2012年7月10日火曜日

7/14(土)~16(月・祝)の営業時間ごあんない【乃木坂ヴィラージュ通信】

おかげさまで、乃木坂ヴィラージュも、完全リニューアルオープンから3ヶ月、無事に続けることができております。大勢のお客さまにご支援していただいているおかげです。ブログ上にて恐縮ですが、ほんとうにありがとうございます。

さてさて、梅雨明け宣言があったのかなかったのか知らないくらい、無我夢中でお酌をしている毎日ですが、青空を見上げれば、どう考えても夏本番の、昨日今日の東京ですね。

今週末の三連休ですが、ほとんど通常どおりの営業時間とさせていただくことに致しました。

7/14(土)ランチなし、ディナー18:00~22:00ラストオーダー

7/15(日)お休みをいただきます

※7/16(月・祝)ランチ11:30~14:00(※ディナーまでの間もカフェ営業)ディナー18:00~22:00ラストオーダー


そして、わたくし、呑むリエひろしは、7/16(月・祝)昼夜ベタで出勤いたします。

休日でもありますし、ランチタイムからグラスワインのご提供をさせていただきます(平日ご提供していないわけではありませんので念のため・・・あれっ)。

それとは別に、7/16(月・祝)だけの、

「イタリアワイン 4種類 利き酒セット 1000円ぽっきり」


というのをご用意いたします(次回は8月のお盆の前後に実施予定)。



イタリアワインは地域性が強い地ぶどうから作られる個性が売り。暑さ本番のこの季節にピッタリの爽やかでフルーティな白ワイン2種類、スパイシーだが決して重過ぎない赤ワイン2種類をご用意しています。

カフェ営業時間でも、パルマ産生ハムやピクルス、サラダ、バーニャカウダ、などなどご用意いたします。

さらにさらに、ゴールデンウィーク期間中大好評だった(?)、国立新美術館のチケット半券お持ちの方に、グラススパークリングをご奉仕⇒7/16(月・祝)も、終日実施させていただきます。





エルミタージュ美術館展、たいへんな混雑が予想されますが、なんとこの日が最終日。展覧会会場で、近現代ヨーロッパの時空を彷徨っていただいたあと、乃木坂ヴィラージュにてイタリアを田舎から田舎へと旅していただければと思います。 


※隠れ家イタリアン「乃木坂ヴィラージュ」は千代田線乃木坂駅3番出口から徒歩1分です。
※エルミタージュ美術館展の会場となっている国立新美術館へは、同じく千代田線乃木坂駅の6番出口が地下鉄直結で便利ですが、お帰りの際は「星条旗通り」側の「正門」から外苑東通りを目指して、左折し、乃木公園を目指してください。「乃木坂ヴィラージュ」は下記の地図の乃木坂駅(現在閉鎖中の)4番出口の印のところにあります。
http://www.nact.jp/information/access.html

CoRichブログランキング

2012年6月15日金曜日

嬉しかったこと

読者のみなさま、たいへんご無沙汰をしてしまいました。

この間、欧州情勢など、何もなかったわけではありません。それでも、ブログを更新しなかった理由は幾つかあります。

そのうちのひとつが、新しいニュースのように見えて、実は新しくもないニュースが繰り返された数ヶ月であったこと、です。

実は、昨夜うれしいことがありました。二人連れのお客さま、三名様のビジネスの会合、八名様の若き団体様、などなどに混じって、おひとりで乃木坂ヴィラージュにお越しくださったお客さま。カウンター席で、美味しそうにボンゴレビアンコを食事されている姿を見て、3ヶ月前に、八重洲でやらせていただいたセミナーに参加され、そのあとの居酒屋での懇親会でも、一番語り合った、というかほぼ一方的に教えていただいた、日本語完璧な中国料理店経営者の方です(お店は相模原と麻布十番)。

「ようこそ、お越しくださいました。外食産業を成功されてきたプロの目から、是非是非、苦言提言をお聞きしたいです。」

わたしのなかでは、改善点は幾つもあるのです。謙遜では全くなく、具体的に修正中、実行中なのであります。

「苦言提言??何もない。敢えて言えば、この味、この食材、このサービスと雰囲気からしたら、ひとりあたり2000円以上安すぎるよ!!」

というありがたいお言葉でした。

実は嬉しかったのは、それだけではありません。3ヶ月前のセミナーでは、ネット上で半分炎上して物議を醸したマネーポストの取材記事をテキストにして、「欧州危機は小康状態を保てない。雇用情勢の悪さ、特に失業率の絶対水準だけでなく、若年失業率に相対的悪さこと、、、日本も他人事ではない、、、ヨーロッパ社会の病理なのだが、これを敢えて規制緩和で荒療治するという気概は政治家にも一般大衆にもない。よって、破綻懸念国の緊縮策は選挙民の信任を得られず、ギリシャのユーロ圏離脱など、通貨ユーロのマイナス材料が強まる」というお話をしたのですが、それが丸切り当たってしまったことで、握手を求められたのです。

包丁一本で異国日本にお越しになり、ゼロから中国料理屋を立ち上げ成功させたその腕と気合には、人間一人の力では如何ともし難い景気や相場への鋭い関心が満ち溢れています。これまで、いろいろな形で、相場を語り、相場を外してきてしまいましたが、所詮当たるも八卦、当たらぬも八卦の話で、これほどの手応えを感じたのははじめてのことでした。

さて、これから先はどうか?
CoRichブログランキング

2012年4月17日火曜日

出会い系サラリーマン金融「貸し出し倶楽部」

「出会い系」という翻訳が的確かどうかは読者のみなさまの判断にお任せいたします。

栄光と挫折、失脚と復帰を繰り返した経営者と言えば、真っ先に、昨年亡くなったアップルの創業者スティーブ・ジョブズを思い出します。

虚業、いや失礼、金融の世界にも、そういう立派な経営者がいます。かつての私の上司の上司の・・・上司で、このブログでもリーマン・ショック前後に取り上げてきたジョン・マック氏こそそのひとです。

リーマン破綻への専門家コメント集

カインの末裔であってはならないモルガン家

モルガン・スタンレーのCEOを二度も辞めたマック・ザ・ナイフが、最近次々と社外重役のポジションを積み重ねている(KKR、CIC)なか、今回ボード入りが決まったのがレンディングクラブというピア・ツー・ピア・レンダーの大手です。

ピア・ツー・ピア(P2P)は、普通は、ネットワーク(パソコン絡みや通信絡み)で使われる言葉で、荒っぽい言い方をするとクライアント-サーバー方式ではない、つまり端末と端末の間にサーバーが介在しない(端末にIPアドレスが付されない、ホストにURLが付されないなど)ものです。

常識的には、あって当然の、サーバーを廃して、クライアント同士が直接、金銭の貸し借りを取り決めるということで、ピア・ツー・ピア レンディングが従来型金融業を創造的に破壊するかどうかが注目ポイントとなります。

ジョン・マック氏が何故このビジネスを選んだのか、FT紙の記事の原文がコチラですが、

記事のなかで、わたくしが個人的に面白いと思ったポイントは、

☆レンディング・クラブ社のシステムはサンガード社が動かしている(証券取引所接続システムの世界的な大手)

☆P2P貸金業の発祥は英国(2005年)だが、ヨーロッパでは伝統的銀行業の勢力を脅かしていない。

☆米国では2006年にプロスパー社が事業を立ち上げ、次いでこのレンディングクラブが2007年に事業を開始した(両社を合わせた貸金残高は現状10億㌦程度)。

ヨーロッパと違ってノンバンクの存在が小さくなかった米国では、リーマンショック以降、中小金融機関の倒産が相次ぎ、また大銀行の経営再建も思うように進んでいないなかで、P2Pの拡大余地は比較的大きいかも知れません(他の成長市場の候補として、中国、ドイツ)。

ジョン・マックを社外取締役として向かい入れた同僚役員が、彼の経営能力を”inspirational leadership”と称賛しています。これは何と訳せばよいのでしょう。そしてそれは落合博満型でしょうか?長嶋茂雄型でしょうか?

ただし、記事の締めくくりの一言「毎日はゴルフをやっていたくないから」というのには失笑します。
CoRichブログランキング

2012年4月2日月曜日

エイプリルフールを迎えたジャックポット-あるいは宝くじと税金

身内に宝くじ関係者、いや、宝くじ出身者が居る割には、この方面のことに疎いのです。

わたくし本人も何年か前に、義理で宝くじを買わされたことがありました。学校を出て最初に入った会社が、宝くじを扱うことで有名な会社と合併したことが、義理の「遠因」でした。義理くじゆえ、それなりの大人買いをさせられたせいか、綺麗に「大数の法則」が働いたようでした。当選金額の合計が、購入金額の合計のちょうど半分に終わった記憶があります。

賭博産業では、この「ちょうど半分」だとか何割だとかのことを、ペイアウト、とかペイアウト率と言います。賭博産業だけではありません。外資系投資銀行のバンカーから地場証券の歩合外務員まで、会社にもたらした収益のうち何割が給料やボーナスになるかというのもペイアウト(率)であります。

先週末あたりから、英BBCや米CNNでは、アメリカの宝くじが1月以来当選者が出ておらず賞金がキャリーオーバーされ続け、656百万ドル(注)というジャックポットに至った。いよいよ当選者が出るかどうか世界中が注目したその結果は、当選者3名出たことが判明しているが、4月1日(日)の時点でまだ一人も「名乗りをあげていない」(注)ということなのだそうです。

(注)アメリカは州によって法律がかなり違っており、宝くじの当選者が匿名扱いで賞金を受け取れるかどうか?当選くじを扱った売店がどの程度のボーナスを貰えるか?州ごとにマチマチのようです。

過去に大金を掴んで家族ともども身を滅ぼした人もいる。が、統計的に見れば、自己破産に至る確率はとても少ない(イギリスでは、同国の当選者の「幸福感」が「改善」していることが広く観察されている)。。。などなど、逸話なのか真面目な研究なのかよくわからない話題も含め、お時間の許す限りWSJの記事をご参考にしてください。

この記事から知ったことは、アメリカの宝くじも、日本のそれとほぼ同様、ペイアウト率は5割程度であること。つまり、寺銭(=1-ペイアウト率)が5割ということですが、内訳は35%が州財政に、15%が宝くじのインフラ(と上記ボーナスなど)に使われているということ(これらも上記のように州によって違いがあります)。それと、アメリカの宝くじは、さらにその賞金に税金が掛かること(「一括」で受け取るか「年金」で受け取るかで税率に差あり)。

最後のポイントは、当たりくじや賞金を譲渡しない限り税金が掛からない日本のそれに比べて、アメリカのそれが更にペイアウト率が低いことを示しています。ジャックポットの大きさが、その欠点を補って余りあるということでしょうか?

それで、わたしは、世界中の宝くじについて、ペイアウト率や税制がどうなっているのか調べてみようと思い、まずグーグルで「宝くじ ペイアウト率」と検索してみました。

そうしたら、知りたい情報は全然出てこず、検索にあがってきたサイトは殆どすべて「オンラインカジノ」の宣伝でした。

そのなかにひとつ紛れて、FXの「バイナリーオプション」のアフィリエイト広告がありました。

しかし、寺銭がこんなに良心的で良いのか?という観点で言えば、我田引水のように聞こえるかも知れませんが・・・というか正真正銘我田引水ですが・・・通常のFXに勝るものはないと思うのですが、反対意見はあるでしょうか?

ただ難しいのは、ドル円0.4銭だ、ユーロ円0.9銭だ、というスプレッドを自慢する際に、宝くじや競馬は論外としても、ランキングされるようなオンラインカジノやバイナリーオプションに比べて、明確に、客観的に、寺銭が低い、良心的過ぎる、と数値化できないことです。わかりやすい例で、ひとつ考えられるのは、過去1年、一週間ごとの通貨ペアの値幅(最高値と最安値の差分)の平均を取り、それでスプレッドを割るという方法を思いつきました。もちろん、過去1年とか、一週間ごとという時間の長さに何か根拠があるわけではありません。
CoRichブログランキング

2012年3月21日水曜日

創造的破壊とFX攻略5月号

先週、フェニックス証券の外国為替証拠金(FX)取引のお客様が、わざわざ八重洲までご来店くださり、しばし時事放談を楽しませていただきました。そのなかで特別に印象に残った一言が、

「好不況や円高円安はたいした問題ではない。経営者が本当に恐れるのは技術革新だ」

技術革新すなわち創造的破壊こそが、資本主義の裏と表の実像であり、その裏表がオセロのように一挙に入れ替わることが企業家にとって夢でもあり悪夢でもある、、、という話を、最近ブログ等で取り上げるようにしております。

只今発売中のFX攻略最新号にも、そのような話を書かせていただきました。是非ご一読ください。


それでは、恒例と言いつつしばしばサボっている、過去記事(2011年11月号)から。

「ことりFX」で為替の新時代を迎え撃とう、なんて言うとまたフェニックス証券の宣伝かと思われそうですが、この時期に為替新時代を宣言することには大きな意味があります。

「ヨーロッパ全域を統一通貨圏に」という試みは21世紀初頭の壮大な実験だったと後の歴史家が評価するかも知れません。ナチスの第三帝国とは関係ない話ですが、ユーロ構想は、ローマ帝国の膨張やフランク王国の成立に続く偉業でもあり暴挙でもある・・・逆にそれ以外の時期のヨーロッパは、戦争や小国(含む都市国家)の分裂に明け暮れており、大雑把過ぎる大局観をお許しいただければ、地域全体の統一のメリットとデメリットの比較評価で何十世紀も揺れ動いてきた後の“一旦の”結実が統一通貨圏構想だった。。。

過去の巨大帝国との違いは、もちろん“平和裏に”各参加国の財政政策と金融政策の裁量を“奪った”ところにあります。ドイツ哲学の伝統の一端を担う弁証法で言えば、過去の分裂と統一のメリットデメリットを止揚(アウフヘーベン)したものにも見えます。

これらのうち、金融政策の放棄は自明です。が、財政政策については「毎年の財政赤字はGDPの3%までよ」などのルールは「表向きだから、裏で色々やりようがあるからね」という、ただただ参加国を増やすための二枚舌が、統一理念の土台自体を腐らせる欺瞞であることを“改めて”白日の下に曝したのが、ギリシャ危機、改め南欧危機、更に改めフランスまでも含む「ドイツ以外のユーロ圏危機」だったのです。

そこまで無理をして騙し騙し欧州全体に固定相場制を広げるメリットが域内唯一の貿易黒字国(=資本輸出国)であるドイツに集中していたことに注目すべきであるし、しかもそのドイツ国内の論調としては「公務員が58歳で退職し、現役時代の8割の年金をもらえる。政府は破綻寸前なのに、国民の大部分はまともに税金を払っていない。そんなギリシャを筆頭とする怠け者の国に、なぜ我々の税金を使わなければならないのか」(月刊ファクタ10月号:「欧米金融機関『三年目の断崖』より」ということらしいです。気持ちは判りますが・・・冒頭で、ナチスは関係ないと書きました。それは兎も角、第四帝国なんて、手を変え品を変えだけで簡単に成立するいうことではありません。為替に関して言えば、欧州関連資産の相場暴落は、根拠のない相場操縦で所詮マッチポンプだと矮小化するのは間違いでしょう。過去の民族間の戦争の傷跡や遺恨、一旦手にしてしまった豊かで安定した生活にしがみつきたいという大衆の感情に政治がメスを入れられないという文明国の末期現象など、解決困難な根の深い問題であると考えるべきだと思います。

CoRichブログランキング

2012年3月15日木曜日

ゴールドマンサックス退職社員の捨て台詞

チャールズ・チャップリンの自己評価としては最高傑作だったという「殺人狂時代」という映画。不世出の映画監督 兼 喜劇俳優 兼 ・・・・ が「赤狩り」に遭い、ハリウッドを追い出されるキッカケになったともされる作品の最後の部分で、死刑台に登る主人公が発する言葉が、

「一人殺すと殺人犯、百万人殺すと英雄、、、」

One murder makes a villain; millions a hero.

というものです。

いまでは代表的な構造不況業種となってしまった証券業界や商品先物業界ですが、かつては大儲けした時代もありました。その時代に巡り逢っていたかったとは必ずしも思わないし、またその時代も、方法も、業種、規模、個社によりけりで、決して一括りにしようとは思いません。

が、ある時期、あるカルチャーを共有していたグループは、証券と先物共通の「方法」を濫用してきたこと(で資本蓄積に成功したが、いまはそれを食い潰しているだけであること)を多くの経験者や内部者が認めていると思われます。今様に格好良く言えば、ビジネスモデルの一種なのかも知れません。

良くもあしくも投資家の自己責任というカルチャーが根を下ろしていない我が国では、自称人権弁護士の動きもあり、立法行政の対応も早く、このようなビジネスモデルは殆ど死に絶えています。

それはそれで良かったのだと思いますが、何故それが世界規模で行われていると無罪放免なのか、否、それどころか就職人気ランキングも含めた超セレブ企業と崇め奉られるのか、ここ5~6年腑に落ちない状態でした。

そこに来て、今朝飛び込んできたニュースが、題意の告発文。悪徳資本主義批判はニューヨーク・タイムズの真骨頂です。
http://www.nytimes.com/2012/03/14/opinion/why-i-am-leaving-goldman-sachs.html

この内部告発か外部告発かの端境とも言える動きに対して、ゴールドマンサックスの対応の状況をウォール・ストリート・ジャーナルが報道しています。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304692804577281252012689294.html?mod=WSJ_hp_us_mostpop_read

日本のメディアもこの時間帯それぞれ取り上げていますが、一番早かったのはコチラのブログか。
http://markethack.net/archives/51808686.html
きょうのブログのテーマである「マペット」とは何ぞやを動画で解説してくれています。

ちなみに、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事の中でも、「マペット」の解説がありまして、

"Muppet" is a British slang term for "idiot" and is sometimes used on Wall Street trading floors to denigrate an opposing trader.

英国の俗語で「馬鹿な奴」を意味し、しばしばウォール街のディーリングルームで売買相手となるディーラーを指して(つまり自分が売りたいものを買ってくれる相手に対して)使われる

とのことです。
CoRichブログランキング

2012年3月1日木曜日

それでもユーロは・・・・「マネーポスト」2012年春号本日発売

ユーロの問題は、政治が結束して域内劣等生を助けてあげるかどうかという意思決定の切り口ばかりが報道されているようです。

赤字を垂れ流している国に対して補填を決めたとしても、不均衡の解消は一時的なものにとどまるにもかかわらず、市場はその場しのぎの意思決定に左右されています。

より根本的には、「金融政策が一本化されているのに、財政政策が一本化されていないことが、ユーロの矛盾であり不備である」という根強い論調があります。では財政政策を統一すれば、ユーロ圏は蘇るでしょうか?

わたしは、より実体経済、特に失業問題、中でも若年失業率に注目して、統一通貨下で不均衡を抱えながら経済運営を続けていくことはミッション・インポッシブルではないかという切り口を提示したいと思いました。

その論稿が、本日発売の「マネーポスト」2012年春号に載っております。是非、書店で手にとって御笑読ください。

ところで、他の先生方が書いた記事で、これは面白いと思ったのがあと(?)ひとつありました。日本の年金制度・・・少子化だから年金制度が崩壊していくのではなくて、年金制度自体が少子化を推奨していることが国策上の問題という指摘です。
CoRichブログランキング

2012年2月17日金曜日

沈黙は金、雄弁は銀

日銀の白川総裁が俄に雄弁です。

今週、月曜日火曜日に行われた金融政策決定会合で「長期国債の買い入れペースを、従来の月5000億円から三倍に引き上げる」という金融緩和策の強化を決断したことが、(米国株の上昇や欧州危機の小休止ムード(?)と相俟って、)日本株はさしずめミニバブル状態。

七転び八起きブログでさんざん批判し揶揄してきた「日銀が金融緩和を徹底さえずればデフレと不況が収まるのに、それをサボっている総裁は日本経済のA級戦犯である」的批判を繰り返してきたB級エコノミストたちも、さぞ喜んでいることと思われる一方、真面目な日銀ウォッチャーのなかには、頑固冷徹理路整然の総裁の変節を疑う人も出てきます。

まずは、金融政策決定会合の直後の総裁記者会見の内容と質疑応答

前半、物価安定(≒インフレ率1%)を「目標」とよぶか「目処」とよぶか「理解」とよぶか、に関するQ&Aでは、その長さとしつこさが、官僚の言葉遊びのように思われてしまいがちです。わたしはここは、日銀はこれまでインフレターゲットを拒絶してきたものの、いま思えばインフレターゲット採用国も経済が滅茶苦茶になっているではないか。それにインフレターゲットとハッキリ言って来なかっただけで日銀がしてきたことも実質的にかなり近かったと、《怖いデータ》の数々を見せつつ何度も言っているじゃないか。今後もそれを連続的に強化していきたいだけで、矛盾も変節もないというのが根底にあるのだと思われます。この点、本日先程リリースされた日本記者クラブでの講演が更に雄弁で、趣旨がわかりやすいです(この講演録の末尾添付のチャートとグラフこそ、上記《怖いデータ》の数々そのものです)。

最初に引用した2/14(火)の記者会見に戻りましょう。お時間の少ない方に最優先で読んでもらいたい箇所は、9ページ目の質問からのところです。つまり、

「財政ファイナンスが目的でない・・・とおっしゃっても、財政政策に一段と近づいてきていると思われるリスク・・・日本銀行がこれまで一番避けてきたマネタイゼーションに近づいているのではないかという疑念を・・・総裁はどう思われますか?・・・・・・政治的圧力に屈したのではないかとの見方・・・?」

生で会見に立ち会ってなくても、ここが質疑応答のなかのクライマックスであると容易に想像がつきます。

ところで、白川総裁はこれらより前の1月にロンドン・スクール・オブ・エコノミクス主催の講演で『デレバレッジと経済成長 ―先進国は日本が過去に歩んだ「長く曲がりくねった道」 を辿っていくのか?―』と題して話をされています。イギリス人相手に、ディケンズやビートルズを引用しながら、政治からの圧力、衆愚(B級エコノミストを含む)からの圧力と向かい合いながら、のらりくらりを演じながらも理路整然かつ分かりやすく金融政策の手綱捌きをしなければならない立場の苦悩が延々と語られています。

ぶっちゃけて言いますと、燻し銀の日銀総裁が、理不尽にもデフレの元凶と罵られ続けて、逆切れしての雄弁、という感じもします。

以上、強引にまとめまして「雄弁は銀」。多かれ少なかれ西側先進国経済はこのような体たらくだから、通貨(為替)で言えば、日米欧の不美人投票はより酷く続くだろう、と考えれば、黙って金を買うのがベストの選択だ、、、という立場がどうやら中国の公共セクター(含む中国人民銀行)のようで、英FT紙によると、2011年の最後の3ヶ月間で、金の購入を更に加速させている とのことです。


世界最大の外貨準備高を誇る中国。米国債を買うのは資本輸出(=資本赤字要因)ですが、金を買うのは輸入(=貿易赤字要因)という国際収支の表の見方の落とし穴から露呈した現実であるところが面白い記事の内容となっています。

CoRichブログランキング

2012年2月14日火曜日

ドッド=フランク法の生みの親ボルカー氏大いに吠える

1927年生まれのポール・ボルカー氏が実に元気です。

欧州ソブリン危機の元凶だとの批判は、荒稼ぎができなくなった投資銀行によるお門違いの戯言(たわごと)だと一刀両断です(英FT紙)。

フェニックス証券の「ことりFX」は、実質的に見て、業界で最も有利な水準のスプレッドを提供していると思うのですが、それでも先週あたりから、ドル円で0.4銭とか、これでもか!これでもか!という業者が約2社ほど出てきています。

譬えが婉曲的で恐縮ですが、1990年代、大店法緩和のなかで地方スーパーを競って買収して、シェア拡大を狙った大手から先に倒産して行ってしまい、実は寡占大手の買収を断った地方スーパーは小規模ながら今でも結構生き残っているという皮肉な小売業界が彷彿とされます。

小売における大店法と、FXにおける信託やレバレッジの規制とは比較できませんが、一般に業界の内部の人間というものは、規制に対する意見(賛成意見・反対意見)が一枚岩になる傾向があります。電力業界で、発電・送電・配電の分割やら総括原価方式の見直しやら、規制緩和に賛成という経営者はいないでしょう。大手スーパーや百貨店が相次いで倒産した5年~10年前、大店法は本来大手がスケールメリットを活かして零細商店主のシェアを奪える筈のところを邪魔していて、大手にとって不利な規制であるとして、チェーンストア協会は一貫して撤廃または規制緩和を訴えていたものでした。しかし結果を見るに、実は大店法が大手同士の喰い合いを防いでいて寡占利益を温存していたという事実が判明したのです。

さて、本題。FX業界と証券業界とでは業界利益がかなり違うのですが、証券業界という立場で、ボルカー・ルールに賛成だ、なんて主張すると、村八分になるかも知れません。

しかし、このブログでは、サブプライムショック、リーマンショック、ギリシャショックなどなど、節目節目でモラルハザードを容認する規制にも規制緩和にも反対してきました。

モラルハザードとファイアーウォール

ボルカー元FRB議長が現役復帰

米国にボルカーあり、日本に白川総裁あり

多くの主要国でリーダーが変わるかも知れない2012年、選挙直前のリーダー達は、増税で有権者から嫌われたくないというホンネと、第二、第三、第四・・・のギリシャにしてはならないというタテマエの間で苦悩し、結果として、ボルカールールの受け入れや有価証券取引税の導入など「コレ以上大銀行の血税による救済は許されない」という大衆に受け入れやすい増税方法を選ぶ流れが出来てきています。

フランスも英国の印紙税を真似た有価証券課税が具体化へ と、同じく本日の英FT紙が報じています。

様々な点で金融規制では欧米に先行していた日本は、金融庁に先見の明があったと言えるかも知れません。しかし、全く安心はしていられないのです。「大きすぎて潰せない」金融機関の存在を断固として認めない、そして中央銀行に当座勘定を持つ金融機関は(定義上、商業銀行なのだから)有価証券関連の自己取引は認めない、、、というボルカールールが国際的に抜け目なく適応されるべきだとなったときに、どうすることもできない金融機関が、我が国にも2つや3つはあるのではないでしょうか。
CoRichブログランキング

2012年2月8日水曜日

欧米の資本主義と大東亜の資本主義

英FT紙の論稿。資本主義それ自体が危機なのではない。欧米の資本主義が危機なのである。欧米の資本主義は、アジアからもっと学ぶべきだ、という主張です。

日本型資本主義のように政府が程よく市場に介入するやり方がアジアでは主流であって、これまで余りにも市場に任せ過ぎてきた欧米の政策担当者やオピニオンリーダー達は、日本、韓国、中国、台湾、香港、シンガポールを視察し学習すべきだ、と言われると、20年以上も自信喪失一本槍だった日本人としては嬉しくなくもありません。しかし、上記の各「国」の資本主義を一口に「アジア型」と括るのは流石に無理があります。

ただ、この論稿のなかで最も刺激的なのが、当ブログで長年一貫して主張している金融業の肥大こそが資本主義のメリットを台無しにするという主張。明快にして雄弁です。

「同じ知能を持つエンジニアが二人いたとして、金融エンジニアの給料が製造業のエンジニアの給料の5倍から10倍という馬鹿げた事態が何故起こるのか?」

それは、

「(ナショナルブランドの)金融機関はリスクマネーにレバレッジを賭けて実力以上に儲けられた反面、10年ごとの危機で生じるお決まりの損失については税金で救済されるからである」

「中央銀行によって負債が保証されている金融機関は、いつの時代も最大級のフリー・ライダーとなった」

わたしは、この主張は100%正しいと思いますが、よって欧米の金融行政が間違っていて、日中の金融行政が正しいとは全く言えない点は注意を要すると思います。

我が国の金融当局の公的資金について、そのものが間違いだと(モラルハザードの観点から、、、非金融セクターへの相当な痛みを覚悟してでも、、、潰れるべき銀行は潰れていくのを放置したほうがよいと)までは言わないにしても、公的資金の入れ方には工夫の余地があっただけでなく、そのような事態を招いたのがそもそもオーバーバンキング(銀行が多すぎる、銀行員が多すぎる、銀行員の給与が高すぎる)に原因があり、本論考のコンセプトとは逆に、政府が金融業界に介入しすぎた(護送船団方式)ゆえの過保護の結果であることをより重要視しなければならないと思います。

以上がポイント(欧米の資本主義の戦略的誤り)の一つ目・・・

《欧米は資本主義を人々の幸福度を高めるための実用的な道具としてではなく哲学的な意味で(共産主義よりも)良き概念であると看做してきた・・・》

で、残り2つの戦略的誤りは、《20世紀初頭の共産主義の脅威を体験したことからの教訓を忘れてしまったこと》と、《アジアを含む第三世界に資本主義を「伝道」してきたときに、「創造的破壊」の功罪について十分な教育を施さなかったこと》としています。

前者は、欧米の多くの国々で悪化している雇用問題と貧富の格差を、後者はデジカメの普及で倒産したコダックを見れば、それはそれでなるほどなと思います。が、これらふたつについても、中国の日本という似ても似つかぬタイプの資本主義が元祖資本主義の欧米のお手本だと言うのは余りに無理があります。

実はこの論稿の著者は、国立シンガポール大学のリー・クアンユースクールの学長なので、我田引水もあるのかなと思います。しかし、論稿そのものは修辞学上も優れていて説得力に富みます。

みなさんのご意見はいかがでしょうか?もしお時間と余裕があれば、是非ご一読ください。
CoRichブログランキング

2012年2月6日月曜日

アラブの春が中国に近づきつつある

ニューヨーク・タイムズ紙オンライン版のなかのブログです。

http://rendezvous.blogs.nytimes.com/2012/02/05/the-arab-spring-is-coming-to-china/

ミュンヘンで開催中の世界安全保障会議の中での一幕。よくもまあ、こんなパネルディスカッションが成立したなあと思わせる構成員は、4年前の米大統領選でオバマ現大統領の対立候補だった共和党のマケイン上院議員と中国の外務副大臣、そしてなんとコーディネーターを、かのキッシンジャー元国務長官(筆者の世代以前には極めて印象の強いニクソン政権の最重要人物のひとり)が務めています。

ベトナム戦争の終結、金兌換停止、変動相場制への移行という当ブログが扱うべき重要テーマにおいてもニクソン=キッシンジャー体制は大いに研究すべきテーマであるし、最近話題の映画のタイトルロールであるエドガー・フーバーとの絡み合いもまた米国史の暗部ということで熱い視線を送りたい部分です。
http://phxs.blogspot.com/2010/02/blog-post.html
http://phxs.blogspot.com/2010/02/blog-post_05.html
http://phxs.blogspot.com/2010/02/blog-post_26.html
http://phxs.blogspot.com/2010/03/blog-post_08.html

それにしても、核開発疑惑でイラン経済制裁という点でも、米国(+欧州+日本)と対立している中国(+ロシア+インド)が、事実上の戦争である(BBC)とも言われるシリアにおいても安保理決議でロシアとともに拒否権を発動している状況のなかで、この企画が中止にならなかっただけでも十分有意義ですが、マケイン氏が「敵国」の外務官僚のナンバー2に面と向かって「(チベットで相次ぐ焼身自殺が、チュニジアのジャスミン革命の触媒となったのと同じように)中国にアラブの春がもたらされつつある」と言い切ったのは非常な重みがあると思います。

さて、中国の外務副大臣はどう言い返したでしょうか?「中国でアラブの春というのは幻想を超えるばかげた発想だ。。。中国は100年以上も外国勢による侵略と占領に屈してきたのだから、内政干渉に対しては黙っていないぞ」。

後段の部分は、北朝鮮からもよく聞こえてくる科白です。

イランとシリアを契機とした大国間の対立軸は、ソビエトやベルリンの壁が壊れる前の構図に戻った感もあります。ただし、もちろん大きく違うのは経済や情報技術であり、今は中国は、深刻なバブル崩壊の真っ只中かも知れませんが、社会主義が建前、資本主義が本音、より正確には半奴隷制、という2つないし3つの顔を持つ得体の知れない国へと変貌していることに注意が必要です。
CoRichブログランキング

2012年2月1日水曜日

増収減益のアマゾン・ドット・コム

独占・寡占の仲間入りを賭けて薄利多売に専心するのはFX業界だけではないと思い知らされる決算発表でした。

2010年のアマゾンの売上は前年比35%の上昇。にもかかわらず、利益は57%の減少でした。原因は、ウェアハウス投資(本の倉庫のことなのか、クラウドサーバーのことなのか、両方か?)、技術投資、そしてキンドルであるとしています。

キンドル関連の数値はすべてが公表されているわけではありませんが、ホリデーシーズンの売上は前年比177%増とのこと。しかし、キンドル一台売るたびにアマゾンは15ドル赤字だという推計もあるようです。それを将来、デジタルブックや音楽配信などで取り戻すという考え方なのですが、日本の携帯端末と同じようなモデルが成り立つのかどうか、iPadもあり、不透明と言わざるをエません。

無制限即時発送を約束している「プライム・プログラム」も、年会費79ドルを徴収しても尚11ドル(一会員あたり)赤字なのだそうですが、同会員はプログラム加入後は従前比3倍もアマゾンを使うという推計もあります。

詳しくは、WSJの記事を御覧ください。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052970204740904577195371567545142.html?mod=WSJ_business_LeftTopHighlights
日本語の記事は例えばこちら。
http://japan.cnet.com/news/business/35013651/

全然話が変わりますが、今朝一番気になったのは、ユーロ圏が通貨統一後失業率が最悪になったという記事です。こちらはFT。
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/dca5fe48-4bf3-11e1-98dd-00144feabdc0.html#axzz1l5fAlXZ0
特にひどいのが若年失業率で、スペインとギリシャは50%に接近しています。このような状況が放置できないと政治や民意が動くとなると、ユーロ危機問題の解決の経路として、救済基金の増額の可能性(もともと低い)よりも、ユーロ分裂(による各国の財政金融政策の柔軟性の取り戻し)の可能性に振れると見るべきかも知れません。
CoRichブログランキング

2012年1月25日水曜日

ビッグマック指数の最新版

今月は英エコノミスト誌恒例のビッグマック指数が更新され発表されています。
http://www.economist.com/blogs/graphicdetail/2012/01/daily-chart-3
もともと何か特殊要因でハンバーガーの「相場」が割高だったブラジルは、欧州危機後のレアル暴落にもかかわらず、「平均値的通貨」であるドルや円に比べて依然極端な割高が続いていること、1ユーロ=1.2スイスフランまで無制限介入を約束して度肝を抜いたスイスもまだ、割高さトップの地位に君臨していることなど、様々なことが見えてきます。

2008年に、この「七転び八起き」ブログを始めたときに、同時にオンラインセミナーも始めており、当時からユーロの割高をしつこく指摘してきました。その論拠の一つが、購買力平価であり、その簡易版であるビックマック指数もプレゼンに活用させてもらいました。

オンラインセミナーのオンデマンドは期限か切れておりますが、より詳しい内容は、このブログの過去記事にもあります。一例がこちら

先々週ついに97円割れ寸前まで下落したユーロも、その後の一週間半で101円台まで急速に買い戻され、対ドルでも1.3台を回復しています。しかし、OECDの指摘(新興国への警告)の通りで、ユーロが最悪期を脱したと見ているひとは殆どいないでしょう。それだけ、円キャリー(またはドルキャリー)によるユーロバブル(またはポンドバブル)が常軌を逸していたわけであり、その治癒には相当の時間がかかるものと思われます。

その反面、デレバレッジ、金融機関の機能の低下が世界中に蔓延しそうな今日この頃、ハンバーガーの値段が極端に安い国の通貨はもっと見直されてもよいと思います。

ビッグマック指数は、他にも面白い切り口を提供してくれています。ずっと円高だったため、割安感もなくなってしまった日本(円)ですが、実は、最低賃金で買えるビッグマックの個数は世界一なのだそうです。何かと、生活保護の給付水準に比べて最低賃金が安すぎると議論されることが多い現在、日本の最低賃金の高さを目立たさせる事実になっています。ただ、ここで大変失礼ながら、マクドナルドのパートの皆さんの給与水準が法定ぎりぎりに近いと仮定すると(注:それでもマックのバイトが人気なのは、時間の柔軟性にあります。これ、重要)、高い最低賃金で作られる日本のハンバーガーが安いのは、効率性(労働者がテキパキしている。ひっきりなしにお客さんが来るので原材料のロス率が低い)の高さや、または諸外国比でビッグマックの大きさが小さい(日本が本当にそれに該当するかどうか知りませんが、オーストラリアのビッグマックはカナダのそれよりかなり小さいらしい)、材料をけちっている(本部のバイヤーの買い叩きが特に強烈であるとか、質を「選んでいる」とか)などなどの要因も考えられます。

ファーストフードのパート店員の給与水準が最低賃金レベルであるという事実が概ね世界共通であるという仮定から、エコノミスト誌自身も、実際の為替レートと、ビッグマック指数が乖離するのが、一人あたりGDPの違いによるところが大きい と分析しています。

この点、わたしが重要だと思うのは、「逆は必ずしも真ならず」であって、今日、ファーストフードのパート店員だけが最低賃金レベルではなくなってきており、製造業の現場では部品のモジュール化が、非製造業の「現場」ではIT化が、それぞれどんどん進み、これにグローバル化を掛け算すると、「われこそは最低賃金とは無縁の中流ホワイトカラーだ」と思い込んでいた中途半端な知性の人たちの雇用がどんどん失われていく傾向にあることです。ビッグマック指数が平均以上の国の「中間層」のひとたちは注意が必要です(この議論には、貿易黒字国・貯蓄超過国の海外からの配当利子などの所得が一人あたりGDPや実際の為替に与える影響について含めておりません)。

CoRichブログランキング

2012年1月23日月曜日

2012年を大胆予測-FX攻略.com最新号

FX攻略.comの最新号(3月号)がいよいよ書店に並びました。
わたくしのコーナーでは、2012年を大胆に占う予言集となっております。
新年ということで、いつもよりもグンと読みやすい内容となっていますので、是非ご一読をお願いいたします。
雑誌全体の特集内容は「確定申告」です。

さて、過去記事をご紹介します。2011年8月下旬に発売された同年10月号から・・・

ヨーロッパではギリシャに端を発した財政危機が桁違いに病巣の大きいイタリアとスペインに蔓延したことで、ユーロが導入以降最悪の危機に直面しました。一方、米国では、すったもんだの末、米国債の発行上限の問題を議会がクリアしたものの、その直後の米国債格下げ(スタンダード&プアーズ)で基軸通貨(?)ドルの存在感を取り戻し損ないました。金融市場が大混乱したなかで、日本は前人未到の円高のお盆を迎えています。


国民とマスメディアとが「内向き」な島国根性を競っているような日本ですから、大震災でも原発事故でもリーダーシップを発揮出来ない政権を血祭りに上げることしか能が無いわけです。こんな体たらくのメディアに洗脳されてしまっては、国内外でどんな種類の危機が起こっても、種類を問わず何でもかんでも超円高というのが理解できなくなってしまいます。しかし、そんな日本円よりも高騰を繰り返している金(ゴールド)の存在は謎を読み解く大きなヒントです。

リーマンショックから3年近く経ったので、サブプライムなる言葉すら死語に近づきました。「内向き」のメディアたちがリーマンショック前に繰り返していたのは「金融技術の革新とグローバリゼーションで日本を除くアジアと米欧は好景気が加速していて、日本だけ蚊帳の外」という論調でした。今考えれば、ひとつはサブプライムを一例とする詐欺的手法でレバレッジされた不動産バブル、もうひとつはユーロという通貨統合によって期待された不動産バブルに過ぎず、その宴のあとの後始末の厄介さの本質は、日本の90年代、2000年代と変わらず、しかもどうやら欧米のほうが重症なのではないかということです。

実は、わたしは、リーマンショック後に緊急出版した「『為替力』で資産を守れ」で予想を外していました。リーマン倒産による金融市場の混乱はなかなか収束しない。金融市場のチョンボを財政出動で取り返そうとしても抜本解決にはならない。能力以上の生活水準を追求してしまったツケは節約と緊縮(オーステリティ)でしか解決できないから当分景気は悪い、等々。小国ゆえ一番目のモデルケースになってしまったのがギリシャでした。大国の多くも、財政出動やらイカサマの銀行ストレステストなどで約3年誤魔化してきましたが、財政も破綻気味、金融機関も破綻気味となると、もうあとは本質に回帰するしかない、つまり「清貧の思想」を国民に要求する以外にないのです。これが受け入れられるかどうかは人生観、文化の違いが大きいでしょう。日本はいまのところ例外的な国家のひとつのようですが、多くの先進国や新興国では暴動がまだまだ多発する恐れがあるのです。

CoRichブログランキング

2012年1月5日木曜日

ストラディヴァリウスと「食べログ」と尾上縫

明けましておめでとうございます。

新年早々の三題噺、「ストラディバリと『食べログ』は、わかるけど、尾上縫(おのうえぬい)は何故だ?」と思われるでしょう。

正月明け、ネットとメディアを騒がせているのは、「一個(一台?一本?)何千万円~何億円もすると言われるヴァイオリンの名器『ストラディヴァリウス』や『グァルネリ』が、現代の安い量産ヴァイオリンと比べて音色の差が殆どない。場合によっては現代のもののほうが評価が高い」というニュース

そして続いて出たのが上場会社カカクコムが運営していて飲食店や「地域名 ランチ」などで検索するとほぼ間違いなく上位に出てくる口コミサイト「食べログ」のやらせ疑惑です。

フェイスブックなどソシアルメディアの閲覧数や「いいね!(Like)」ボタンの押される回数みたいなものですら、ワンクリック幾らとかで売り買いされる時代だそうですから、SEO対策などで宿敵ぐるなびを戦慄させてきた「食べログ」に限らず、およそ「口コミサイト」なるもの、多かれ少なかれ「やらせ」はあるのだろうと読者の皆さまは既に賢察のことと思います。

現状、記事によれば、カカクコム自身はインフラを提供しているだけであり、やらせ業者を取り締まり監督規制する立場であることを明確にしています。

ここは実に重要で、外国為替証拠金(FX)取引の世界で、広告の大半を占めているアフィリエイトは、個人ブロガーはさておき、比較サイトや口コミサイトは、それ自体がやらせであり、人気順位を売買させていることがはっきりしているからです。

そのことの是非については、金融先物取引業協会でも、のらりくらりと議論されているようなのでそちらに譲るとしましょう。アフィリエイトという何となく洗練された外来語が「やらせ」という直截な言葉に置き換えられようとしている事実だけで、アフィリエイトモデルに依存してきた多くの業者や周辺産業の人々は「ああ、来るべき時が来たな」と観念することでしょう。

ヴァイオリンの話に戻すと、東京の郊外にあり、比較的多くのヴァイオリン奏者を育成輩出することで知られる音楽大学では、一個(一台?一本?)500万円以下の単価のヴァイオリンのことを“ゴミ”と称する習わしがあると聞いたことがあります。そういう価値観を成り立たせている教員や学生の耳こそまさしく“ゴミ”であるとわたくしは言いたいです。

・・・・・ヴァイオリンは一個でも一台でも一本(※)でもなくて、一丁と数えるそうです。豆腐と一緒です。。。。。(※)「あるオーケストラのなかでヴァイオリストが何人いるか?」という文脈では何本と使うようです・・・・・

良きにつけ悪しきにつけ、スティーヴ・ジョブズが圧縮音源によってアナログ音楽や生の音楽のビジネスモデルを破壊した一面があります。が、その敗者の代表格ソニーは、プロモーション・ビデオ(≒MTV)で「口パク(くちパク)」の歌と音楽を一般大衆に許容させてしまっていて、いまや天下のNHKですら平気で「口パク」歌手を紅白歌合戦の大舞台に立たせるほど寛容になっています。

メット文明の便利さは捨てがたい反面、良質なマスメディアの生存確率は劇的に低下したため、ネット上で「やらせ」産業が跋扈し、大衆の耳や舌や価値観につけいる隙を与えてしまっています。

それで、何故に尾上縫なのだ?と続くところですが、後半は後ほど。要すれば、ほんとうの金持ちはブランドでは騙されない、よって自身をブランドで飾らないことによって(普通のオバサンのように振る舞うことによって)ほんとうの金持ちはこういうものだ、ほんとうにこの人はおカネを持っているんだと思わせようとした一級の詐欺師であったというお話です。

2011年12月30日金曜日

割れかけたコロンブスの卵

昨日、12/29(木)のブログで、

「欧州の危機には、統一通貨ゆえに急成長し過ぎたツケと、個別国国債の買い切りには(独立通貨国以上に)抵抗がある中央銀行の存在という特殊要因があるものの・・・・・・」

と書きました。日本のような独立通貨国でも、日銀総裁が頑固だからというだけでなく、中央銀行による国債の直接の引き受けは原則禁止なのです(「国債の市中消化の原則」財政法第5条)。

この「原則」は先進各国共通のようです。しかも「例外のない原則(で)はない」というところも似ています。つまり、いったん市中の銀行に消化された国債を、金融調整目的で、中央銀行が買い上げることは可能であり、結果としてそれを満期まで持つことも可能であり、償還と同時に借換債を購入することも可能なのです。

この抜け道に注目したのが、今月、欧州で決定されたLTRO(長期リファイナンス・オペレーション、または長期レポ・オペレーション)だと言えます。

借り換えが困難な国の国債をECBが直接買えないのは、市中消化が原則であるだけでなく、健康な国の税金で運営されている(欧州)中央銀行を病気(の国の国債)のリスクに曝(さら)すことへの愛国心的な抵抗があります。そこを、やや健康な国の銀行にまで病気のリスクが蔓延していることを奇貨として、今回はまずイタリアの国債でしたが、これを買って担保に入れることを条件に(?)、それらの銀行に金を貸してあげるという枠組みになったのです。

中央銀行が助けたいのは国の財政だが、それが直接できないから、民間の銀行を導管として使う(使われた銀行も悪い気はしない)というのは見事な抜け道ですし、コロンブスの卵です。

このコロンブスの卵、ユーロ圏では、(市中消化の原則だけでなく)自らは健康だと思っている国の愛国心を回避するためのアイデアであったわけですが、愛国心の問題を気にしなくても済む日本でも米国でも応用できるかも知れず、そうであれば、消費税のことで与党内で揉めたり、離党議員や支持率の低下で悩まなくても良いのです。

ほんとうにそうでしょうか?イタリア国債の入札が、上記理由で順調であったにもかかわらず、ユーロは対ドルでも対円でも大きく下落しています。
CoRichブログランキング

2011年12月29日木曜日

2012年を占う

フェニックス証券による2012年の「公式」占いについては、来月発売の月刊FX攻略にバッチリ載せておりますので、それまで暫くお待ちください。

今朝ご紹介するのは、フィナンシャルタイムズの論稿のひとつで、元国連事務総長補(当時の国連はアナン事務総長)など国際機関の重要ポストの経験を複数持つユニークなジャーナリストであるマーク・マロック・ブラウン氏によるものです。

氏の予想は至極一般的な悲観論で、①対策の打ちようがないユーロ圏危機、②過熱してしまった中国不動産市況、③先細るインドの改革とブラジルの経済成長、④アメリカの失業と債務、、、これらすべてが来年より悪くなることはあっても、良くなることはないと言い切っています。

ただ、このような普通の結論も、単に来年一年についての占いではなく、過去何十年もの間、糊塗し誤魔化し続けようとした西側経済(※)の病巣に帰するところに、氏の達観があります。

一時しのぎの連続に遂に耐えられなくなった西側経済(※)の病巣とはなにか?

氏はグローバル化はグローバルな優勝劣敗を作り上げた。つまり、二種類の勝ち組(技術革新の担い手たちと新興国の製造業の担い手たち)と負け組(西側の中間層とブルーカラー)が産まれた。問題は、負け組連中が劇的に失った競争力と所得を、それぞれの先進諸国の政治家が、回収不能な(!)ソブリンローンと消費者ローン(または住宅ローン)で取り繕おうと、もがいててきた「成れの果て」であると分析しています。

私自身の仕事を考えてみても、パソコンからインターネット関連サービスの技術の恩恵を受け、新興国の低賃金なのに高意欲でしかも高能力の働き手のサービスを直接・間接に利用出来てきたことで、二十数年前に社会人になった頃の私の上司の働き振り「これコピーしといて」「清書しといて」・・・みたいなコスト構造が是認されていた時代・・・とは隔世の感があります。

欧州の危機には、統一通貨ゆえに急成長し過ぎたツケと、個別国国債の買い切りには(独立通貨国以上に)抵抗がある中央銀行の存在という特殊要因があるものの、ツケの本質は、一度手にした物質的に豊かな生活は失われないものだと勘違いした国々にとっては共通なのです。

ちなみに、氏の予言によれば、経済的にはより悪くなる2012年だが、政治的には意外にも静か、ただし「嵐の前の静けさ」とのことです。

(※)ウェスタンという言葉を使っていますが、日本を含みドイツを含まないようです。
CoRichブログランキング
(2012年3月16日追記)昨年のノーベル経済学賞受賞者の考え方【合理的期待仮説など】と似た切り口です。2011年10月11日の記事もあわせてお読みください。

2011年12月22日木曜日

まほうのぴあの-復興支援コンサート

日頃お世話になっている京橋の抜群に(!)美味しいイタリア料理タヴェルナグスタヴィーノTaverna GUSTAVINOさんの御紹介で、フォルテピアノなど古い鍵盤楽器を得意とされているピアニスト(フォルテピアニスト)丹野めぐみさん(ブログ末尾に別公演のyoutubeを御用意しました)のリサイタルにお邪魔してきました。

古い鍵盤楽器の音色

使用楽器は1820年頃制作されたJohann Georg Grober(←スミマセン、ウムラウトの表示の仕方がわからなくて・・・)、、、何と5本のペダルがあり、それぞれ特徴のある弱音機能であることを、演奏前のミニトークで丹野さんが実演含め解説してくださいました。うち、一本はペダルの渾名(あだな)がファゴットという現代のピアノには受け継がれなかったものです。

オーケストラ音楽同様、産業革命とともに、演奏規模もホールの収容人数も巨大化するなか、鍵盤楽器も大きな音を響かせるべきという価値尺度で進化していってしまったのでしょう。古楽器とはある種のシーラカンスかも知れません。ユニークなべダル機能のほか、ピアノ線が鍵盤に向かって全て垂直という意匠も特徴です。これを「平行弦」と呼ぶそうで、現代のピアノは、やはり音を大きく響かせるための工夫として、弦を平行ではなくクロスさせることが定着しているようです。

貴重な古楽器が200年近く丁寧にメンテナンスされ、演奏会場に運び込まれただけでも、演奏者の丹野さんをはじめ、スタッフ、主催者の皆さんの努力は相当なものだとわかります。

一言で言うと、ピアノの音、、、これもメーカーや型番、品番でかなり違うのですが、、、を日本の箏(こと)の音色に近づけたような印象で、ひとりだけクリスマスをすっ飛ばして正月を迎えた気分に酔いしれることができました(笑)。

作曲家の調性へのこだわり

丹野さん自身によるプレトークの内容は、古楽器の説明のほか、クラシック音楽における「調性」の話でした。

グスタヴィーノでいただいたちらしからはそんな内容の話が聴けるとは思わずびっくりしたのと、そういう意図なので、前半のプログラムの曲順が普通の演奏会ではありえない独特のものになっていたのです。

①バッハ「平均律」(第一集)ハ長調
②バッハ「平均律」(第一集)ハ短調
③シューベルト「即興曲」(作品90)第2曲 変ホ長調
④クララ・シューマン「前奏曲とフーガ」(作品16)第2曲 変ロ長調
⑤シューベルト「即興曲」(作品90)第4曲 変イ長調
⑥クララ・シューマン「前奏曲とフーガ」(作品16)第1曲 ト短調
⑦シューベルト「即興曲」(作品90)第1曲 ハ短調


本来は順番に弾かれる「組曲」が分解され、順番も逆転されたりしているのです(ただし上記①⇒②は本来通り)。

しかし、これらの楽曲を聴き慣れているひとも、そうでないひとも、たぶん何の違和感もなく、幻想的な転調の世界にひきづり込まれていったのだと思います。

あとで申し上げるように、冒頭の調性だけを並べてもあまり意味がないのですが、これら7曲がすべてフラット(♭)系の曲であり、その数は、①から順番に、

0⇒3⇒3⇒2⇒4⇒2⇒3(⇒0)

となります(戻ります)。最後の⑦は、冒頭ハ短調ですが結末がハ長調(ブラームスの交響曲第一番第1楽章と同じ)。ハ長調から短転(ドをラに読み替えて短調に転ずる)して始まったフラット(♭)の旅が巡り巡って最後は逆に長転(ラをドに読み替えて長調に転ずる)で我が家に戻ってくる形です。

ただ、この旅程は、見た目ほど綺麗で順調というわけではありません。シューベルトの曲名は文字通り「即興曲」ですが、バッハの平均律も、またそれと同じ題名である(バッハに対する明らかなオマージュである)クララの作品も、同じように即興的であり幻想的であります。

予定調和と即興性

バッハという作曲家は、以降のウィーン古典派の作曲家(ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなど)やロマン派の作曲家(シューベルト、シューマン、、、、ブラームス、リスト、ショパン、、、)と対比させて、「神の音楽である」「予定調和の世界」「同じ動機が曲の何処をとっても現れていて“金太郎飴”」などと、一般には説明されるようです(出典「NHK教育テレビ『坂本龍一スコラ音楽の学校』」)。

バッハの鍵盤曲のなかで、「フランス組曲」「イタリア協奏曲」「パルティータ」「インヴェンションとシンフォニア」などは、確かに、各曲の後半部分の激しい転調部分も含めて、予定通りの、パターンに適った調性進行が殆どです。特に、「ゴルトベルグ変奏曲」も、変奏曲という定義上、大胆な調性進行はありえません(ただし例外的なト短調の3曲中3曲目のみ極端な前衛性があらわれています)。

今回冒頭で演奏された平均律第一集の最初のハ長調の曲も、それを「カバー」したグノーのアヴェマリアのお陰でわたくしなんかは和音進行を何とか記憶できるくらいで、平均律の各曲は、バッハの他の作品と比べて遥かに、「楽譜を見ずに鼻歌が歌える」程度に覚える、慣れ親しむのが難しい、、、特にマニアックな曲となると、例えば平均律第二集の変イ長調のフーガは、終結部直前の数小節はイ長調【正確に言えば変変ロ長調・・・フラット(♭)が9つ】にまで転調され、激しさにも程があると思うし、予定調和だとも思いません。

ピアノ音楽の旧約聖書と言われる平均律は、バッハの鍵盤音楽の最高峰であることは間違いないですが、最もバッハらしい音楽とも言えると同時に、最もバッハらしくない(即興性と前衛性に溢れ過ぎた)音楽とも言える、両極端を内包した存在です。

シューベルトの即興曲も、もうひとつの作品142が「第2曲を除いた3曲はピアノソナタと捉えるべき」とシューマン(旦那ロベルトのほう)が言ったとおり・・・わたしには第3曲の有名な変奏曲を敢えて除くと残りの3曲はベートーヴェンのピアノソナタ「悲愴」へのオマージュだと思えます)整然とした調性進行に基づいているのに対し、今回演奏していただいた作品90は、即興演奏という意味ではないにしても、実に思いついた通りの大胆かつ自由奔放な調性進行のため、バッハとクララの対位法の作品との相性が意外なほど良好なのです。

楽譜出版の生業(なりわい)とクラシック音楽の調性

絶対音感のないわたしがこれまでにも何度か生意気にクラシック音楽の調性について書かせていただいてきました。
ドンジョヴァンニ~変装と転調の妙なる調和

「愛の調べ」も転調が妙薬に~シューマンの職人技
愛の調べの第二楽章
これまで書きつづったことは、実は相対音感だけでも理解し楽しめる内容です。最後に、絶対音感(または楽器演奏上のテクニックの問題に対する理解)がないとピンとこない話に触れます。

昨日、丹野さんがプレトークで面白い話をされていました。上記7曲に漏れていてアンコールにまわされたシューベルト「即興曲」作品90の第3曲は、変ト短調(♭が6つ)で書かれており、楽譜の出版業者から、「フラットが6つもあると楽譜の売れ行きが悪くなるから、(半音あげて)ト長調(♯1つだけ)に書き換えてくれ」と圧力を受け、それに甘んじて書きなおした(が後年改めて作曲者原案に戻された)というエピソードです。

短い人生にもかかわらず1000曲前後の作品を残した多産のシューベルトにとって、生前楽譜の売上と生計に貢献したのはアヴェマリア一曲だけだったという話も聞いたことがあります。そこまでの生活苦があったればこそ、一度は調性の変更(移調?)を受け入れたのでしょうが、クラシック音楽にとって半音の違いは実は一番大きな違いであり、いくら銭金(ぜにかね)に関わる話とは言え、シューベルトの魂を著しく苦しめたのは想像に難くありません。

ちなみに、初版の楽譜は、作曲家の意図せざるト長調であったことだけでなく、この曲全体の雰囲気を大きく変える、左手アルベッジョのひとつの音が改訂版と異なっています(繰り返される動機なので、実際には何か所か現れます)。右手動機を移動度で言うと「ミ~ミミミ~ド~」、これに対する左手は、初版では繰り返しの前後問わず、ド+ミ+ソで構成されていたのが、現在我々が耳にする分散和音は、繰り返し後、上記下線部分が、ド+ミ+♯ソに改訂されているものです。

この一音の改訂、、、「経過音」化、これまたたった半音の違いです、、、が、ドイツロマン派のど真ん中的存在であるシューベルトが、ショパンやリストなど後期ロマン派の鍵盤音楽への見事な架け橋になっているような気がします。


CoRichブログランキング

2011年12月21日水曜日

オリンパスの次ぎは野村証券か

粉飾、損失飛ばし、株価急落、、、という話では必ずしもありません。

某スポーツ新聞の見出しみたいで恐縮です。

日本のメディアが、何故か、躊躇して取り上げなかったオリンパス問題を白日のもとに曝した月刊「ファクタ」が、次にメスを入れた巨大金融機関の話です。

http://facta.co.jp/article/201201020.html

いまでこそ、新聞・テレビ等、旧来型メディアも大きく取り上げるようになってきていますが、蟻の一穴をこじ開けたファクタに対する評価は、内外から著しく高まっています。

その鋭い舌鋒が向かった先が野村証券などであることは、日本だけではないにせよ、ディーラー・ブローカーのビジネスモデルの劣化がいかにすさまじいかを物語っています。単に、リーマン買収が失敗だった云々という、時の運の話ではないのです。

それにしても、オリンパス問題、例えば日経新聞もかなりキャッチアップしてきているとはいえ、①財テク失敗による損失額、②M&Aを使った損失繰延規模、③現時点での粉飾額が、どう読んでも整合的に理解できないのは、きっと鋭意書いていらっしゃる新聞記者の方々としても忸怩たる思いに違いありません。

つまり、まだ奥のほうに、開き切っていない扉があると推定されるのです。
CoRichブログランキング

2011年12月13日火曜日

MFGlobalのジャンク国債をジョージソロス氏が購入

先週の金曜日にフィナンシャルタイムズ紙が速報で伝え、日経新聞も囲み記事で追随した内容です。

ジョージソロス氏については、フィナンシャルタイムズ紙で過去何ヶ月にも亘って、ユーロ応援演説をぶってきました。

10/11(金)「ジョージソロス氏のユーロ防衛発言は続くが・・・」

ポンド危機でもアジア危機でも標的通貨の売り崩しから大儲けを果たした同氏が、今回は珍しく弱り目に祟り目のユーロを守る発言をしつこく繰り返すのは、ユーロ、かつまたは、ギリシャ、イタリア、スペイン、ポルトガルなどのジャンク化した国債の買い建て故のポジショントークか、または氏の出自に由来する平和哲学か、という話を、約2ヶ月前にいたしました。

一方、日本国内のFX会社を買収するなど世界規模に事業展開をしていた金融ブローカー大手のMFグローバルの倒産では、

MF Globalの倒産が、リーマンショックよりもショックだった理由


日本のFX会社にとっての全額信託保全と同様、顧客資産の分別保管義務があるにもかかわらず、ジャンク化しつつあった欧州各国の国債の買い建てにより自己ポジションの超過利潤源にしようと試みた結果、ジャンク化がより一層進んだために、自己資金での穴埋めが出来ないどころか、株価急落⇒倒産⇒顧客資産の返還に殆ど応じることが出来ない状況になったというものです。

この不良債権としての欧州国債ポートフォリオが巨額すぎるため、この倒産処理(≒残余財産の処分)を市場で単純にオークション的に行なうと消化不良を起こす(暴落が暴落を加速させる)という配慮が働き、大手投資家に相対(あいたい)で打診するという形式をとったのだと考えられます。

そしてそのなかでもっとも強い関心を示し、見事、買い付けに成功したのがジョージソロス氏だったということです。オークションに譬えれば、落札したのがソロス氏であったということです。

報道の時点では、ソロス氏が購入した大底(?)値よりも市況が回復しているので、かなりの利益が出たと言われています。しかしこれがまたしても「ハゲタカ行為」であったと断定できないのは、上述のように、ユーロと欧州各国国債の売り崩しをしていたという証拠がないからです。ほんとうに悪質なら、口ではユーロと欧州各国の財政を守るべきと言いながら、やっていることは正反対(同資産の空売り)ということも考えられなくはありませんが・・・・

言い換えれば、ソロス氏の投資行動が、ショートカバーによる利食いなのか、ロングポジションのナンピンなのか、ハッキリしません。

CoRichブログランキング

2011年12月6日火曜日

なぜ日本人の自殺率は高いのか

昨夜、馴染みのワイン屋さん(日本橋兜町)に、御歳暮の手配に伺ったところ、そのお店は立ち呑みで有料試飲をさせてくださる超良心的なお店なのですが、しばしばお会いする常連のお客さまが二名いらっしゃり、わたくしもほんの二杯ほど御一緒させていただきました。

うちお一人は大手損害保険会社にお勤めの方で、フィリピンをはじめ、海外勤務の御経験も豊富な方です。

で、彼が言うには、日本人の自殺者は毎年3万人以上だが、そのうちの半分は、会社でのいじめ、パワハラの被害者なのではないか?と。

企業社会の変化と自殺者数・自殺率の関係は深いと思います。長年、毎年2万人台で推移していた日本人の自殺者数は、山一・三洋・日長銀・日債銀など大手金融機関が相次いで倒産した1997年~98年を境に一挙に急増して、以来昨年まで年3万人を下ったことがないようです(平成22年「自殺概要資料」警察庁生活安全局 生活安全企画課)。

国際比較を少々行ないますと、、、(厚生労働省「自殺死亡統計の概要」・・・警察庁の統計とはデータの取り方が異なること、国ごとの基準年度が必ずしもそろっていないことなどに留意が必要です)、、、第二次大戦後長年に亘ってダントツのワースト1位だったハンガリーが1990年代以降改善傾向となり、同時に共産党政権が崩壊したロシアが急増しワーストに、その後、最近マスコミでも話題のとおり韓国の自殺者急増で、現在は主要国(?)のなかで自殺率(人口10万人当たりの自殺者数を数えるのがグローバルスタンダードらしい)で日本を上回るのは、ロシア、韓国、ハンガリー(ほぼ日本に「肉薄」)となっていて、日本は世界有数の高レベル自殺率国となってしまっています(主要国?以外では、リトアニア、ベラルーシ、ガイアナ、カザフスタンだけが日本より上位)。

逆に「優良国」としては、主要国(しつこくも、?)の中ではイギリス、オーストラリア、カナダなど旧英国宗主国が目立ち、プロテスタント系ならではか(仏教や神道は自殺に関して必ずしもネガティブではないとの指摘あり)とも思われます。

が、、、このブログは、FXブログですし、より深くは政治経済を論ずるブログですから、宗教の要因だけを重要視するわけには行きません。

日本の自殺率は直近で24.9(人口10万人につき24.9人)ですが、この数値が10以下の国のなかに、ポルトガル、スペイン、イタリア、ギリシャがあります。このほか中南米の国々の殆どとフィリピンがこの領域に含まれています。

これを(旧ギリシャ植民地の(旧ローマ帝国植民地の))旧ポルトガル+スペイン植民地だから、いわゆるラテンな感じだとか、カソリックだから、もっと言えば、現在世界を悩ませている経済・金融問題に即せば、「宵越しの金を持たない」「借金が返せなくてもケ・セラ・セラ」という特質に注目すべきかも知れません。

昨夜、損害保険会社の方と話をして感じたのは、勿論、会社でのいじめやパワハラは世界中の(大)企業で発生していることですが、日本の場合は、上司が特にそれに頼らないとリストラが出来ない、整理解雇要件の厳しさが就労者を守るどころか逆にお互いすっきりしない辞め方辞めさせ方を強いられている不幸な構造があるのではないか、ということ。それと、住宅ローンの問題(ノンリコース型の商品が原則としてないこと、団体信用生命保険が借入時に必須となっており、これは勿論、世帯主死亡の場合に残された扶養家族を守るものではあるが、給与減やボーナス返済破綻など、更には失業や不動産相場下落の際に、「自分が死ねば良い」という決断を必要以上に促してしまう制度になってしまってはいないか、ということです。
CoRichブログランキング

2011年11月30日水曜日

中国が金融緩和へと政策を急転換か!?

ただいまウォールストリートジャーナルが速報で伝えたところによると、中国の中央銀行が、民間銀行に貸している支払準備率を0.5%引き下げると発表、12月5日実行とのことです。


http://online.wsj.com/article/SB10001424052970204012004577069804232647954.html?mod=djemalertNEWS


支払準備率を引き下げるのは2008年12月以来、3年振りですし、今年だけでも5回、引き「上げ」を行なってきたところです。

景気過熱、物価高、不動産バブルへの対策として、金融引き締め策を次々と打ち出してきた金融当局が、一転して、金融緩和のシグナルを鳴らしたのは、グローバルな金融市場の混乱が背景にあると、同紙は、取り急ぎ、報じています。

景気の過熱と資産バブルをソフトランディングさせる良い知恵はないかどうか、中国のエリートは、どこの国よりも一生懸命勉強してきていたとわたしは見ており、その答えがないことを、この政策転換は示しているのかも知れません。
CoRichブログランキング

2011年11月29日火曜日

信用格付けビジネスに潜むアフィリエイト稼業と利益相反

ギリシャ、アメリカ、イタリア、フランス(誤報?)、、、スペイン、ハンガリーと、金融恐慌になるとやおら存在感を増すのが信用格付を行なっている会社です。

90年代後半の我が国の金融危機のときは、業界の人間以外には馴染みがなかったはずの、ムーディーズ、S&Pという「言葉」が、夕刊タブロイド紙の盛り場ニュースの隣の記事にまで進出するほど浸透していました。ムード音楽とかムーディ何某とか死語あるいは表舞台からは姿を消しましたが、ムーディーズは周期的に表舞台に登場します。

そんな格付機関の歴史を、わかりやすく、本質をぶち抜いて書かれた良い記事に出会いました。

格付け機関が飲んだ「毒薬」-日経ビジネスオンライン

格付け会社もアフィリエイト稼業に手を染めたから生計を立てられた。アフィリエイト稼業に手を染めない「インヴェスターズ・サービス」だという矜持を守った三国事務所は部門閉鎖に追い込まれた。勝手格付けは利益相反対策だったと言うが、発行体への脅しだという現実を考えると・・・

最近、フェイスブックを使ったビジネスの限界を露呈したとも言われている有名なR社によるフェイスブック上の勝手「企業ホームページ」事件とか、、、FX業界に君臨する有力比較サイトやカリスマブロガーの問題と構造が一致しています。
CoRichブログランキング

2011年11月25日金曜日

FX攻略.com2012年1月号が好評発売中

先月のいまごろ、このブログで嘘をつきました。

「ことりFX」サービススタートを記念して、連載開始からのコラムを毎日このブログで御紹介して参ります、、、と書きましたが、続けるのを忘れていました。

お詫びついでに方法を変えまして、発売と同時に半年前の記事をブログで振りかえりたいと思います。

ただいま発売中の1月号では、自動売買が特集されています。そのなかでわたくしのコラムはしつこく欧州危機をフォローしています。

それでは、7月下旬に発売された9月号のコラムから・・・

「ブログの更新と異なり、雑誌への寄稿というのは、1ヶ月後に書店に並ぶときまで鮮度を保っていたいと思うと、何を書いていいのやら、たいへん頭を悩ませるものであります。


永田町の政局も、菅総理への不信任決議否決の前後あたりからは、1ヶ月先はおろか、1日先のことすら、内部の人間ですら読めなくなりました。

FX業界でも、この1ヶ月で、随分多くの会社が廃業、身売りを発表しました。わたしは数年前からじわじわと業者の数が減るだろうと予想していたので、この時期になっての業界再編の加速は、やや予想外だったと言わざるを得ません

(ただし最後に申し上げるように、わたしはFXは「成長産業」だと思っています)。

しかし、多くの日本人の心の内側を正直に問えば、ここ最近で最も予想外だったことは、政局の不透明でも、FX業界の不透明でもなく、日本で発生した深刻な原発事故で、かつての同盟国であるドイツとイタリアで相次いで、原発の撤廃が決定したことではないでしょうか。特にイタリアでは、電力輸入国ながら、国民投票で定足数を満たしての多数決可決という点に重みがあります。

ファシズムの敗北というレッテルを貼られた日独伊のうち、特にイタリアでの現象について「集団ヒステリー」と呼んだ自民党の二世議員がいました。百歩譲って、世界史上で最も進んだ民主国家という形跡を持ちながら全体主義に陥ったドイツとイタリアに「集団ヒステリー」の気質が全くないとは言いません。しかし、震源地であり爆心地でもある日本で、どうせ不透明な政局なら、原発を政局にしない道理はあるでしょうか。

既存の大政党や大企業に与して仕事を続ける以上、この国では、どんなに優秀な人間でも、自分の何処かを誤魔化し続けて不完全燃焼のまま人生を終えるしかない構造なのです。その腐りきった構造とて、守ることの利益のほうが壊すことの利益より大きいと集団的に盲信している限りびくともしないことを「失われた20年」は証明しました。が、今回の地震はそれを許さないと思っています。金融界の端くれであり、それほどの政治力を持たないFXの世界ではありますが、わたしは次世代の金融産業の柱になるべく、これから先大きな進化を遂げていくと確信しています。フェニックス証券は、「この時期、これほど前向きな投資をする会社が他にあろうか?」と思える程の企画をFX分野でもこれから進めて参ります。」

CoRichブログランキング

2011年11月17日木曜日

中央銀行の押し目買い

買ったのは金(ゴールド)です。

英フィナンシャル・タイムズ紙の速報によると、金相場が急反落した9月を含む第三四半期に、過去40年で最大金額の金を中央銀行(セクター)が購入したと伝えています。

情報元は、どこの中央銀行が、という内訳は公表できないとしていますが、金地金市場に初めて参入する中央銀行からの旺盛な買い意欲があったと、仄めかしています。

「過去40年」とは、米国が金本位制を嘯いていたブレトンウッズ体制の崩壊以降の記録的金額ということになります。中央銀行セクター全体では、2008年~2009年は金を大量に売り越しており、昨年2010年に買いに転じていました。

さて、金を買って何を売っていたのでしょうか?外貨準備が急増した新興国の中央銀行だとしたら、欧州の国債か、金融引き締めのための自国マネーということが想像できますが、詳しいことはわかりません。

記事の最後に、宝飾品として金の最大の消費国として、中国がインドを追い越したと説明されています。
CoRichブログランキング

2011年11月11日金曜日

讀賣新聞、オリンパス、大王製紙

TPP協議に参加か否か、イタリアやスペインの国債は何処まで暴落するのか、プロ野球日本シリーズもいよいよ明日開幕じゃないか、ということで、一億総国民が固唾をのんで見守っている中で、くだらない内輪もめの話がとんだ邪魔ものとして闖入してきたものです。

それにしても、オリンパスや大王製紙で論点となっている「ガバナンス(企業統治)」とか「内部統制(インターナル・コントロール)」とか「コンプライアンス(法令順守)」という言葉、企業社会ではこの20年で随分使われやすくなりましたが、わかりやすく説明するのは容易ではありません。

読売巨人軍の清武代表が、讀賣新聞主筆で同球団の取締役会長でもある渡邊恒雄氏の言動が内部統制とコンプライアンスの観点から許されないとする単独会見(@文部科学省)が、多くのメディアをにぎわし、またネット上でも瞬間沸騰の話題となっています。

わたしは渡邊氏については、日本共産党出身の改憲派であり、権力闘争が得意な大連立支持者であり、TPP賛成のリバタリアンである程度の知識です。そもそもがアンチ巨人なので、特段好感を持っているわけではありません。しかしながら、清武代表が涙を流して行なった言動は、わざわざ大手メディアや一般大衆の耳目を集める価値のない、上司に梯子を外されたことによる愚痴に過ぎません。

プロ野球がどうあるべきかというのは価値観の問題です。落合監督続投支持という意見を持ちながら現場(≒部下)の意見に譲歩した中日ドラゴンズの白井会長の態度が「ガバナンス」なのか、資本の論理または人事権に基づいて有無を言わさない渡邊会長こそがむしろ「ガバナンス」なのか、、、これだけ考えても、上述のように「ガバナンス」とは何かを論じるのは簡単ではありません。

オリンパスと大王製紙は、株主から委任を受けている筈の経営者、実は同じような関係にあると考えるべき(だとわたしは思っている)少数株主と大株主との間の利益相反の問題で第一義的には処理すべきなので、これは金額の問題はさて措くとしても、立派な「ガバナンス」問題であり「コンプライアンス」問題であります。

上司部下の関係のいざこざという、サラリーマンが新橋の立ち飲み屋で憂さ晴らしする程度のことを、やれガバナンスだ、やれコンプラだと言って、霞が関から全国ネットで憂さをまき散らすというのは大新聞の企業文化を引き摺る奢りであると言えます。

ただ、そのような非常識な大人を育ててしまう組織にはやはり理由があります。読売新聞社の歴史をひも解くと、資本主義下の民間企業とは思えないようなスターリン粛清を彷彿とさせる権力闘争が連綿と続いているのです。オリンパスの巨額粉飾と同様、冷戦終結とIT革命から20年以上経って、大手メディアの伏魔殿にやっとサーチライトが照らされたということになります。

・・・いや、そういうことではなくて、野田総理による「TPP協議参加決定」というニュースの取り扱いを小さくさせて目立たなくさせてあげよう、という配慮のために、讀賣グループの首脳陣が演じた猿芝居だというのが真相だ、、、、というのであれば、民主党のガバナンスは見上げたものだと思います。
CoRichブログランキング

2011年11月9日水曜日

オリンパス問題とTPPで、日本はますます良い国になる!

オリンパス社内で歴代経営者の申し送り事項とされてきた粉飾決算というパンドラの箱を勇敢にも開けてしまい解任された外国人社長と、その腐った木箱の蓋が崩れて座る場所を失った歴代日本人経営者たち。

どちらが賢くて、どちらが馬鹿であるかという二者択一では真実は見えてきません。どちら側も等しく合理的な行動の結果であるという前提に敢えて立って考えるべきです。

「経営者」とか「社長業」という職種が転職可能な労働市場インフラが整備されていれば職業能力に自身のある人は、オリンパスの例に照らせば、過去の不正を暴く行動に出るでしょう。

幹部候補生が社内の競争に勝ち抜いて経営幹部へと出世していったとしても、そこで証明された彼らの能力が、転職可能性を必ずしも押し上げないという事象は、何もオリンパスだけに限ったことではないでしょう。日本的経営の要素が色濃く残っている上場企業の殆どで起こりうる問題であると考えられます。

このブログでは「失われた20年」とは言うが、失われて良かったことのほうが多いと繰り返し申し上げて参りました。オリンパス如きに20年も掛ったのは失笑物ですが、大手金融機関の法人営業とは何だったのかということも含めて、獲物は決して小さくないと思います。

そこから一挙に飛躍して、TPPに反対を(すべくして)している農協や日本医師会などは、映画「ラストエンペラー」に出てくる清朝末期の宦官の有象無象であるとまで言い切るつもりはありません。が、どのような業界に属するにしても、自分自身の行動指針に自信を持ち、それにしたがってきっちり競争するという真摯なプレーヤーにとっては、開国(「Open the door!!」)を叫ぶほうが、ガラパゴス状態に甘んじるよりも、メリットが大きいのです。
CoRichブログランキング

2011年11月4日金曜日

パパンドレウ首相が開けたパンドラの箱

いまから2年前、2009年の流行語大賞は「政権交代」でした。1955年の結党以来となる自民党の大敗は、その当時は必然であり、民主党は、高速道路無料化や子ども手当や農家への戸別補償を持ちだすまでの必要はなかったのではないかと思っています。

ましてや、普天間問題をや、であります。今となっては懐かしい鳩山当時首相の「故人献金」は身から出た錆として、普天間問題にスポットライトを当てたのは、政治家にしては正直過ぎて馬鹿をみたとも言えます。

自民党の悪政の責任をボランティアとして引き受けてしまった問題という意味でも、原発問題と普天間問題は同列です。

原則として世襲政治家(の割合の多さ)を徹底批判してきた七転び八起きブログですが、逆にしばしば重要な例外的存在があることを御紹介して参りました。ポリティカル・ダイナスティ(政治王朝とでも訳すべきか)の末裔でしか出来なさそうな、教育、資力、正義感の三拍子が揃ってはじめて出来るリーダーシップというものもあるのでしょう。

実は、いま渦中のパパンドレウ首相も、親子三代に亘るギリシャ首相経験者の、その三代目です。

ウィキペディアの日本語サイトが不完全であり、また翻訳も酷いので、ここには英語サイトを掲載します。上から、祖父、父、御本人です。
http://en.wikipedia.org/wiki/George_Papandreou_(senior)
http://en.wikipedia.org/wiki/Andreas_Papandreou
http://en.wikipedia.org/wiki/George_Papandreou
余りに長い話となり、映画で言えば「ラスト・エンペラー」や「ゴッド・ファーザー」を超える上映時間を要するようなものですが、無理矢理要約すると、

★祖父は第一次世界大戦前後に親ドイツの皇帝に反逆して暗殺されかかった首相経験者、

★父もその反骨精神を受け継ぎマルクス経済学者としても優れた功績を残したやはり首相経験者、

★そして渦中の本人は全ギリシャ社会主義運動という野党党首(2004~)として2009年の総選挙で政権交代を果たし、その直後に全政権の負の遺産である財政赤字の粉飾を摘発、このことがギリシャ危機の発端となり、下野した新民主党と有権者たちの信任を失って今日に至るというわけです。

すべてのケースで等しく同情するわけではないですが、鳩山民主党の普天間、菅民主党の福島第一原発、だけでなく、オリンパスも然り、古く(もないが)を辿れば日本長期信用銀行や日本債権信用銀行にしても背任的なレベルまで不良債権を作りだしたり粉飾したりしたときの経営者ではなく、それが発覚したときの経営者が刑事罰に問われた(現在は無罪の差し戻し判決が確定済)ことをも彷彿とさせます。

パパンドレウ首相が、6割の債務カット案の条件として突きつけられている緊縮財政案を国民投票に問うという行為に対し、「いまさら何を馬鹿な」とついつい反応してしまいがちですが、申し上げた経緯と切り口からは、また違った感想が浮かび上がると思います。

それにしても、かつてはイタリアやフランスなどでも一世風靡したユーロ・コミュニズム(西欧版共産主義)が一律大きな政府を目指したのに対して、パパンドレウ首相がギリシャというボロ車の運転席に就いた途端に、小さい政府を目指して不人気を買わざるを得なくなっていたというのは、皮肉なものです。
CoRichブログランキング

MF Globalとギリシャは根っこが同じ!?

MF Globalが、倒産する2年も前から、債務の残高を偽って公表していたことが判明したと、ただいまウォールストリートジャーナルが臨時ニュースで伝えました。

同様の粉飾をしていたことが明るみになって欧州から世界を震撼させているのがギリシャです。

その粉飾のお手伝いをしていたのがゴールドマン・サックス。ブローカー・ディーラーの域を超えて、博打で利益を嵩もうとしていたMF Globalの社長も同社の出身。

決してわたしはユダヤ系金融が諸悪の根源だという理論に与する立場ではありません。我が国の大手金融機関の体たらくを見ていると、いまだに彼らに学ぶ点が多いことに驚かされるからです。

しかし、失敗事例を研究すると、リーマンブラザーズもMF Globalも、利益作りの中身は、ミセス・ワタナベ流の初歩的なキャリートレードと本質的な違いがない ことがわかります。
CoRichブログランキング

2011年11月2日水曜日

MF Globalの倒産が、リーマンショックよりもショックだった理由

えっ、負債総額では、クライスラーよりは大きいが、リーマンブラザーズよりは小さいではないか。何がショックだ。。。と思われるかも知れません。

MF Globalとは、18世紀にイギリスで設立された老舗のヘッジファンド「マン・フィナンシャル」がデリバティブ専門のブローカー・ディーラー部門を会社分割+株式公開して出来た米国籍の会社です。我が国ではFXアジアという会社を買収して、MF Global FXA証券と社名変更して、FX会社を運営していました。

MF Globalのサドンデスのニュース(とMF Global FXA証券の業務停止までの短時間の紆余曲折と)相前後して、我が国の上場証券会社が殆ど何処も赤字転落、赤字拡大、という四半期決算を発表しました。

リーマンショックという大舞台の上の主役たちは、投資銀行と呼ばれつつも、実際は「投資する銀行」に過ぎなかったことを露呈したわけですが、それは以前からわかっていました。

今回の主役は、ヘッジファンドから切り離されたブローカーが、実はもっと桁違いの儲けを狙って自らもヘッジファンドに変貌したまま大失敗したということです。

フェニックス証券もブローカーの端くれですから、いかにこの事業が薄利多売であるか は身に沁みています。

御存知のFXの世界は勿論、株式のリテール市場も、インターネット取引と手数料の自由化で、従来のビジネスモデルは壊滅寸前です。

先日、長年お付き合いのある不動産業者さんと未公開の中古アパートを見に行きまして、その帰り道、西武池袋線の急行のなかで、「駅前の不動産屋さんの数は減りませんね。インターネット取引も限界があるし、手数料は守られているからでしょうか。広い意味での金融サービスのなかで対面分野が最後まで残るのは不動産仲介なんでしょうね」という話をしたら「いえいえ、楽ではありません。3%という手数料は、案件が決まる確率を考えると本当に僅か。いちど買取と転売に手を染めてしまうと、仲介だけでやっていくのが馬鹿馬鹿しくなってしまうのです。しかしキャピタルゲインを楽に得られる時期もあれば、逆もある。そのときは金融は引き締めですから、倒産する。長く地味にやっている会社は、如何に転売の(利益幅の)魅力というか誘惑と闘えている経営者がいるということですね」という意味深長な答えが返ってきました。

MF Globalのケースは、経営者ゴザイン氏が誘惑に負けたどころか、最初から古巣のゴールドマンサックを見かえすべく、自ら誘惑にのめり込んだ結果でした。

話があっちこっちに飛びましたが、わたくし個人にとって、MF Globalの倒産が、よりショックだったのは、ホールセール=自己売買も駄目、なのに加えて、リテール=自己売買も駄目、というのが、この時期、世界中を見渡して観察されることです。

ただし、ショックと書きましたが、実は嬉しい開き直りでもあります。いま、わたしは、リテール・ブローカー業務をはじめて、7年目になってしまいましたが、最初は勝手が判らず、また、中小のブローカーが大手のブローカーに対抗出来るかどうかという分析も十分できずに始めてしまっていました。

システム、ブランド、コンプライアンスコスト、お上とのパイプなど、スケールメリット(平たく言えば中小では太刀打ち出来ない要素)があるのではないかということです。

事実、リテール業務初心者の頃は、大手の決算と比べて、収益率がだいぶ違うので、自分の知恵の無さなのか、不可抗力なのか、随分悩んだものでした。

MF Globalの倒産や大手証券の赤字転落、赤字拡大は、「なあんだ、この人達には敵わないと思っていたのは、ビジネスモデルを企画立案実行出来る能力ではなくて、ミセス・ワタナベと大差ないキャリートレードの分だけだったのか?」ということを知らしめてくれた点では、良いショックでした。

しかし、悪いショックでもあります。MF Globalのケースで顧客資産の分別が出来てなかったことが尾をひいています。リーマンのケースでは、銀行間市場が機能不全となりホールセールの側か金融制度が崩落しました。今回は、リテールの投資家が、分別保管(我が国のFX業界で言えば信託保全も含まれます)そのものを疑うようなことが起きてしまっており、これはシステミックリスクがじわじわと現れ、さらなる市場縮小の覚悟をしなけらばならなくなるかも知れません。
CoRichブログランキング

2011年10月31日月曜日

元ゴールドマンのクオンツ物理学者、ウォール街の偽善嘆く

10月31日付ブルームバーグの書評です。

ゴールドマンサックス・グループでクオンツファイナンス責任者を務めた素粒子物理学である著者のことば、

「リスクを取らずに成果が出せると思うな、損失の可能性なしに利益が得られると考えるなとわれわれはかつて教えられてきた」

にもかかわらず、

「今は縁故資本主義、利益は個人のもの、損失は社会で共有という現状、企業助成政策などを甘受している」

という箇所は、特にリーマンショック後の、米国政府による見境のない市場経済への国家関与をさしていると思われます。筆者のいうとおりですが、モラルハザードという点で日本のほうがより深刻であることをわれわれは反省しなければならないと思います。

古くはダイエーにはじまったモラルハザードは、JAL,東京電力へと続こうとしています。企業という形をしていないかも知れませんが、農業、医療、介護・・・もまたモラルハザードの根城です。

共産主義よりも資本主義のほうが優れた制度であるという命題には、モラルハザードが起きないという前提があることを忘れてはなりません。
CoRichブログランキング

2011年10月27日木曜日

ギリシャ債務元本削減率、50%で決定

米ウォールストリートジャーナルの速報記事です。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052970203687504576654901570712070.html?mod=djemalertNEWS
仏サルコジ大統領が、「マラソン」協議の末に、合意に至ったと発表。自主的な債権放棄を促すに至る討議の過程では、乱闘もあったようで、記事中の写真をご覧ください。

経済が萎むとき、損を誰が負担するかという問題に直面すると、人間は醜さが出ます。

50%~60%の債権放棄を民間債権者に強いるという根回しが先週末から始まっていましたが、この合意過程を見ると、わたしは90年代中盤の、住専問題を思い出さざるを得ません。

民間負担の裏返しである「公的負担」が6850億円に決めるために、政治的にも世論的にも夥しい時間とコストを費やしたものの、後から思えば、血税が負担した金額規模は桁違いに終わった。

同じことがヨーロッパで起きることは略間違いなく、今回の合意は序章に過ぎないでしょう。
CoRichブログランキング

2011年10月25日火曜日

「現金の海」を泳ぐ銀行

ほとんど金利がゼロなのに、(家計部門などが)銀行に預けている預金の残高は未曾有の水準。ところが、銀行はリスクの高い貸出を控えようとする。信用力の高い大企業は借りてくれない。

銀行全体の預金量に対する貸出の比率(=預貸率)のグラフを見てびっくり!!

90年代以降の、デフレ、大企業の債務リストラ、低金利~ゼロ金利が概ね20年続いた日本のことではありません。ニューヨークタイムズ紙が、「銀行たちが現金のなかを泳いでいる」と譬えたグラフィック記事は、昨今の金融危機以降、急速に「カネ余り」状態に陥った米国の商業銀行の姿を現しています。

このグラフィックが付属している記事本編では、預金の「洪水」を歓迎できない商業銀行のなかで、とくに高飛車な大手のなかには、ニューヨークメロン銀行が一部不採算預金客に対して0.13%ポイントの口座管理料の徴収を計画しているほか、JPモルガン・チェース、USバンコープ、ウェルズファーゴが当座預金だけでなく譲渡性預金の金利を殆どゼロに下げたうえで預金保険料を中小企業向けの貸出金利に上乗せする形で転嫁する動きが出ています。

昨日アップのウォールストリートジャーナルの記事にありますように、一方では、オバマ政権が緊急対策を打たなければならないほど、住宅ローンの借り換えが(ちゃんと約定どおり元利払いをしてきた善良な人々ですら)ままらなぬほど銀行の貸出姿勢が厳しくなっている。その結果が、預貸率の「悪化」です。

金融危機以前は、どの商業銀行も預金獲得に躍起になっていて、3%以上の金利を付けるだけでなく、iPadを無料で配るまでして、また支店の増設も盛んだったのが、一転、支店閉鎖、何千人という桁での解雇という状況に陥っていると同紙は報じています。
CoRichブログランキング

2011年10月24日月曜日

住宅ローンで債務超過の借り手を救済へ-米国政府

米ウォールストリートジャーナルの臨時ニュースです。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052970204346104576638931114550132.html?mod=djemalertNEWS
資本主義陣営である米・欧・日などのなかでは、モラルハザード的な政策が最も受け入れづらい米国で、極めて異例な「自己責任・結果責任を問わない」手段が取られようとしています。

共和党側、とくにティー・パーティーの出方、反応にも注目ですが、オバマ政権の動きに、しのごの言ってられない、のっぴきらない状況を感じざるを得ません。

ギリシャという国が相手か、住宅ローンを借り過ぎた相手か、随分異なるように見えますが、稼ぐ力以上の生活に嵌ってしまった浪費家を助けざるを得ないという事情ではほぼ共通です。

米国財政の更なる不健全化という意味では明らかにドル安要因、ただし景気悪化に歯止めがかからない程度であればマネーサプライは上昇せず、ドル高要因と減殺されます。
CoRichブログランキング
【追記】今朝10/25(火)朝のNHKニュースで、ウォールストリートジャーナルのスクープを追認する報道がありました。そのサイトを添付します。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111025/t10013482551000.html

「ことりFX」いよいよ始まる⇒始まりました【フェニックス証券】

七転び八起きブログの外枠で、密かに(?)お知らせしていたフェニックス証券の新サービス「ことりFX」、、、いよいよ本日10/24(月)サービス開始&新規口座申し込み受付開始となりました。

10月に入ってから、毎週末、役職員全員で土日出勤してテストを繰り返し、昨日一昨日でフェニックス証券の既往のお客さまの口座移管を無事完了。本日からログイン可能となり、また新規のお客さまの口座開設申し込みも予定通り開始することが出来ました。

デモ口座も従来通り機能しております。

利便性(パソコン~スマホ《iPhone/Android》・・・)でも取引条件でも、これまでより格段に改善し、業界トップクラスになっていると自負しています。どうぞお試しください。

CoRichブログランキング

2011年10月21日金曜日

破綻したデクシア銀行の大胆過ぎる粉飾

今朝のフィナンシャルタイムズが臨時ニュースで、欧州危機による最初の破綻銀行、デクシア(仏蘭西・白耳義)が、取引先2社に対して巨額の融資を行ない、その資金がデクシア自体の株式の購入に使われたと報道しています。

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/6c89260a-fb29-11e0-8756-00144feab49a.html#axzz1bHEleE7L

融資額は2社分合わせて2000億円程度。EUをはじめ多くの文明国では禁止されている行為だが、ベルギーではOKかNGか、記事によると微妙です。

禁止行為が行なわれたのは2008年以前の増資の時期だったということで、これはギリシャに端を発する欧州危機どころか、リーマンショック以前であったことにも驚きを隠せません。

しかし驚いてばかりいられません。この事案が、粉飾や架空増資という意図を以って行なわれたことかどうかもさることながら、間接金融の規模の割に直接金融の市場が小さく、金融機関が優越的地位の濫用を起こしやすい経済圏で起こりやすいわけでして、そういう意味では日本の金融制度も他人事ではないのです。

「預け合い」と並ぶ架空増資のやり口である「見せ金」も、もともと(「見せ玉」と同じく!?)、抜け道がいくつも存在していました。最低資本金制度などの改正や、自己株(≒金庫株)取得の解禁など規制緩和も拙速だったという商法学者(会社法学者)の見方もあります。一方で、銀行の優越的知の濫用については規制が強化されているとも見られますが、銀行の融資先への劣後債等の引き受け要請、自行株担保の融資、株式持合など、架空増資と紙一重の行為は、失われた20年でもまだ十分失われたとは言いづらいのが現状です。

リーマンショック直後に批判した銀行による政策保有株式の話、、、預け合いと株式持ち合いもこれまた紙一重です。
http://phxs.blogspot.com/2008/10/blog-post_21.htm

CoRichブログランキング

FX攻略.com12月号が発売開始

http://www.fujisan.co.jp/product/1281682947/
唯一の外国為替証拠金取引の専門誌(月刊誌)FX攻略.comで新連載「『為替力』で資産を守れ!」を始めて約半年経ちました。ブログとは異なり執筆後約1ヶ月ディレイとなりますが、最新号12月号も是非お読みください。

「ことりFX」10月24日サービス開始を記念して(!?)、これから毎日過去記事を御紹介して参ります。


「『為替力』で資産を守れ」



新連載第1回


東日本の太平洋岸に未曾有の被害をもたらした地震と津波から2ヶ月以上経ちました。犠牲者の方々の尊い魂を沈め、被災者の方々の苦難と努力に報いるには、義援金や「いっしょにがんばりましょう!」などのメッセージだけでなく、おそらく明治維新にまで遡るであろう錆びついた国の形や既得権益を打ち砕くこと、敢えてこの国難を好機だと捉える思考と行動が重要だと確信しました。


震災直後、再び大規模システムトラブルを引き起こしたみずほフィナンシャルグループでは、みずほ銀行とみずほコーポレート銀行の統合や、頭取・社長経験者の特別顧問の引退、行政処分などが次々と発表されています。社内外の何処から見ても間違っていることを改めるのに10年以上掛っているという事態は、霞が関や永田町の出来事ならまだ多少は理解できるものの、民間のしかも一応は上場している会社での実態だと思うと、ただ呆れるばかりです。社内外の正論をひたすら粛清し続け、旧体制にしがみつき既得権益の甘い汁を吸い続けようとしてきた権力構造は、巨額融資や政策保有株式という形で、東京電力をはじめとする「原子力村」と固く結びついていました。


巨大銀行や電力各社だけでなく、日立、東芝のような原発メーカー、そして勿論、経産省とその下にぶら下がり点在する保安院等の原子力関連団体には、偏差値エリートが多数巣食っています。彼らの殆どが有事に際して無能力であり、人生の或る時期だけ、頭の器用さを発揮してレールに乗っただけに過ぎず、大企業や官僚組織は彼らのポテンシャルを削ぎ落としただけだったことを大衆の前に曝け出したことも、先述の「国難のなかの好機」であると、私は思うのです。


それでも巨大銀行には遅かれ早かれ公的資金が入るでしょう。これはやむを得ないことかも知れません。一方、証券会社やFX会社についてはどうでしょう。震災だけではない様々な改革や環境変化を経て、例えば我がフェニックス証券と、その桁違いのバランスシートを持つ最大手数社と比べて、倒産確率は比べ物にならないと6年前の社長就任当初は思っておりました。今はどうでしょうか。


個人中心の外国為替市場と規制強化という特徴で、我が国のFX業界は独特の進化を遂げて来ました。正直、金融業界の端くれだとは思いますが(笑)、銀行や大企業と異なり、努力が成果となって現れやすいFXという分野の特色は、より一層、業界側もユーザー側も喜んで共有すべきであると思われます。
CoRichブログランキング

2011年10月18日火曜日

リスクヘッジに悩まされたモルガンスタンレーと零細トレーダーの夢と希望

大手外国銀行の四半期決算の内容が株式相場や為替相場に大きな影響を与える時期に突入しています。

しかし、洋の東西を問わず、大手銀行の決算の中身というのはよくわからないものです。

そのなかで、ウォールストリートジャーナル紙の記事
Hedges Haunt Morgan Stanley
Bets Backfire as Exposure to MBIA Dogs Wall Street Firm.
は、今年に入って株価を44%も下げたモルガンスタンレーの苦悩を鋭い切り口で描いています。
 
リーマンブラザーズが今のギリシャだと譬えれば、保険大手のAIGや信用保証の巨大企業MBIAはイタリア、スペイン級だったわけで、信用不安が蔓延して連鎖倒産によって世界金融がメルトダウンしていた可能性は大いにあったのです。
 
逆に言えば、そのメルトダウンが喰いとめられて現在に至っているように、現象的には、見えます。しかし、米国どころか世界を代表する第一級の金融機関であるモルスタが、夥しい金額の信用リスクについてMBIAへ「ヘッジ依存」してきたために「往復びんた」を浴びている姿からは、リーマンショックがいつのまにか収束していたという漠然とした印象を抱きがちな我々の目を覚まさせる実態が見え隠れします。
 
幸か不幸かリーマンショックが官民挙げての巨悪の相場操縦ではなかったこと、一流の人材を大量に集めて情報機関としても第一級の組織であっても相場を操縦するどころか逆に相場に翻弄されることがあるということ、などなど、多くのヒントを得られる記事です。
 
巨額の利益を上げ続けられるというのは本来不可能であり目に見えない(または敢えて隠された)リスクがあること、利益率は低い中小零細の組織であっても真っ向勝負を続ければ生きていく道があることも意味し、考えようによっては大変勇気を与えてくれる事実にも思えます。
CoRichブログランキング

2011年10月14日金曜日

中国資本主義のメルトダウンが始まった

町工場のオーナー社長が高利貸しからの借金取り立てに敵わず夜逃げ、自殺が急増しているという事態をニューヨークタイムズが渾身レポートしています。

http://www.nytimes.com/2011/10/14/business/global/as-chinas-economy-cools-loan-sharks-come-knocking.html?_r=1&ref=global-home&pagewanted=all

「社員旅行に不参加ならば罰金だ」などという何だか高度成長期の日本の企業文化を彷彿とさせるような脅しで総従業員の休暇を強制したオーナー社長が、自分ひとりその旅行に参加せず、従業員が休み明け工場に戻ってきたら、工場のなかの設備が空っぽになっていてオーナー社長も行方不明になっていた、というエピソードから始まる長文の記事。

低価格による輸出競争力の縁の下の力持ちである筈の町工場を、大手国営の銀行は相手にせず、中小メーカーは高利貸しに日々の資金繰りを頼るしかないというのが中国資本主義の実態であるが故の悲劇が顕現化しはじめているとニューヨークタイムズは言います。

傾斜生産方式に端を発し護送船団方式によって温存された間接金融優位の金融制度が我が国独特の歪んだシステムであり、産業の二重構造と相まって戦後経済の復興と高度成長の原動力となった事実を顧みると、我が国には対岸の悲劇を笑う資格はありません。

機会均等が確保されていない資本主義がメルトダウンしかかっているのが、金融引き締めでバブル退治をせざるを得ない中で最大の輸出相手EUのスローダウンに直面した中国の姿であろうと思います。

ところで、機会均等が確保されていない点では日本も中国と五十歩百歩であり、その処方箋がセーフティネットの拡充であると誤解し続けているのが日本であるというのが私の意見です。
CoRichブログランキング

2011年10月13日木曜日

ジョージ・ソロス氏のユーロ防衛発言は続くが・・・

ここ数カ月続いたユーロ危機が小康状態になった一週間ですが、この間フィナンシャルタイムズに幾度もユーロ防衛(応援)発言を繰り返してきたジョージ・ソロス氏。(ロンドン時間の)今朝も

「まだまだ(現在のEFSF合意だけでは)不安である。・・・

・・・地雷原を潜り抜けてユーロが守られるために各国首脳が取るべき手段はこの狭い道しかない」

という論稿をあげています。

不世出のヘッジファンドのマネージャーによる執拗なまでの「ユーロ圏はかくあるべき」発言は、自らのユーロ買い越し(かつまたは南欧系諸国の国債のキャリー)ゆえのポジショントークとも考えられ、だとするとこの1週間の戻りでもまだ満足できない水準だということでしょうか。

1997年のアジア通貨危機や、更に遡って1992年のポンド危機の時の振るまい、その背景に「通貨が売られるには合理的な理由がある」という正論染みた哲学と比べると、この間の氏のFTへの論稿には違和感を覚えました。

尤も、氏のポジショントークは、好意的に捉えれば、アジアやイギリスでやったことをユーロ圏(≒EU)で繰り返して三匹目のドジョウを狙うのは、世界平和の観点から洒落にならないという人道的な配慮とも見られなくもありません。が、いずれにしてもその中身は、その執筆意図に反して、何故この先もヨーロッパは危機と背中合わせなのかを明確に示しています。

氏が描いている処方箋を裏読みすれば、欧州の銀行は乾布摩擦をする予定だったのが、国立病院のなかで肺炎が蔓延してしまっているという状況のようです。
CoRichブログランキング

2011年10月11日火曜日

ノーベル経済学賞にサージェント氏とシムズ氏

ウォールストリートジャーナルは、受賞者であるふたりの米国人の功績を、いわゆる合理的期待形成理論を打ち出したことだけにとどまらず、統計学の応用によって、マクロ経済学は、「サージェント=シムズ以前」と「以降」に分類されるほどだとの称賛を引用しています。

一方、フィナンシャルタイムズは、インフレターゲットや量的緩和(QE2などの時間軸効果)のコミットなど、中央銀行の政策目標がガラス張りであることの良し悪しについての分析において、このふたりの受賞者の研究成果が大いに役立つことを指摘しています。

財政・金融による恣意的な景気刺激策は、長期的には勿論、短期的にも意味が無いと説く、合理的期待理論は、レーガン政権下の経済運営に大きな影響を与えていた筈ですが、実際には、社会保障費などの削減以上に国防関係費が嵩むという経過を辿り、当時の米国経済は、オールド・ケインジアン的な枠組みで景気を回復させてしまいました。

80年代後半の我が国のバブル経済が崩壊してから、財政政策は平時経済では有り得ない程度の赤字を続け、昨今財政破綻の問題が起きている欧米諸国のどこよりも悪い水準に至るまでになっています。この20年間、合理的期待理論が日本経済の失速をどのように解説できるか?本質を穿つ難問ゆえ、別の機会に譲らせていただきたいと思います。

より現実的でわかりやすい実例は、リーマンショックからの米国経済の立ち直り、世界経済の立ち直りに、惜しみない財政・金融政策は、大いに貢献していたのではないかという観察です。幸いなるかな、労働市場も、金融市場の参加者も、サージェント氏が想定していたほど、合理的に行動はしていなかったということです。

しかし、それが長期的に、恒久的に有効ではない、、、、という至極当たり前のことが、欧米両側で発生している債務危機(ソブリン危機)です。

民間銀行の問題を国家権力(の協力)によって一時しのぎは出来た。が、問題の所在が国家権力のレベルに格上げされると難易度は比較になりません。

欧州通貨の相場については、一時しのぎで対円または対ドルで戻っているときは、売りから入るチャンスだと考えられます。収束にはかなりの時間を要し、相場の変動幅が大きい状況が意外と長く続くと予想します。
CoRichブログランキング

2011年10月3日月曜日

ベートーヴェンとヘーゲルが同い年だったという浅田彰氏の指摘

止揚(アウフヘーベン)としてのユーロ圏

前回このブログにアップした「月刊FX攻略」の記事「為替力で資産を守れ」の“チラ見”(”立ち読み”)ですが、既に来月号の原稿を編集長にお送りしております。

やはり、ユーロ問題を、さらに掘り下げようと思って書きすすめた直近号の続編です。このなかで、「ユーロ圏」という統一通貨構想が、過去延々と民族間の対立・戦乱のなかで繰り返されてきた分裂と統一の長所短所の止揚(アウフヘーベン)としてぶち上げられたものではなかったかと、指摘いたしました。

止揚(アウフヘーベン)というのは、ヘーゲル(1770~1831)哲学(など)の弁証法(ディアレクティーク)で、相対立するふたつの命題(テーゼとアンチテーゼ)から、その矛盾を乗り越えて一段階上の命題(シンテーゼ)が作られる過程を意味します。

対立を乗り越えた和解のようなイメージです。

ソナタ形式と弁証法

10/1(土)11:00から、NHK教育テレビで再開した坂本龍一「音楽の学校(スコラ)」は、前回シリーズでバッハが取り上げられていたのを踏まえて、ハイドン(1732~1809)、モーツァルト(1756~1791)、ベートーヴェン(1770~1827)を中心とする(ウィーン)古典派の作曲家がテーマになっています。

この新シリーズ(シリーズ2)の初回は「古典派の歴史的位置づけと音楽的特徴」と題して、「ソナタ形式」とは何かについて、坂本龍一氏とその「仲間たち」である、浅田彰氏、岡田暁生氏、小沼純一氏と、作曲を勉強中の高校生たちとともに、探っていくという試みでした。

教科書的な音楽史には見られない斬新な切り口が各々の発言から読み取れ、30分ではとても足りないテーマながら凝縮した番組内容。その中で、特に注目したのが、浅田彰氏の指摘

「ベートーヴェンとヘーゲルが同じ年に生まれている。」

「ソナタ形式の大家と弁証法の大家の生涯が重なっていることは偶然とは思えない。」

「弁証法というと難しいが、ドイツ語の意味としては『対話』ということ。ソナタ形式も(第一主題と第二主題の)対話ではないか。」

というところでした。

浅田彰氏の名言の数々

実は、前回シリーズ(バッハ)で、岡田暁生氏が「ソナタ形式という音楽用語は、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン(たち)よりも後の時代の評論家が名付けたものである」と指摘していたのが印象的でして、ウィーン古典派の大家の3人が、形式を洗練しようとか守ろうとかいう意識と、第一にパトロン(スポンサー)や一般聴衆の信認を得たいという意識と、どのように混在していたのかハッキリしないのです。

以前ブログで譬えに使った俳句の五七五と似ていると思います。

つまり、才能を発揮したい、才能を認めて貰いたい、その結果として名声と生活を確立したいという動機がない筈はない天才作曲家たちが、過去の巨人の形式を(、、、敢えて、または知らず知らずのうちに、、、)踏まえたうえで、独創性を訴えたいというのは、矛盾した、二律背反した、苦しい作業のようにも見えます。

この矛盾をあっさり読み解きたいと思い、浅田彰氏の切り口を振り返ってみることとしました。

浅田彰氏は知の巨人であり名言の天才です。まず、ウィキペディアによれば、

「財務省のエリートは、数学か経済学の博士号くらいは持っていて、5時にはサッと仕事を切り上げて小説を執筆するなりオペラを鑑賞するというスタイルを持つレベルであってほしい」

と述べているそうです。ほんとうにおっしゃるとおりであり、勿論、能力が低いから残業しているわけではないとわたしは推測していますが、政治主導だけでなく、人事院主導でも、この国の行政はずいぶん良くなる余地があると思います。

勉強しろ!!!ということで言えば、昭和59年(西暦1984年)の春、大学の入学式の直後の学部の茶話会で、氏は新入生に向かって、

「女遊びなどは半年一年ガンガンやれば飽きる。早く飽きてしまって勉強してください。」

という発言がありました。ご本人は覚えていらっしゃるかどうか判りませんし、また、ご本人がそのような時期に飽きるほど集中的にお遊びになったのかどうかも判りません。

勉強好き(だが商売が苦手)なわたしにとっては、これまた我が意を得たりという名言ですが、今日の日本の状況では、飽きるほど集中的に遊べる男性諸氏は殆ど皆無に近いと推察されます。

ところが、需要があるところには供給があるものです。個室ビデオ鑑賞なるものが町のどこにでもある。こんな国は、わたしが知る限り、日本だけではないかと思いますが、何かと閉鎖的と言われるこの国も、外食産業など一部のサービス分野には自由主義経済の良い面が発揮されているのです。

第一主題と第二主題は陰と陽の関係だったりする(坂本龍一)

何が言いたいのかと言うと、、、、殆どの男性は、場所は兎も角、「鑑賞としての遊び」を経験しているわけであり、恐らく複数のソフトというかコンテンツの経験があると想定されますが、毎月夥しい数量の新作ソフトが供給されて、もう何十年にもなる歴史の中で、よくよく考えてみると、中身の細かいところは兎も角、骨格としての進行パターンは殆ど変わらないことに気づかされます。

それと、ソナタ形式と、どう符合するのか!?

当ブログはアダルトサイトではないので、またそのような事業主との資本関係もございませんので、此処から先は御想像にお任せすべく、読者のみなさまの宿題とさせていただきます(笑)。

ひとつ大事なことは、その類のソフトの進行パターンは、こうでなくてはならないと、業界団体(≒自主規制機関)で、頭ごなしに決めつけているものでは決してないこと。パターンを踏まえようという意識よりも、夥しい過去のストックや新作のなかで埋もれないように、新しいこと、独創的なことをやりたいという意識のほうが、制作側にはずっと強いと思われること。。。

このような意識のバランスだとか、生存競争という環境だとかは、ソナタ形式と向き合っていたクラシック作曲家たちと意外なほど共通するものであったと想像しています。

2011年9月29日木曜日

月刊FX攻略11月号、もうお買い求めになりましたか?

雑誌ですので1ヶ月程度前に書かせていただいた原稿ですが、今まさに焦点のユーロ問題について書いております。

立ち読み程度に・・・

ヨーロッパではギリシャに端を発した財政危機が桁違いに病巣の大きいイタリアとスペインに蔓延したことで、ユーロが導入以降最悪の危機に直面しました。一方、米国では、すったもんだの末、米国債の発行上限の問題を議会がクリアしたものの、その直後の米国債格下げ(スタンダード&プアーズ)で基軸通貨(?)ドルの存在感を取り戻し損ないました。金融市場が大混乱したなかで、日本は前人未到の円高のお盆を迎えています。

(中略)

ひとつはサブプライムを一例とする詐欺的手法でレバレッジされた不動産バブル、もうひとつはユーロという通貨統合によって期待された不動産バブルに過ぎず、その宴のあとの後始末の厄介さの本質は、日本の90年代、2000年代と変わらず、しかもどうやら欧米のほうが重症なのではないかということです。

(中略)

財政出動やらイカサマの銀行ストレステストなどで約3年誤魔化してきましたが、財政も破綻気味、金融機関も破綻気味となると、もうあとは本質に回帰するしかない、つまり「清貧の思想」を国民に要求する意外にないのです。これが受け入れられるかどうかは人生観、文化の違いが大きいでしょう。日本はいまのところ例外的な国家のひとつのようですが、多くの先進国や新興国では暴動がまだまだ多発する恐れがあるのです。」

是非書店等で手にとってご覧になってください。定期購読に値する月刊誌です。
CoRichブログランキング

2011年9月12日月曜日

普天間問題と福島第一原発事故は根っこが一緒だ

原発推進派にとっても反対派にとっても要チェックな映像を昨日2件見ることができました。

いずれも度々再放送されていて反響の大きさを物語っていそうなものの、政治も、新聞や地上波など大衆低俗メディアも何処吹く風なのが残念無念。

ひとつは、NHK「ETV特集」『アメリカから見た原発事故』。

福島“第一”原発”など”で使われているGE(ゼネラルエレクトリック)社の原子炉モデルが粗悪品であり(核平和利用のための)試作品として日本に押し売りされた経緯があることを、元GEの幹部や、同モデル(マークⅠと呼ばれる)使用停止を会社に訴えて辞表を提出した元技術者へのインタヴューなどで解き明かしていった番組です。

4月に、日系アメリカ人で同様の勇士がいたというニューヨークタイムズの記事を御紹介して大反響だったこともありましたっけ。

原発事故以来、「ディーゼルエンジンの非常用電源が巨大津波の際には動かなくなってしまう」という点についての設計上のミスを指摘する報道は、地上波レベルでも度々ありました。

このETV特集が出色なのは、後発モデルではありえない、「圧力容器と格納容器の狭間を出来るだけ狭くして製造コストを節約していた」こと、その設計では米国の安全基準を満たさなくなったので米国でのGEのマークⅠ事業は全て赤字だったが、日本は「言いなり」だったのでGEは大儲け出来たこと、格納容器の大きさをケチった代わりに「圧力抑制プール」という工夫で安全を補うというのは《水素爆発を抑制するという観点からは》絵に描いた餅である点などの指摘と告発です。

さて、告発と言えば、ディスカバリー・チャンネルの「チェルノブイリ 連鎖爆発防止」もまた、民間出資メディアがよくここまで取材し、またこんな映像がよくぞ撮影され保存されていたと驚きました。

このドキュメンタリー番組のなかで最も注目したいのはIAEA(国際原子力機関)が巷間言われる「核の番人」どころか、原子力村マフィアの元締めに過ぎない実態を暴露した点です。

チェルノブイリ事故の直後に説明なく召集され事態収束のために働かされた炭鉱夫や兵士やウクライナの一般市民などが短い期間に何万人という規模で命を落としたり体力消耗で廃人同然になっている事実を、当時ソ連の原子力担当幹部がIAIA本部の総会で報告したものの闇に葬られ、一ケタ小さい数字に書き換えられ、同幹部が何故か自殺に追い込まれたというエピソード。

ところで、冒頭の「普天間問題と福島第一原発事故とは同根」という思いは、一昨日のNHK総合テレビ「マイケル・サンデル 究極の選択『震災復興 誰が金を払うのか』」という、日米中の最高学府などの学生などが頭の悪さを競うという欲求不満な討論番組がありまして、そこで上海の女子学生のひとりが「わたしは原発には賛成だが、自分の家の近所に建てられるのは嫌だ」という発言にマイケル・サンデル先生が噛みついたところから出てきたものでもあります。
CoRichブログランキング