第一主題と第二主題は陰と陽の関係だったりする(坂本龍一)

何が言いたいのかと言うと、、、、殆どの男性は、場所は兎も角、「鑑賞としての遊び」を経験しているわけであり、恐らく複数のソフトというかコンテンツの経験があると想定されますが、毎月夥しい数量の新作ソフトが供給されて、もう何十年にもなる歴史の中で、よくよく考えてみると、中身の細かいところは兎も角、骨格としての進行パターンは殆ど変わらないことに気づかされます。

それと、ソナタ形式と、どう符合するのか!?

当ブログはアダルトサイトではないので、またそのような事業主との資本関係もございませんので、此処から先は御想像にお任せすべく、読者のみなさまの宿題とさせていただきます(笑)。

ひとつ大事なことは、その類のソフトの進行パターンは、こうでなくてはならないと、業界団体(≒自主規制機関)で、頭ごなしに決めつけているものでは決してないこと。パターンを踏まえようという意識よりも、夥しい過去のストックや新作のなかで埋もれないように、新しいこと、独創的なことをやりたいという意識のほうが、制作側にはずっと強いと思われること。。。

このような意識のバランスだとか、生存競争という環境だとかは、ソナタ形式と向き合っていたクラシック作曲家たちと意外なほど共通するものであったと想像しています。

2011年9月29日木曜日

月刊FX攻略11月号、もうお買い求めになりましたか?

雑誌ですので1ヶ月程度前に書かせていただいた原稿ですが、今まさに焦点のユーロ問題について書いております。

立ち読み程度に・・・

ヨーロッパではギリシャに端を発した財政危機が桁違いに病巣の大きいイタリアとスペインに蔓延したことで、ユーロが導入以降最悪の危機に直面しました。一方、米国では、すったもんだの末、米国債の発行上限の問題を議会がクリアしたものの、その直後の米国債格下げ(スタンダード&プアーズ)で基軸通貨(?)ドルの存在感を取り戻し損ないました。金融市場が大混乱したなかで、日本は前人未到の円高のお盆を迎えています。

(中略)

ひとつはサブプライムを一例とする詐欺的手法でレバレッジされた不動産バブル、もうひとつはユーロという通貨統合によって期待された不動産バブルに過ぎず、その宴のあとの後始末の厄介さの本質は、日本の90年代、2000年代と変わらず、しかもどうやら欧米のほうが重症なのではないかということです。

(中略)

財政出動やらイカサマの銀行ストレステストなどで約3年誤魔化してきましたが、財政も破綻気味、金融機関も破綻気味となると、もうあとは本質に回帰するしかない、つまり「清貧の思想」を国民に要求する意外にないのです。これが受け入れられるかどうかは人生観、文化の違いが大きいでしょう。日本はいまのところ例外的な国家のひとつのようですが、多くの先進国や新興国では暴動がまだまだ多発する恐れがあるのです。」

是非書店等で手にとってご覧になってください。定期購読に値する月刊誌です。
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2011年9月12日月曜日

普天間問題と福島第一原発事故は根っこが一緒だ

原発推進派にとっても反対派にとっても要チェックな映像を昨日2件見ることができました。

いずれも度々再放送されていて反響の大きさを物語っていそうなものの、政治も、新聞や地上波など大衆低俗メディアも何処吹く風なのが残念無念。

ひとつは、NHK「ETV特集」『アメリカから見た原発事故』。

福島“第一”原発”など”で使われているGE(ゼネラルエレクトリック)社の原子炉モデルが粗悪品であり(核平和利用のための)試作品として日本に押し売りされた経緯があることを、元GEの幹部や、同モデル(マークⅠと呼ばれる)使用停止を会社に訴えて辞表を提出した元技術者へのインタヴューなどで解き明かしていった番組です。

4月に、日系アメリカ人で同様の勇士がいたというニューヨークタイムズの記事を御紹介して大反響だったこともありましたっけ。

原発事故以来、「ディーゼルエンジンの非常用電源が巨大津波の際には動かなくなってしまう」という点についての設計上のミスを指摘する報道は、地上波レベルでも度々ありました。

このETV特集が出色なのは、後発モデルではありえない、「圧力容器と格納容器の狭間を出来るだけ狭くして製造コストを節約していた」こと、その設計では米国の安全基準を満たさなくなったので米国でのGEのマークⅠ事業は全て赤字だったが、日本は「言いなり」だったのでGEは大儲け出来たこと、格納容器の大きさをケチった代わりに「圧力抑制プール」という工夫で安全を補うというのは《水素爆発を抑制するという観点からは》絵に描いた餅である点などの指摘と告発です。

さて、告発と言えば、ディスカバリー・チャンネルの「チェルノブイリ 連鎖爆発防止」もまた、民間出資メディアがよくここまで取材し、またこんな映像がよくぞ撮影され保存されていたと驚きました。

このドキュメンタリー番組のなかで最も注目したいのはIAEA(国際原子力機関)が巷間言われる「核の番人」どころか、原子力村マフィアの元締めに過ぎない実態を暴露した点です。

チェルノブイリ事故の直後に説明なく召集され事態収束のために働かされた炭鉱夫や兵士やウクライナの一般市民などが短い期間に何万人という規模で命を落としたり体力消耗で廃人同然になっている事実を、当時ソ連の原子力担当幹部がIAIA本部の総会で報告したものの闇に葬られ、一ケタ小さい数字に書き換えられ、同幹部が何故か自殺に追い込まれたというエピソード。

ところで、冒頭の「普天間問題と福島第一原発事故とは同根」という思いは、一昨日のNHK総合テレビ「マイケル・サンデル 究極の選択『震災復興 誰が金を払うのか』」という、日米中の最高学府などの学生などが頭の悪さを競うという欲求不満な討論番組がありまして、そこで上海の女子学生のひとりが「わたしは原発には賛成だが、自分の家の近所に建てられるのは嫌だ」という発言にマイケル・サンデル先生が噛みついたところから出てきたものでもあります。
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2011年8月17日水曜日

経営統合の予感

今朝のウォールストリートジャーナルは、「When Google Meets Moto」と題して、モトローラ役職員へのインタビューに基づいて、グーグルによる同社への株式公開買付発表のフォローアップ、買収する方とされる法の企業文化の違いを解説しています。

When Google Meets Moto

一緒になるのが宿命だった両者が、長年、企業文化や風土の著しい違い(かたやハードウェア会社で官僚的、かややソフトウエア会社で自由奔放、それに知能指数の違いが20!?などなど)ゆえに擦れ違ってきたが、それを乗り切って云々、、、ということで、日本でも90年代初頭に大ヒットした映画「恋人たちの予感」(原題は「When Harry Meets Sally」)の、おそらくHarry(ビリー・クリスタル)=Google、Sally(メグ・ライアン)=Motorora(Mobility)と擬えて、残念ながら余り綺麗に韻は踏んでいませんが、書かれたこじつけ記事(しかしそれなりに面白い)です。

もうひとつ残念なのは、「恋人たちの予感」の配給元は20世紀フォックスですから、WSJと同じく、今最も話題のルパート・マードック帝国の一員なのです。

この記者は出世のツボを押さえていると言えるでしょうか!?
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2011年8月16日火曜日

Google Rush と Gold Rush

今朝のウォールストリートジャーナルフィナンシャルタイムズニューヨークタイムズはグーグルによるモトローラ(・モビリティ・ホールディングス)への株式公開買付発表のニュースで持ち切りです。

買収予定金額125億ドル(金曜日の終値比63%ものプレミアム)は、同社によるユーチューブ買収(当時非公開)や、マイクロソフトによるスカイプ買収(同じ)同様またはそれら以上に驚くべき数字であり事実です。

そんななか、常に味のある報道で定評のあるニューヨークタイムズは、オーストラリアにおけるゴールドラッシュの模様を伝えています。中国に次ぐ第二の金生産国であるオーストラリアでは巨大企業による鉱業生産の傍ら、主としてこれまでは定年後の趣味で片田舎で《砂金》を集めるひとたちが居たらしいのですが、今年だけで23%も急上昇した金価格に釣られて、これまでとはケタ違いの人達、それも若者やシドニーなどで高収入を得ていた人達が定職を捨てて群がっている。《砂金》ツアーも急増しているが、週末だけ趣味程度に来ているのではなく片田舎の村に定住する人達が爆発的に増えているのだそうです。
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2011年8月15日月曜日

日本橋さくら通りの桜の幹が余り太くない理由


フェニックス証券は外堀通りと日本橋さくら通りの角のあたりにあります。

東京駅八重洲北口の中心街とも言える日本橋さくら通りには外堀通りからの入り口付近に石碑があります。これによりますと、

☆通りの桜の木は昭和10年に植えられた。

★ところが、昭和20年3月の大空襲で、町とともに灰燼に帰した。

☆爾来10年有志が復興への意欲で力をあわせた結果、昭和31年に桜並木が復活した。

とのことです。外堀や内堀の土手に植わる桜の大木に比べて、幹が細い桜並木の正体は、ビル陰で日照量に恵まれないことだけではなさそうです。戦後は遠くになりにけりとは必ずしも思えない、66回目の敗戦記念日です。
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2011年8月12日金曜日

空売り規制では金融危機は収束できない

3年前に「裸の空売り」という記事を書きました。

http://phxs.blogspot.com/2008/07/blog-post_16.html

Naked Short Salesとは、空売りをする時点では、現物株の仮株の手当てがまだなされていないものを指します。記事当時のファニーメイやリーマンなど巨大金融機関だけでなく、アジア通貨危機のときのアジア諸国など、直ちに換金が出来ない固定資産を巨額の借入(レバレッジ)で支えている巨大かつ歪なバランスシートというものは、その資産を売り急いだ場合には、バランスシートの価値(ファイヤーセールス・バリュー)が著しく不当に低い評価を受ける、それは可哀そうではないか、という観点から、しばしば規制当局によって正当化されるものです。

昨夜これがフランス当局によってBNPパリバやソシエテジェネラルなど大手上場金融機関の株式について発動されました。これが上記理由に照らして正当かどうかの侃侃諤諤(かんかんがくがく)は敢えて措き、その効能について考えてみましょう。

3年前に書いた記事は、2008年7月のものです。つまり、リーマンショックはその2ヶ月後なのです。ハゲタカファンドや投機筋や規制、金融行政だけのせいには、リーマンショックは出来ないと考えるべきでしょう。

空売り規制は金融危機を収束させるものではなく、むしろより本格的な危機の前兆くらいの場所に位置すると予想します。

後々、「S&Pショック」と命名されるかどうか良く判らない今月の金融市場の混乱は、

①主役である米国債が暴落しているわけではないこと、

②大暴落した株価が反発に転じたきっかけは中央銀行による国債購入など金融緩和政策の拡大の発表でした(米国だけでなくイタリアとスペインについても然り)が、財政規律という本筋の問題を根治する処方箋とは読み取れないこと、

③では国債も株式も通貨も皆駄目だったら商品(先物)が全面高かと言えば、金を除いて大暴落であること

などなど、理屈では説明がつかないことだらけです。

リーマンショック後は、紆余曲折を経て、「ウォールストリートの不始末でメインストリートに迷惑をかけたのだから財政出動は当然」という議論に、軍配が上がりました。

2008年から2011年にかけて、「先進諸国」の政界と経済界は、リーマンショック以前の生活水準を維持するために、金融を財政でカバーしうるとの前提のもとになりふり構わずやってきたわけですが、やはりそれは無い物ねだりだったと判り始めたことが、この8月危機の本質なのではないかと疑っています。

金融危機をボラティリティで測るならば、昨年5月のギリシャショックは、今年3月の震災(というよりも原発事故)直後の危機より遥かに長かったわけですが、今回の仮称「S&Pショック」はそれよりも長引く可能性が十分あると考えられます。
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2011年8月8日月曜日

腐った組織の愚かな連中

事務次官など3人が「更迭」(←日本語が乱れ切っています!)された霞が関の某お役所その他原子力村の住民たちのことではありません。

リーマンショックの年にノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授がコメンテーターを務めるニューヨークタイムズ紙のなかの「御意見番コーナー」、、、というかブログのなかで、S&Pによる米国債格下げの報道をうけての一言コメント。

「明らかなことは、我々は(週明けの東京市場がどうなるかなどを案ずるために・・・七転び八起き注)、腐った組織に属する愚かな連中がいったい何をどう考えているのか程度のことに気を配ろうとしていることだ。」

http://krugman.blogs.nytimes.com/2011/08/06/the-best-summary-of-the-sp-downgrade/

リベラリストの同教授が断言するように、債務危機の問題があるのであれば、中央銀行が米国債でもイタリア国債でもスペイン国債でも迷わず買えば良いだけの話だ、、、という意見に、わたしは100%賛成であるわけではありません。

しかし、同教授が上記一言コメント以降に長文のブログを更新しているなかで述べているように、企業が発行する債務(社債など)への格付け審査や発表の実態もさることながら、国家の債務についての格付け機関の態度が馬鹿げていることについては賛成です。

かつて日本も、週末ではなくて週央の日中に、大手米系格付け機関に格下げの不意打ちを食らい、国債市場が大混乱したことがありました。もちろんそれ以降も日本の財政規律は改善するどころか悪化する一方ですが、あの格下げの意味はなんだったのか。いや、何の意味もなかったことを、今回格下げを「演じた」格付け機関も、格下げをしないと「発表」した格付け機関も、同様に論理的に反省すべきです。

米国債を「格下げしない」と「発表」した格付機関も同様に愚かしいことについてはちょっと解説が必要かも知れません。例えば、東京電力の発行する社債はついこの間まで日本企業のなかでトップクラスでしたが、社債には満期まで数年と短いものから、20年またはそれ以上の長いものがあるにもかかわらず、社債格付けは同一なのです。では格付け機関は、格付け審査をしている企業や国家が発行している債務のうち最も満期が先のものまでその償還能力が等しく高いと推定して高い格付けを付与しているのでしょうか。そんなことはないのです。

エンロンでもサブプライムでもそうでした。格付けを下げるという行為は、格付け機関の存在感や影響力を誇示している側面として取り上げられるようですが、実は、生命保険会社に譬えれば、生命保険の契約者が死亡したのに保険会社側に義務のある健康診断がちゃんと行なわれていなかったことを免責事項としてでっち上げて保険金を不払いにするような犯罪でありまして、保険金不払いにも色々あるでしょうが、こんなひどいことはさすがにないと思っているのはわたしだけでしょうか。
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2011年8月3日水曜日

イタリア国債の問題は桁違いに深刻

「市場には二つのタイプの参加者がいる。恐怖で動いている参加者と欲望で動いている参加者である。

現在、イタリア国債やスペイン国債の流通市場で観察されている現象は、、、どちらのタイプの参加者も同じ方向(≒売り逃げ)で動いてしまっていることである」

ニューヨークタイムズ紙の記事の特徴は、まず何と言っても文章が長いことですが、もうひとつは記事の結びに取材先からのコメントを格言のように取り出して締めくくっていることです。

米国債の発行額上限問題が何とか解決したとたんに、狼(おおかみ)は再びヨーロッパ、特にイタリア、スペインの扉を叩いたという趣旨の同紙の記事を締めくくっているのは、あるヨーロッパの財務担当高官の匿名のコメントです。

ヨーロッパの主要銀行が保有しているイタリア国債の額は33兆円を超えており、先ごろ問題だったギリシャの国債の30倍以上のレベルとのこと。どの銀行がどれくらい保有しているか、記事に詳細があります。

http://www.nytimes.com/2011/08/03/business/global/pressure-builds-on-italy-and-spain-over-finances.html?pagewanted=1&_r=1&ref=global-home

大手金融機関のビジネスモデルという点で言えば、一昨日発表された英HSBCの大規模リストラの発表は、世界規模での金融ビジネス縮小の前触れに過ぎないという一面を表しています。

一方、大西洋の両側で繰り返される国家債務問題は、通貨発行権限(シニョレッジ)や財政金融政策の独立性(ソブリニティ)を超えたグローバリゼーションに内在する問題の深刻さも如実に物語っています。
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2011年7月20日水曜日

最新鋭FXシステム導入に関するお知らせ

このたび、フェニックス証券株式会社(東京都中央区(外国為替部門)、代表取締役社長:丹羽広)は、外国為替証拠金(FX)取引システムを全面刷新することを決定し、日本を代表するシステムインテグレーターであるNTTコミュニケーションズ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:有馬彰)との間で、新たにFXシステムの利用に関する契約を締結することと致しました。


新システムは、超高速・高信頼のFXトレード・プラットフォーム「U-FOREX1」を採用し、リッチクライアントはもちろん、iPhone/Android、タブレットなどの複数のトレードチャネルを標準装備とした業界最新鋭のシステムとなります。なお、提供開始は2011年10月初を予定しております。


また、新サービス導入に伴い、お客様には、現行の外国為替証拠金(FX)取引サービスであるフォレックス・ラインから新サービスへの口座移管(証拠金およびポジションの移管)プログラムをご用意する予定です。


現在、FX業界は、レバレッジ規制や、震災後の金融市場混乱を引き摺った取引低迷などで、全体として不振な状況が観察されているなか、フェニックス証券は、敢えてこの環境をチャンスととらえ、FX事業開始後最大規模のシステム投資を行なう決断に至りました。


既存のお客さまをはじめ、ひとりでも多くのお客さまに、フェニックス証券の最新取引システムを御利用いただければと考えております。

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商号:フェニックス証券株式会社(金融商品取引業者)
登録番号:近畿財務局長(金商)第34号
加入協会:日本証券業協会、社団法人 金融先物取引業協会(会員番号1097)

<本件に関するお問合わせ先>

フェニックス証券株式会社 東京支店
TEL:03-3517-1953 E-mail:info@phxs.jp


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2011年7月19日火曜日

ブラームスとプロコフィエフを結ぶ線

例えば、俳句だと、五七五とか、季語をひとつだけ入れるとかの形式があるが、それに囚われず、自由に感動を与えれば良いという立場があります。逆に、形式という制約のなかで感動を与えることに意味があるという立場もあります。

極端にどちらかの立場だけが正しいというものではなく、好き好きなのでしょう。形式という制約も、特定の権力者や権威者が下々に押しつけたものではなく、長年、人間の生理に叶うものとして選ばれ続けられてきた伝統なのだと思われます。

ブラームスやプロコフィエフは、少なくとも或る時期は、どちらかと言えば、形式や伝統にも守るだけの意味があるという考え方で名曲を紡いだ立場の作曲家だったと、「父ハイドンを尊敬した作曲家二人」という趣旨の、一昨日日曜日のN響アワーで説明をされていました。紹介されていた曲は、ハイドン最後の交響曲(第104番「ロンドン」)と、プロコフィエフの最初の交響曲(ロシア革命の年に書かれた「古典交響曲」)、ブラームスが自らの管弦楽技法に自信を持ち「交響曲第一番」の完成へとラストスパートをかけるきっかけになった「ハイドンの主題による変奏曲」です。

プロコフィエフの「古典交響曲」はその第三楽章「ガヴォット」が同番組のオープニングテーマに現在は使われてもいます。

親しみやすい曲ながら、奇妙な転調が続く同楽章は、同時代の作曲家でプロコフィエフの葬儀委員長も務めたカバレフスキーが子どものために書いた「子どものためのピアノ小曲集」にしばしば登場する、決して子ども向けっぽくない、和音進行と良く似ています。

そこでは、前回のブログ、愛の調べの第二楽章で、再度ご紹介したメディアンテが中心的な役割を担っています。

土曜日のオーケストラーダの演奏会は、目の御不自由なお客さまも大勢招かれていて、個性的な演奏会となり、初回公演として大成功でした。プログラムの中心がブラームスの交響曲第一番で、アンコール曲はプロコフィエフの「古典交響曲」の第三楽章「ガヴォット」だったのです。

最近、商業的には大流行している派手なパフォーマンス(だけ)が持ち味の売れっ子指揮者とは一線を画した久保田昌一さんの棒を、素人目で勝手に解釈すれば、クラシック音楽の原点に戻る強い決意の表れだと感じました。プロコフィエフの「古典」をアンコールに選んだ理由も、「新鮮な」原点回帰という含意なのではと勝手に憶測しています。
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2011年7月14日木曜日

愛の調べの第二楽章

【広告】Orchestrada(オーケストラーダ)第1回演奏会
プログラム:ブラームス/交響曲第1番ほか
2011年7月16日(土) 18:00開場 18:30開演
第一生命ホール(晴海トリトンスクエア内)
詳細はコチラから

ブラームスが作曲した交響曲第一番は、それまでの交響曲には無かった画期的な音楽です。

わたくしが、Orchectrada(オーケストラーダ)の指揮者セミナーで勉強したのは、主として第二楽章ですが、その前提として、各楽章の間の関係を見ると、過去の伝統的な古典派音楽にはあまり(※)なかった性質・・・つまり、モーツァルト(の偽作疑惑のない後期の交響曲)やベートーヴェンのほぼすべての交響曲は、第一楽章と第三、四楽章の調性(例えばハ長調)が統一されていて、第二楽章はその下属調(例えばヘ長調)などの近親調が採用されています。ベートーヴェンの有名な第九やシューマンの交響曲の一部にはこのパターンに100%従わない作品もありますが、近親調でない調性(=遠隔調)で出だしたり終わらせたりする楽章は見られません。

近親調ではない遠隔調の代表が、去年の今頃、ブログにアップした「愛の調べ」も転調が妙薬に~シューマンの職人技 でご紹介した、臨時記号(♭や♯や♮)を一度に4つ加減するもので、曲想がガラリと代わり、世界がワープしたような感じをもたらずものです。これを専門用語でメディアンテというそうですが、検索してもあまり出て来ません。

ブラームスの交響曲第一番は第一楽章がハ短調(♭3つ)からハ長調(臨時記号なし)、第二楽章がホ長調(♯4つ)、第三楽章が変イ長調(♭3つ)、第四楽章が最初の楽章と同じくハ短調からハ長調となっています(途中の更に細かい転調は省略)。隣同士の調性の関係がすべてメディアンテという遠隔調の関係にあることがわかります。

わたくしたち日本人は、ベートーヴェンの交響曲第五番(運命)や同第九番(合唱付き)、チャイコフスキーの交響曲第五番のように、「暗から明へ」「苦悩を突きぬけて歓喜へ」という展開を持つ管弦楽曲が大好きです。ブラームス一番も、この類に属しますが、「苦悩から歓喜へ」という展開は、実は第一楽章と第四楽章を直接につなげたハ短調-ハ長調の世界に属しているのであって、第ニ、第三楽章は、この軸とは別世界で違う何かが行なわれているようです。



第一楽章と第四楽章が現実の苦悩や試練だったり解脱や勝利だったりを表現していて「舞台」が屋外に設定されているとするならば、第二楽章と第三楽章は現実に対する夢の世界であり「舞台」の設定は部屋の中と言えるくらい別世界です。

上述のブログでテーマに掲げた「愛の調べ」は、ブラームスとシューマン夫妻の「三角関係」を敢えて美化した名画であります。一方、この第二楽章はオーボエ独奏が印象的で、オーボエ登場前のアンサンブルは風景というか背景に感じられます。第一楽章が絶対音楽としての交響曲の真骨頂であり音楽そのものが主役であるのに対して、第二楽章の冒頭部分は映画音楽のように音楽そのものは脇役です。その中に登場するオーボエは、あたかもブラームスが夢の中に見たクララ・シューマンなのかも知れません。それは決して現実化出来ない夢限定の喜びなのですが、ブラームス本人に心地よく聴こえたオーボエの主題は、弦楽アンサンブルがシンコペーションのアンサンブルを刻み続ける箇所で変容します。8小節ほどの新しい主題のなかで、メロディ主導で調性がホ長調から変イ長調に変わるのは、クララの目線がブラームスからロベルトへと180度翻る瞬間であり、シンコペーションの連鎖はシューマンの音楽の象徴なのではないかと。

例に暇はないですが、シューマン作曲の歌曲集「リーダークライス 作品39」のなかの二曲目「間奏曲」は代表的な名曲であり、強拍と弱拍の入れ替わりという、シューマン音楽の個性であり、第二楽章のオーボエ第二テーマの特徴そのものであります。



第二楽章の終結部分のバイオリンソロとユニゾンするオーボエとホルンはシューマン夫妻であり、バイオリンソロはブラームス本人の悲しみを、より深いビブラートが反映しているように思えます。

勿論、絶対音楽の解釈には正解はなく、さらにはバーンスタインのように、このようなストーリー付けすること自体がナンセンスだという考え方も間違いではないと思います。

(※)5つ以上の楽章を持つ小編成アンサンブル曲ではモーツァルトはすでに「メディアンテ」を使用している例が見られます。
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2011年7月12日火曜日

イタリアを汚染したギリシャ危機



何が起こったのか?フェニックス証券の海外マーケットレポートです。
http://phxs.jp/popup.php?type=market&id=2544

ニューヨークタイムズ紙はイタリアで発生しつつあるパニックについて「ギリシャ危機がドミノ倒しだとしたら、イタリア危機は『煉瓦(れんが)倒し』だ」と譬えています。

ギリシャのように小国でない分、米国の銀行を筆頭に、イタリア国債を大量に抱えている海外金融機関が多いことも、連鎖反応を過激化させる要因となります。

資本主義のブラックボックスは、その牽引役のはずの、銀行や国家が、たいした根拠がない「安全神話」で大量の借金を可能にしている実態にあります。世界から戦争が無くなることがないように、取り付け騒ぎ(run)や恐慌(panic)を根絶することは不可能に近いと言えます。

「安全神話」という砂上の楼閣で惰眠を貪る旧態依然としたビジネスモデルの寝首をかくのがヘッジファンドのお仕事です。

フィレンツェの街とともに繁栄を極めたメディチ銀行は数百年で破綻倒産しましたが、だいたいその頃に、同じくトスカーナの重要都市シエナに誕生したモンテパスキ銀行
http://english.mps.it/
は、ヨーロッパ最古の銀行として、いまだに地方金融の要をになっています。昨夜のイタリアのパニックについて、ただいま公募増資中なのに水を注された同行は、犯人を「投機筋」だと断言しています。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-22140520110711

兎にも角にも、深夜一時は1.4台を割り込んだユーロ(対ドル)はどうなるのでしょうか?

ギリシャ危機の再燃は、昨年5月のような相場変動をもたらさなかったと、今年の4~6月のボラティリティを見る限り、言えました。実際には、ギリシャ国債の利回りや同国のクレジットデフォルトスワップは、昨年5月よりも上昇(悪化)していたにもかかわらず、です。市場は常に新しい局面や材料を求めます。当ブログの「アホの一つ覚え」の一つ「ボラティリティ対キャリートレード」という対抗軸で欧州通貨を見れば、ボラティリティの側に綱引きの綱が久しぶりにぐいっと引き寄せられたのが昨夜のイタリアだったのではないでしょうか。

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2011年7月5日火曜日

オンライン上の90%の消費者は、知り合いからのおすすめを信頼する

CNETJapanにおける杉原剛氏の論稿

競合しつつも親和性の高いGoogleとFacebook--「SMX Advanced Seattle 2011」参加レポート

のなかで、Facebookの「いいね!」機能のGoogle版であるGoogle+1機能の開発担当者の言葉が紹介されています。

曰く、「オンライン上の90%の消費者は、知り合いからのおすすめを信頼する。」

また、「コンバージョンの71%はオンラインでのレビューが理由で発生する。」

なるほどです。日本においてだけはグーグルをブログのプラットフォームにするひとが少ない中で敢えてグーグルを選んだわたしの役特があるのかどうか色々と試してみようと思います。それとわたしが属しているFX業界でいまホットな話題がアフィリエート広告規制。「金融商品」においては「いいね!」をおカネで買ってはいけなくなると思うのですがどうでしょう?
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2011年6月23日木曜日

本日のイチ押しブログ

まずは、ドイツ文学翻訳家・口承文芸評論家の池田香代子さんのブログ

政治家への幻想が霧散した 福田さんと菅さん

福田康夫元首相(≒自民党総裁)については、見事にちょうど3年前、やはり東北地方で起きた大地震の直後のわたくしのブログを参考文献として再掲させてください。二世議員、世襲政治家のなかで例外的に評価していた内容です。

人命は地球より重い

もうひとつの参考文献は、何故こうも日本だけ、過半の首相が1年前後という短命で任期(≒人気!?)を失うのか・・・その黒幕について考察したブログがこちら。

泣いた赤鬼と椿姫と小沢一郎

小沢一郎氏以上に、福田康夫氏のほうが、椿姫的な意味の犠牲者、ただ「あなたとは違うんです」と逆上した以外は、本当の辞職理由を胸中に秘めていたわけです。

イチ押しブログのもうひとつは、元岩波映画製作所のフリージャーナリスト田原総一郎氏の

「市民運動の論理」を強める菅首相の狙いは「8月の暑い日」

最後に、、、わたしは菅政権は、過去の反米政権と異なり、必ずしも短命には終わらない可能性があると考えています。日中国交正常化から第七艦隊発言や普天間基地移転問題などの外交軍事、郵貯簡保から邦銀の不良債権処理や保険分野の開放問題など金融経済、どこをとっても米国の尻尾を踏んだリーダーたちはほぼ例外なく、それも或る意味「静かに」、消されてきた我が国戦後政治史のなかで、米国自身の変調、つまり金融機関がグローバルスタンダードを押し付けられなくなってきていることや、イラン・イラク・パキスタン・アフガニスタン外交が制御不能に陥っていること、そして一番肝心のエネルギー問題では、米国=原発とも言えず、米国=石油とも言えなくなってきている点などを注目すべきです。

ただし、もしも菅首相が「地熱だけで我が国のエネルギーを100%自給させる」とでも発言したら、過去の短命政権同様、すぐに、静かに、消されるでしょう。しかし、それほどおバカではないと思います。
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2011年6月20日月曜日

江戸川橋の由来とカルパッチョの語源



生肉や生魚の料理を総称してイタリア語ではカルパッチョと言うと思い込んでいましたが、その語源が、ベネチア派の画家の名前であることを数時間前に知りました。
http://gogen-allguide.com/ka/carpaccio.html

多くのカクテルがイタリア人画家の名前を冠していますが、桃とスプマンテから造られるベッリーニも、カルパッチョ同様、ベネチア派の画家から取られており、いずれも名付け親はベネチアの有名なハリーズバーだそうです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Harry%27s_Bar_(Venice)

語源というのは実に面白いものですね。先週末土曜日のテレビ東京の「出没!アド街ック天国」は、江戸川橋がテーマでした。河川法が施行されるまでは、神田川の一部が江戸川と呼ばれていたこと。現在その名を唯一残す江戸川橋付近で、上下水道が分けられていたこと。それゆえに、その高台の椿山荘のあたりの地名が「関口」となっていること、神田上水と(同じく文京区の地名である)水道(橋)との関連などなど、たいへん勉強になりました。

さて、江戸川橋と言えば、7/25(月)開催予定のフェニックス証券第二回チャリティオペラコンサートの会場である「絵空箱」。同番組の25位で“地味に”紹介されておりました。

いま、「絵空箱」のホームページを拝見すると、中でのパフォーマンスの様子がアップされています。
絵空箱冩眞館

そして、花より団子、オペラより飲食とおっしゃる方々も大勢いらっしゃると思いますので、「絵空箱」のドリンクメニューとフードメニューを。カルパッチョやベッリーニがあるかどうか、どうぞご自身の目でご確認なさってください。

なお、7/25(月)の演目に、ベッリーニはございませんが、かわりにドニゼッティがございます。どうかお楽しみください。
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2011年6月10日金曜日

曲目ほぼ決定-第二回フェニックス証券チャリティオペラコンサート




チラシも昨日、印刷が仕上がりました。すでにチケットをお求めいただいたお客さまには、順次ご手配をさせていただきます(置きチケット+当日清算も御指示いただけます)。


さて、曲目ですが、


(前半のプログラム)

ドニゼッティ作曲「ドン・パスクワーレ」から

ノリーナのアリア「騎士はあの眼差し」

ノリーナとマラテスタの二重唱「用意は良いわ」

ドニゼッティ作曲「愛の妙薬」から

ベルコーレのアリア「昔、小粋なパリスがしたように」

アディーナとネモリーノとベルコーレの三重唱「ラララ~トラントラン」

ネモリーノのアリア「人知れぬ涙」


・・・休憩時間、「絵空箱」の素敵なバーでたっぷりとドリンクタイムを・・・


(後半のプログラム)

ヴェルディ作曲「リゴレット」から

ジルダのアリア「慕わしき御名」

リゴレットのアリア「悪魔め鬼め」

マントヴァ侯爵のアリア「女心の歌」

ヴェルディ作曲「トロヴァトーレ」から

ルナ伯爵とマンリーコとレオノーラの三重唱「夜は静まり返っている~酷いことを!」


終演後も、追加ドリンクチケットでお時間の許す限り、バータイムをお楽しみいただけます(曲目の変更はお許し下さい)。



ドリンク券800円が付いて3000円にてチケットを販売中です。残りわずかになっておりますので、ご予約はどうかお早めに。

(チケットのお申し込みはh.niwa@phxs.jp まで)
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2011年6月6日月曜日

原発全廃を決めた独メルケル首相のスピード感

対岸の火事だと放置しても良さそうなドイツで全原発一時停止が決定された頃、爆心地の我が国では浜岡原発ひとつ止めることが出来ていませんでした。反原発(わたしもそのひとり)の一部からは、菅首相のリーダーシップの欠如を指摘する声があった一方、一転して浜岡停止の勧告(命令ではなく「お願い」)に際しては、自民党や経団連から「根拠を示せ」という批判、地元自治体である御前崎の町長からは「相談がない」との恫喝がありました。

日本のリーダーは誰がやっても大変だというのは、いよいよ、国民のコンセンサスになってきていると、菅総理退陣「示唆」後の世論調査でハッキリとしてきています。

この前後、メルケル首相率いる与党は、(反原発へと政策転換したものの)地方選挙で緑の党など野党に惨敗したのに対して、我が国では統一地方選などでエネルギー政策が争点としてそれほど注目されずに民主党系は惨敗、むしろ原発推進派の首長の当選が目立ち、その究極が、昨日の青森県知事選挙でありました。

さて、ドイツと日本は、なんとなく、似ている国だという印象を持っている方々が少なくないのではないでしょうか。わたしもそのひとりでした。製造業を中心とした加工貿易立国、労働者の権利が強い終身雇用制度が残っている珍しい国であり、何と言っても、熱狂によって議会制民主主義が否定され全体主義が支持された結果、第二次世界大戦で共に闘い共に破れた「仲間」であります。

しかし、敢えて情けないと書かせていただきますが、青森県の結果は、ドイツと日本の大きな違い、地方分権の歴史がドイツは長く、日本はゼロであること、前者はそれにより統一の遅れ、植民地戦争への参加が英仏に遅れたことが、19世紀から20世紀前半の大きな不幸の原因でもあったわけですが、首都一極集中というイギリス、フランス、日本のようなことになっていない点は、反原発の草の根運動が広がりやすい要因のひとつだと思われます。

(ちなみに、どうでもよいことですが、ビール工場ひとつとっても、日本と異なり、ドイツは一極集中しておらず、地域分散、地産地消が原則である点、申し添えます)

もうひとつわたしが「珍説」として指摘したいのが、雇用制度です。前述の如く、雇用制度(≒労働法制)ではドイツと日本は何となく似ているのではなかったかと書きました。どうやらこれが最近大きく変わって来ているようです。

日本では、非正規雇用の割合が増えたことは、逆に大企業などの正規雇用された社員の既得権益を不健康にまで高め、同一労働同一賃金の必要性が今日問われているところです。

ドイツでも終身雇用が完璧に崩壊したわけではありません。が、もともと、「正社員」の解雇には、日本のような異常な制約はないようです。
http://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000115/0908R3.pdf
詳しく書く余裕はないですが、ホワイトカラーにはホワイトカラーなりの雇用の流動性が、ブルーカラーにはブルーカラーなりの雇用の流動性が確保されているようなのです。ただし雇用改革は道半ばとの声もあります。

ドイツの雇用改革が道半ばだとしたら、日本で、大企業正社員が既得権益を保持しつつ、派遣や請負など一部だけ自由化を進めてきたのは、改革に逆行していたと言わざるを得ません。

このようなことをわたくしが考えるきっかけになったのが、土曜日夜CSで放映されていた朝日ニュースターの「ニュースに騙されるな」のなかで慶応義塾大学の金子勝教授が「東京電力の社員でも経産省の役人でも若手中心に半分くらいは『原発は良くない』と思っていると思うが、立場上言えないだけではないか」と発言していたことです。

有能な(または自身のある)ビジネスマンやテクノクラートが言いたいことを(実名で)言い、その結果、そのときの雇用主と反りがあわなくなっても或る程度簡単に新しい雇用主を探せるようになれば世の中は大きく改善するでしょう。

雇用主からすれば、クビにしやすい制度ほど、雇いやすい制度なのです。

役所にせよ大企業にせよ、或る程度の学歴がないと入れない組織というものは、かつての秀才たちを、何十年か掛けて、転職しようとしても使い物にならない社畜にしてしまうところがあり、残念なことに未だにこんなことをやっているのは、世界広といえども日本だけになりつつあるようです。

地震や津波や原発事故の被災者や犠牲者のみなさんの苦労や魂に報いるために最も大事なことは、正しいことを、立場を問わず、主張できる社会の枠組みに日本の社会を大転換することではないでしょうか。
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2011年5月27日金曜日

絵空箱-あるいは絶望と希望



わたしが好きなものは、美しい音楽と、美味しい飲み物と、すべらないFXです!

楽しい舞台、滋味溢れる食べもの、すべらないギャグも、もちろん大好きです。

実は、、、先週末、そのうちのふたつ、舞台と飲み物の道を極めた男性との素晴らしい出会いがありました。

舞台俳優の方々のなかで、その舞台の活動だけで生活できている人は殆どいないと思われます。オペラの世界もほぼ同じです。わたしが出会った方は、バーテンダーの仕事が生活の手段であり、舞台演劇が人生のやり甲斐だったのです。のちにバーテンダーの仕事は手段からやり甲斐に昇格、昼夜働いて働いて自己資金を貯められて、一級品のバーと一体化した舞台空間を江戸川橋の地に作り、ふたつの夢を同時に実現されました。

そんな独特の小空間がオープンしたのが今年の3月10日。地震の前日です。

激しい揺れは、大切なグラスやボトルを無残に砕き、また先々まで埋まっていた筈の舞台の予約も軒並みキャンセルとなりました。夢が実現したと思った矢先の悪夢で、劇場支配人 兼 バーテンダーは毎晩近所の酒場で酔いつぶれていたそうです。

絶望の背景は、それだけではありません。舞台人として、多くの同胞が食べること寝ることという最低限のこともできずにいるなかで、舞台を楽しんでもらうという緊急性のないことをやる意味を自問自答してのことでもありました。

反吐が出るまで悩みぬいた劇場支配人が決断したことは、そのバー併設小空間を、9月まで(電気代以外)無料で開放するという内容です。

その劇場支配人(兼オーナーバーテンダー)のなまえは吉野翼さん。バー併設の舞台のなまえはパフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』です。

四川大地震・岩手宮城内陸地震のチャリティ・オペラ・コンサートから2年半が経ちました。わたしは、吉野翼さんと出会い、話し込み、意気投合し、即座にフェニックス証券(テアトロ・ラ・フェニーチェ)第二回チェリティ・オペラ・コンサート開催を決めました。

フェニックス証券の社名(イタリア語ではフェニーチェ)そのものズバリ、被災地の復興を確信し、音楽を奏で、歌声を届けます。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

出演:奈良原繭里(ソプラノ=写真)、石川雄蔵(テノール)、丹羽広(バリトン)/吉田彩(ピアノ)



曲目:ドニゼッティ「愛の妙薬」と「ドン・パスクワーレ」の名場面、ヴェルディ「リゴレット」の名場面


(わたくし以外)プロの素晴らしい歌声と演奏ということだけでなく、わたしが知る限り舞台に併設された施設としては初の本格的な内容のバーでのお客さま同士の歓談のひとときも充実していただくべく、プログラム(含む休憩時間や終演後の時間の確保など)を工夫して参ります。詳しい内容は、つぎつぎとこちらのブログで更新して参りますので、どうかフォローのほうをよろしくお願い致します。




なお、フェニックス証券(テアトロ・ラ・フェニーチェ)では、10月以降に、今回の第二回チャリティ・オペラ・コンサートの出演メンバーを中心に、


☆平日の開演時刻を19:00以降の遅めにし、仕事帰りのサラリーマンやOL(←この書き方にはたいへん問題がありますが慣用句としてお許し下さい)のお客さまにお越しいただきやすくする

☆バーカウンターでお客さま同士の語らいと一級品の飲み物も余裕を以って楽しんでもらう

ために、しばしば長すぎるというオペラ公演の欠点を克服すべく、

☆一本のオペラを毎日一幕ずつ上演する


という新しいコンセプトのオペラ公演を、同じく江戸川橋の「絵空箱」を一週間借り切らせてもらい、実行する予定です。今回の7/25(月)のイベントはそのプレ企画との位置付けです。

チケット代はドリンクチケット700円を含む3000円(6月1日発売開始)と設定させていただき、諸経費を除いた全額を義援金と致します。第一回チャリティ・オペラ・コンサートとときと同様に、実施後会計報告をさせていたきます。
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2011年5月25日水曜日

ちょっと儲かった



残念ながらフェニックス証券のことではありません。

リーマンショック後、巨額の国庫負担で公的管理下となったAIGの発行株式の再上場のおはなしです。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304520804576343203093719010.html?mod=WSJASIA_hps_LEFTTopWhatNews

AIGの株価は年初から4割程度下落したため、今回の売り出し価格(仮条件レンジの下限の29ドル)は、米財務省の取得減価をわずかに上回ったにとどまり、第一次売出後の政府持株比率も74%と、独立民営までにはまだいくつものステップが必要となっています。

さて、公的資金の注入と(配当と)回収による国民負担(税負担)と言えば、先月29日付の日経新聞の記事が気になっていました。

「政府が1990年代後半以降の金融危機で大手銀行や地方銀行の経営健全化のため資本注入した約12兆円の公的資金について、預金保険機構による回収の結果、今年3月末までに返済時の上乗せ分として累計約1兆5000億円の利益を得たことがわかった。」

米国のGMやクライスラー(やAIG)のように、本邦の預金保険機構も、(納税者にはプラス、公的管理前の株主にはマイナス、という意味で)ハゲタカディールで成功を収めてくれたのかと思いつつ、糠よろこびではないのか半信半疑でした。いまこの記事に検索を掛けても電子版からは消去されているようです。

http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819481E0EBE2E2E68DE0EBE2E6E0E2E3E39797EAE2E2E2 ↑リンク切れ

預金保険機構の広報を見ますと、確かに、資本注入という分野で見れば、注入額12.7兆円に対し回収額10.8兆円(残金1.9兆円)のところ取得原価との差額が1.5兆円と発表されており、記事の内容と合致しています(2011年3月11日現在)。

しかし公的資金というのは資本注入だけではありません。金銭贈与(18.9兆円)、資産買い取り(9.8兆円)など他の巨額分野があり、前者の金銭贈与のうち10.4兆円分については国民負担が確定しているとあります。
http://www.dic.go.jp/katsudou/katsudou1-4-20101224.html

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2011年5月20日金曜日

スペインの痛み

タイトルのFT紙の記事によれば、スペインの若年失業率は、約45%だそうです。

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/408cb194-8242-11e0-961e-00144feabdc0.html#axzz1Mf8MyXSm

我が国でも新卒採用については超がつく氷河期と言われていますが、二人に一人が失業というスペインの状況には、ユーロ圏ならではの財政金融政策の制約も背景にあるでしょう。同じような資産バブルの崩壊後にもしも日本も同じように放置されていたらスペインなどの南欧ユーロ圏と同様になっていたのかも知れません。

しかしわたしはケインズ政策が必要悪だという論者ではありません。もうひとつ、大小の違いはあるものの震災に見舞われた両国に共通するのは、過保護で歪んだ労働市場と、かつての出稼ぎの時代にはあったハングリーさの喪失による労働者の質の低下ではないかと思います。

記事の表題の
Pain in Spain drives young people’s protest
は、もちろん、ミュージカル映画マイフェアレディのなかでエリザ役のオードリー・ヘプバーンが口パクで歌った
Rain in Spain stays mainly in the plain
を踏んでいます。
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2011年5月19日木曜日

5月6日の大暴落

5月6日と言っても今年ではなくておよそ1年前のことです。バンカメが黒か白かで話題になった相場操縦なのかシステムトラブルなのか何が何だかわからない相場変動でした。ニューヨークダウが瞬時に700ポイントも乱高下した前後は現在と同じギリシャ危機の最中。外国為替証拠金(FX)取引でも大損した方、大儲けした方、双方いらっしゃったと思います。

あれから一年経って、 米SECが電子プラットフォームの欠陥に関する調査を行なう(調査対象にはナスダックを含む)と英FTが報じました。

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/bfd0e94e-81a6-11e0-8a54-00144feabdc0.html#axzz1Mf8MyXSm

しかし、この記事の面白いところは、システムエラーの原因についてよりも、より重点的調査分野があるとしていて、それが「全ての取引参加者に同時に公平に価格配信がなされているかどうか?」という関心事であるということです。

世界の金融商品取引所は、半官半民組織から、民営化、公開会社化を経て、敵対的買収を含む合従連衡の流れでありますが、その主導権確保のために、取引サーバーのコロケーションなどのオプションメニューなどで大口取引参加者への優遇や取り込みが常識化していたなかでの、この論点の指摘が流れの変化を意味するのか?だとしたら、どのような時間軸で時計が逆回りするのか、たいへん興味を抱かされるところです。

それにしても、ここのところのFT紙は、米紙が取り上げない、金融不正やゴールドマンをしつこく追い回す記事が目立っています。
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2011年5月18日水曜日

ゴールドマンサックス、投資銀行部門の幹部人事を刷新

昨日のFTの記事です。

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/1194c800-7fdf-11e0-b018-00144feabdc0,dwp_uuid=ffa475a0-f3ff-11dc-aaad-0000779fd2ac.html#axzz1Mf8MyXSm

この記事の前半に、いかにも英国紙らしい言い回しがありまして、「投資銀行(部門)が同社のドル箱的な地位をトレーディング部門に譲ってから長く久しいが・・・」。

そもそも投資銀行とは何かという話を、このブログでは、リーマンショック前後からしてきましたが、知る人ぞ知る事実として、われわれが何となく投資銀行と定義していた金融機関は、かなり投資銀行ではなくなってきていたのであり、またそれは日本市場だけの話ではなかった、更にはフランチャイズ構築をあきらめてトレーディング頼みで収益だけを追求するスタイルに開き直った一部欧州系銀行だけの話ですらなかったことを言いあらわしております。
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2011年5月10日火曜日

ウサギマミレ、マレニネコ





フェニックス証券が間借りしている八重洲の不二ビル1階「不忍画廊(SHINOBAZU GALLERY)」で開催中の絵画展の御案内です。http://www.shinobazu.com/exhibitions/index.htm
http://www.shinobazu.com/artists/2011usagi/index.htm
2011年5月9日(月)~28日(木)日休廊。



開催初日の昨日、画廊の横を通りがかったときは、珍しく(失礼!)賑わっていました。今回の催しは、珍しく、入場無料ではないのですが、入場料1000円は全額寄付されるとのことです。
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