2009年5月29日金曜日

デルの大幅減益とマイクロソフトの挑戦

昨夜の米国時間は「情報技術」関連のニュースが目白押し。

★AOLがタイムワーナーから分離
日経新聞のサブタイトルは「世紀の合併に幕」。

★デル、63%減益
四半期決算で23%の売上減少。「パソコン市場は未だ底が見えない」と同社CFO。

★マイクロソフト、新しい検索エンジン「ビング」を発表
先週水曜日の観測記事(WSJ紙)の正式発表
http://phxs.blogspot.com/2009/05/830.html
来たる6月3日に、Bing.comをスタートさせる。

「七転び八起き」がテック関連のニュースに拘る理由:外国為替証拠金(FX)取引業者をパチンコに譬えると・・・譬えどころか、そのものじゃないかと言わないで(冷汗&苦笑)・・・、安くて質の良いパチンコ台を如何に上手に仕入れるかが勝敗のポイント。コスト競争での勝ち組たり続けるために中国へのアウトソーシングにアクセルを踏んだデル。同社のパソコンの品質と価格のバランスがどうなってきているか、押さえておく必要はあります。では、マイクロソフトはどうか?検索エンジンでは1位のグーグルと2位のヤフーに大差をつけられての3位に甘んじている同社にとって、楽な戦いだと思えない理由。先行のグーグルは検索エンジンからブラウザに参入してきており、マイクロソフト・オフィスの空洞化を狙っています(リナックスがウィンドウズの空洞化を狙っているように)。このような先手を打たれた状態で、インターネット・エクスプローラーへのプレインストールで何とかなるという考えは甘い。

対面証券会社が圧倒的な顧客基盤という既得権益を持っていながら、その収益基盤を失いたくないから、オンライン証券に参入して手数料競争に参入出来ないのと良く似た理屈です。マイクロソフトは新エンジの広告に100億円程度の費用を注ぎ込むようです。
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2009年5月28日木曜日

崖っぷちのGMと米長期金利の急騰

株高は債券安(長期金利高)を、株安は債券高(長期金利安)を意味するという経験則があります。相関関係は多少落ちますが、為替については、前者は円安と、後者は円高とセットだと。

昨夜は、この経験則に反する、米国株の反落と米国債相場の急落が生じました。前者はDES(債権と株式の交換)を柱とするGMの私的整理案が予想を遥かに上回る債権者から拒絶されたこと、後者はMBS(不動産関連の証券化商品)の大口売りが、それぞれ直接の原因とされています。

GMについては、昨日の日本時間に「UAW(米国自動車総連)がDESに応じる」という“リーク”が伝えられ、既得権益側の根回しというか、既成事実化(GMのゾンビ化)に向けて、着々と手が打たれている空気はありましたが、事実上の破談を迎えたことになります。米国債の暴落についても、

「競争力のない大企業を公的資金で救済するという前例を作ってしまったら、そんなモラルハザード国家の借金など誰が引き受けるか!?」

という市場の恫喝と捉える必要はあります。

我が国も、まったく他人ごとではないスタグフレーションの始まりです。

資源相場の急騰が、新興国バブルと米国発不動産不況の引き金となったように、各国の長期金利の上昇は、モラルを犠牲にした財政出動でも景気回復は出来るという安易な楽観バブルに針を刺すものです。米国債の利回り曲線(イールドカーブ)の指標となる「10年物利回り-2年物利回り」は昨年8月に付けた過去最大幅をぶっちぎっての記録更新だとWSJ紙は伝えています。
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2009年5月26日火曜日

米大統領、韓国防衛の「絶対的コミットメント」保証

日本語ロイター
米大統領、韓国防衛の「絶対的コミットメント」保証

「コミットメントを“保証”する」というのは、婚約を破棄しないと約束するみたいで、頭痛が痛い日本語ですが、それは措き、絶対的ではないコミットメントとは何でしょうか?

「“相対的”コミットメント」なる言葉は熟していないでしょう。ところが、銀行取引の世界では存在したのです。前々職、モルガンスタンレーで社債引受営業の頃、仕事の実態は企業財務の皆さまへの御用聞でしたが、或る日、仲良くしてくださった事業会社の財務の御担当から御相談。曰く、「とある邦銀からコミットメントライン(いざとなったら金を貸すので、日頃より手数料を払え!という契約)の不招請勧誘(要りません、買いません、と抵抗しているのに、しつこく営業すること)を受けているんです。しかもそれが『いざとなっても金を貸さないが、手数料は払って欲しい』という“商品性”らしい。こんな商品はあり得るのか?丹羽さん、契約に応じるべきだと思いますか?」という問い合わせを受けました。

暫く、貸出営業から遠ざかっていた私は、恥ずかしながら直ぐに返事が出来ず「そのような偽装コミットメントラインは金融庁も許さないと思いますが・・・調べて折り返します」と、時間を頂きました。調べれば直ぐ判ることですが、『いざとなっても金は貸さないが、“名前”は貸すんだから、見ヶ〆料(みかじめりょう)は寄こせ』という優越的地位の濫用ビジネスは有り得たのであります。

お客様のためどころか、寧ろ自分が勉強になった「“相対的”コミットメントライン」のお陰で、この事業会社さんからは爾後沢山の主幹事案件を頂きました。

「“相対的”コミットメントライン」の存在を、銀行業界の優越的地位の濫用の問題だと矮小化してはなりません。このような偽装コミットメントラインを有価証券報告書等に開示することは粉飾であり偽計であります。銀行以外のステークホルダーからの調達を低廉安定化するために、銀行は経済的対価を得て、粉飾偽計を教唆または共犯していることになります。証券会社が教唆する仮装払込と一緒の罪。
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2009年5月25日月曜日

北朝鮮、核実験“成功”で、ドル安は一気に修正

核拡散防止条約という大国主義にも反吐が出ますが、北朝鮮の行為を正当化する次元の議論ではありません。

核の問題北朝鮮の問題は、反米右翼、親米右翼、親ロ左翼、親中左翼の各論客に甲論乙駁を期待。

「七転び八起き」の関心事は御期待通り天邪鬼。米銀ストレステスト以降、対円だけでなく新興国通貨に対してさえ下落一方だった米ドルが一気に値を戻す展開。こんな程度の国に、天下の為替市場の相場操縦をエンジョイさせて良いものか。日本の投資家の皆さん、負けては居られません。

尤も、発表前に米ドルを仕込めていただかは甚だ疑問。北朝鮮ウォンの実勢は韓国ウォンの半値以下で、取引は不可能ではないですが、偽札を印刷して米ドルの売りから入るよりは難しい筈。
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FXレバレッジ規制-上限25倍-賛否真っ二つ

FX業界に大混乱を巻き起こしつつある「25倍の上限規制」。

関連記事

FX証拠金倍率 25倍の上限規制 行き過ぎ・健全性 賛否真っ二つ

と、関連コラム

FX規制問題について思うこと

後掲のT&C吉田社長のコラムにはグリーンスパン前FRB議長の発言など面白い内容が含まれますが、何故か「落ち」はありません。慌てて執筆されたか。

レバレッジ問題を取り上げるだけでアクセス数が急増するので、俄か記事が乱造されているのかも。残念ながら、レバレッジ規制がどうなろうと、FX業界の過剰社数は調整が不可欠。但し、FX業界以外の広義の金融分野も事情は同じで、銀行、証券、不動産ほか、我が国の「金融系」ホワイトカラーの頭数は今後数年で激減します。

政府によるバラ撒き政策が奏功し意図的インフレが起きリスク資産の相場回復があったとしても。
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2009年5月22日金曜日

月刊FX攻略と裁判員制度

月刊FX攻略(マルコポーロ社)と裁判員制度って、何か関係があるのか?はい、ございます。月刊FX攻略は昨日書店に並びました。裁判員制度は昨日スタートしました。

およそ1年前の創刊からずっと連載をさせていただいているコラム「いつまでも博打と思うなよ-究極の金融商品“FX”」もお陰様で毎月ネタに困らずやらせていただいております。先日、当ブログで熱きエールを送ったグローバル・インフォの樋山さんから、昨日発売号の「博打と思うなよ」に対して、

ユダヤ系の話題を果敢に、しかしサラッと、攻められるとは、ブログ同様、ハラハラ致します(笑)。
当局よりも米大使館あたりからのアクセスも増えるかもしれませんね。

と、お褒めの(?)言葉を頂きました。是非書店でお求めください。定期購読してくださっている読者の皆さま、いつも有難うございます。

今朝の日本経済新聞の社会面には、「始動-裁判員制度」と「堀江元社長ら賠償76億円-ライブドア株主訴訟」が仲良く(?)並んでいました。裁判員制度の対象となるのは、刑事事件のうち一定の重大犯罪。ホリエモン関連は、昨日一審判決の民事裁判は勿論、現在上告中の刑事裁判も対象外。

人を裁いたり、揉め事を解決したりするために必要な知識は、事実認定(本当はどうだったのか?)と法解釈(処罰根拠などを何処に求めるか?)に二分されます。大学の法学部やら司法試験の予備校やらで教育されるのは99%が法解釈学のほう。一方、裁判員制度の対象となる“重大事件”の議論の焦点は恐らく殆どが事実認定の問題でしょう。裁判員制度導入に際しての深慮遠謀がどうだったかは措き、法曹界の中から「国民の関心の高い裁判の多くは、法曹界のエリート達が頭に詰め込んできた法解釈学よりも、どちらの言い分が正しそうか?という事実認定のほうが遥かにウェイトが高い」というパンドラの箱を開けよう(空けよう)という動きに出たことは注目に値します。

尤も、「七転び八起き」が職務上勉強しつづけなければならない経済法、金融法の分野では、事実認定と法解釈のウェイトが逆転しうることを言い添えなければなりません。ホリエモン事件や、関連する村上ファンド事件では、偽計やインサイダー取引という処罰根拠(構成要件該当性)は法解釈の問題なのです。古くは尾上縫事件。金融法という観点で重要なのは、尾上縫が偽の預金証書を刷ったかどうかという事実認定ではなく、債権者(銀行)は破綻個人への貸出債権と親法人の預金債務を相殺出来ないという判例のほうです。大証事件でも、天下りエリート役人の犯罪という社会面的な切り口より寧ろ、「(上場有価証券[デリバティブ]の)出来高も(価格と同様)相場操縦の対象となる」との判例が確立したことのほうが重要なのです。
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2009年5月21日木曜日

FXレバレッジ規制「25倍まで」案を提示

金融庁。今朝の日本経済新聞の記事はスクープでもなければリークでもない。ちゃんとした取材に基づく事実の報道です。

記事の締めくくり部分「個人投資家らが反発する可能性もあり、実現には曲折が予想される」というのは、どうか?確かに、先日引用した「高レバレッジ+低スプレッドのFX業者とは破綻覚悟で付き合っているんだよ!文句あっか!?」というリスク選好と自己責任を兼ね備えた投資家にとっては造反有理。しかし、≪高レバ+低スプ業者は多くの個人投資家を愚弄し搾取している≫というのが監督当局としての事実認識または断固とした判断であったとしたら、業界やユーザーが反発したところで、実現への曲折はありえないのでは。

実は、一昨日大阪に出張し、財務省近畿財務局に2008年度決算の説明を行って参りました(道中、マスクは欠かさず着装)。1時間半に及ぶ質疑応答で思ったのは、証券監督課の皆さんが手抜きなく丁寧に勉強しておられ正鵠をついた質問をされつつ、「七転び八起き」が考えていること計画していることに対するご理解も速いこと。4年前、前任の社長から引き継いだとき言われたのは「証券会社の経営を最も知り尽くしているのは証券監督課の人たち。民間の(M&A等の)コンサルタントより優れている」という言葉。それを思い起こしました。

全ての官庁、全ての官僚が、例外なくGood Jobをしているとは言いません。が、少なくとも金融監督の分野において、「官から民へ」などと雑駁な理想像で官僚批判をしている人たちのなかに、具体的な代替案なり緻密なスタディが出来ているひとがどれだけ存在するか、甚だ疑問。
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2009年5月20日水曜日

米「恐怖指数」8ヶ月ぶり30割れ

リーマン破綻直後の水準まで下落。株式相場は落ち着いてきている、と言いますが・・・

★オバマ政権、住宅ローンなど個人向け金融商品から消費者を保護するために「規制委員会」創設を検討
先程、ワシントンポストが臨時ニュースとして流したスクープ(またはリーク?)。「ゆるゆる」だった住宅ローンの貸出基準にメスを入れることで、米国発金融危機の最大原因を大規模修繕しようとするオバマ政権初の提案。

「規制委員会」の主導的立場、ハーバード大のエリザベス・ワレン教授は住宅バブルが弾ける前から「5個に1個は爆発して火災を招くようなパン焼き機なんか売れっこない。なのに、同じ確率で家族を路頭に迷わせる住宅ローンが売られている!」と“デモクラシー”誌に寄稿。

ちなみに昨夜は、

★クレジットカード業界への規制法案が米国上院で可決
カード金利を、カード会社の任意で変動させることを2010年2月以降規制。住宅ローン分野以外の金融規制としては初の立法対応だとWSJ紙。

その他の注目ニュースは、

★バンカメ、130億㌦を調達-普通株12.5億株の増資で
米国政府のストレステストにて、339億㌦もの資本増強が必要だと“駄目出し”されて。中国建設銀行の売却代金は73億㌦にとどまっていた。バンカメは「ストレステスト対応は追加の公的資金注入なしで大丈夫」と発表している。それにしても、バンカメの新株、いったい誰が買っているのでしょうか???

★マイクロソフト、新しい検索エンジンを来週発表へ
グーグルに対抗。但し、MS社の広報はノーコメントだとWSJ紙。
「七転び八起き」としては、Googleに対抗するのではなく(正確には、Googleに対抗するのなら検索エンジンではなく・・・)、Linuxをライバル視して、OSやらOfficeやらを何とかしてほしい
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2009年5月19日火曜日

新型インフルエンザ蔓延でマスク品切れ

「七転び八起き」が尊敬してやまない金融庁監督局の三國谷局長から日本証券業協会宛の文書が回覧されて来ました。何かと思えば「新型インフルエンザの患者の発生を踏まえた対応について」というもの。株券電子化以来の大騒ぎです。

昨夜、帰り際に、八重洲北口の薬屋さんでマスクを買おうと思ったら、案の定「売り切れ」の看板が。。。店のオバサンに「やはり、、、ですか。。。」と尋ねたら、「ガーゼタイプのなら少しだけ在庫があるのよ。常連さんにだけは頒けてあげます」。お言葉に甘えて、一袋買わせていただきました。

しょっちゅうこの薬屋さんにてタウリン3000mg@100円を飲ませていただいていて良かった、と思った瞬間。
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2009年5月18日月曜日

グリーンスパンのお株を奪ったミセス・ワタナベ

はい、昨夜のNHKスペシャル「マネー資本主義 第2回“超金余り”はなぜ起きたのか?~カリスマ指導者たちの誤算~」のことであります。

前回の米国投資銀行に代わり、今回はグリーンスパン氏が袋叩きにされるという予告編。ところが、本編では、劇中劇(!?)の藪から出てきたボストンバッグの3000万円を遺失物として届け出た富田靖子さん演ずる“主婦”渡辺みどりさんが、突如主役として踊り出ます。

外国為替証拠金(FX)取引の脱税手段として、「現金を捨てる(失う)⇒拾って届ける⇒拾得物として手に入れる」という技が有効なのかどうか「七転び八起き」は勉強不足で存じません。

番組ではグリーンスパン前FRB議長のほかに、ルービン元財務長官や榊原英資元国際金融局長も登場。95年に1㌦79円をつけた円高ドル安を、強力に修正させたのがこのふたりであると紹介されていました。

ただし、日本版ビッグバンの一翼である外国為替管理法の改正(為銀主義の撤廃等)の主眼が、まさしく外国為替証拠金(FX)取引の解禁であり、(為替介入だけに頼らず)民間の力(≒ミセス・ワタナベ)で米国のドル高政策を応援しようという用意周到な国策であった、とまでの洞察はありません。

何故、今になってレバレッジ規制なのか?国家戦略という観点から見た場合に、オバマ政権がもはや自国通貨高を望んでいないという、明言はしていないものの、十分に推定しうる意向をくみ取る必要はあるでしょう。勿論、直接の原因は悪徳スリッページ業者の排除であることに違いはないのですが。
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2009年5月15日金曜日

『二重権力にならぬよう』 菅氏が小沢氏にクギ【民主党代表選】

東京新聞2009年5月15日朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2009051502000057.html
『二重権力』どころか『院政』か、、、と思い起こすのが、代表質問後の小泉首相の答弁に対し「答になっていない」と再質問を繰り返すも、その度にはぐらかされた岡田代表(当時)の孤独な姿。対照的に小沢氏を囲んで「審議拒否に移りますか?」と擦り寄る民主党の老とる議員。
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2009年5月14日木曜日

「餃子の王将」最高益続く

決算発表がピークを迎え、東証の適時開示情報閲覧サービスや日経新聞は減益決算や赤字決算で埋め尽くされています。ところが、惨憺たる企業業績の中で昨日気を吐いていたのが、

王将フードサービス、最高益継続

学生の頃の生活を思い出すと、昼飯は殆どが大学生協で300円~350円の定食、夜は殆ど「餃子の王将」で餃子(当時140円)+中華飯or炒飯(当時280円or250円)。従って食費は月30,000円を超えることはありません。家賃が月13,000円。銭湯代が月5,000円。よって月間の生活費は都合50,000円程度。これに対して収入が、金・土・日の家庭教師で月100,000円。仕送り不要どころか、毎月50,000円ずつ貯金が出来ていたのです。

「衣食住」の「衣」はどうなってるって?「衣」は減りませんから、投資をする必要はない!違いますか?

毎月50,000円黒字であれば、教科書代を含め自己投資は十分賄えます。残念でしょうがないのが、20年前には為管法が健在で、外国為替証拠金(FX)取引が解禁されていなかったこと(更にはインターネットもありませんから、証券会社の信用取引も随分敷居が高かった)。不要不急の月50,000円はFX投資に“もってこい”です。

餃子の王将の偉いところは、安価なカロリーだけでなく、食べ飽きない味を提供していること。たまには奮発して寿司を食べたいとかステーキを食べたいとか、浮気を起こさせることは全くない。現在、ワイシャツの購入はユニクロ一点張りの私が、たまには百貨店でワイシャツを買ってみたいとかいう誘惑に全くかられないのと同様です。

人間の生活にとって、何が必要で、何が満足か?ゼロから考え直させるのが今年の決算シーズンです。
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2009年5月13日水曜日

中国の輸出が急減、原油60㌦に接近

米国の貿易赤字が8ヶ月振りに悪化したのは3月のお話。中国の輸出が6ヶ月連続で落ち込んでいるのは4月のこと。更には季節調整の問題もあって単純に比較はできないので、米中の貿易不均衡の問題は引き続き慎重に分析して参ることと致します。

ここでは、FT紙に掲載されたモルガンスタンレーアジアの会長、米国経済への徹底した悲観論で知られるスティーヴン・ローチ氏の談話を取り上げます。

「中国政府は、今回の経済危機が1930年代のものとは全く異なる・・・つまり、世界経済は急速に回復し、同時に中国は世界の中でより大きな存在になる、と“計算”しているが、これは誤りだ。」

「グローバル需要が急回復するとの前提で、伝統的なばら撒き政策と古臭い経済成長戦略に寄りかかり過ぎている。」

「米国主導の外需落ち込みが延々と続くと予想されるポスト危機後の世の中に対する準備としては、中国のやり方は全くなっていない」

ローチ氏指摘の古びたばら撒き政策とは、公共事業と、輸出産業への特恵(低利融資や税還付など)。1997年のアジア危機や2000年のITバブル崩壊に際しては、中国はまさにこのやり方で乗り切ったのでした。

米国が再び馬鹿げた大量消費社会に完全復帰することはないというローチ氏の見方に賛成。ただし、中国に何を求めるか、FT紙には代替案が書かれていません。米国からの輸入が増えるようなタイプの内需拡大、つまり中国版“所得倍増計画”でしょうか。中国の財政の膨らませ方まで、米国がとやかく口を出せるというのは残念ながら不可能でしょう。

しかし、“投資銀行”に所属しているエコノミストとしてスティーヴン・ローチ氏ほど気骨のある人は稀。昨夜原油が再び60㌦に接近しました。昨年12月に原油25㌦を吹聴した投資銀行がありました。
http://phxs.blogspot.com/2008/12/blog-post_05.html
時まさにボーナス支給時期。いい加減な予想と同時に喰い逃げか。。。
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2009年5月12日火曜日

手数料下げ競争、FX業者に警告 金融庁(下)

ゴールデンウィーク中に当ブログでも取り上げました

手数料下げ競争、FX業者に警告 金融庁(上)

日経新聞の(再びリーク!?)記事【5/4(月)付「手数料下げ競争、FX業者に警告 金融庁 採算悪化など懸念」について、FX業界の草分け的存在である尾関高さんからも一言ありました。

「手数料下げ競争、FX業者に警告 金融庁 採算悪化など懸念」について

もう何年も前の話になりますが、日本証券業協会の某幹部(当時)から「地場証券を集めてFXの講義をしてもらおうと考えているんだ。講師として誰が良いと思う?」と相談されて、陰ながら(勝手ながら)尾関さんを推薦したことがあります。

「七転び八起き」は上記URLの尾関さんの意見に90%賛成。残り10%は「全額信託保全」の規制の副作用で再びスプレッド競争に拍車がかかる、という部分。区分管理を全額信託にするには、殆どのFX業者では借入または増資が必要となるでしょうが、現在の事業環境で調達に協力する投資家や金融機関は皆無に近い。スプレッド(広義の手数料)ダンピングを改善して利益成長(内部留保)を目指すか、時既に遅しのFX業者なら廃業または身売りということになります。逆に言えば、区分管理規制を強化しさえすれば、本来なら手数料規制やレバレッジ規制は不要なのですが・・・

本来なら・・・と書きましたが、手数料規制やレバレッジ規制を同時並行で具体的に検討せざるを得ないと金融庁が考えている理由と思われる点について、尾関さんも指摘されている≪一部の業者で一日に一回しかカバーしないとか、数時間後とにしかしないといううわさを聞くことがあるが、客が増えて取引量が増えてくるとそれは危険なオペレーションとなる。≫2007年BNPパリバショック直後に金融庁がFX業者に対して行った「一斉点検」では、殆どのFX業者はお客様の注文を≪ほぼ瞬時に≫カバーしていると申告していました。
外国為替証拠金取引業者に対する一斉点検の結果について
ところが翌2008年7月、証券取引等監視委員会が公表した特別検査の結果、市場リスク管理についての申告と実態の重大な乖離が至る処で見つかりました。
外国為替証拠金取引業者に対する検査結果の概要について
金融庁のFX業界に対して抱いている不信、というより裏切られた感情の核心部分は此処でしょう。
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2009年5月11日月曜日

全額信託保全と自動ロスカットの義務化で金融庁説明会

金曜日の午後、如水会館で行われた金融先物取引業協会主催の金融庁幹部による説明会の内容と質疑応答の様子をブログのような場でお伝えすべきかどうか???筆者独特の克明な描写は差し障りがあると考え、ここでは、「今後パブリックコメントを経つつも、金融庁の意向が曲げられることはない」という予想に留めさせて下さい。

あまり、同業者の悪口は言いたくないので・・・・・・

さて、週末の日経新聞で、一番しみじみと読ませてもらったのは、日曜日の「大収縮」特集の右側コラム。スズキ自動車の鈴木会長の「気が付けばコスト削減意識が甘くなっていた」と並んで、「欧米銀行に比べて有利、は幻想」と題して、モルガンスタンレーへの出資の決断が正しかったかどうかは歴史に判断してもらうしかないとの三菱UFJ銀行の頭取の告白。

最近の日経新聞は、経済危機からの底打ち感を演出すべく、なるべく明るいニュースを並べようと努力しています。日経新聞に限らず、経済報道は得てして「順張り」になりがち。かつて80年代のバブル形成過程でも、90年代の同崩壊過程でも、日経新聞の報道姿勢は行き過ぎを助長したと批判を受けました。今回の局面では「逆張り」報道によって贖罪しているかに見えます。

先週末の米国雇用統計も、米国国勢調査の調査員の雇用を前倒しした効果が出ているだけで、失業率は1983年以来の最悪記録を更新しています。危機からの脱出は意外と早いという株価・為替の反応は、意外と長くは続かない可能性があります。正直過ぎる前掲の頭取が、もし立場上許されるのなら、株は空売り、為替は「オセアニア通貨売り・米ドル買い」または「円買い」なのでしょう。
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2009年5月7日木曜日

米銀ストレステストは茶番なのか?

GW中、NHKで(4度目の?)再放送していたドラマ「ハゲタカ」。祝日もFXは動いているため、「七転び八起き」は重役出勤と録画を併用して、視聴。経営不振の大手家電の最大株主に躍り出た米系ハゲタカファンドは、容赦なきリストラと転売可能部門の切り売りを実現させるために、取締役の総入れ替えという「株主提案」を提出。従業員の雇用を最優先させてきたカリスマ会長が末期癌との闘病の末、株主総会の最中に死去。弔い合戦の装いの中、現職取締役全員の再任という「会社側提案」に屈します。

敵対的TOBを決意し総会の場を立ち去ろうとした主人公のファンドマネジャーの前に現れたのは、かつてそのハゲタカにより実家の旅館と父親の命を失ったITベンチャーもどきの社長。その彼が、恨んでいる筈の主人公に投げた言葉は「茶番ですね」。。。

本来、今夜の米国市場終了後に正式発表される筈の米銀ストレステストの結果。昨日の日本時間の昼間より、明らかなリーク報道が始まりました。

NHKドラマ「ハゲタカ」の中でも、様々な悪用例が示された「リーク報道」。その多くは報道側の取材合戦の結果としてのスクープとは似て非なる出来レース。小沢秘書逮捕は検察リークだとか、FX規制強化シリーズは金融庁リークだとか言って憚らない人もいますが、それを言うなら、米銀ストレステストの報道では米ウォールストリートジャーナルが全ての局面で一歩以上抜きん出ており、米国金融当局から「茶番劇だと皮肉らないと約束してくれるなら、早漏OKョ」かのような遣り取りすら推測される程。

大西洋を挟んで、英フィナンシャル・タイムズは、この件では米国の大本営発表に批判的。「創造的破壊こそがシュムペーターが語った資本主義の本質だ」と、甘過ぎるストレステスト結果批判の急先鋒リチャードソン、ルービニ両教授の論稿『破綻銀行は市場の掟に晒されるべきだ』を臨時ニュース扱いで報道。

実際の市場参加者の行動は、「茶番と知りつつ、一緒に踊ろう」という株高。大本営発表が見事に茶番劇を演出し、売り方に致命傷を与えたとすれば、米国はスタグフレーションへの道に大きな一歩を踏み出したのかも知れません。問題は、我が国も同様の方法で金融システムを浮上させることができるかどうか。

ドラマ「ハゲタカ」のファンドマネジャーの言葉「腐った日本を買い叩く」。ドラマ初放映から何年も経ち、この間、リーマンも破綻したほか、このドラマのモデルと思えなくもない村上ファンドやライブドア、スティール・パートナーズやTPC等も事実上現在の日本から居なくなってしまいました。当ブログの読者の皆さんのなかにも、「腐った日本」が悪いのか、「買い叩く」ハゲタカが悪いのか、考えが二転三転された方も少なくないと察します。

「失われた10年」が現時点でも未だに10年どころで済みそうもないのは、「腐った日本」が悪いと決めて掛らず、中途半端な大本営発表で金融システムを守ろうとしたツケ。我が国の場合は、茶番劇でモラルハザードを押し通すには、宿命的な外交力や軍事力の欠陥が立ちはだかっていること。「100年に一度の危機」という表現を信用しないとしても、米銀の不良債権が世界規模の人質を取ってしまっている点もまた我が国のバブル崩壊とは著しく異なる点です。

パイオニアやエルピーダのように事業会社に直接公的資金というモラルハザードを批判する声は大きいでしょう。
「宝田豊 新マネー砲談」番外編
日産自動車やオリックスに対して追加で公的資金が検討される一方、その規模の税金があれば簡単に救えそうな倒産事例は少なくなく、特に昨日今日気になったのが一橋出版という中学高校時代にお世話になった教科書出版の会社など、負債総額はたったの12億円弱です。

前掲の宝田豊氏は、給与水準の高い大企業製造業を贔屓する日本の体質を、士農工商を未だに引き摺る「モノ作り信仰」だと言います。金融ほどは虚業でないにせよ、モノに溢れた時代、モノを作っているから守ってあげなきゃという理屈は通りません。大企業が倒産すると、下請け孫請け含めて雇用に与える影響が大きすぎるという理屈も、それなら大企業一社に相当する規模の数々の中小零細企業の破綻は放置して良いという理屈にはなりません。影響の大きさという言い訳に逃れざるを得ない理由は、我が国の不良債権の問題が、かつてないスピードで大企業製造業、即ち、それを得意先とするマネーセンターバンクに押し寄せてきた事態を、銀行経営側も永田町も霞が関も認識しているものの、正投銀を痰壺扱いすることに対しては決して永田町霞が関は一枚岩ではない点が、今後の波乱要因です。日本株の一方向の上昇はあり得ないでしょう。
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2009年5月6日水曜日

レバレッジ規制でどうなる?FX業界

去る4月24日の日本経済新聞朝刊のリーク記事以来、FX業界はレバレッジ規制の問題で大揺れ。
http://phxs.blogspot.com/2009/04/fx_24.html

業界関係者によるオンラインのシンポジウムも行われています。
http://www.gci-klug.jp/kisei/

上記はオン・デマンドでもご覧になれます。フェニックス証券もお世話になっているグローバル・インフォの樋山さんが大活躍。「若いのに(!?)知的」との好意的なチャットコメントもありました。

チャットでは後半やっと出てきた悪質なスリッページ(当ブログで言うスプレッド偽装)の問題が、シンポジウムでは取り上げられなかったのが残念(但し、オンライン・セミナー経験者としては、チャットを見ながら視聴者の質問や意見に合わせて話題を調整していくのが如何に大変か理解出来ます)。「高レバレッジは低レバレッジとワンセットで問題であり、悪質業者は確かに存在する」とダイヤモンドZaiの浜辺編集長も指摘。

自由競争を確保するためにも悪質業者を徹底排除することが必要。レバレッジ規制という副作用付き劇薬を撒くしかないのか、現行法の広告規制で検査監督をしっかりやれば十分なのか?レバレッジ規制への反対意見は確かに多いですが、金融庁を批判するなら悪質業者を排除するための具体的な代案を!

尤も、「高レバレッジを楽しんでいる以上、業者の破綻は覚悟しているんだ」とのチャットコメントも!自己責任の徹底した日本人離れした人格者ばかりならば、情報の非対称性や弱者保護を目的とした金融商品取引法も消費者保護法も、そして公務員も不要ということになりますが・・・
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2009年5月4日月曜日

手数料下げ競争、FX業者に警告 金融庁(上)

日曜日の日本経済新聞の朝刊、何と3頁目に外国為替証拠金(FX)取引のお話が堂々登場です。

手数料下げ競争、FX業者に警告 金融庁 採算悪化など懸念

「手数料」とありますが(対面取引中心の古色蒼然とした業者を除けば)手数料無料は当たり前(ついでにロスカットルールも)。日経の見出しは「スプレッド競争」を判り易くするために敢えて「手数料」という言葉を用いたのだと思われます。

スプレッド競争についての、「七転び八起き」の予てからの考え方は、コチラ。

“スプレッド偽装″

金融庁が、全額信託保全の義務化とレバレッジ規制に続き、矢継ぎ早にスプレッド規制にまで言及しようとしている理由として、

①「スプレッドはゼロ銭から」だとか「1銭固定」だとか宣伝している業者について、成り行き注文の実際の約定の値段が表示された値段と著しく違う(故意のスリッページが疑われる事例)が頻出しているとのクレームが金融庁に多く寄せられていたらしい・・・

②低スプレッドに見合うリスク管理の実態がないために、巨額損失を招いて、お客さまに返還すべき証拠金に手をつけたという事例が相次いだらしい・・・

などが考えられます。レバレッジ規制について、証券取引等監視委員会から金融庁への建議という異例の文書にも、その背景が読みとれます。

外国為替証拠金取引業者に対する規制のあり方に係る建議について

これまで、低スプレッド業者の殆どは高レバレッジをセット商品にして、「高レバ」「低スプ」競争を煽る比較サイトやアフィリエート等の“寄生虫”と結託することで、FX業界の勝ち組を装って来ました。

「低スプ」「高レバ」業者の反論も載せておかないと不公平でしょう。故意のスリッページを一旦措くとして、「お客様の注文が増えれば増えるほど、注文を一々外国銀行等にカバー(ヘッジ)しなくても、FX業者内で、より瞬時に売り買い相殺(社内マリー)のチャンスが高まる。よって、一時的な過当競争(採算の放棄)は長期的には投資回収が可能だ」という理屈。しかし、それなら遥かに多い注文数や出来高を捌いている大手銀行やECNと呼ばれるプラットフォーム会社(私設取引所と呼んでも良いでしょう)が、「低スプ」業者ほどスプレッドをタイトに出来ないことを説明できません。

お客様と業者が共存共栄できるための商品設計は、言うは易し、行うは難しのファインチューニング。外国為替証拠金取引そのものを外為法改正の徒花だと見下し一切合財否定する規制緩和批判も、それが銀行では未だに往復2円も払わされる外貨預金などの商品設計を擁護するための理屈だとすれば説得力はないでしょう。理想を言えば、スプレッド競争もレバレッジ競争も規制が入りこまないほうが良い。しかし、財務体力(それは基本的に注文から発生する手数料やスプレッド収益の積み重ねの筈・・・)に見合ったリスク管理が出来ているかどうか?故意のスリッページを収益源にしていないかどうか?という“瞬間芸”を検査や監督の現場に委ねるには、もう一段のルール作りが必要というのは残念ながら現実的だと言わざるを得ません。
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2009年5月1日金曜日

クライスラー連邦破産法申請とロシアスパイを追放したNATO

ブログのネタが無い日と同様、ネタが多すぎる日もまた、テーマを絞るのが難儀で更新に手間取るものです。このゴールデンウィークは後者の悩みです。

★クライスラー連邦破産法申請(WSJほか)
昨日来、私的整理合意寸前で時間切れ⇒法的整理へ、と臨時ニュースを伝えたのはウォールストリートジャーナルが一番早かった。大口債権者と労組と米財務省が合意出来ていた債務整理案に反対したのがヘッジファンド等小口の債権者。以下は、あくまで、小説家「七転び八起き」によるフィクションですが、ヘッジファンドであれば、(私的整理案に拒否権を発動できる範囲で)小口の債権を現物にて購入する一方、デリバティブ(CDS)でオーバーヘッジしておけば(現物債権の額面を上回るプロテクションを購入しておけば)、法的整理でも私的整理でも信用事由に該当する点では同じでも、現物受渡後、ヘッジファンドにとっての儲けは法的整理のほうが(DES等を含んだ債務免除よりも元本の毀損が大きくなる分)大きくなるので“ごね得”となる。

私は、米国の証券取引法には詳しくありませんが、我が国同様、インサイダー取引の規制が上場有価証券に留まるとすれば、このようなマネーゲームが潜在的に放置されるのはやむを得ないことになります。

本件に即して言えば、どのような法律制度が施行されていようと、悪賢い連中にとって法律制度アービトラージ(裁定)の余地は残ってしまう。これを地獄の果てまで為政者のせいにしてもしょうがいないのかも知れません。

クライスラーの事例は、オバマ政権にとって筋書きがあったドラマなのかどうかハッキリしない点はあります。米国財務省からの“手切れ金”は少額ではなかったものの、株式市場、為替市場の反応を見るに、見事な軟着陸を演出したとも言えます。

一方、ニューヨークタイムズ紙が只今伝えたニュース。。。
★在NATOのロシア大使二人をスパイ容疑で追放
広瀬隆さんの最新のベストセラーによれば、ロシア社会主義終焉後20年が経過し、米国資本主義も崩壊。

再び冷戦か?
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2009年4月30日木曜日

豚インフルと悪性インフレのストレステスト

Googleでの検索順位が急上昇の「パンデミック」と「フェーズ5」。パンデミックな感染症とインフレーション(通貨の紙屑化)は、伝染が伝染を呼ぶ(期待が期待を呼ぶ)スパイラル現象を起こしつつ蔓延しうるという共通点があります。

ワクチンで意図的に抗体を作ったり、抗生物質(効かないものもある・・・)で対処療法を試みても、ウィルス側が進化することで耐性を確保し、人類側とのイタチゴッコが収まらない。インフレ(デフレ)期待の蔓延を喰い止めようと政策側が関与しても、期待通りの効果が得られない(不発に終わるか、副作用が強すぎるか、何れかの極端に陥る)等、万能の処方箋が無いことに酷似しています。

パンデミック退治も、インフレ(デフレ)退治も、すべて政府の責任だ。。。と論ずるのは簡単。しかし、いずれも人類が互いに接点を持ちながら或る程度自由に経済行為を続けるための宿命または自由社会の対価との覚悟も必要。

「伝染が伝染を呼ぶスパイラル」と書きました。相場に譬えれば、ロスカットがロスカットを呼ぶクラッシュ。「市場は需給が均衡することを前提として機能しているので、均衡しない場合には介入する必要があるのだ」という考え方で、株価のPKOや、為替介入がしばしば正当化されます。しかし、バブル崩壊過程が痛みを伴い過ぎるとして、それを反省材料として、そこまで酷いクラッシュは再現させないように、今後は預金保険というモラルハザード下にある銀行にはレバレッジ規制を掛けるという政策の介入はあり得るでしょう。が、別のモラルハザード(良いとこ取り)を市場参加者に助長させるような相場介入を正当化する理由にはなりません。

バブルに塗れなかった禁欲的な投資家が自らの利害で相場に登場するタイミングは、政策の介入の可能性で疑心暗鬼にさせることで、政策意図とは反してかえって遅くなる。このことこそが、日本の失われた10年の教訓であり、現在、米欧が他山の石とせねばならない点。

ワクチンも抗生物質もなかった中世後期のヨーロッパでは、確かに黒死病で人口が激減しました。感染する人が増えれば増えるほど自らも感染する確率が加速度的に増える状況で生き延びることが如何に困難かという実例です。しかし、黒死病を生き抜いたヨーロッパ人が現実少なからず居た(居る)こと、そして彼らは黒死病に犯されなかった地域の民族と比べて、人類にとって未解決の別の感染症、例えばHIVに対する抵抗力を有している(これは抗体が遺伝しているわけではなく、もともとの遺伝子が両感染症に抵抗力があったという意味。欧州全域の全人口が黒死病の“ストレステスト”を受けたわけではないので、ヨーロッパ人が決してHIVに感染しないということは意味しません)ことも同時に見逃してはならないと思われます。

パンデミックな感染症も、インフレ/デフレも、いずれも人類(の豊かさ)をゼロまたは無限大にまで収縮/発散するようなパニックにはならないという腹を括ることも、一面の真理。敢えて衒学的な言い方をすれば、ウィルスの拡散は、インフレ(デフレ)期待と同様、局所的にはしばしば不安定だが、広域的には安定する微分方程式だということです。

昔から、周りの誰かが風邪をひいていたら必ずうつされるという感染症に弱い筆者にとっては、パンデミックはそうでなくても腹を括らざるを得ない問題。優秀な中高生諸君には、構造不況の金融界など目指さず、絶対に喰い扶持が無くならないウィルス研究の分野を目指して勉強してもらいたいものです(笑)。
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2009年4月28日火曜日

世襲議員を選ぶ側の責任

日曜日朝のフジテレビ「新・報道2001」は最近議論が喧しい世襲議員(立候補制約)問題について、現職国会議員等が賛成反対に分かれて喧々諤々。でも、番組としては「世襲議員は日本の政治が良くならない原因」という論調だったと拝察(快哉!)。

世襲議員問題は、 “為替力”で資産を守れや、月刊FX攻略等の雑誌記事でも昨年来批判的に取り上げて参りました。今月21日を以って休刊となるマネージャパン“為替力”アップ道場でも、

「冷戦時代には、減反政策も反共目的にかなっていたし、中選挙区制度にも地域エゴイズムを支える余裕があった。冷戦終結後の政治改革と政界再編は、不幸にも、自民党と民主党それぞれのなかに、守旧派と構造改革派を包含する経緯を辿ってしまった。小選挙区制度地域エゴイズムさえ満足させていれば良い世襲議員を蔓延らせたことと相俟って、世界的にも稀な無政府状態を作り上げている。

と書かせていただいております・・・この他にも、マネージャパン“最終号”は渾身の記事が満載です。まだ間に合いますので今すぐ「書店へGo!」。

新・報道2001の論調の核心部分は、世襲議員は政治資金団体(だけでなく選挙地盤そのものも、なのだが・・・)の相続税が免除されているので、「優秀なのに世襲ではない議員(予備軍)」が競争上不利に立たされるというものでした。それはその通り。しかし、国政選挙の地方選挙区におけるこのような理不尽は、地方公共団体の首長選挙においては必ずしも成り立たない点に着目せねば。世襲議員が跋扈する日本独特の怪奇現象は、何故に田舎の有権者が世襲議員を推挙したがるのかという観点で分析する必要があるのです。

国政の政策論争の場でなければならない選挙が、他の地域に比べ自分たちが暮らす地域が良い思いを出来るようにするための人選になっている。弁舌爽やかな革新政党を封じ込めるためには一定の機能を果たした利益誘導メカニズム(中央と地方のパイプを保証すること)の制度疲労が遂に臨界点に達したということでしょう。

民主党岡田副代表が発表した世襲制限には快哉を叫びたいですが、本来は三位一体改革を貫徹させたのち、全国区比例代表制を中核に据えた選挙制度改革をすべき(脱線しますが、三位一体改革の言いだしっぺが世襲議員候補の親馬鹿になってしまったのは残念。。。)

世襲議員問題について巷間議論されている論点に戻ると、「世襲議員には御坊っちゃまが多くて叩き上げに比べて優秀ではない」という批判も絶対ではないでしょう。世襲議員批判の発端が、安倍⇒福田⇒麻生各総理だとしても、3人の政治家としての質は批判されるほど悪くないと私は思っています。このような個人レベルの知能や才覚の問題よりも、自民党全体として世襲議員が多すぎることにより、例えば「減反制度は限界に来ている。見直すべきだ」という正論が党内から出て来ても押しつぶされてしまうという組織疲労の問題のほうが深刻であるということです。世襲議員は頭が悪いかどうか?仕事をさぼっていないかどうか?等の次元の話に矮小化すべきではない、とフジテレビの同番組に出演されていた各々方に申し上げたい。
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2009年4月24日金曜日

ついに出た!FXレバレッジ規制

(現段階ではリークに過ぎないかも知れませんが・・・)「FX業者は絶滅するのか!?」シリーズ等でお伝えして参りました①全額信託保全の義務化、②自動ロスカットの義務化、よりも大きな衝撃と考えられるのがレバレッジ(預けた証拠金の何倍分の代金の外貨取引が出来るか・・・)規制です。

2005年~2008年にかけて、FXが驚異的なブームになった背景の一つに過度なレバレッジがあります。金融規制が緩いと言われるシンガポールですら、レバレッジは20倍までに規制されていたり、米国においては20倍以上のレバレッジを提供するFX業者は資本金2000万㌦以上でなければならない(FX以外の店頭デリバティブ-所謂CFDはご法度)という規制が存在します。

現在FX業界は、このような規制が準備されている現段階で既に大きな曲がり角にぶち当たっています。リーマン破綻後の信用収縮によるヘッジコストの上昇とお客様のリスクアペタイトの減少。とりわけ、スワップ(金利差)狙いの取引でレバレッジを掛けることは正真正銘『金の生る木』だと思い込ませていたタイプの業者は大手・中小問わず瀕死の状態のようです。

業者の数は3割程度にまで減るという当ブログの予想はいよいよ現実味を帯びて来ました。これはFX業界だけではないでしょう。証券会社も銀行もノンバンクも全てひっくるめて、日本の経済規模を所与とすれば肥大化し過ぎていたのです。虚業が整理・淘汰されることは決して悪いことではありません!

毎回このような話を書きますと、フェニックス証券が廃業をするつもりなのかと親しいお客さまから問い合わせを受けます。宣伝のためのブログではないので(!?)少々気が引けますが(笑)、2009年度のフェニックス証券の事業計画を申し上げます。

今年度、特に上期中に、フェニックス証券は、“2銭でGo!”現在の『Active Zero』を発展させる形でCFDに参入します。フェニックス証券は大証会員ですが、日経225先物・オプションはCFDで参入するのです。

加えて、最速7月、『大証FX』を開始したいと考えております(現在、申請中&システム会社選定中)。『大証FX』は、今朝のテーマ(レバレッジを30倍程度までに規制)に適っているため、今後我が国のFXのスタンダードになる可能性を秘めています。そして何と言っても分離課税というメリットがあります。

高レバを自慢してこなかった店頭FXもしっかり設備投資します。『Forex Line』は主要通貨1000通貨単位の小口取引が同一プラットフォームで可能となります。また、約定スピードが飛躍的に向上する予定です(現在、3段階予定している投資の1段階が完了しており、これでも随分処理能力が上がっています)。

つまり、、、

1000㌦から始めるお手軽FX!⇒フォレックス・ライン
CFDで225や原油などに挑戦!⇒アクティブ・ゼロ
分離課税が魅力、次のスタンダード!⇒大証FX


廃業と身売りが加速しているFX業界において、何故フェニックス証券は攻めの姿勢で居られるのか?それは、レバレッジ規制等が緩かった時代、金利差を狙うのが当たり前だった時代に、FX業者とアフィリエートが結託して安易に新規開拓するという風潮に乗っからなかった。それゆえ、ストイックな経営が保て、固定化された資産や費用が少なくて済んだからです。その証が、2009/3末のフェニックス証券の自己資本規制比率。871.68%という数値は業界内断トツの最高水準です。
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2009年4月22日水曜日

フレディマック現役CFOの自殺

複数の米紙の報道によれば、自殺であることは明らか(自殺偽装の他殺ではない)らしいですが、動機原因については究明途上とのこと。

CFOに就任したのは、(ファニーメイと並んで)事実上の不正融資や尋常ではない額の不良債権が発覚して連邦政府管理下に置かれた後の9月の話。ただし、外部から招聘されたCFOではなく、同公社の財務経理の生え抜きであった点は、自殺原因と大きく関わるのかも知れません。

理由が何であれ自殺は良くない、とは倫理上の正論。しかし、自殺する人に悪い人は居ない、悪い奴ほど良く眠るというのもまた真理であります。「七転び八起き」同様、アラフォーの早すぎる死に、足元の根拠なき円安株高では読み取れない米国金融の恥部を垣間見た気がします。
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2009年4月21日火曜日

ジャッキー・チェン発言とチェルノブイリ原発事故

ジャッキー・チェンの「中国人は管理されるべき」発言。波紋を呼んでいる割には、断片的な報道が多く、言論の自由について語っているのか、経済活動や金融ビジネスの自由のことを語っているのか良く判りません。もしかしたら両方なのかも知れません。

ブログや著書を長い間御愛読くださっている皆様は御存知の通り、「七転び八起き」は、必ずしも規制強化が弱者を保護しない限り、経済や金融は自由なほうが良いという考えです。「必ずしも」と書きましたが、「少なからず」と本当は言いたいところ。それでもなお、規制は或る程度必要だという考え方にも一理あることは認めます。

一方の言論の自由については、昨夜お邪魔したチェルノブイリ子ども基金主催フォトジャーナリスト広河隆一さんの最新チェルノブイリ報告会で、その大切さを改めて思い知らされました。

史上最悪の原発事故から25年が経過している現在ですら、甲状腺ガンや骨腫瘍等の被害者、放射能に汚染された土壌などの被害が収まらないどころか、むしろ増えている被害者。そのことを認めたくない国家権力(敢えてここではロシア、ベラルーシ、ウクライナを特定しませんが・・・)は被害者増大を訴える良心的な医師を更迭する。そして何よりも驚いたのが、放射能を大量に含んだ雨雲(所謂「黒い雨」)が人口密集するモスクアにまで襲いかかろうとしているとの予測で、せめて現在のベラルーシの人口閑散地域あたりで被害を喰い止めようとして人口雨を降らせたという事実。政治判断の是非は兎も角、そのことを証言できるパイロットは、インタビュアーであるフォトジャーナリスト広河さんに対し「録音テープを回すのはやめてくれ」と制止したとのこと。

北京オリンピック開会式直前の人口雨、はたまた四川大地震で子どもを失った親御さんが西側ジャーナリストに(学校倒壊は人災だと告発するも)「名前は出さないで」と制止したエピソードと相通ずるものがあります。

加えて、日本人として何とも情けないのが、ヒロシマで原爆からの直接の放射能照射は兎も角、「黒い雨」に打たれた被災者の病気は原爆症とは認められない。『病は気から』だ」と判断した広島出身の医師が、IAEAのチェルノブイリ調査団長に選ばれ、大本営発表を展開したという話。但し、IAEAが原子力に太鼓判を押させたい背景は、世界中の原子力産業を背景としており、旧東側特有の言論統制だけの問題ではないでしょう。

ドイツのように、原発政策で二転三転する国もあります。我が国で原発の是非を民主主義プロセスの中で健康に議論できるでしょうか?「生活水準をウンと下げてでも自然エネルギー依存の社会を作るべきだ。GDP信仰を捨てろ。経済成長なんて気にするな」という強烈なメッセージとリーダーシップを持った政治と行政が必要でしょう。これは必ずしも民主主義と無矛盾ではありません。

原発は安全か危険か?このような二項対立の問題として捉えるならば、広瀬隆さんの言うとおり「東京に原発を」という考え方が正しいでしょう。しかしチェルノブイリの酷過ぎた実態と、例えば東京電力の柏崎刈谷原発のようにあれほど苛烈な地震でも最小限の事故(反論はあると思いますが・・・)に留めた安全設計を、「事故は事故だ」と片づけ同列に扱うのは不当。原発を全面肯定するか全面否定するか、という衆愚的な結論を避けるためにも、言論の自由は必要です。但し、これは多数決が真理であることを必ずしも意味しない。民主主義が衆愚政治に陥り、定義上は否定していなかった筈の言論の自由を自発的に葬ることは歴史上しばしばあります。私は言論の自由の価値を民主主義よりも上に置きます。経済と金融の自由は、その中間?

上述の広瀬隆さんの本は、80年代、書店から消えた(消された)と噂されました。日本にも実は言論の自由がないのだという人に私はしばしば出会います。ところで、拙書“為替力”で資産を守れ!も最近書店で見ないと友人に言われます。そう言えば、「こんなことまで書いて良いの?」という内容を此処彼処に書いてしまったので・・・否、こちらは単なる返品かも知れません(笑)。
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なか見!検索

アスキーさんのご協力を得まして、発売後2ヶ月半経ちました『“為替力”で資産を守れ』「なか見!検索」アマゾン・ドット・コム上で可能となりました。

『為替力』の産みの親であるアスキー・メディアワークスの野口編集長殿、多大なる御手間に心より感謝致します。

「なか見!検索」の開始を祝うかのように、アマゾンの順位も急上昇しているようです。著作権保護コンテンツ「なか見!検索」がどのようなものか、是非ご覧いただきたいと思います。

無料で公開しているのは、目次に続く数ページで「リーマン破綻直後の有名エコノミストの意見」や「金融安定化法案(7000億㌦⇒その後“TARP"という略語が定着)の下院否決」に関する記述。実は『為替力』のなかでは、最もとっつきにくく、最も風化されやすい部分で、この先に面白い箇所が出て来始めるのですが、そこはやむを得ません。

本日、休刊前の最終号として発売のMoney Japanでも大々的に広告宣伝をしていただいております。是非これを機に書店でお手にとっていただくか、アマゾン等オンライン書店でお求めください。
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2009年4月20日月曜日

アメリカ投資銀行の興亡

昨夜は、多くの読者の皆さまの予想通り、NHKスペシャル

マネー資本主義 第1回
“暴走”はなぜ止められなかったのか
~アメリカ投資銀行の興亡~

を視聴。その感想は、当ブログの過去記事の至る処に散らばっていますが、特に番組の感想というと、

☆一生懸けても使い尽せないほどの年収を貪り、寄付するでもなく、立派な豪邸を建てたところで、わざわざ訪ねて来てくれるのは泥棒か“打ちこわし”デモくらい。蓄財することが家族や子供の幸せに繋がるとも思えない、というのが常識人の感覚。

☆逆に言えば、非常識な人間に“暴走”させ、GDPの牽引役を果たさせたところが、米国の凄いところだったのか。日本のメガバンクは、アメリカ投資銀行の真似を出来なかったが、真似をし損なったにもかかわらず、“怪我の功名”にすら預かれていない。

☆ポールソン前財務長官(ゴールドマンの元CEOでもある)がリーマンを破綻と決めたのは感情的に当然。GSに対して身の程知らずの競争を挑んだファルド氏が「優れたCEO」ランキングでポールソン氏を抜きん出たという経緯。

☆リーマン破綻を選べば、出身“母体”のゴールドマンも致命的な返り血を浴びる(公的資金と銀行持株会社化で過度なレバレッジを利用できなくなる・・・等)というシミュレーションと、リーマン破綻という劇薬を提示することで以降は(公的資金利用による無難な金融機関救済策に対して)モラルハザード批判をかわせるというもう一つのシミュレーション。そのような深慮遠謀で米国金融当局の中枢が動いているというのは買い被りかもしれません。

それにしても、レバレッジ競争をやれば良いというものではないというのは現在の我が国FX業界にも当て嵌まるというのは、無理矢理のこじつけか。
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2009年4月17日金曜日

ウクライナ大使館を初訪問

昨日は、ウクライナ大使館の通商貿易代表部ヴァデム・シジャチェンコ通商貿易代表長とお会いすることが出来ました。日比谷線六本木駅から歩くこと10分少々、ウクライナ大使館は西麻布の閑静な住宅街の中にありました。瀟洒な邸宅ですが、広い応接も電気は消えていて、エコというよりは節約していらっしゃるご様子が伺えます(失礼ながら、当方客人であるとは言え、全く皮肉ではありません)。

つい数週間前に来日されたティモシェンコ首相は、麻生首相、与謝野大臣、財界人と殺人的なスケジュールでの面談をこなされたとのこと。その最大の目的は代替エネルギー、特に太陽光など自然エネルギー技術の供与。太陽光パネルの主要メーカーはこぞって興味を示してくれたが、最後はやはり投資やお金の話になると前に進まないと、通商貿易代表長は嘆いておられました。

日本におカネがないわけではない。寧ろ、世界的に見れば、日本には投資余力は集中しているほうだが、それが一部の個人層に偏在していることと、金融機関、事業法人を問わず、サラリーマン組織は信用収縮トレンドを断ち切ってでも投資に前向きになることができないことが問題だと指摘。眠っている個人資産を目覚めさせ、ウクライナの強み(農業・アウトソーシング)を掘り起こすことは、「株屋」改め「直接金融」の役割だと、大見得を切りました。

天下太平の世であれば、このような大それた仕事は、公的にはIMF、私的には大手金融機関の仕事だと思います。わけあってそのようなタイプの法人組織が機能しないのであれば、フェニックス証券がしゃしゃり出ようというわけです。

世界金融危機で加速した新興国からの資本引き揚げで最も被害を被ったのがウクライナ。ロシアとの関係で天然ガスが工業経済の隘路になっている点も泣きっ面に蜂。それでも、ヨーロッパ一恵まれた黒土(チェルノーゼム)と教育水準の高さ故の情報技術分野のアウトソーシング(実にフェニックス証券のFXのシステムも間接的にお世話になっているのです)等々、足腰のしっかりした産業は比較的悪影響が少なかったとのこと。太陽光発電だけで輸入依存のエネルギーの隘路を打開出来るとは言いません。が、耕地(可能)面積が絶望的に狭い我が国とWIN-WINになりうる分野という予感に頼り、“海外投資のパイオニア”フェニックス証券のFX業務の付随業務として、取り組んで行きたいと決断した一日でした。
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2009年4月16日木曜日

ロシア化する米国

一昨日FT紙に掲載されたマーチン・ウォルフ氏の

「大きくて複雑な金融機関は潰せない、という考え方は間違っている。肥大化しすぎた金融機関(金融セクター)を構造的に解決するためには無担保債権者の犠牲もやむを得ない」

という正論だが政治的には恐らく適用不能と思われる論稿を詳しく取り上げようと思っていた今朝のブログですが、予定を変えます。というのは、「七転び八起き」の「お勧めブログ」に入れている田村耕太郎参議院議員のブログに経済学者の青木昌彦スタンフォード大学教授が登場、私がこれまでブログや雑誌記事、テレビ等で申し上げてきた日米中の話と、これほど一致するご意見に遭遇するのは初めてなので、余りにうれしく、まずこちらを先行させてください。

詳しくはこちら

田村議員要約による骨子を御紹介させていただくと、

★アメリカ経済はスタグフレーションに陥る可能性大
★そして、やがて世界はかなりのインフレに
★最も早くよくなる経済は中国
★米中経済はさらに親密度を増す
★日本は米国との次世代技術革新競争と中国との補完関係を活かせば活路有!

私が田村議員のブログをお気に入りに入れているのは、私が彼を応援しているからではありません。それに、ブログを読む限りは(←ここ重要)、彼の意見に賛成の部分は半分程度に留まるかも知れません。政治家が国民に対して発するメッセージは、当然、選挙を意識したものであり、そのメッセージに一々私が一々同感できる筈がないし、田村議員もそれを期待していないでしょう。その中で、今回の青木教授の“断言”は目から鱗でした。

著者が著名な学者やタレント等であるという理由だけで大型書店に平積みされる殆どの経済本やビジネス本。その殆どは紙屑に等しい。片や、何故に青木教授の意見が断トツに優れた洞察を与えてくれるのか。恐らくそれは、マルクス主義と新古典派経済学という両極を極めた稀有な研究家かつ努力家でいらっしゃるからだと拝察します。
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2009年4月15日水曜日

最新チェルノブイリ報告会in東京

先週ブログで御紹介したチェルノブイリこども基金から「写真家 広河隆一さんによる、最新チェルノブイリ報告会 in東京」のお知らせです。

チケット:前売り1,000円 当日売り1,300円
2009年4月20日(月)19時開演
  「広河隆一 最新チェルノブイリ報告会」
   文京シビックホール 小ホール(※)

   ゲスト:詩人 石川逸子、 ピアニスト 須山真怜
◇同時開催 チェルノブイリ最新 写真展(小ホールロビー)
〔主催〕チェルノブイリ子ども基金 Tel&Fax 03-5228-2680
〔後援〕ウクライナ大使館 ベラルーシ共和国大使館 ロシア連邦大使館

中央アジアと東欧に造詣の深いフェニックス証券外国為替部長と私も、チェルノブイリ報告会に行く予定にしています。上記プログラム以外に、ここだけの話、ウクライナ大使さんのお話も聞けるらしく、楽しみにしているところです。

拙著“為替力”で資産を守れ!をお買い求めになった読者の皆さんで、チェルノブイリ報告会にお越しいただける方がいらっしゃいましたら、喜んでサインをさせていただきますので、是非本をご持参ください。

前売チケットその他詳細についてのお問い合わせは、チェルノブイリこども基金まで。

(※)文京シビックホール 小ホールは、文京区役所(文京シビックセンター)2階。丸ノ内線、南北線後楽園または三田線春日から徒歩ゼロ分です。
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ゴールドマンサックス決算発表から一夜明けて

私の読解力不足から、何故1日早かったのか?時価会計免除の効果がどの程度だったのか?理解できず、ブログの更新を一日滞らせたゴールドマンサックスの市場予想を上回る黒字決算。

大手“投資銀行”のアナリストは決算を評価する一方、中小またはオンラインブローカーからら含み損不明の黒字決算で時価発行増資に踏み切った暴挙を皮肉るアナリストも。

そこまでして増資を決行したいGSの意図は、公的資金の返済。つまり、昨年までと同様、巨額のボーナスを貰いたいということだと米国各紙は報じています。30人に一人は、100万㌦以上のボーナスを享受していたと言われるGSの執念と、公的資金の返済計画を懸念する米金融当局が睨みあっている最中。公的資金注入金融機関のボーナス支給制限問題については、AIGの事例で、「不特定多数とは言えない」幹部社員だけに極端な税率を課す法令が成立したものの合憲か違憲か疑わしくなったことやら、クレジットデリバティブとは無関係の部署で“まともに”稼いでボーナスを約束されていたがゆえに、クレジットデリバティブの部署の残務処理を買って出てあげた(転職の機会を自ら放棄)あげく、ボーナス支給にあずかれなかったとして「退職願」をニューヨークタームズ紙に投稿した事件やら、色々ありました。

昨夜、珍しく早帰りをして観たNHKの番組プロフェッショナル。人気番組「プロジェクトX」の後釜として、時には“作り”に無理があるなと思うケースもありましたが、昨夜登場されていた慈恵医大の血管外科医の先生の、番組慣例の締めの質問「プロフェッショナルとは」に対する

「金銭的な利害や報酬で動くのではなく、患者やその家族の笑顔や感謝で報われることが、また次の仕事や試練に立ち向かい動機になるという意識。つまり究極のアマチュアリズムこそがプロ」

とのお答えが、金融界や芸能界にも当て嵌まると気づき、一日遅れでGSボーナス問題(=公的資金問題=公募増資問題)に触れようと思った次第。ちなみに、番組の血管外科医の先生は、米国の実力社会・競争社会の中で最年少で教授となり、年収1億円というニューヨークの生活を捨て、母校からの三顧の礼で帰国したのだそうです。
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2009年4月13日月曜日

FX会社経営から見た本格底入れ宣言!?

この週末も嬉しい出会いが3件ありました。意図してお会いしたわけではないのに、話を伺うとFX(外国為替証拠金)取引と関係が深いお仕事で活躍されている方々。シンガポールまたはイギリスの大手銀行だったり、オーストラリアのB2B専門ブローカーだったり。わたくしどもフェニックス証券のように個人のお客様中心ではなく、取り扱っている商品も為替よりはクレジット物中心。リーマン破綻後の信用収縮はFXのほうはまだまし、クレジット・デリバティブは壊滅的、ヘッジファンドからの商売も細る一方であると、三者三様に教えてくれました。

景気も相場も本格底入れと言えるのか?ここ数週間「七転び八起き」ブログで繰り返しておりますように、金融機関もメディアもこぞって底入れムードを醸しだしている動きに或る程度素直に乗っかることは重要。しかし、土日にお会いした「プロ同士で鎬を削っているプロ中のプロ」の方々は、日々の生業(なりわい)がチキンレースに他ならない(世界の大手の金融機関のあちこちに巨大な不発弾があることを前提とした“黒ひげ危機一髪”だ)と異口同音に語っていました。

FX会社からの広告宣伝や情報提供、アフィリエートブログでも滅多に語られないプライム・ブローカーの話題を当ブログではタブー視せずに取り上げて参りました。リーマン危機までは我こそPBにという状況だったのが、同危機後は「PBは出来ません」とのドタキャン、「どこかでPBをしてもらわないとスポーク銀行(PBにギブアップする銀行)にはなれません」等々、潮が引くように態度を豹変させた外国銀行にFX業界は翻弄されました。その背景にあった、信用収縮(銀行同士が信用できない状況)とヘッジファンド危機が解消されたかというと、そのような予兆も感じるものの、本格回復はまだまだというのがFX会社社長の観察結果です。

しかしながら、世の中の注目はやはり米国大手企業の決算でしょう。黒ひげに気をつけつつ、これから数週間決算に注目しましょう。
<13―17日>
14日インテル、ゴールドマン・サックス、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)
16日JPモルガン・チェース、ノキア、グーグル
17日シティグループ、ゼネラル・エレクトリック(GE)
<20―24日>
20日バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)、IBM、テキサス・インスツルメンツ(TI)
21日メルク、コカ・コーラ、ユナイテッド・テクノロジーズ、デュポン、キャタピラー、アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、ヤフー、サンディスク、ブロードコム、アルテラ
22日アップル、マクドナルド、AT&T、イーベイ、ウェルズ・ファーゴ、ボーイング、クアルコム、ザイリンクス
23日マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、UPS
24日スリーエム(3M)
<27日―5月1日>
27日ベライゾン・コミュニケーションズ
28日ファイザー、サン・マイクロシステムズ
29日スターバックス
30日エクソンモービル、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)
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2009年4月10日金曜日

ウェルズ・ファーゴ好決算-株高円安はまだ続く?

昨夜の米国株式連騰を演出したウェルズ・ファーゴの決算。全米4位の同商業銀行は、当ブログでは全く信頼をしていない米系格付機関から唯一AAAを取得している「世界で最も安全な米銀」だそうです。

ウェルズ・ファーゴは、昨年10月3日にワコビアを事実上救済。この頃、先に手を挙げていたシティグループから「横取りだ」と訴えられるという事件がありました。後から思えば買収する余裕などなかったシティグループにとって横取りされて結果オーライ。銀行M&Aの横取り事件は、ソシエテジェネラル⇔BNP⇒パリバ、住友信託⇔三菱東京(MTFG・・・懐かしい)⇒UFJ(信託)、など枚挙に暇がないDEJA-VU(既視体験)です。

リーマン破綻直後は、米銀の合従連衡がどのような形で進むかまだ見えておらず、様々な憶測が流れていました。極端な言い方をすれば、不動産(関連融資)のように恐慌下で全く値がつかない状態であれば合従連衡の参加者は全員が実質債務超過の筈。買う側に回って勝ち組宣言したいという動機が働く、ポーカーゲームです。時価会計凍結下での銀行決算は、いわば金融当局がポーカーフェイスを勧奨しているようなものでもあります。

ところで、昨日、日本の大学生は大手銀行のモラルハザードを喝破しているのか?と書きました。銀行のモラルハザード≒半永久的ゾンビ化を見抜いているのは若者に限らないことを表しているのが、2月に相次いで発行されたメガバンク各行の個人向劣後債が馬鹿売れした事実。2月と言えば、当ブログで最近頻繁に話題にしている3月10日以降の株高円安トレンドが始まる直前で、多くの有識者が3月末の日経平均は6000円台だとか5000円台だとか悲観論をぶちまけていた頃。株価が二桁になろうと、個人向金融商品は元本保証してくれるだろうという楽観は過去の金融危機と公的資金注入の繰り返しがストレステストになっている証左でしょう。

ただし、気になるニュースもあります。CNBC-REUTERが、GMは債権者(含む社債保有者)に対して、GM株との交換(すなわちデット・エクイティ・スワップ)の条件提示を始めている(大口債権者を手始めに、か?)と報じています。GMは連邦破産法11条申立てか私的整理かで大詰めを迎えていると見られます。来週本格化する米銀決算よりも、GMの動向が、約一ヶ月続いている株高円安トレンドの曲がり角になるかも知れません。
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2009年4月9日木曜日

真水15兆円、モラルハザードと就職ランキング

モラルハザード政策に文句を言うひとがどんどん減ってきています。

★米国金融安定化法(TARP)を生保にも適用へ

★来週から始まる米国金融機関の決算、時価会計凍結で悪材料化を回避か?

★我が国の追加経済対策、真水は15兆円に

一つ目は、昨日東京時間の昼間に飛び込んできたニュース。二つ目は、4/3(金)のブログG20、ECB1.25%へ利下げ、そしてFASB で御紹介。三つ目。15兆円という規模は、90年代後半、小渕政権~森政権の約3年間でばら撒いた総額に及ぶ程の巨額。「需給ギャップが問題なのではない。売れないものを作ってきた工場設備は無価値だ」と喝破する経済学者が居ないわけではないものの、少数意見。有権者も株式投資家もモラルハザード政策を支持する限り、暫くは世界的なトレンドというかブームに乗る必要はあります。

もうひとつ、このブームに乗っかろうとしているのが日本の若者。

今朝の日経新聞で2009年の大学生就職志望企業ランキング(リクルート調べ)が報道されています。
初の首位に躍り出たJR東海、同じく順位を急伸させた2位のJR東日本は理解できます。驚いたのはメガバンクが殆ど順位を下げていないこと。この現象は、97~98年の金融危機、2000~02年の危機と大きく異なります。

世界では「100年に一度」(?)らしい金融危機が、我が国では20年に3回も4回も起きている事実は、モラルハザード政策をばら撒いたとしても、金融サービス業が適度な規模に縮まないと同様の危機は何度でも繰り返されることを教えてくれています。いよいよオーバーバンクにメスを入れざるを得ない局面に来ている我が国金融界の先を読めないのか?何度危機を迎えようとメガバンクは公的資金で助けられるので公務員感覚で勤められると見切っているのか?若者読者の皆さん、どちらですか?

筆者としてはどちらでも良いです。このご時世でメガバンクが人気企業だというこの国に将来は無い。長期円安の見方を、筆者は変えておりません。
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2009年4月8日水曜日

円>ドル>ユーロ

まずは市況から。円はドルに対して強く、そのドルもユーロよりは強い。これはリスク選好の後退サインだとWSJ紙。危険水域を知らしめたのはやはり企業業績への不安でした。

REITの話も、今朝の日経新聞に詳しい。それにしても破綻REITのニューシティ。民事再生法で初となる負債全額弁済は快挙だとして、投資口ひと口あたり3万5000円での買い取りとは、開示書類での鑑定価格は何の意味があるのか。

それでもこれはREITのお話。負債の弁済率と言えば、当ブログでしばしば問題視してきたアーバン・コーポレイションの弁済率が幾らに決まったがご存知でしょうか。たった15%です。黒字倒産で、もしかしたら資産超過倒産かも知れない事例だっただけに残念。これが不動産取引の実態です。

さて、話題をガラリと変えます。フェニックス証券が昨年末チャリティ・オペラ・コンサートを行ない、出演者の皆さんと観客の皆さんの御支援のお陰で、義捐金の一部をチェルノブイリ子ども基金に寄付させていただいております。同基金の事務局がある神楽坂に昨日訪問。あちらこちらで満開の桜を他所目に、道に迷いながら、新しいオフィスに辿り着きました(汗;)。ウクライナ名物のホワイトチョコを頂きながら、最近の私の問題意識、ウクライナ、ベラルーシ情勢を御教授いただく。反ロ、親ロで、ウクライナとベラルーシは180度異なり、故に工場労働者や都市労働者が大量失業しても、キエフでは赤旗を振ってデモ行進が起きるのに、ミンスクではデモが起きない(一部例外で敢えて捕まりたい人は大暴れをするらしい)。ただし、ウクライナもベラルーシも、失業は必ずしも飢餓を意味しない点では一緒。つまり、農村というバックボーンがある故、失業しても大抵の人は自力で農業をやるか、やっている血縁地縁を辿って生活できるのだそうです。以前の日本の田舎にはあった相互扶助のコミュニティが存在すること。日本の都市労働者の殆どが抱いている恐怖感「お金がなければ生きていけない、豊かになれない」という感覚とは真逆、お金に無頓着でも生きていける楽観、達観があるのだそうです。

両国とも独自の通貨を持っており、外国資本の引き揚げで、相場は崩落しています。しかし悪性のスタグフレーションに立ち向かう両国民の心の支えになっているのは、政治のリーダーシップではなく、農村というバックボーン。両国の農業従事者一人当たりの耕地面積は13~14ha。日本ではたったの2.2haです。

この話に落ちをつける必要はないのですが、最後にウクライナ、ベラルーシ両国と日本の共通点をひとつ。合計特殊出生率は3国とも1.2近傍と少子化まっしぐらです。
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2009年4月7日火曜日

円安と株高、どこまで続くか?

根拠なきトレンドでも、トレンドに乗ることが相場の定石だと、自戒も込めてお伝えして来た当ブログ。それでも、

★銀行の不良債権の実態

★絶望的に低調な不動産取引

を知る投資家にとって、3月以降のトレンドに乗るのは勇気が要ること。一方、トレンドに乗れている側の意見としては、「知らぬが仏」と言ったものから「根拠は兎も角、円安も株高も、皆がハッピーなんだから、結構なことではないか」というものまで聞かれます

先月10日に日中最安値7,021.28(終値では7,054.98)をつけた日経平均は、その後、殆ど上昇基調で、一ヶ月弱の間で、3割弱も値を戻しています。根拠なき熱狂が永遠に続く道理はないものの、何時熱狂が剥がれ落ちるのかこそ皆が知りたいところ。

常識的には、上場会社の決算発表が本格化する今月中下旬以降。実際には、下方修正の発表、特に欧米銀行の決算予想の発表が年度決算シーズンを牽引する形となり、相場の冷や水はもうそこまで来ていると見るべきかも知れません。

ところで、株高、株安と、株式相場を十把一絡げにすることには限界があります。3月10日以降の相場急回復について来られなかった銘柄の代表格として、NTT、JR、電力が挙げられます。根拠なき反騰の代表例が銀行とノンバンクだとしたら、GWに向けては金融VS公益のロングショートには妙味あり。但し、アップティックルールあり。

続いて不動産。破綻REITのスポンサー決定で、REIT相場は堅調ですが、出来高の少なさはまだまだ解決されていません。公的枠組みでのREIT買い上げも政治主導で検討されている最中。しかし民間の禿げ鷹に出来ることがREITにこそあります。破綻の前後を問わず、複数のREITに対して増資に応ずることで経営を掌握しつつ、LTVを下げてノンリコースローンの貸し渋りを回避し、合併を進める。アセットマネジメントの規模の利益が拡大するわ、出来高が増えるわ、良いことだらけです。破綻前の増資が有利発行の判定等の問題で時間が掛るのであれば、ノンリコースローンを提供している銀行がデットエクイティスワップに応じるという手もあるのですが、これが進まないとするとどういう理由があるのでしょうか。ここから先はブログの範囲を逸脱しますので、今日はこのあたりで。

円安の話まで入れませんでした。
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2009年4月6日月曜日

北朝鮮“ミサイル”報道と台湾統治

ブッシュ前大統領が、イラクとイランと北朝鮮を悪の枢軸と呼んでから7年以上経ちます。緊迫と混迷の連鎖から抜け出せない中東情勢に比べて、極東情勢は極めて対照的です。

ミサイルか衛星か?流石のグーグルアース、もとい、米国の軍事衛星でも識別は不可能。中国とロシアの拒否権発動の可能性は高く、イラク戦争のように国連安保理決議なしで米国が戦闘状態に入るとは考えにくい。その理由は、北朝鮮が核を持っていること。日本にも朝鮮半島にも油田がないこと。これら二つの前提が中東と異なるからでしょう。

日本が(現在の技術と資源相場を前提にすれば)無資源国であることは、地政学上は、不幸中の幸いと言わざるを得ません。

北朝鮮“ミサイル”報道で終始した週末の地上波テレビ。そのなかで、NHKは日曜夜9時、NHKスペシャルで、我が国による台湾の植民地統治を取材していました。第二次大戦敗戦により我が国では廃棄焼却された台湾統治の資料が、台湾総督府には残っていた。その古文書を手掛かりに、日本政府に協力した台湾人、台湾議会設立運動を企てるも挫折した台湾人の御子息を探し当て、インタビューに応じてくれていました。証言が上手な日本語で語られていただけでなく、難しい話をしたり、学術的な文章を書くことは今でも日本語でしか出来ないことを目に涙を浮かべて告白するご老人の姿。第二次世界大戦で日本の臣民として南方戦線に駆り出された人達、夥しい数の同僚の戦死を目の当たりにしつつ生き残った元台湾人“日本兵”の方々が教育勅語を諳んじている姿。

朝鮮半島や中国と比べて、台湾は反日感情が薄いという“常識”を打ち砕く内容。但し、この番組、決して南京大虐殺的な歴史観を押し付けるものではありません。先進国の仲間入りをしたい(しなくてはならない)明治政府にとって初体験の植民地統治のモデルを(当初は同化政策だった)フランス⇒アルジェリア型にするべきか、逆にイギリス⇒インド型にすべきか議論の末、当初は折衷案と取ったこと。ところが日中戦争突入により、漢民族が敵性民族となったため、同化政策に切り替えられた、という展開。

昨日のテレビ朝日の番組で「“ミサイル”発射は国威高揚と体制維持だけが目的」と言い切った田中均元外務審議官。氏の北朝鮮との交渉は、当時、生温いと批判されたものでした。消されることのない歴史、不可抗力により与えられた各国の状況を考慮すれば、生温い対話という物言いは当て嵌まらない。寧ろ、批判を繰り広げては、北朝鮮の面白映像を興味本位に流して視聴率を狙う地上波テレビのビジネスモデルが未だに生き残っている規制環境こそ生温い。
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2009年4月3日金曜日

G20、ECB1.25%へ利下げ、そしてFASB

G20金融サミット閉幕、0.25%に止まった欧州中央銀行(ECB)の利下げ幅、そして今夜は注目の雇用統計と材料目白押しの今週末。昨夜の米国株連騰のMVPは、G20でもなければ、ECBでもなく、FASB(米財務会計基準審議会)です。

早い話が、「金融機関の不良債権や塩漬け有価証券の含み損をちゃんと出さなくても良い」というニュースに株式投資家が好感したということ。

御上が銀行の粉飾決算を黙認するから、時価総額が上がるという現象に、納得の行かない読者の方々も少なくない筈。

しかし、相場はトレンドが一番大事。理屈は頭の片隅に仕舞っておき、祭りには参加したほうが賢明です。

見た目の株価がどうであれ、びくとも動かない大型不動産の売買や、改善の兆しがない雇用情勢、そしてその背景にある世界の各大型金融機関が抱える不発弾の数々。この厳然たる事実がある限り、どこかで大規模調整はあります。株式や外貨を買い遅れたと嘆いていらっしゃる方々。後悔する必要は全くないと思います。

とまれ、我が国の「失われた10年」1990年代の金融敗戦のMVPこそ、押し付けられた時価会計です。押し付けておいたルールが自国に不利となると、あっけらかんと変更する。このような大国主義に文句のひとつも言えず、「これで株価が上がった。英断だ」と褒めちぎり、我が国も真似してみますか?という政策担当者の体たらくを批判する前に、迎撃ミサイルはすべて日本製で賄っていない現状を直視する必要はある。しかし現実は甘くはありません。一昨日来ブログで取り上げているウクライナこそ、屈指の豊かさを誇る穀倉地帯を背景に、気骨を以って大国と向かい合い、よってまた慢性的に経済危機とも向かい合っている実例です。
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2009年4月2日木曜日

シティグループ株に群がる米国個人

★落ちてくるナイフを拾うな!

というウォール街の古い諺を無視しているとウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている現象とは、シティグループ株の人気の過熱振り。昨年10月末から80%下落した同銘柄は、去る3月5日に底(1.02㌦)を打ち、昨夜の引け値は2.68㌦(↑5.9%)。

某ネット証券一社だけの数字ですが、同株式の出来高は、3月が9.3百万株と、2月の3.4百万株から倍以上に人気化しているとのこと。

★値が飛ぶから面白い。

株価下落で「小口化」したことだけでなく、その「投機性」が魅力なのだとWSJ紙。値段が飛ぶから面白いのだと。外国為替証拠金(FX)取引で、かつて英国ポンドが人気だったのと同じ理屈で根拠なき熱狂ということか。

シティグループ株がどれくらい値が飛ぶのかと言いますと、月曜日が11%下落、火曜日が9.5%上昇。で、昨日は上述の通りですから。

ちなみに、(最初で最後の!?)三角合併のお陰で、シティグループ株は東京証券取引所にも上場しており、我が国の普通の証券会社でも取引可能です。しかし、七転び八起きとしては読者の皆さまに銘柄推奨はしません。オバマ政権のモラルハザード政策は国内でも人気を失いつつあるだけでなく、今週末のG20でも叩かれそうです。金融システムの安定とモラルハザード回避と両立は大変難しいうえ、イベントリスクと情報格差に挑戦してこの種の投機に向かうのはリスクリターンのバランスが悪すぎる。

★お勧めは??

それでも何か宝くじ的な適当な投資対象は無いですか?と聞かれたら、同じシティグループでも半値近くまで下落した社債(ユーロ円債やサムライ債)がお勧め。完全国営化で株券が紙くずになっても預金と債権は保護される可能性が高い。

これでも十分なモラルハザードですが、預金債権保護まで否定すると世界は修羅場となります。それから、我が国のREIT

残念ながら、いずれも出来高が少なく、シティの普通株ほど短期売買には向きません。ただし、REITについては倒産したパシフィック・ホールディングス系の二投資法人が例外的に出来高が多くまた極端に割安なため、シティ株と同じ現象が起きています。REIT分野は銘柄が多すぎて、今後規制緩和により合従連衡は必定と考えられています(合併時の負の暖簾代を配当に回さなくても法人税が掛らないように税制改正は既に決定済)。
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2009年4月1日水曜日

過去最悪の日銀短観、国家破綻危機に学ぶ

朝8:50に発表された日銀短観。特に注目されていた大企業製造業の業況判断指数は▲58。予想以上の悪化で1974年以来の短観の歴史で最悪の数値。

為替は直ちに円安に反応するも、一瞬にして買い戻され、その後は短観発表前に比べ寧ろ若干の円高水準。

日経平均は朝からプラス圏。

エイプリルフールねたに落とすつもりはありません。それを言ってしまえば、四回に一度は短観は四月馬鹿になってしまいますから・・・

大企業製造業の閉塞感と、物質には満ち溢れているが雇用不安から逃れたい=年金が出るまでクビになりたくないという怯え。これは大いに関係があるようです。

松下幸之助氏が二股ソケットを開発し、安藤百福氏が即席めんを開発したころ、意欲ある日本人は「こんなものがあったら便利だな・・・」というヒントを探しまくり、夢をひとつひとつ実現していったのだと思います。ドラえもんの人気は衰えないにもかかわらず、もう一歩上の物質文明のステージにあがることが死活問題だという意識は日本人にもなければ、これまでのメイド・イン・ジャパンの御得意様諸外国にもないという事実から目を背けるわけには行きません。

児童ポルノで摘発された問題のアフィリエート広告。先ほど、アフィリエートのASP会社のご担当と話をしたら、最近伸びている分野は化粧品と健康食品を始めとするEコマースだそうです。

「歴史は繰り返す」という諺と対立するのが「人類はその叡智によって果てしなく発展し豊かになれる」という歴史観。しかし、英国産業革命に端を発する工業文明は、繰り返しもなければ、際限なき発展も有り得ないのではないかという、上記ふたつとも異なる歴史観もあるのではないでしょうか。

ところで、国家破綻危機の事例として、七転び八起きブログではアイスランドを徹底的に取り上げて参りました。これは似非金融立国の熟れの果て。金融が(原則として)虚業であることを忘れていい気になる国・企業・役職員にとっては他人事ではありません。問題は工業立国、貿易立国もまた他人ごとではない事例があることです。

それはウクライナ。19世紀まではヨーロッパの穀倉地帯と呼ばれ、20世紀はソ連の穀倉地帯と呼ばれた、大農業国という印象の強かったウクライナは、21世紀に入り急速に工業化します。昨今の失業率、自国通貨下落、経済成長率のマイナスは、世界の最悪水準であり、10年弱の工業化の恩恵を逆回転させるほどの勢い。混乱の陰には、殆ど常に、積年のロシア関係という外交等の要因が控えているとは言え、それ故、我が国には参考にならないとは言えません。ちなみに、我が国の貿易依存度は10%程度と決して高くないことは以前より当ブログで強調して参りました。対するウクライナは、50%近くにのぼっており、穀倉地帯の印象とは大きく異なります。

当ブログでは、ウクライナ問題を定期的に取り上げていくことにします。
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2009年3月31日火曜日

一目均衡表は相場の鬼に棒

昨夜のオンラインセミナーは絶好のタイミングとなりました。テーマは、先月に続き、一目均衡表。より詳しく掘り下げるために、フェニックス証券セミナー初の特別ゲストとしてテクニカルアナリストの手塚宏二さんをお招きしました。時将にGM問題で、オバマ大統領の態度硬化が伝わり、株式と米ドルは急落中。GM問題には昨年から悲観的だった当ブログですが、何故今のタイミングかというのはファンダメンタリストは教えてくれません。ではテクニカルだとわかるのか?答えを是非、昨夜のセミナーをオンデマンドでご覧ください。
http://ondemand.nice2meet.us/?log_key=phoenix-1-905f_50c5ee8eb33bb99b7fa2f8bbb1631d76
ちなみに、ファンダメンタリストとは七転び八起きのこと。過去10回のセミナーのうち殆ど当たったというのでは自慢にならない。謙遜ではありません。セミナーをやった次の日に当たったこともあれば、1ヶ月経ってから大当たりということもある。これでは真剣な投資家の皆さんのお役に立てていないと反省。
http://ondemand.nice2meet.us/?log_key=phoenix-1-905f_50c5ee8eb33bb99b7fa2f8bbb1631d76
次の交差点が青信号か赤信号かは居眠り等していなければ判ります。問題は、交差点到達直前に信号が変わりそうかどうかの判断。歩行者信号機がヒントになるように、当ブログの一目均衡表も、総合得点(▲4~+4)以外にも目配せポイントがあります。
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2009年3月30日月曜日

解雇理由、正社員と契約社員の違い、

★米グーグル、人員削減計画発表もなお新規採用へ(日本語ロイター)

グーグルは26日、200人の人員削減を発表したばかり。また、1月には正社員100人を削減。さらに、2月にはラジオ広告事業からの撤退で40人を削減すると発表。

リストラ対象部門は、広告と営業。検索機能連動型の広告(アドワーズ)や、コンテンツマッチの広告(アドセンス)はWEB2.0の看板的存在でしたが、金融危機の影響を被った点では、紙媒体や地上波テレビと五十歩百歩なのか。無論、この50歩の差は大きいのですが。

さて、週初のテーマはWEB2.0とかネット広告の話ではありません。上記ロイターの記事に「正社員」という言葉が使われております。「正社員」とは何でしょうか?

話題のグーグルの検索窓に「正社員」と入れると、「正社員 契約社員 違い」という組み合わせが450万件と関連キーワードの中で検索件数がトップだと表示されます。世相が如実に読みとれます。そこで複数の上位サイトの解説をまとめてみると、正社員とは?

★雇用契約で雇用期間を定めない契約
★とくに問題がなければ(問題を起こさない限り?)定年まで勤められ、また、辞めたいときにはいつでも辞められる

「とくに問題がなければ(問題を起こさない限り?)定年まで勤められるんだ」と何となく認識しているが根拠は不明で心配だとおっしゃる大企業サラリーマンの方々に最近頻繁にお会いします。そこで今度は、同様に「解雇」でググってみますと、「解雇とは」「解雇理由」が合わせて470万件以上も検索されており再び世相が表れております。

就業規則違反の「普通解雇」や「懲戒解雇」については省略します。問題は「整理解雇」、すなわちリストラ目的の会社都合による解雇が、どの程度罷り通るのか、です。

我が国の大企業正社員は終身雇用制度に守られていると一般に思われている根拠は、恐らく1974年判例

「企業に人員整理の必要が高度に存するにも拘わらず、整理解雇という手段に訴えることを極力制約しようとする論理は、解雇に先立ち、出向・配置転換・任意退職の募集・一時帰休その他解雇回避のための努力を最大限に要求し、この点に不徹底がある以上解雇を許さないとするものである。」(S54.7.31岡山地裁「住友重機玉島製作所事件」)

で確立(!?)された『4条件』

①企業が客観的に高度の経営危機にあり、解雇による人員削減が必要やむを得ないこと(人員削減の必要性)
②解雇を回避するために具体的な措置を講ずる努力が十分になされたこと(解雇回避努力)
③解雇の基準及びその適用(被解雇者の選定)が合理的であること(人選の合理性)
④人員整理の必要性と内容について労働者に対し誠実に説明を行い、かつ十分に協議して納得を得るよう努力を尽くしたこと(労働者に対する説明協議)

ではないかと考えられます。ただし、判例“法”はこれだけではないようです。検索結果を遍く調べた限り、大阪労務管理事務所(所長 三嶋道明先生)の頁が最も充実しているように思えました。

さて、これら4条件が終身雇用の根拠だとすると、「年俸制採用企業や外資系企業は終身雇用ではない」との思い込みも怪しくなります。現に、最近では未曾有の整理解雇の嵐が吹く外資系金融機関においては本国の労務管理担当にとって想定外だった訴訟沙汰が多発しているそうです。

本題に戻すと、大企業サラリーマンは勿論、企業経営者の問題意識は、この判例“法”における「高度の経営危機」の解釈でしょう。破産等は良いとして、債務超過、部門閉鎖、営業所統廃合などでは多少疑義があります。まして、

赤字が巨額かつ構造的で業績回復の客観的な見込みが立たず「継続企業疑義」が注記される程だが、過去の内部留保のお陰で債務超過には至っていないケース

では、「高度の経営危機」だと太鼓判を押してくれる法律事務所は少ないでしょう。

構造不況の業種や企業のリストラがスピーディーに行われないことは、正社員天国=日本の底力を蝕むだけでなく、やる気のある正社員が無用の閉塞感に晒されてしまう。正社員VS契約社員という構造だけではないのです。

法律(強行法規)が弱者を助けているように見えても実態は無意味だという点で、旧法借地法借家法と似ています。借主(=弱者)の保護を目的としていながらも、貸主としては「簡単に追い出せないのなら、簡単には貸さない(=定期借地借家より高い家賃を取る)」気分にさせる程度の法律効果しか見込めなかったという厳然たる事実を、原則旧法踏襲に拘り借地借家法改正を骨抜きにした1992年当時の野党は真摯に反省すべきです。

今朝の日経新聞5頁の山田昌弘中央大学教授「大企業の採用は30歳からに-有能な若者は中小企業へ」という論稿も、同じような問題意識に由来するアイデアだと思われます。
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2009年3月27日金曜日

七転び八起きの欠点

私には重大な性格の欠陥があります。

ひとつは、頼まれた仕事を断れないこと。

さらに、ランキングを気にし過ぎること、です。

初出版の「“為替力”で資産を守れ」が書店に並んでからもう少しで2ヶ月となります。アマゾンの順位は今どうだろうか?八重洲●ックセンターや●善、ジュン●堂、紀●國屋では平積みしてもらっているだろうか?人事を尽くして天命を待っている筈の著者は、発売当初の勢いが無くなりかけたり、内容の無い似非経済学者が書いた本が大型書店の入り口に待ち構えるように平積みされていたりすると、ガッカリしてしまいます。よく考えてみると、嘆いても仕方がないことなのですが・・・

劇戦のビジネス書で高順位を保つのは並大抵のことではないそうですが、50位以下に何度落ちても這い上がって来るのもまた不思議。応援してくださっている読者の皆さまに心から感謝する次第です。

それにしても、「為替力」の産みの親となった「七転び八起き」ブログ。こちらのアクセス数はお陰さまで鰻登りです。驚くべき数値になっていますので、この記事の真下にある『ブログを応援』をクリックしてみて下さい。最初のページは所謂「社長ブログ」ランキングです。そこから、「好きなブログ新規登録する」バナーの真下にある「Myカテゴリー(公式・有名人)」の「全て」をクリックして下さい。我がブログが著名芸能人ブログに伍して頑張っている姿を垣間見ていただけますよ。
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オバマ大統領、ガイトナー財務長官への期待は過剰なのか?

久しぶりに「FX“深化″論」を更新しました。第5回のお題は、

2009年の為替相場はこう動く。米新政権への過剰期待は禁物。

原稿の締め切りが2月中旬でしたので、その後の紆余曲折、特に今月のFOMCや先日の官民投資プログラムについて全く反映されておりません。今回の原稿が新鮮さを多少残している部分を自画自賛すると、ガイトナー財務長官のWSJ紙への論稿にある

×リーマン的処置も駄目

×AIG的処置も駄目

という宣言が、米国新政権自らを苦しめるジレンマになりかねないという視点。このような悲観論を相当程度携えて、今後の相場に臨む必要はあるでしょう。

一方、楽観論の象徴が、今朝のREIT市況。日経朝刊「REIT支援へ官民基金」で爆騰。しかし、一部の銘柄を除くと板が薄く出来高もまだ低調です。黒字かつ資産超過の不動産ファンドなのに資金繰り理由だけで理不尽に低迷しているケースは、今朝の記事(リーク?)が救済要因になるでしょう。
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2009年3月25日水曜日

WBC、敗者復活戦の妙

天邪鬼で鳴らす「七転び八起きブログ」としてはWBCネタは取り上げないつもりでしたが、V2は目出度し。「韓国とは最大で5回も戦うことになるんですよ」、と事前に聞かされたものの、、いまだに仕組みを理解していない筆者は、案の定最悪の5回も戦わされた韓国軍に「お疲れ様」も言いたい気持ちです。

敗者復活の仕組みが随所に活かされたトーナメント形式。一度負けたら御仕舞いの厳格なトーナメントが当然の我が国高校野球に応用されたら?と昨夜想像してしまった筆者は相当な捻くれもの。敗者の涙と甲子園の砂はキラーコンテンツ。そんなことは議論すら起こり得ないでしょう。

しかし、社会には厳格なトーナメント形式の中にもっともっと敗者復活のメカニズムが入れ込まれたらどうでしょう。失われた10年やらリーマンショックなどを通じて、自他ともにエリート組織人と思われてきた方々の中にも、有名な学校、有名な企業や官庁、そして大組織の頂点を目指すことだけが社会的な成功の証だとは既に言えない世の中になってきることを自認出来ている心ある方々が加速度的に増えていると御見受けします。

このような方々は定義上は「正社員」。つまり不況下で非正規労働者に雇用調整を押し付け、立場上は大組織にしがみ付くことが出来る方々です。この日本独特の理不尽は、正社員にとって守るべき既得権益でしょうか?

受験のためだけに勉強をし、大企業ブランドを身につけるためだけに面接技術を磨いた腰抜け正社員にとってはそうでしょう。しかし、「定年とやらまで会社で(会社が?)喰って行けるのか?」と疑問を募らせ、危機に直面しても大企業病を無視する組織の中で閉塞を感じつつも、言いたいこと、やりたいことを主張するよりは我慢することを選んだほうが取り敢えず賢明かと、不承不承、無難な選択を余儀なくされている方々のほうが大多数なのではないでしょうか?

正規雇用に限って会社事情による解雇が困難である我が国独特の制度(判例)では、正規雇用労働者を雇う側も定年までの固定費を心配して転職者の受け入れに慎重になることや、既に正規雇用労働者を雇った場合には当該企業でしか使えない技能の教育に力を入れる等々、様々な「社畜化」メカニズムを働かせている現実があります。これらは、既得権益である裏側として、既に当ブログで問題視してきた「非正規雇用が雇用全体のバッファーを押し付けられていること」と「バブル期と就職氷河期とで馬鹿馬鹿しいほど理不尽な世代間不平等が発生すること」と併せて認識されなければなりません。

終身雇用と年功序列は意外と日本の伝統芸能ではありません。論功行賞で俸禄が決められた封建制度の縦社会においても、主君を何十人と変えて最後は外様大名としては異例ながらも家康の最期に接見するに至った実力主義者藤堂高虎のような例もあります。儒教の浸透で、その後の我が国では藤堂高虎のようなジョブ・ホッパーへの評価は必ずしも高くはありません。しかし、「実力があれば、くだらない上司や閉塞的な組織から飛び出せるんだ」という希望を、潜在能力が眠っているエリート組織人に撒き散らすのだとすると、一見しがみ付くべき既得権益に思われる終身雇用と年功序列は意外にも権利放棄すべきもののように思われ、藤堂高虎のような武将は今日こそ再評価されるべきだと思います。

決して、高校野球に、WBCのようなややこしい敗者復活ルールを入れるべきという論旨ではありませんので、よろしくお願い致します。
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2009年3月24日火曜日

最大1兆㌦、官民投資プログラムを発表

これで果たして株式相場、不動産相場は、大底を打つのか?その分析の前に、ガイトナー財務長官がウォール・ストリート・ジャーナル紙に寄稿した論説の極々一部を御紹介します。

「一国家として、我々アメリカ人は借金をし過ぎたのだ。金融システムをして無責任なリスクを追わしめた。かような意思決定は、どちらかと言えば慎重で責任感のある普通のアメリカ人や中小零細企業のオーナーたちにダメージを与えている。実に不公平であり、わが国民が憤るのは無理もない。」

無責任な大手金融機関が貸し渋らざるを得ないために、借入に慎重だった責任感のある個人零細が最終的かつ極大的な被害に見舞われるのは理不尽だ・・・この理屈、慎ましい生活をして資源や農産物をせっせと輸出している新興国の通貨が、持続不能な大量消費が破綻して信用収縮を起こした震源地米国のドルに対して、暴落したままだという皮肉と通ずるものがあります。

途中、民間資金を導入することで、(不動産系)不良債権の譲渡価格が正当化できる・・・という件(くだり)があり、

「片やリーマン破綻によって招かれた壊滅的な被害を受け入れるという選択肢、片やAIGの如き組織に兆円規模の血税を注ぎ込むことでしか経済を危機の大きさから守れないという選択肢。米国は、この両極端よりも優れた選択肢を選ぶに値する国だ。」

まだまだ抽象的だとの批判を覚悟して結んだガイトナー財務長官の論説は、“演説の国”アメリカを思わせる言葉の力を持っています。実現の可能性、効果の程度には当然疑問が残るものの、これから先は、リーマンもなければAIGもないとの主張は、とても雄弁な「安全宣言」です。

最後に、ブログ読者の最大の関心事:「これで大底を打ったのかどうか?」まず、少なくとも日本の株価は、たとえ米国が本格反転してくれても、ついて行けないと考えられます。言わば「逆デカップリング」の我が国。その理由は過去記事をご参照下さい。

米国について。民間資金の導入が、政府資金が足りないことと、上述の不良債権移転価格の正当化と、二つ意味があります。「正当な条件で不良債権処理を進めること=巨額の債務超過を認めること」・・・市場参加者は既に気づいている実態を白日の下に晒さす事態は、当プログラムで乗り越えられるのか?この各論部分までを議会制民主主義国家の金融当局のトップに突き詰めるのは、トップが誰であっても酷。議会制民主主義国家でバブルが弾けたときに、金融を政局にしてはならない、というのが「失われた10年」の日本の最大の教訓だというのが私の意見。しかしこの教訓を学べるのは独裁国家しかない。

ガイトナー財務長官は、「官民投資プログラム」はスウェーデン(ほど単純ではない現在の米国金融のシステム)の教訓と、日本(ほど不良債権処理に時間を掛けたら経済停滞は深刻)の教訓から作り上げられたアイデアだとも言っています。
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2009年3月23日月曜日

二世、三世、だけじゃない

西松建設疑獄は、検察の意図が外れたかどうかは別として、政治とカネの問題を思い出させてはくれました。つまりそれは、当ブログでしばしば指摘している「失われた10年」の政治改革が何だったのか?政治資金規正法の改正の繰り返しに意味があったのか?ということ。

政治改革が、小選挙区制と企業献金の合法化(注)であったとすれば、政治改革の成果は、ウン億円の価値とも言われる選挙基盤だけには世界的にも稀有な高税率の法人税が掛らないことも相まって、これまた世界でも稀なる世襲型議会制民主主義だということになります。

(注)合法化≒脱法手段の提供

このような永田町で気を吐く稀有な政治家、田村耕太郎氏と今夜、再会。

刺激的な会話の数々は、流石の「七転び八起き」ブログでもご紹介できません(汗;)。わたしのブログと主張が一致するなんて申し上げると、田村先生が自民党に居づらくなるでしょうから。。。

参議院議員田村耕太郎公式ブログを、今夜から貼り付けております。併せてお読みください。
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ガイトナー財務長官、去就を賭けて

米国金融システムの強化策を発表する予定。外国為替市場の注目が集まっています。

AIGの巨額ボーナスに対して、公的資金(≒TARF)を利用した金融機関のボーナスには90%課税をするという法案を可決した米国下院。ガイトナー財務長官は、バーナンキFRB議長共々、「AIGの巨額ボーナス支給を何故事前に阻止出来なかったのか?」という問題で叩かれるべく、米国下院での議会証言も予定されています。

ガイトナー財務長官が叩かれたのは、①脱税疑惑発覚で長官任命に手古摺ったこと、②去る2月の金融システム強化策の発表内容が具体性に欠け株式市場が暴落したこと、に続いております。ちなみに、当ブログで取りあげた「中国=為替操作国」発言は財務長官任命前のことでした。

2月に叩かれた「官民一体ファンド」での住宅ローン証券化商品を含む不良債権の買い上げについて、今夜具体策が出ることが予想されています。民間が1㌦出せば、公的資金(預金保険機構)が4㌦まで出すという案のようですが、AIG巨額ボーナス支給問題が悪影響して「民間の投資家は、公的資金を活用するビジネスに乗りたがらない」(WSJほか)という憶測も出ております。

本日日本時間午後9時45分に予定されているガイトナー財務長官の会見。今回も空振りに終われば、FOMC以降のドル安の流れが加速する可能性、また過去2週間連続して好調だった米国株式が大幅調整する可能性があるだけでなく、財務長官の更迭を経て、オバマ政権がある種の無政府状態に陥るリスクがあります。無政府状態という表現は、当ブログで主として我が国の永田町を描写してきたものですが、

「金融が政局になってしまうと議会制民主主義が機能不全に陥る」

のは日米欧似たり寄ったりです。近々同様の問題が日本もヨーロッパも襲うということで為替相場は引き続き不美人投票が続くものと思われます。

ところで、何故、金融が政局になると議会制民主主義が機能不全に陥るのか?

当ブログでしつこく批判しているモラルハザードの問題が頭をもたげることも大きな理由のひとつ。

「金は天下の回りモノ」の実例を海外メディアから2つご紹介します。

★中東ファンドがダイムラー株を9%取得(FT)
Aabarインベストメント社はアブダビの“半”政府系ファンド。殆どの中東系またはアジア系SWFが、落ちてくるナイフを早く拾いすぎてナンピン出来ない状態かと思いきや、まだニューネームがありました。自動車が売れないから石油も売れない。したがって、産油国による自動車産業の救済の余裕はないと思っていただけに意外な臨時ニュースでした。

★米国の複数の生保が、AIG救済を批判(WSJ)
生保業界の競争を歪めるとして、バーナンキFRB議長にAIG破綻を直訴。

当然です。我らがトヨタ、ホンダのためにも、GMを早く潰しましょう。
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2009年3月19日木曜日

FRB、米国債3000億㌦購入-驚愕のFOMC

市場関係者は予想外の国債買いオペ発表に驚き、為替相場は一転円高ドル安。しかし、当ブログや弊社セミナーを御利用下さっている方々にとっては「遂にこの日が来たか・・・」というご感想だと思います。一番驚いたのは、白川日銀総裁だと思うのは私だけ!?

米FOMC直前となった我が国の金融政策決定会合。こちらは国債買いオペ1.8兆円/月への増額>(年額で現在の16.8兆円から21.6兆円へ)を決めたが、直後の記者会見で白川総裁は「買い取り額は限界に近い」と述べています(今朝の日経朝刊)。

これに対して米連邦準備制度は、

★3000億㌦(約30兆円)の長期国債を買い取り(今後数カ月で)

★住宅ローン債権(ファニーメイやフレディマックの証券化商品など)の買い取りを倍増(7000億㌦⇒1兆4500億㌦)

日米の中央銀行の桁違いの「事実上の国債引き受け」に対して、米WSJ紙と英FT紙は異なる評価を与えています。

WSJ紙は、

「中央銀行の役割は、議会の承認を得ずに、金融危機に対して積極果敢かつ融通無碍に動けることだと印象付ける発表だった。殊に、米国議会では血税が更に金融機関救済に使われて良いのかどうか“政局”になりかけている状況において、中央銀行の柔軟性は一層重要だ」

と肯定的なニュアンスを感じましたが、一方FT紙は、

FRBの貸借対照表は、約3兆㌦(≒300兆円)に膨らむことになる(一挙に40%近く膨張)。米国債と住宅ローン債権だけでなく、信用市場活性化スキーム(=1兆㌦)を加えると、約4兆㌦(≒400兆円)。すなわち米国経済の三分の一の規模だ」

とインフレリスク(≒米国経済が好転した際にマネーサプライ【通貨供給量】を制御出来なくなる恐れ)を指摘。実際、金価格はFOMC後に6.6%も上昇し、1トロイオンス=942.90㌦に急騰しています。

有名エコノミスト(≠有能経済学者)の多くが鵜呑みにしているフィリップ曲線(インフレと失業率が反比例するという“経験則”)があります。確かにインフレ期待(≠今目の前のインフレ)は、金の延べ棒への投資家だけでなく、製造業をはじめ卸売業、小売業、そして勿論、不動産業にも設備投資や在庫投資をすると儲かるという気分にさせてくれます。安く仕入れて高く売れると思うから、または店子の収入が上がるから賃料を上乗せ出来ると思うから、です。

理屈では確かにそう。しかし、現実はどうでしょう。今年より来年のほうが物価が上がる。更に再来年はもっと上がる。そういう期待が蔓延したとしても、自動車を買う人が増えるでしょうか?デジカメやエアコンを買う人が増えるでしょうか?

失業や貧困、格差や需給ギャップの問題を、マクロ経済の問題としか見なさない伝統的な枠組みにこそ致命的な欠陥があるのです。

加えて、なまじ情報と統計が整備された日米のような環境においては、貨幣錯覚は成り立ちづらい。ばらまき政策など公的関与は「景気の駆け込み寺」たりえないという本音が、有名エコノミスト(≠有能経済学者)の間で殆ど語られないのは残念。

最後に、このブログは「FXダイアリー」であることを忘れるわけにはいきません。国債買い切り(マネタイゼーション)は実態的に自国通貨売りを目指す単独介入に他ならない。FOMCの結果、対ドルで円は買われたがユーロはもっと買われていることに注目。中国(人民元)は格別として、日銀と欧州中央銀行(ECB)とで、どちらが節度を守れるかが勝負。

そしてこれは中央銀行だけの問題ではありません。

「中央銀行の金融緩和がまだまだ足りない」

という政治から、

「国民ひとりひとりが他人に買ってもらえるものを作ろう、または売ろうという原点に立ち返らない限り失業や企業倒産は避けられない。自分の不幸を他人のせいにするな!」

と国民を叱咤出来る政治に転換出来る国の通貨が生き残る。私が長期的にはやはり円安と一貫して主張するのは、このような政治家が日本に現れ当選する可能性がゼロに等しいからです。
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2009年3月18日水曜日

覆面座談会

面白い「覆面座談会」のサイトを発見しました。
http://fx.manepoke.jp/zadan/index.html
覆面・・・すなわち匿名なのが残念(!?)ですが、それゆえの本音トーク!胸が空く思いです。
これからいよいよFXやCFDを始めようと思われている方が増えていますが、その前に必ず読んでいただきたい内容です。
(注意)「七転び八起き」自身はこの座談会に招かれておりませんので、くれぐれも誤
解のないようお願い致します。
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2009年3月17日火曜日

中国、外貨準備の運用で巨額損失

★運用“多角化”が拙速だった(3/15FT)
モルガンスタンレーやブラックストーンなどの米国株で40億㌦もの損失を出したCIC(中国投資公社、China Investment Corporation)。

中国国内からは「下手糞!」と非難されるわ、国外、特に西側政治家からは「CICは中国共産党の野心的な世界戦略の片棒を担ぐ不透明な黒子an opaque proxyだ」と批判されるわ、政府系ファンド(SWF)の風雲児には見る影もない。

ところが、CICの20倍もの損失で外貨準備に穴をあけているのが国家外国為替機構(State Administration of Foreign Exchange)。頭文字を取ってSAFEと略されるのが皮肉です。

2兆㌦の外貨準備の運用を担うファンドマネージャーの手口は、CICと同じく不透明。しかし、固めに見積もっても1600億㌦を国外株式に回し、その半分800億㌦が損失だと、FT紙。

特に米国株式については、2006年半ばにたった(!?)40億㌦の運用資産だったのが、2007年半ばに300億㌦、2008年半ばには1000億㌦に達した。

フェニックス証券の広告で「サブプライム危機は死語と化した」と書かせていただいております。サブプライム危機の象徴を2007年8月の“BNPパリバショック”と定義すると、2007年当初(≒CIC設立時期)から外貨運用“多角化”を始めたSAFEは、サブプライム危機で“多角化”を見直すどころか、寧ろ加速させたことになります。

投資の格言に言う「落ちてくるナイフを拾うな!」に逆らったSAFE。中国以外のアジア中東の政府系ファンド(SWF)についても言えることだが、米国株式の保有額ではSAFEは最大級だとFT紙は報じています。

FT紙は英国の新聞なので、英国株式での失敗例も羅列。リオティント、ロイヤルダッチシェル、BP、バークレイズ、テスコ、そしてRBSです。

冒頭の黒子CICの失敗例(モルスタ、ブラックストーン)と並べてみると、小売のテスコを除くと全てエネルギー関連と金融。このあたりが、国外からの上記批判の理由か。

独り非難を背負ってきたCICより更に酷い運用実態のSAFEについても、中国国内での批判を通じて、中国共産党の内部の権力闘争の材料と化せば、安全な資産へのシフトや、中国国内のインフラ整備等、内需向け政府支出へのシフトへと抜本的に進む可能性があります。本音では米国債を買うしかないと豪語している中国の金融当局高官の発言を以前ブログで取り上げました。AIGやシティ(≒GM等)を抱える米国の現政権は、もう損失はご免だとして迫ってくる中国のブラフにどのように対峙できるかが、金融混乱の収束や、米ドル相場の成り行きを判定するうえで重要です。
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