2009年3月16日月曜日

日銀、銀行の資本増強支援-貸し渋り防止

★劣後ローンの引き受けを検討-政府保証が焦点に(3/16日経)
土曜日に英国の田舎で行われたG20でも金融政策では協調。財政政策では不協和音。日経の観測記事はこの流れに沿うもの。

「政府保証が焦点」だというのは本当か?これはブログの最後に意見したいと思います。

昨日放映されたNHKのど自慢。収録地が三重県津市だというので間違っても両親が出ていないだろうなと心配で、冒頭の5分だけテレビをつけ出演者を確認。ほっとしました。

収録場所の三重県文化会館は、筆者の中学高校時代当時は体育館に毛が生えたような多目的ホールでしたが、サントリーホールやオーチャードホールなどと見紛うほど素敵で瀟洒なホールに生まれ変わっており、びっくり。のど自慢の舞台と客席のギャップに、違和感を感じた視聴者のみなさんは、三重県出身者に限らず大勢いらっしゃった筈。

お決まりの収録場所の紹介(藤堂高虎、唐人おどり、・・・)もありました。が、津市の人口が30万人を超えたのは、数年前の大規模市町村合併があったからだけのこと。筆者の故郷、安芸郡芸濃町も現在では津市芸濃町(人口は約7000人)。驚くべきは、この芸濃町にも、三重県文化会館と同様に、NHK交響楽団や海外の名門オーケストラを招いても恥ずかしくないようなホールが、田んぼの真ん中に忽然と作られていることです。

筆者が前前前職で大変お世話になった上司から聴いた話。ロンドン交響楽団を率いて来日した世界的な韓国人指揮者チョン・ミョンフンに「日本から持ち帰りたい、お土産にしたいものは何か?」と聞いたら、「ホールをひとつ。どこの田舎のでも構わないから・・・」と皮肉に笑みを浮かべて即答したと言います。

ハードウェアは有り余るほど作られたのに、肝心のソフトウェアの中身が伴わない日本の文化の現実を哄笑した酒の席での発言は、土木だけでなく文化まで含めて官僚機構に税金の使い道を任せておくと国が滅びることも射程に入っています。

極端な貸し渋りで、黒字倒産や資産超過倒産まで発生しているとすれば、銀行経営への介入の意義はある。しかし、「輸出の減少⇒売り上げの減少⇒資金繰りの悪化」を後方支援する劣後ローンの引き受けは、無駄な公共事業と同種の無駄を重ねることになります。

今後どちらの政党がどんな政策をとるかに関係なく、我が国のホワイトカラーは約半数以上が無駄であることが判明する日が、そう遠くないと思われます。これまでその約半数の無駄なホワイトカラーを支えてきてくれたのは、汗塗れで働き通してきた町工場の役職員が稼いでくれた外貨です。この遺産も、我が国が13年ぶりに経験する国際収支の赤字によって食い潰されているのです。

1985年のプラザ合意以降の円高局面に発生したJカーブ効果(円高が輸出数量の減少よりも、単位数量当たりの売上増のほうが寄与して、かえって貿易黒字が増えてしまう現象)が、今回の円高局面では全く発生していないこと。このことに着目した経済誌紙の報道や経済学者の指摘は筆者が観察する限り全く見られない。それくらい深刻なのです。

先週金曜日の日経朝刊の経済教室は、元農水事務次官の「製造業が駄目なら農業に帰れば良い」という甘い発想で生き延びられるほど、逆スパイラル化が臨界点に達した日本の農業の再生は生易しくない、と冷徹な分析に基づき主張しておられ、目から鱗でした。

縦割り行政を組み替えることによってしか実現出来ないであろう、真っ当な補助金の使い方、専業農家、大規模経営を支援する枠組みに加え、筆者が予てから主張する

「少子化は自然の成り行き」

であることを受け入れ、

「一人当たり耕作(可能)面積」

を主要先進国並みに近づける努力。都市労働者は帰農だけでなく、資本流出に悩む新興国に活路を見出し、長期的には円安を待つだけのタンス預金を投資機会に結び付ける仕事を見つける。

時代としては、明治維新以降、ブラジルやカリフォルニアやハワイに活路を見出すべく裸一貫で旅立った移民一世の皆さんの心境が、これから再び沸々と沸いて来ざるを得ない局面であり、また過去の蓄積としてのタンス預金以外は然したる資源もないくせに、生活水準の低下は政治の責任だという風潮=大国病に陥った第二次大戦後のイギリスと酷似した状況に、今の日本はあります。

最後に冒頭お約束した「政府保証が焦点!?」ですが、既に国債以外の民間資産の買い入れに踏み切っている中央銀行(日銀だけでなく米国FRBも該当)にとって、政府保証の有無は関係ない。日銀法上の独立とは言え、総裁人事は立法府で右往左往する現実。上場会社とは言え、特融を含めた結果損失は税金で穴埋めされる構造。このように考えると「政府保証が焦点」というのは単なる茶番とも考えられます。
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2009年3月13日金曜日

ジャック=ウェルチ前GE会長の悔悛

英フィナンシャル・タイムズ紙が、「『株主価値』の父」だとして永年尊敬されつつ、20年以上にわたり企業経営の世界に君臨してきたウェルチ氏の転向宣言(悔悛宣言)を臨時ニュースとして取り上げました。

ウェルチ氏が1981年に行った演説をきっかけにして、企業経営者や投資家が四半期決算や株価の上昇に囚われ続けたのは慙愧に堪えないと、FT紙のインタビューで答えたとのこと。

曰く、「『株主価値』とは最も愚かしい考え方だ。『株主価値』は結果であり、企業戦略ではない。。。(経営者にとって最も大事な)“選挙区”は従業員であり、お客さまであり、そして商品である」と。

奇しくもこの日、ゼネラル・エレクトリック社の格付けがAAAからAA+に引き下げられました(S&P)が、これが灰汁抜けだということで株価が急騰、昨夜の米国株式全体の続伸の要因の一つになっています。

今日の経済危機が本当に「100年に一度」なのかどうか実は誰も検証しては居ないのですが、自由放任主義のグリーンスパン氏の「米国の銀行は一時国営化は避けられない」発言に続く、ウェルチ氏の悔悛発言こそ、100年に一度の大転向です。泉下のカール=マルクスが、同じく泉下のフリードリヒ=ハイエクに対して、「あんたの指摘は鋭いね。。。」という呟きが聞こえてくるくらい凄いことだと「七転び八起き」は感じました。方向は真逆ですけど。

ちなみに、フェニックス証券の取締役会には毎月、個人大株主様がお見えになるので、実態上、毎月株主総会をやっているようなものです。ということは月次の決算に毎月チェックが入るわけですが、「丹羽君、上期に比べると下期は減益じゃないかね!?」と聞かれたら「企業経営の神様、ウェルチ氏が四半期決算に囚われてはいけないと100年に一度の悔悛をされましたよ。月次決算くらいでガタガタ言わないでください」と反論することにします(笑)。
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2009年3月12日木曜日

J‐REITは今が底なのか?

★オバマ大統領、ガイトナー財務長官に対してエコノミストは辛口採点
ウォールストリートジャーナルが行った調査。まだ、「100日」は経っていない気がするが・・・
オバマ大統領は100点満点の59点、ガイトナー財務長官は51点、これらに対し、バーナンキFRB議長は71点と独り高得点(投票したのは49人のエコノミスト)。ちなみに政権交代直前のポールソン前財務長官への評点は57点。

いきなりポールソン以下だとの判定が下された批判の中心は、銀行救済が遅いこと。「有言“不”実行で信頼が揺らいでいる」“They overpromised and underdelivered... ”と手厳しい。

ところで、7870億㌦の景気刺激枠が、景気回復のために十分かどうかについて、49人のエコノミストの意見は略真っ二つに分かれたようです。

★ゴールドマン・サックスもドル円相場の見通しを修正
3ヵ月後には105円へと円安に、6ヶ月後は100円へと円安が多少調整。従来予想から円安に切り替え。

予想屋部門、もう無くなっていたのかと思っていました。原油価格の予想も聞いてみたい。

昨日予告したJ-REIT。特にパシフィック破綻の翌朝、ストップ安で寄り付いた日本コマーシャル投資法人は、純資産倍率(PBR)が0.1未満、株価利益率(PER)が2倍強、配当利回りが40%以上まで売り込まれたあと、昨日今日と急速に株価を回復させており、前場では何とストップ高であります。株価の基礎的な指標から見て、余りにも売られ過ぎであり、スポンサーが見つからないかもしれないからとは言え、倒産隔離されている“筈”のREITにとっては関係がないという理由から、急反転したということか?

軽々には底値買いを出来ない理由もあげておかなければなりません。

有利子負債(≒ノンリコースローン)が総資産(オフィスビル群)の6割という状況、つまりLTV=60%をどう解釈するか?

開示資料によると、オフィスビル等の取得価格は鑑定価格と大きく変わらないとされていますが、現在の相場需給では鑑定価格は当てになりません。高値掴みした物件を強制的に手放さなければならない状況では、取得価格の6割以下、つまり投資法人のエクイティだけでなくデット(≒ノンリコースローン)まで毀損する可能性はあります。

ノンリコースローンの貸手(三井住友銀行その他の金融機関)が、ローンの毀損を覚悟して貸し剥がしに踏み出すかどうかは、金融機関全体を取り巻く自己資本(≒収益)の状況に寄りますし、また開示されていないのでよくわかりませんが、ノンリコースローンとは名ばかりで、スポンサーであるパシフィック倒産がローンの期限利益喪失事項になっていないかどうか審査をする必要があります。

マイナス材料はこれら不動産の市況と金融機関と取り巻く経営環境。しかしプラス材料もあります。これは日本コマーシャル投資法人が保有する物件の稼働率の高さです。家賃水準の変動リスクはあるものの、開示資料の稼働率の高さであれば、利払い不能から来る貸し剥がしという危険性は小さいと思われます。
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2009年3月10日火曜日

どうなるFX業界!?

“食肉偽装”や“産地偽装”と同じような巨悪がFX業界にも存在するとして、遂に金融庁も腰を上げました。

それは「スプレッド偽装」です。

見た目、つまり広告やデモ画面上の低スプ(+高レバ)に惹かれた多くの投資家が、実際の約定の際に度々大きく価格が不利な方向に動かされ、損失を被ったことから、被害者の多くが被害の実態(価格のスリッページ【注】)をブログにコピー&ペーストしたり金融庁や金先協会に告発したりしたことが背景にあります。

当ブログで予てから指摘してきたこの問題は、冒頭に例示した食肉偽造や産地偽造と同様、真面目な業者を逆淘汰させてしまう巨悪、もっと言えば、真面目な業者ですら「スプレッド偽造」に手を染めないと生き残れないのではないかと疑心暗鬼にさせる不公正競争の温床です。

FX業者は絶滅するのか!?(其の参)
FX業者は絶滅するのか!?(其の壱)
FX業者は絶滅するのか!?(其の弐)

低スプ(+高レバ)の不健全な競争を煽ってきたアフィリエイト(あたかも第三者【多くはブロガー】が心から推薦しているように見せかけているが、実態はリベート付きの“やらせ”広告≒提灯記事)が、故意の【注】スリッページの常態化という約定の実態を隠匿してきたことに対しても、金融庁は牙を剥いています。

「全額信託義務化」に向けて内閣府令改正のパブリックオピニオンを始める予定がどうやら延期になっている金融庁ですが、「スプレッド偽装」は現行法令でも十分矯正出来ると思われます。

不公正競争で取引シェアを急拡大させた「ネオFX会社」への矯正は、影響が甚大。真面目なFX業者も火の粉を被るかも知れません。しかし、痛みを伴う改革なしに、FX業界の健全な前進は不可能。業界全体への不信という火の粉に耐えて経営することもまた今日FX会社に求められているチャレンジだと自認しつつ、金融庁の断固とした対応を期待します。

【注】(故意の)スリッページ⇔発注と約定の時間差により相場が投資家に不利な方向に変化した場合に、それを投資家が事前に容認したうえで約定する価格スリップと区別しなければなりません。
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2009年3月9日月曜日

経常収支、13年ぶり赤字

★オバマ政権の経済最高顧問ローレンス・サマーズ氏、各国首脳に対して「もっと政府支出を拡大し、内需拡大の努力をすべき」と主張(3/8FT)

「貴方に言われる筋合いはない!」

It is none of your fucking business!

と反論できるリーダーは日本に居るか?世界に居るか?

フィナンシャルタイムズ紙の独占インタビューでの高飛車発言。FT紙は、ティム・ガイトナー財務長官の任命が脱税疑惑で“すったもんだ”したこともあり、オバマ政権の経済運営においては、財務長官経験者サマーズ氏の発言力が意外に大きいと報じています。


さて、「七転び八起き」ブログが頻繁(ひんぱん)に非難する東京放送も、かつては「報道のTBS」と褒められていた時代があったそうですが、オウム事件以降は全く見る影もありません。同地上波の唯一のキラーコンテンツが水戸黄門の由美かおるさんの入浴シーンあることからも判るように、“勧善懲悪”路線、すなわち

「誰かを悪者だと決めつけないと視聴率が取れない。。。」

という泥濘から逃れられないでいます。小沢民主党党首=西松建設の疑惑も、


☆国家権力陰謀説を採るべきか?


☆小沢氏は所詮「経世会」流の金権政治家だと烙印し、麻生総理の箸の上げ下ろし批判から転向するべきか?


苦悩が見られます。新聞等、紙メディアは、検察側リークの可能性が高い、西松側からの(政治資金規正法違反どころか)「受託収賄」を指摘する声を積極的に取り上げているのが特徴。地上波テレビの場合には、立場さえ決めれば、あとは街角インタビューを編集して、脳なしアンカーがプロパガンダで締めれば御仕舞いなのですが。

さて、真相はどうなのでしょう?田中角栄元首相の復権を根絶やししたロッキード疑獄(日中国交正常化の推進に業を煮やした米国がCIAを動かしたことによる冤罪だという説あり)や、前原民主党当時代表を辞任に追い込み、当事者の永田前議員を自殺に追い込んだ堀江貴史氏の偽メール事件のような、国家権力による陰謀が、無政府状態の今の日本で可能なのかどうか?当ブログとしては疑問を感じつつ、引き続き慎重に取材を続けて参ります。

★1月の経常収支、13年ぶり赤字 1728億円
今朝8時50分、財務省が発表。

日本に足りないものは、米国同様、総需要(消費や公共工事)ではなく、総供給(貯蓄または民間投資の結果としての成長)。経常赤字がもし続けば、食料を輸入に頼り残飯を残すという生活様式は続けられなくなります。減反や食糧管理政策という愚策も継続不能に陥るでしょう。

「派遣切り」に対する大手製造業批判も、上述の勧善懲悪メディアの結果に他なりません。今ほど都市労働者の失業が問題になっても、多くのコンビニ店では日本語を話せる人材の確保が儘ならず、農村では高齢者によって担われている専業農家の後継者難が改善されていない現実を、少なくとも公平に報道しないのであれば、総務省はこのような偏向亡国メディアから電波を奪うべき。
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2009年3月6日金曜日

為替相場見通し変更、バークレイズ銀行VSジム・ロジャーズ氏

★英バークレイズ銀行、ドル円相場見通し変更

向こう3ヶ月で1㌦=102円まで下落する可能性があると予測。
日本の政局の混乱によって、深刻化する景気後退への政府の対応が難しくなるとレポート。

中川前財務相の酩酊、小沢民主党代表の疑惑。。。この二人が“人柱”となって、我が国は血税の負担もなく、為替介入(これも最後にケツを拭くのは血税ですが・・・)もなく、円安に誘導することが出来つつあります。

ジンバブエやイラク、アフガニスタンはさておき、主要国の中では稀に見る無政府状態こそ、我が国の数少ない稀少資源です。ネットとの競争と融合圧力で、低俗化と世論誘導が日に日に加速する地上波テレビの扇動にも“めげず”、我が国だけが思い切った大衆迎合政策を打てない。主要国仲間で唯一の無政府状態こそ、円安という代償のない配当の源泉です。

勿論、タダ飯が喰える道理はありません。

★著名投資家ジム・ロジャーズ氏、「米ドルも米国株式も売りたい」

米政府が経営難に陥った企業を破綻させるかわりに支援しているため、政府の景気対策は持続的な回復に繋がらないと指摘。 米ドル売り+商品先物買いを続けたいと。ポジショントーク!?

★いずれ直面せざるを得ない痛みを先延ばししているだけ

1990年代の日本の景気対策が奏功しなかった⇔通貨危機後のメキシコや金融危機後のスウェーデンなど、痛みを伴う道を敢えて選んだ国は立ち直って危機の長期化を回避した、などとロイター社との電話インタビューで述べた。

ロイターの報道によりますと、米国の住宅ローンの借り手の2割が「ネガティブ・エクイティ」、即ち、頭金が素っ飛び、住宅が競売に掛っても、ローンの残債が全額返済出来ない状況だと報じています。また、ウォールストリートジャーナル紙、ロイターその他がこぞって臨時ニュースで、GMの年次報告書で監査法人が継続企業の疑義(構造的な営業赤字、巨額の債務超過、借金返済のための現金を産み出す能力の不足)を表明したと報道しています。

「借りた物を返せないのは借りたほうも悪い」という思想が感じられない大衆迎合政策は国力を疲弊させるだけ、という視点において、ジム・ロジャーズ氏の指摘は正しいし、長期的には米ドルは暴落するでしょう。

ところで、我が国の永田町の無政府状態は結果オーライだけですが、民間部門はどうでしょう。拙書「“為替力”で資産を守れ!」のなかの対談でお世話になったソフトブレーンの創業者である宋文洲さんから今朝メルマガが届きました。「七転び八起き」のブログに負けず劣らず長文ですが、全文を引用させてください。

★年功リーダーという差別
企業のリーダーには3つのタイプがあります。真のリーダー、親分リーダー、年功リーダーです。

組織の目的よりも部下を持つことに生き甲斐を感じ、プライベートに介入したり、飲み食いを共にしたりする親分リーダーは真のリーダーではありませんが、まだましなほうです。

日系企業には特別に存在する深刻なリーダー問題があります。それは年功リーダーの多さです。本来、勤続年数が経ったことを理由に部課長になることはリーダー論においては論外ですが、今日はその論外を論じます。

日本社会は一見平等を強調する社会ですが、実は世界のほかの社会と本質的に何にも異なりません。ただその差の付け方が分かりにくいだけです。士=正社員、農=契約社員、工=派遣社員、商=アルバイトのような差別制度が歴然としているのに、日本は終身雇用と言い張る人が未だに多い。人々の不満と不安は、派遣切りではなく雇用差別なのに誰もその本質に触れようとしません。

年功リーダーも差別の結果です。努力と関係のない年齢をもって部下に差をつけようとしているだけです。本当に「年功」があれば差別といいませんが、そもそも年功リーダーの多くは「年」があっても「功」がないのです。年功の言葉は彼らが考え出した自己粉飾の言葉です。年功リーダーは「年が効く」「年効」リーダーなのです。

絶対に管理職に向いていないのに部課長になった日に赤飯を炊くのはなぜでしょうか。外国人には完全に滑稽に見えますが、本人達は明らかに「昇進」だと考え、やっと他人に差をつけることができたと喜んでいるからです。

年功リーダーは真のリーダーではないことは一目瞭然です。そんな偽リーダーが増えると組織的なモラル崩壊が起きるのです。「リーダーでもそんな程度なんだから、俺達は頑張ってもしょうがない」とか、「部長が優柔不断で責任を取らないから俺達が新しいことをやっても失敗の責任を押し付けられるだけ」とか、年功リーダーが存在するだけで、組織のモラルが低下していくのです。

年上を大切にするという儒教的美徳は私も賛成です。しかし、これは道徳論であり、組織論と何の関係もない話です。電車の席をお年寄りに譲る、老人ホームに寄付する、自分の親を懸命に介護する・・・これは我々一人ひとりの個人が心に決めたことであり、組織と関係なく行動でその心を示せばいいのです。

組織のリーダーの最大な美徳は真のリーダーになることです。責任とリスクと公正を背負って組織を勝てる組織にすることです。それができない場合、辞めるのもリーダーの美徳です。辞めることで最後の最低限の美徳を果たそうとするのです。

最近、管理職になりたくない人が増えたのはたぶん、多くの格好悪い年功リーダーが居るからです。見苦しい彼らをみて若者達は絶望するに違いありません。若者の無気力を批判する前に無気力なリーダー達は自分の資格にも同様な視線を送るべきです。

「差別」という言葉をきつく感じた方も多いかと思いますが、お許しください。ちなみに私は世襲も差別だと思います。一番酷い差別は社会に受け入れられる公然な差別であり、差別と気付かない差別です。差別は確実に社会の活力を蝕むのです。

★派遣切りではなく雇用差別
宋さんのお考えに殆ど同感ですが、一点だけ文句を言わせて下さい。「派遣切りではなく雇用差別」なのに誰もその本質に触れようとしない、とありますが、拙書「“為替力”で資産を守れ!」は、その本質を抉った数少ない例外の書籍でございますよ。お忙しそうだから、まだ読んでくれてないのでしょうね(苦)。

上記、宋文洲さんのメルマガ引用中の太字赤字は「七転び八起き」が勝手に付したものです。
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2009年3月5日木曜日

スイス金融大手UBS、前財務相が会長に就任

前財務相と言っても、中川昭一代議士のことではありません。カスパル・フィリガー前財務相は閣僚が輪番で務める大統領職の経験もあり、UBSの経営改善にスイス政府が本格的に関与する可能性を今朝の日経朝刊は指摘しています。

昨夜11時頃、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙のトップ記事だった同報道は、「銀行業は長い間チューリヒの街にとって飯の種以上のものだったonly more reliably。自動車とデトロイト、コンピュータとシリコンバレーの関係と同じ。企業城下町の経済が浮き沈みする間ですら、世界中の資産を静かに見守るスイスの生業は、正確にチューニングされたスイス製時計のように、スイスの国民経済の豊かさを揺らぎなきものにしていた。

ただし、これまでは。。。」

という書き出しで始まっていました(今朝、もう一度読んだら、何故かデトロイトがシュツットガルトに置き換えられていましたが???)。

社長に次いで会長も更迭し、外部から人材招聘を決めたIHT紙の報道が指摘しているのは、金融立国スイスの脆弱さ。人口760万人のスイスのGDP(国内総生産)に占める金融業の貢献度は12.5%。ちなみにユーロ圏は5%、米国は8.5%です。英米がそれぞれ何十兆円規模の公的資金導入を実施しているのに対して、UBSのバランスシート(貸借対照表)は約200兆円と、スイスのGDP(国内総生産)の4倍にも達しているのです。

UBS以外のスイス系銀行の資産を全部足すと、スイスのGDPの6.8倍。国家破綻寸前のアイルランド(9.5倍)よりは“まし”だが、米国(商業銀行だけだと0.7倍)に比べて余りにも深刻。

加えて、スイス国外からの匿名口座の受け入れに対する、米国やEUからの改善プレッシャーが泣きっ面に蜂。当ブログでも昨年5月以来取り上げてきた脱税幇助の問題で、結局UBSは先月、米国に対し780百万㌦の課徴金と300名の富裕層顧客名の公表を行っています。

そんなこんなで、2007年末には2兆㌦近くあったUBSの預かり資産は2008年末1.4兆㌦へと激減しています(国外からの出金依頼が1050億㌦+株式等の下落による時価評価減)。

それでもまだフェニックス証券の預かり資産よりは大きい。立派なものです。
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2009年3月4日水曜日

小沢代表秘書逮捕と政治資金規正法

★「失われた10年」の政治改革は何だったのか!?
55年体制以降初めて自民党を下野させた細川内閣は、“政治改革”こそ最重要課題だとして1994年に政治資金規正法の改正案を成立させ、企業や団体からの寄付の対象を政党、政治資金団体、新設された資金管理団体に限定させました。カネが掛り過ぎる政治が、政治を悪くしているという認識の下、政治献金の取り締まり強化と同時に成立させたのが、衆議院議員選挙制度の改革、すなわち

小選挙区(比例代表並立)制

の導入です。中選挙区制度では、カネが掛り過ぎるという認識。日本には米国のような二大政党制がふさわしいという流れに、疑念を抱く声は、少数政党(の支持者)を除き、政財界にも、マスコミにも目立って聞かれず、野党自民党との調整で揉めたのも定数割り振りという各論部分でした。

今回の「西松建設-小沢民主党代表」疑獄は、

☆政治資金規正法が骨抜きの改正の繰り返しであった

ことに加えて、

☆選挙制度改革も、カネの掛らない政治という目標に対して殆ど貢献していない

むしろ、我が国の将来を本来担わせるべき人物が、二世議員や資金力の旺盛な既得権益にどっぷり漬かった勢力に分け入り、政治を志す気分にならない我が国の淀んだ風土をより悪化させた象徴、

というのが私の解釈です。

細川首相(当時は)、政治改革関連法案を国会で可決成立させた直後に、消費税問題と佐川急便事件で辞任。その後は、自民党と社会党の連立内閣で村山首相が「自衛隊は合憲」と所信表明演説。小選挙区制が潰したものはカネの掛る政治ではなく社会党という革新政党ひとつでありました。

★政治改革か?政治不信か?-相場への影響は???

「西松建設=小沢民主党代表」疑獄が、既にただでさえ根強い政治不信を一層強めることは間違いないでしょう。我が国の国民ひとりひとりが、この国の政治はどうしようもない。自分のことは自分で守るしかない。という意識を強めるのであれば、それは悪いことではない。ただし、二院制と小選挙区制は続ける意味がないと、政治家の皆さんですら少なからず内心は理解しているのです。

で、相場への影響はどうでしょう?政治不信は十分織り込み済みだそうで、株安も円安も極々限定的だという意見が太宗のようです。相場は先を読んでいますね。

さて、米国の政治はどうでしょうか?

★オバマ人気、更に高まる

最新のウォールストリートジャーナル/NBCの調査。ただし、「米国は正しい方向に向かっている」が41%なのに対して、「米国は間違った轍に乗っかっている」が44%であるという数字もあります。大衆迎合のばら撒き政治に対する抵抗感はまだまだ根強いのです。
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2009年3月3日火曜日

NYダウ、終値で6800割れ-AIGショック

★前週末比299.64(4.2%)下落。12年ぶり安値
シティグループが20%下落(1.20㌦)。金融のみならず、GE(11%下落)、ボーイング、キャタピラー、3M等、製造業含め全セクターにわたって、大幅下落。

シティグループとAIGの二社に対する米国政府による公的関与が暴落の引き金。英HSBCの時価発行増資(180億㌦)と米国の消費者金融事業撤退のニュースで同銀行株が18.7%下落したことも寄与。

しかし世界の金融業界の現実を直視すれば、「公的資金による銀行株の希薄化」を世界中の株安連鎖の犯人扱いするのは間違い。公的な関与をせず、第二、第三のリーマンブラザーズを出してしまえば、暴落の度合いはこの程度では留まらないからです。

シティグループとAIGに対する関与の在り方は、バーナンキ&ガイトナーのコンビ以外でも結論が大きく変わることはないでしょう。

公的資金と言えば、
★バンカメの社長、「メリル買収のための200億㌦の(追加)公的資金は“戦略ミス”だった」
フィナンシャルタイムズ紙の独占インタヴューで、「公的資金導入のせいで、バンカメがシティグループと同じ類の駄目銀行だと見られてしまったことは失敗」と懺悔。

バンカメに入った公的資金は、9月に250億㌦、12月に追加で200億㌦。後者は、メリルからの“お土産”(四半期損失150億㌦)に対処するためのバッファーだったが、必要なかったと。

バンカメ社長は、メリルリンチ買収に200億㌦も費やしたこと、その後に上記“お土産”が発覚したこと、買収直前の12月に支払われたメリル役職員への巨額ボーナス、そんなこんなでメリル買収以降2ヶ月でバンカメ株が約8割も下落したことで、引責辞任を求める声が高まっている。FTのインタヴューは「公的資金を返済するまでは、辞められない」という理屈で批判をかわすための、戯言かも。

ところで、シティグループとAIGに戻りますと、

★公的資金は惜しみなく投入する

しかし、

★国営化はしない(する必要がない)

と米国当局が嘯く(うそぶく)のは、大きすぎて潰せない問題のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の「信用事由(クレジット・イベント)」の中に、倒産や債務不履行だけでなく「公的管理」というのも入ってしまっているからです(2002年度版ISDA)。格付偽装でCDSを引き受け、または保証しまくって浮銭を追っていた巨悪の金融機関に対するモラルハザードの泥濘(ぬかるみ)相場は当面続くと考えざるを得ません。

金融サミットのような“世界政府”で、または(BIS規制が見事に機能しなかった反省で)バーゼル主導でも良いから、

☆公的資金が入った金融機関は、海外での事業から撤退すべし

というルールをぶち上げるべきでしょう。まあ、無理でしょうけど。
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2009年3月2日月曜日

シティグループ、AIG、、、ヨーロッパ東西分裂の危機

金曜日の夜から、大西洋の両側で経済ニュースが騒がしく、週初のブログでは何に焦点を当てるべきか、いまだに悩んでいます。

★米国GDP改定値発表
2008年10月~12月の改定値は年率で6.2%のマイナス(1カ月前に発表されていた速報値ではマイナス3.8%だった)。大幅下方改定の要因として、在庫投資の調整、輸出と個人消費の減少が挙げられている。
1982年1月~3月のマイナス6.4%以来の最悪記録。

★シティグループ、米政府保有の優先株275億㌦を普通株に転換
米政府の議決権割合は36%に上昇。早くも取締役人事に介入。

ところで、転換価格は1株3.25㌦という“配慮”だったが、金曜日の終値は1.50㌦(前日比▲0.96㌦)と大暴落。

★AIG、追加支援300億㌦
既にこれまで600億㌦の貸出、400億㌦の優先株取得、500億㌦の不良債権買取枠と巨額の血税を次ぎ込み、議決権で約80%を握っている米政府。2008年10月~12月の四半期決算が620億㌦という歴史上最悪の数字となることに備え、金融安定化法案の7000億㌦枠を再び活用へ。

AIGがこれらの資金を直ちに使うわけではなく、政府支援を示さないと、ムーディーズやS&Pが、これ以上“偽装格付け”を続けていられないと痺れを切らせているからだと、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙は報じています。

上記の訳出は「七転び八起き」の独断と偏見に満ちていますが・・・

以上、米国に対して、ヨーロッパも大変です。。。

★EUサミット、(旧)東ヨーロッパ救済案を否決
ハンガリーから提案されていた東欧からのEUへの新規参入国への大規模な救済を求める提案は、ドイツが拒否、他の参加国からの支持も殆ど得られず。これに対し、ハンガリー首相は「新しい“鉄のカーテン”だ」と欧州が再び東西に分割されることを警告。

この結末の伏線とも言える記事が、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙からEUサミット前夜に出されていました。

★東西分裂という“疫病”に悩まされるヨーロッパ
米国発金融危機の問題に対処すべく、週末ブリュッセルに集まった欧州各国の首脳たち。だが、EUに新たに参加した東欧のメンバーは、自分たちだけで作戦を練るべく、西側首脳を排除した“プレ・サミット・サミット”をポーランド大使館でこっそり行なった。

月がかわりました。3月からはフェニックス証券にとって史上最大のFXキャンペーン、取引システムのバージョン・アップ(何段階かあります⇒話題のCFDも)も始まります。が、もうひとつ、角川グループのマネージャパンMoney Japanにて私の新しいコーナー「“為替力”で資産を守れ!」(仮称)が連載開始となります。ブログですと、一日の更新が長すぎたり内容が濃すぎたりすると、読みづらくなりますので、月に一度、トレンドを占うような内容を厳選して、読者の皆さんに喜んでいただけるようなコーナーにしていきたいと考えております。
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2009年2月27日金曜日

オバマ大統領、3.6兆㌦の予算方針

★裕福な家庭や企業に税金を課す。過去の混乱を断ち切る。。。

オバマ大統領は議会で「今日の危機は景気循環の結果でもなければ、歴史の偶然でもない。大企業のエグゼクティブスイートからワシントンの権力の座まで巻き込んだ“根っこまで腐りきった無責任の時代”(an era of profound irresponsibility)の結果なのだ」と134頁にのぼる予算方針を読み上げた。

2009年の財政赤字は1.75兆㌦(GDPの12.3%)。米国が第二次世界大戦に突入した1942年以来の水準。

各紙報じている大統領の予算方針ですが、ウォールストリートジャーナル紙が強調するのは、共和党はおろか、民主党の一部からも同方針への反論が出ていること。「階級闘争」の宣戦布告と形容する共和党議員たちは、ばら撒き政策では今後何年間も不況の泥沼から抜け出せないだろうと、同教書を扱き下ろす。

オバマ大統領が置かれた立場を「100日ルール」すら助けてくれないとすると、

★GM、2008年最終赤字3兆円-債務超過は8.4兆円

再建不能の烙印を押すに十分な客観的数値。生命維持装置の泥沼に嵌ると、オバマ大統領の信任に致命傷となりかねない。

さて、このように人騒がせな大国アメリカでも、

「無政府状態なのに、構造改革の機運が盛り上がらないどころか、盛り下がる国」

わが日本よりは“まし”だョ、という投資家の皆さんが、外国為替証拠金(FX)取引に集まっていらっしゃいます。フェニックス証券では3月、4月、5月、【最大1億円キャッシュバック】Yes,we キャンペーン!を実施します。おまけに、この期間、口座開設+入金+1万通貨以上取引をしていただいたお客様全員に、七転び八起きの著書

「“為替力”で資産を守れ」

を漏れなくプレゼント致します。
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詳しい情報は、明日土曜日以降、上記サイトでご確認下さい。
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2009年2月26日木曜日

双子の赤字、ニッポンに農林中金を救う余裕はない

「100年に1度の危機」だなんて、誰が決めつけたんだ。と言わんばかりの、日本経済新聞のキャンペーンは注目に値します。

★日産、減産幅を圧縮-在庫調整が進展。来月、5割前後に(2/26日経)

トヨタの5月増産を“演出”したのも日経でした。

★米住宅購入ツアー盛況-中国企業、富裕層向け企画(2/26日経)

自国の不動産バブルに踊らず賢明に現金を貯め込んだ中国のお金持ちが、上海の空室マンションではなく米国の住宅をハゲタカの対象にしているところに注目。

市場の自浄作用を軽んじてはいけない別の例が、FT紙にも載っていました。

★プライベートエクイティの投資家が売却プラットフォームに殺到(2/24FT)

去る火曜日に非上場ファンド版“リサイクル・ショップ”を立ち上げたのは、新規参入会社SecondMarket。プライベートエクイティやヘッジファンドの二次市場(“中古”市場)は長い間停滞していたが、買い手の数が売り手の数よりも圧倒的に少数な状況下でのこのような新規参入は大変勇気のある動きだと、FT紙は報じています。

厳格な守秘義務が非公開物の売買にとって障害になるので、このような試みは過去に何度も失敗していると揶揄する声もある中、今後2年間で1300億㌦以上にものぼると予測される塩漬けファンドの売却ニーズに応える具体的一歩であることは間違いありません。

再び、日経朝刊。

★貿易赤字、1月過去最大-2008年度、赤字転落なら第二次石油危機(1980年度)以来に(2/26日経)

「双子の赤字」が自分たちの形容詞になるとは想像もしていなかった日本人。外需頼みを反省して内需拡大だと説く専門家や政治家が多いですが、そんなことをしたら、次は「三つ子の赤字」です。

日本にとって足りないのは、自動車や家電の個人消費ではなく、農林水産業の供給能力(競争力)とホワイトカラーの作業効率(競争力)です。農林中金をゾンビ化させる余裕は、この国にはない筈。
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2009年2月25日水曜日

オバマ大統領、就任後初の議会演説

★金融システムを“修理”するために全力を尽くすと約束(2/25FT)
オバマ大統領曰く、

「大手金融機関の社長は、納税者の資金を使って、自家用ジェットで雲隠れしたりすることは出来ない。」

そして、

「大手金融機関を救済することが如何に不人気な政策であるか、私は熟知している。とりわけ米国民一人一人が大手金融機関の馬鹿げた意思決定のせいもあり苦境に陥っている現状では。」

しかしそれでも、

「危機に際しては、怒りの赴くままに政治を行うほど経済や財政には余力が無いのだ」

I also know that in a time of crises, we cannot afford to govern out of anger.

米財務省が、瀕死の象とも言えるシティグループに対して保有する優先株を普通株に転換し、議決権の40%(まで)を抑える提案を検討していることに関連しては、

「『銀行を助ける』のではない。『米国民を助ける』のだ」と。

★日米で殆ど差はない、政策とポピュリズム

今朝の日経1面でコマツ会長の坂根正弘氏が、「国民に強力に支持されたリーダーがいないのが痛い。しかし、誰が首相でも、日本の政治のあり方や国の形は限界に来ている。・・・(中略)・・・小選挙区制の導入で、政治がポピュリズム(大衆迎合)の様相を強め、それも財政の無駄に拍車をかけている」と喝破されているのは、まさに目から鱗。

オバマ大統領(のスピーチライター)には天才的な言語能力を感じます。

馬鹿げた借入をした国民も、馬鹿げた貸出をした銀行も、等しく救済してあげようという政策は、日本の伝統的な自民党政治と本質的な違いはありません。銀行救済を正当化するオバマ大統領の能力は、政策のスピードで日本との違いを見せつけ、短期的な円安ドル高のトレンドをしっかり保っていると見られます。

★オンラインセミナーをアップしました「なぜ一目均衡表が的中するのか?」

一昨日のセミナーで申し上げた通り、

①中国の外貨準備に関するジレンマ⇒結局、米国債を買い続けるしかない

②日米の財政政策の実行スピードの違い

③テクニカル分析が成果を上げやすい相場環境

以上3つのポイントで、短期的には円安ドル高だと予測したわけですが、過去最悪に陥った我が国の貿易赤字に加え、バーナンキFRB議長や、オバマ大統領の巧妙なスピーチも、助演男優賞モノなのです。
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2009年2月24日火曜日

年金給付2割目減り-現役収入比62%⇒50%

★米ダウ、250ポイント下げ。1997年5月以来の安値水準に墜落(2/23WSJ)
AIGが、追加支援をめぐる政府との交渉が決裂すれば、破綻に追い込まれる可能性がある、とCNBCは報じている。商業用不動産等で600億㌦もの追加損失を計上する見込みで、AIGは既に破綻を視野に入れて弁護士を雇う等の準備に入っていると日本語ロイター。

実は、銀行セクターよりも、ハイテクセクターの下落が悲惨。IBM、ヒューレットパッカード、アップル、GEがそれぞれ5%前後下げ。

昨日の日本時間では米政府が保有する普通株は4割に留まると報じられ株価反発の材料となったシティグループ。昨夜は、米政府保有の優先株を普通株に転換するとの情報も流れた。

国営化はしない⇔公的資金による銀行株の追加取得はあり得る???

こうした態度表明により、株式相場と為替相場の相関関係が大いに乱れてきているのが特徴。

昨夜セミナーでお話したとおり、短期的には、当ブログの一目均衡表などテクニカルが大いに力を発揮します。

★フォードとUAW、退職者向け健康保険の契約見直しについて暫定合意(2/23WSJ)
詳細は明らかにされておらず、全米自動車労連は他の加盟企業に対しても承認を求めていく必要が残されている。

退職者向けの保険と言えば、今朝の日経の一面。

★年金給付2割目減り-現役収入比62%⇒50%、厚生労働省が30年後を試算(2/24日経)
「不安を煽る」のと「安心を嘯く(うそぶく)」のと、日本を元気にするにはどちらが有効か?『百年安心』が崩れたのを御上のせいにしても仕方がない。金融恐慌という多額の授業料を払って得るべき日本人にとっての教訓は「自分のことは自分でしましょう」という気持ちの切り替え。

年金制度を直ちに廃止する。(支払済保険料)-(給付済年金)を国民に還元したときに、ひとりひとりの国民が、いま消費にまわすか、銀行やタンスに預金するか、年金のファンドマネジャーのような運用をするか、任せてしまうことこそ、景気対策と構造改革の両立だと思いますが、政権交代があろうとなかろうと実現は100%不可能でしょう。

年金廃止は極端にせよ、名目成長率以上の運用成績を政府系ファンドのマネジャーに課すのは酷でしょう。一頃だけ流行ったアジア・中東のソブリン・ウエルス・ファンドも全て落ちてくるナイフを拾ったことにより、名目成長率を遥かに下回る運用しか出来ていない筈です。郵貯簡保の民営化の真髄は、ここではありません。
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2009年2月23日月曜日

商工ローン大手のSFCG、民事再生法を申立て

★欧州主要国の首脳が集結、IMFに支援枠の倍増を求める(2/22IHT)
「金融危機が、東ヨーロッパだけでなくユーロを使用している国々まで急速に汚染し始めている」という認識で一致。各国首脳は汚染を食い止めるためにIMFの役割が重要だと強調。

しかし、つい数年前までは、彼らは現在のグローバル経済の発展にとってのIMFの役割は疑問だとしてきたと、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙は皮肉る。

非ユーロ圏の金融危機では、是が非でもユーロを採用したいために、財政規律の強化に動き、失業率の火に油を注ぎ、暴動が多発している東ヨーロッパ諸国もあります。

一方、ユーロ圏での金融危機も、アイルランドやスペイン、ギリシアの国債発行費用が急増。同一通貨なのに、ドイツの国債利回りと破綻懸念国のそれとは大きく乖離してしまっています。

米国発の金融危機故に、米ドルの次の基軸通貨はユーロだという意見もありましたが、実際には、ニクソンショック同様の危機がユーロ通貨に差し迫っていると考えられます。

週末会議でIMFに求めた支援枠は5000億㌦。

★アラブ首長国連邦、ドバイに金融支援(2/22WSJ)
不動産市況の急落で過剰債務に悩む都市国家に、100億㌦を緊急融資。

そして、我が国では、
★SFCC(旧 商工ファンド)、倒産(2/23各メディア)
臓器が売買可能だと大衆に知らしめた金融機関も、グレーゾーン金利撤廃と過払い訴訟には勝てず。
負債総額は約3000億円。
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2009年2月20日金曜日

生き残れないSAAB、生き残った農林中金

★SAAB、保全手続きを裁判所に申し立て(臨時ニュースWSJ)
米GMのスウェーデン子会社は、第二次大戦までは航空機を作っており、独自の技術が玄人受けしていたが、GM影響下で赤字を垂れ流していた。OPELはどうなるのか?

海外子会社の野垂れ死を放置して、GM本体だけは米国の公的資金でゾンビのように生き残るとするならば、米国はWTOから脱退すべきだ。

★農林中金、1兆9000億円の増資を発表(日経ネット)
理事長も交代。割当先は全額JAグループだとか。

輸入米との価格競争で苦戦を強いられる国内米。JAグループは何故それほどの資金を拠出できるのか?

そのヒントは、こちらにあります。
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ダウ終値6年ぶり安値

★国有化懸念で銀行株下落(2/19WSJほか)

バンカメとシティはそれぞれ14%下落。

当ブログで時々ご登場いただいているグリーンスパン前FRB議長。頑固で“ぶれない”レッセフェール(市場放任主義者)を一転翻し、米銀大手は国営化が必要と、昨日FTとの独占インタヴューで答えていました。

「グリーンスパンさん、結局あなたが間違っていたんじゃないか?」と批判するのは簡単。リスクを覚悟のうえでレバレッジを効かし、実力以上のキャリー益を楽しんできた投資家を血税で救う道理はない。しかし、為すが儘にし過ぎることによって、リスクを回避し続けるべく銀行預金でしか運用してこなかった(キャリー益を楽しんで来なかった)庶民まで取り付け騒ぎに巻き込ませるのは行き過ぎだ。

無リスク金利の運用者と決済インフラだけは傷つけてはいけないという一線を確保する考え方は、正しい。

ところで、上記「レバレッジを効かし、実力以上の“キャリー益”を楽しんできた」のは投資家だけではなく、所得水準以上の住宅に住むために住宅ローンを借りまくった多くの米国民も含まれます。オバマ大統領が住宅差押回避のために2750億㌦の予算を通したのは、モラルハザードのばら撒き政策に他なりません。

人気のオバマ大統領がやると、大胆でスピーディという褒め言葉が付く。同様の政策でも、人気が地に落ちた麻生内閣では何をやっても評価されない。世論による集団暴行で予算が通らない、単純なばら撒き政策も出来ない構図は、少なくとも期末までに解消される筈はなく、恐らくは来年度前半は続くでしょう。ばら撒き政策を成立させることができないにもかかわらず、自らの醜態を晒すことで政権に留めをさし円安を導いた中川前閣僚は最後にgood jobをしたことになります。

一方、今朝のFTのトップの記事は、
★日銀、社債を1兆円購入へ(2/19FT)
会見の最中に、目の前に手を延ばされミネラルウォーターを持って行かれようが、日銀の独立性は確保されているのです。

埃を被ったマクロ経済学の教科書程度の知識に基づいて、上げ潮派と下げ潮派が「財政政策か?金融政策か?」と責任を押し付けあう内輪喧嘩は、中央銀行が国債以外の資産に手を出し始めた時点で相当程度無意味になることをもう一度強調したい。

一例を挙げますと、結局は道路や上下水道の工事や整備をすることが波及効果が大きいという判断を政治が下したとしましょう。その予算が通らなくても、道路公団と公営公庫の財投機関債(≒社債)を日銀が引き受ければ効果は同じです。
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2009年2月18日水曜日

中川昭一氏だけではない世界の話題の中心、日本

★スティールパートナーズ、サッポロビール株買い増し提案を撤回(2/17FT)
日本への投資意欲が失せたと、我が国で最も活動的であったアクティヴィストは、経営陣が株主と向き合わない姿勢を批判。サッポロビール側も、経営不振と言われる筋合いはないと反論。

★オバマ大統領にとって最初のゲストは日本(2/17FTほか)

★中国が米欧に対し"bad banks"を設立しろと主張(2/17FT)
日本型の不況や停滞を回避するためには、中国の例(AMCs=Asset Management Corporations)を真似るべきだと。

AMCは4つの不良債権処理銀行で、米国のRTC(=Resolution Trust Corporation)をモデルとして1999年に設立されたもの。これまでAMCsが買い取った不良債権は何と35兆㌦に及ぶ。

「銀行の不良債権は林檎の実のなかの腐った点みたいなもの。食べたければその部分を切り取らなければならないし、放置しておけば残りの美味しい部分も腐らせてしまう」と中国の高官は、日本の場合は最後の最後に整理回収機構(RTC)を設立したが、余りにも遅すぎたと語る。

毒入り餃子の国に言われるのは悔しいですね。
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2009年2月17日火曜日

中川財務相、即刻辞任

昨日のブログ、

小泉の乱、中川の酒乱

の通り、常に大手メディアを疑う「七転び八起き」の目には、「辞めて当然」という“地滑り的”な世論形成が不自然に思えます。

ローマに飛び立つ直前の建国記念の日(2月11日)、奉祝中央式典でのあいさつの内容が、中川昭一氏の公式ホームページに掲載されています。

http://www.nakagawa-shoichi.jp/speech/image/0211.pdf

私はイデオロギーとしての天皇制には何ら共感を覚えません。但し、冷戦下の戦後復興における、機能としての天皇制の存在は、アカデミズムにおけるマルキシズムの台頭と同じくらい、無視できない要素だったのではないかと考えています。それは措くとして、呂律が回らない動画を報道する側も報道される側も、大半は前掲のスピーチの内容や背景は知らずに、辞任は当たり前と考えている点、反省が必要でしょう。

ネトウヨの聖地(?)2ちゃんねるの書き込みは膨大な数に及んでいるようです。

代表的なスレを二つだけ紹介しましょう。「七転び八起き」が独断で選んだ、反ネトウヨ側とネトウヨ側です。

(反ネトウヨ?)
学生はシャブ中
大臣はアル中
首相は摸索中

(ネトウヨ?)
予算通過後の予定だったけど体調が悪いみたいだね
昨日も夜中に病院に行ったくらいだし
冗談抜きで脳梗塞になる例の薬を盛られた可能性が高い
中川はまだ若いから死んだり倒れたりしてないけど
やっぱり韓国に二国間ではなくIMFで借りるように言った件の報復で暗殺なんじゃね?
(引用終了)

前者はコピーとしてうまい。後者は証拠不明ですが、IMFとの関連では10年前のアジア危機で宮沢構想が叩き潰されたことを思い起こす必要はあります。

夕刊ついでにもうひとつ。オバマ大統領はダッチロール状態の麻生首相を呼びつけ何の話をするのでしょうか?我が国の自動車メーカーに旧ビッグスリーを救済させたら、お礼に・・・

FX投資は政治に振り回されるのが一番困りますね。振り回しているのがメディアであったりもします。真実を突き止めることだけでなく、その真実が、余り遅きに失せず、市場参加者に消化されるわかりやすさを持つ
情報であることが、吟味に値する材料の要件。
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年率12.7%のマイナス成長-GDPショック

★せっせと蓄えてきた日本 VS 大らかに遣い込んできた米欧

米国休場で、案の定、世界中のメディアは日本のマイナス成長が年率二桁に陥ったことを大きく取り扱っています。

米国(▲3.8%)、ユーロ圏(▲5.7%)、英国(▲5.9%)を上回る減速(▲12.7%)について、ウォールストリートジャーナル紙の記事への素人コメントの中に「せっせと蓄えてきた国が、大らかに遣い込んできた国より、経済失速が深刻というのはどういう理屈なのか、よくわからない」というものがありました。他にも「80年代後半、貿易相手国から内需拡大を迫られたのに日本はその対応をしてこなかった。そのつけが回ったのだ」というのも載っています。

本題から逸れますが、日本の地上波テレビ局、例えば東京放送のニュース23のように、末期症状という点で政権与党と五十歩百歩の報道番組は、画面の下三分の一を開放して、視聴者の意見を2ちゃんねるのように流しっ放しにすれば視聴率が上がるのでは。尤も、報道機関として何の努力もしていない実情を暴露する、自らの墓穴を掘る決断をすることなく番組は最期を迎えるのでしょうが。

昨夜の、中川昭一財務相の映像⇒おきまりの新橋の酔っ払いへの街角インタビュー⇒GDP年率二桁マイナス⇒内容の精査にこだわらず、思い切った財政出動を素早くやるべきとの無名エコノミストによる締めくくり。。。ワイドショーと報道番組の違いって何ですか?と東京放送の報道局長を問い質したい。

さて、日本の年率成長率二桁マイナスは、前回が1974年。石油価格が一気に4倍となった、第一次石油ショックのこの年、私は小学校3年生でした。この年の思い出は、

★中日ドラゴンズ、巨人軍のV10を阻止し、20年振りのセ・リーグ優勝。

昨年、国民の総敵となった星野仙一氏が先発+抑えに大車輪の活躍。折しも、ブルース・リー主演の香港映画「燃えよドラゴン」が空前のヒット。坂東英二氏歌う「燃えよドラゴンズ」も大ヒット。

で、我が家庭は、と言いますと

★母の勤務先メリヤス工場が倒産

私が産まれる前から勤め続けていたメリヤス工場。何故かこの頃、給料袋を毎月チェックしていて、月々6万円、5万円、4万円と減っていったのをハッキリと記憶しています。

月々の目減りをカバーすべく、土日は家族全員で内職。股引(ももひき)の足首部分(伸ばせば長方形ですね)が長辺同士繋がってる形で大量生産されるロール状の塊(かたまり)を工場から持ち帰ってきて、これを一枚一枚外す。これが結構面倒くさいのですが、一枚外して1円。手先が不器用な私は家族から随分叱られたものです。

私に全く遺伝しておらず残念な母の数少ない長所は口が達者であること。6ヶ月間、失業保険を貰いながら探しあてた再就職先は、着物のセールス。職場は芸濃町から津市に変わりました。車の運転ができない母でしたが、ライバルセールスウーマンの車に乗せて貰いながらも成績はメキメキと上昇して、月収は20万円を超えました。収入が追い越された父は、文句ひとつ言わず、母の代わりに家事を一生懸命やっておりました。

★急激な変化である限り、交易条件の改善も悪化も、経済に打撃

韓国等との価格競争に晒されはじめていた当時の繊維産業は、ニクソンショックによる円高、石油ショックによる原材料高⇒スタグフレーションという“往復ビンタ”を食らわされました。この間、国内では田中角栄内閣による日本列島改造論。日本全国で一斉に行われた公共投資が、スタグフレーションを悪化させこそすれ、メリヤス工場の倒産回避にも、母の再就職にも、何ら貢献していないことは明らかです。

2008年10月-12月のマイナス成長の要因は、円高と輸出減です(ただし、円高要因だけで輸出減になったと言い切れないところが問題)。石油ショック直後のマイナス成長とは原因が180度近く異なりますが、外部要因の激変は内容がどうであれ、需要の内訳と供給の内訳に齟齬を生ずるという結果は同じです。

需要と供給の齟齬をハッキリと示しているのが、百貨店のフロア毎の混み具合。デパ地下だけが圧倒的に混んでいて、衣料品はガラガラ。欲しいものを作って売る以外に、需給調整の方法はなく、何十兆円も税金を無駄遣いしたところで、百貨店の地上階に客足は戻って来ません。

今朝の日経新聞のコラム、社説のコピーは「危機脱出、政治の責任重い」「追加景気対策は大胆に、賢く、遅滞なく」というのですが、、、国民の多くが政治に何も期待しない、天は自ら助けるものを助けるという意識であれば、そちらのほうが正しい。

最後に、日本のメディアも海外のメディアも、徹底的に無視している重要な事実を指摘させてください。
★日本の一人当たりGDPの伸び率は、世界で断トツ1位!
2007年の一人当たりGDPで世界19位に転落した事実だけは語り継がれ、その後の急激な円高はこちらの文脈では言及されない。大手メディアは、経済は悪いニュースを、スポーツは良いニュースを、報道したほうが売れるからに過ぎない。

円高要因だけでも、経済成長の年率マイナス二桁を打ち消して余りある。加えて、少子化(こちらの要因は僅かですが)。この豊かさの概念を実感するのは難しいことです。が、何も海外旅行や個人輸入などを試さなくても、悲観論を数字の通りに受け取ることは誤解を招くと警鐘を促すこともメディアの重要な役目なのでは。

これこそ冒頭のウォールストリートジャーナル記事への素人コメント

「せっせと蓄えてきた国が、大らかに遣い込んできた国より、経済失速が深刻というのはどういう理屈なのか、よくわからない」

という、素朴で、立派な、疑問への「七転び八起き」の、巨大メディアに代わっての回答です。
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2009年2月16日月曜日

小泉の乱、中川の酒乱

ほぼ24時間ワイドショー化しつつある民放が土日に小泉純一郎元首相、中川昭一財務相の映像を繰り返し流しました。

しかし、民主党の小沢代表は、「自民党の空中分解」を大衆に知らしめてくれたと民放の報道姿勢に感謝しているとは思えません。

★脚本、演出、そして役者。

「自分だったらどう動くか?」というシミュレーションを頼りに、伏魔殿のごとき自民党の役者達の動きを分析するに違いない小沢代表にとっては、小泉元首相の怪気炎にテレビカメラを入れたこと、本当に体調が悪ければ日銀総裁独りに任せておけば良かったG7会見、ついでに森元首相のブチ切れ映像、これらすべてが演技。酔っ払いを世界中に発信した中川財務大臣こそ大石内蔵助なのでは、と疑っているのでは。

「自民党をぶっ潰す」というキャッチコピーで自民党を守り、郵政民営化を争点にしたことで改革野党の筈の民主党を思考停止状態に陥れた小泉元首相(またはそのブレーン)が、再び脚本家兼演出家として登場することを民主党は恐れているという構図です。

GDP年率換算マイナス12.7% 10~12月期
8:50に内閣府が発表したGDP速報値は、市場予想よりも悪い数字。NHKの日曜討論で石原自民幹事長代理が、テレ朝のサンプロでは菅選対副委員長が、いずれもGDPの市場予想値に言及され、(数十兆円規模の)大胆な追加対策の必要性を語っていました。

★郵政民営化とは何だったのか?
冒頭の「小泉の乱」に関して、舛添厚労相が「すべてtoo late」と言い捨てていましたが、実に銀行業界にとっては郵政民営化こそtoo lateだった。

90年代においては、国営銀行は民業を圧迫している、民間銀行が“いまひとつ”儲からないのは郵貯のせいだ(クラウド・アウト)という銀行業界の声がありました。

バブルの第一の原因は銀行の数、銀行員の数が多すぎることだと、当ブログで繰り返してきた私としても、(
預金保険との関係は微妙ですが)貸し倒れリスクを反映しない預金金利の設定や、財政投融資のあり方を反省すれば、クラウド・アウトの指摘は正論だったと言えます。

手続き途上にある郵政民営化が、too late(元来の趣旨は正しかったが今更やっても無駄)なのか、never late than never(遅すぎてもやらないよりはまし)なのかという判断は、オリックスの不正入札やら、ゴールドマンサックスなどの米銀に身売りさせ(日本国債を売らせて米国債など米国政財界の都合の良いように資産運用させる目論見だ)などという、偏頗な議論に紛らわされず、当初の趣旨をテーブルの中心において議論することが大切です。

★民営化と言えば、
ところで、地上派民放テレビ局各社の今後の経営にとって、これまで民業を圧迫していた筈のNHKの民営化はプラスでしょうかマイナスでしょうか?
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2009年2月13日金曜日

麻生首相だけではない身内の離反

●オバマ政権の次期商務長官、就任を辞退 共和党議員(2/13WSJ、FT)
7890億㌦の景気刺激策が可決間近を間近に控えつつ、超党派の経済チーム作りを掲げていたオバマ政権に痛手。

人気のある政策が、必ずしも正しい政策とは限らない。選挙に勝っても負けても、モラルハザード問題では妥協しない共和党の姿勢は正しい。イラク戦争が致命的だったのです。

昨日更新の「米国民が嫌いでも米国債を買わざるを得ない」中国は、議会制民主主義の国よりも大胆に人気のあるばら撒き政策をすることが可能でしょう。

リーマンショック以降の、人民元の対米ドル頭打ち⇒今後暫く下落基調、という「七転び八起き」の天邪鬼説の背景にはこのような考察があります。

今朝の日本経済新聞1面のコラム「公的資金ドミノ」も大変参考になります。「政府支援下の米クライスラーがイタリアのフィアットから出資を受ける」なら、公的資金による「融資を即刻返済させるべき」とオバマ大統領に釘を刺したのは、身内である民主党の上院議員。

●小泉氏発言、政権運営に“暴風”-「倒閣に発展」の見方も(2/13読売新聞ほか)
小泉氏の発言により、2次補正予算関連法案の採決で造反者が出る可能性が出てきた。政府・与党は来週にも、衆院の3分の2以上の多数で再可決する方針だが、「チルドレンが軽挙妄動する恐れはある」(副幹事長)といった懸念が生じている。16人反対すれば再可決できず、その場合、麻生政権の命取りになりかねない、と読売新聞。
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2009年2月12日木曜日

日興コーディアル証券とワークシェアリング

●米国債の購入は続けざるを得ない-中国の金融当局高官が語る(2/12FT)
米ドルの下落リスクは承知していても、世界危機において米国債購入継続は唯一の選択肢だ、日本国債や金よりはましsafe havenだと語った。

同高官は、グラス=スティーガル法が金融危機の火に油を注いだ一面を指摘。ただし、中国は商業銀行と投資銀行の分離政策を続けるとのこと。

金融危機と銀証分離を結びつけて論じたのは、要人クラスでは彼が初めてでは?ちなみに、要人以外では私?

2008年9月19日:カインの末裔であってはならないモルガン家
2008年10月17日:モラルハザードとファイヤーウォール

さて、銀証分離と言えば、旬の話題は、

●日興コーディアル証券買収、3メガ銀が週内名乗りへ(2/12読売新聞ほか)
米シティグループ傘下の日興コーディアル証券の売却問題で、三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループの大手3グループが買収の意向を週内にシティ側へ伝える見通し。

約25兆円のリテール(個人、小口)顧客資産を抱えた日興コーデは、「50年に1度の出物」とも言われる(読売新聞)らしい。

民事再生法の申し立てをしていた大阪万博跡地のエキスポランドは、新しいスポンサー(買収してくれるひと)が見つからず、再生処理を諦め、破産手続きに移行しました。

エキスポランドが「50年に1度の遊園地の出物」ではなくて、日興コーデが「50年に1度のリテール証券」だというのは、メガバンクの経営者が「やはり金融は規模が大切」と信じ切っており、また証券ビジネスは(遊園地事業と異なり)構造的に悪いのではなくて、今たまたま悪いだけだという考えで一致しているからなのか。

我が国に限っては、銀証分離の本音は、ワークシェアリングに過ぎない私は断じています。
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2009年2月11日水曜日

金融安定化策、ガイトナー演説に市場はソッポ

●米銀の大掃除のために2兆㌦(2/11FT)
しかし、投資家の最初の反応としては、こぞって皆の親指を下に向けたとFT紙。

米国株は5%近い大幅下落で、昨年11月20日以来の安値で引けた。この日はちょうど、ブッシュ政権が当時の金融安定化法、つまりポールソン前財務長官の7000億㌦計画の具体的なフォロースルーを行わないことが明らかになった日だとWSJ紙は、比較しています。

一日延期で待ちに待ったガイトナー財務長官の発表だったのに、官民一体ファンドのことなど、具体的な詳細が詰め切れてなかったことが市場の失望を呼んだと各メディアは報じています。

具体性や実現可能性を問いたい市場の心理も理解出来ますが、(最大)2兆㌦という数字をぶち上げれば良かった筈も無い。

オバマ大統領-ガイトナー長官ラインの政策目標は表向きは、「米国には1兆㌦の需要が足りない」という認識に立ったもの。

一方、IMFやゴールドマンサックスの推計は、米国金融の不良債権は海外に負担を負わせている分も含めて2兆㌦という点で一致。

総予算1兆㌦のパーティー(会合名はニュー・エコノミー)で散々食い散らかして、財布が空っぽの参加者が知らぬ顔して立ち去ったあとのごみ溜めと化した会場に到着して請求書を突き付けられているのがオバマ氏でありガイトナー氏であるとすれば、弁済方法次第で米国株や米国通貨が反転するかの期待することが馬鹿げているのでは。

2兆㌦のうち“真水”が幾らで、更にその内訳として、我が国流に言えば、政府紙幣が幾ら幾ら、無利子国債が幾ら幾らと具体策が示されても何の意味もない。

毎度お馴染み(!?)、絶対に実現しない「七転び八起き流」のニューディール政策を提言するならば、銀行が抱える全ての不良資産と不動産をネットオークションにかけて、世界中の投資家が入札できるようにする。政府がやるべきことは、「ネット販売につき、念入りな事前審査は不可能でしょうから、瑕疵担保責任は米国政府が全て負います」と、二次損失を国家予算で保証すること。

日本長期信用銀行⇒リップルウッド⇒新生銀行、で日本政府がやらされたことを、逆に、かつ公明正大にやれば良いのでは。

米国は、やる気になればこれは出来るのですが、問題は欧州。ユーロ圏にしても英国にしても、これをやるだけの自由度と財力が無いからです。
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2009年2月10日火曜日

日産自動車、ルノー、プジョー

●仏政府、ルノーとプジョーに30億ユーロずつ融資へ(2/10ロイター)
フランスのサルコジ大統領は9日、国内自動車メーカーのルノーとPSAプジョー・シトロエンに、それぞれ30億ユーロ(38億9000万ドル)融資すると発表した。両社は見返りに国内雇用を維持するとしている。

今回の措置に対しては欧州の一部の国が反発しており、欧州連合(EU)の欧州委員会も内容を精査する意向を示している。

ルノーと言えば、もちろん、

●日産自動車、通期赤字2650億円。従業員2万人削減(2/9各紙)
国内で1万2000人、海外で8000人。全世界の従業員の約1割に相当。

10年前に日産自動車のCEOとなったカルロス=ゴーン氏は大胆なコストカッターとして名を馳せた。一部メディアは「“ゴーン”流、再び?」と描くが、日本国政府に資金繰り支援を求める姿は、資本の論理に従いやるべきことはやるかつての“ゴーン流”とは異質だと感じるのは私だけでしょうか?
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2009年2月9日月曜日

無利子国債とタンス預金

経済学を学ぶには数学が必要、と断言すると、一部のコテコテのマルクス経済学者に叩かれますが、高度な数学を使えるお利口さんにとっては経済学は朝飯前という、「逆」は、必ずしも成り立ちません。

政府紙幣や無利子国債の是非についての議論。高等数学が正論を導くとは言えません。万人を納得させる論理を積み重ねても、意見が分かれるのが経済学の面白いところでもあり難しいところ。尤も、数学にも不確定性原理(ゲーデル)というのがあります。経済学の場合は、日常の具体的なテーマですら十分に不確定なのです。

政府紙幣については先週十分叩きました。これは与謝野経財相も同意見。その与謝野氏もバッサリとは斬らない無利子国債。

まず一言、「七転び八起き」の意外な考えを申し上げれば、本来は同様にばら撒き政策に他ならない政府紙幣という政策に比べて、経済上の効果や国民の反応が判りにくいという特徴があり、目眩まし政策としてやってみる価値だけはあるのではないか。。。

30兆円にも上ると日銀が推計するタンス預金。信用創造サイクルから脱線したベースマネーを何とかしなければ経済が浮揚しないというのが政策意図。先月の日経CNBC生出演とオンラインセミナーで使った米国のベースマネーとマネーサプライのグラフ(出所:FRB)をご覧頂くと、リーマンショック後の米国は同様の病気に侵されていることが見てとれます。中央銀行が国債に限らず形振り構わず民間資産を買い上げ“お札”を市中に供給しても、家計は銀行を信用しない、加えて銀行は融資先を信用しないゆえに、マネーサプライが意外と伸びないという現象。難しい用語を使いますと、信用創造の乗数や通貨の流通速度は、政策当局が調節できないほど落ち込んだままになっているのです。

マネーサプライさえ増やせば良いという政策が正しいかどうかは、「“為替力”で資産を守れ」に譲ります。

仮に政策目標が正しいとすれば、タンス預金に照準をあわせて無利子国債を発行しようが、引き続き中央銀行に金融緩和策をやらせようが、差はない。問題は、中央銀行が民間のどんな資産を買うか?無利子国債の発行代金という新たな財源で政府がどんな資産を買うか(どのような公共投資をするか)?つまりは、採算性を重視しない事業主に、予算の使い道をどこまで任せられるのかということがより深刻だと考えられます。

最後に、30兆円のタンス預金が、ペイオフ解禁のせいか、断トツに高い我が国の相続税率のせいなのか、わかりませんが、無利子国債の発行が万が一決まれば、現金の還流だけでなく、預金の解約も進んで、預け渋り対策+貸し渋り対策としては効果が中和されてしまう可能性も指摘しておかざるを得ません。ただし、やってみないとわからない。ゆえに、目眩まし効果だけは認める、と書いたのであります。

ところで、今、イギリスでは家庭用金庫が空前のヒット商品になっているそうです。無利子国債は家庭用金庫産業をクラウド・アウトする可能性はあります。それと、無利子とは言っても、政策当局が発行量を調節することによって、家庭用金庫の購入費用程度のプレミアム発行(無利子どころかマイナス金利になる)にすることも出来るし、相続税の軽減策をケチれば、ディスカウント発行(事実上有利子になる)にすることも出来ます。

貧乏家系の「七転び八起き」としては、無利子国債が実は「泥船」であって、無利子国債を買った人の多くは、過去に相続税や贈与税だけでなく諸々の脱税を犯してきた可能性が低くないと推定し、税務署に現金の出所を調べさせ、様々な不正蓄財を一網打尽に暴くきっかけになるとすれば、モラルハザードのない公正な競争社会と財政再建を同時に実現できると考えますが、二世議員を中心とした我が国の世襲政治にこれを期待するのは絶対に無理でしょう。
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2009年2月6日金曜日

政府紙幣は麻薬、伊吹文明氏

まさかヘリコプターでばら撒かれるのではないでしょうが、当ブログがこのようなばら撒き政策には一貫して反対してきました。

理由は3つ。

(1)貨幣錯覚が起こりうるという想定の誤り

2008年9月26日「貨幣錯覚は幻想に過ぎない」

(2)モラルハザード(やり逃げ)の防止こそ、健全な資本主義にとって唯一無二のルールであること

2008年10月17日「モラルハザードとファイヤーウォール」


2008年9月24日「良い銀行と悪い銀行」

(3)中央銀行が金融政策の範囲を広げている現状で、この手の議論のどこに意味があるのか、冷静に受け止められていないこと

2008年12月19日「米ドルはどこまで腐敗するのか?為替介入はありやなしや?」

2008年12月11日「中央銀行とは何ぞや?」

減反政策見直しの足を引っ張る古き悪しき自民党ですが、市場原理主義への徹底批判が渦巻く中、モラルハザード政策を麻薬と喝破する政治家も少なからずいらっしゃるのもまた自民党であります。

さて、市場原理主義もどきに対して、それ見たことかと鬼の首を取ったような書籍や、規制緩和推進派だった有名経済学者が懺悔した書籍が馬鹿売れしているようです。市場原理主義(もどき)への批判は今に始まったことではなく、市場の失敗(政府の失敗も同様に深刻ですが)という経済学用語には古い歴史があります。その代表格が、「公共財」すなわち営利企業に任せておいても供給されづらい道路や公園のようなものです。

インフラとか産業基盤と言い換えても、相応の文脈において、同義語です。

ご覧のとおり、私はブロガーとして、ばら撒き政策、モラルハザード政策を断定的に否定しつづけてきました。簡単に言えば、「政府はゼロサムゲームの邪魔をするな」ということ。しかし、もちろん、物事には二面性があります。

マクロ経済は本当にゼロサムゲームなのか?「買って損をした人がいれば、売って得をした人がいる筈だから、社会全体としてはチャラだ」という自分の考えに間違いはないのか?

反論があるとすれば、こういう理屈ではないでしょうか?

マルクスの歴史観も、マルクスを批判する立場の歴史観も、いったん忘れて、人類がどうやって物質的に豊かになってきたかを思い起こしてみますと、ひとつは技術の進歩(発明や発見など)であることは明らかで、もうひとつは、

自給自足⇒物々交換⇒お金(貨幣)の流通⇒お金の貸し借り(金融=信用創造)

という経済のインフラの整備だと考えています。100年に一度の云々とは、金融が壊滅的となり、場合によってはその一歩手前の貨幣(通貨)まで怪しくなるかも、というインフラの破壊であるから、政府が乗り出さなければならない、という指摘はありうるかも知れません。

ちなみに現段階は、多くの国では、通貨危機までは至っておらず、金融(信用)の収縮が、貨幣の価値を尋常でないほど高めているというのが現状です(Cash is king)。極端な荒療治は、紙切れの価値が無限大に高まることはありえず、どこかで反転するまで放置しろというもの。しかし、当ブログをしばしばパクッている元市場原理主義者の先生方も、そこまではおっしゃらず、埋蔵金をここぞとばかりに使いましょうというご意見やら、それこそ政府紙幣云々とのご意見が聞こえてきます。

荒療治では選挙に勝てないから、麻薬でも抗生物質でも兎に角形振り構わずばら撒けという政策は、貨幣流通インフラにまでは浸食していなかった危機の程度を寧ろ高めます。

昨夜の利下げ後、一瞬健康状態を取り戻したかに見えるかつての基軸通貨国家イギリスも、そしてユーロ圏では、スペインやアイルランドも、本日のテーマ「麻薬としての政府通貨」に手を出さざるを得ない状況にあると考えられます。ばら撒き政策の技術上の問題としては、国別に中央銀行があり、国債等の買い切りオペ(マネタイゼーション)という選択肢が終始残されている日中米とは好対照です。
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2009年2月5日木曜日

日本綜合地所、会社更生法を申立て

不動産、特に居住用不動産の壊滅的な状況については今日は語りません。

何と言っても、日本綜合地所が話題になったのは、新卒採用の内定切り。

派遣切りと並び、非人道的と非難を浴びた、内定切りも、

「今思えば、倒産の可能性が高まった時点で別の就業機会を一刻も早く探したほうが良いと警告を促したのは親切心だった」

という意見もあれば、

「大企業が学生に内定を出す時期が早くなり過ぎているのがそもそも問題だ」

という意見もあるでしょう。

内定を出すのも取り消すのも、新卒で大企業に入って、つつがなく暮らせば、定年まで面倒を見てもらえるという不文律(判例法)に多くの日本人が依存し、またその頸木から逃れられずいることの裏返しに過ぎません。

当ブログが繰り返し申し上げている、

「派遣切りが非人道的だとしても、派遣の範囲を狭めれば解決できるものではない」

すなわち、本来は大企業の正社員にも、根こそぎ、雇用調整や産業構造の変化に応じて離職や転職を強いるのが資本主義の健康な一面であるはずが、その機能を、非正規雇用に皺寄せしているという指摘がここにも当て嵌まります。
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2009年2月4日水曜日

エルピーダ、公的資金の申請を検討

日経のスクープは、一般企業の延命のための政府関与の第一号となるのか?

国内外で報じられている、

●“Buy American"政策に対し、EUや日本がWTO提訴を検討(2/4FT、日経など)

というお互いの保護主義を論う(あげつらう)動きと並べて見ていかなければなりません。

半導体メモリーの代表格D-RAMは、厳しい国際競争と、韓国の形振り構わぬ産官一体運営で、寡占市場に陥っており、いずれも韓国系の上位2社で50%弱のシェアを占める。エルピーダは、これらに次ぐ3位。1999年に日立とNECの半導体製造部門の統合で誕生した現在では国内唯一の専業メーカーは、韓国勢などとの競争で苦戦したが、現在の坂本社長のターンアラウンドでシェアを回復。2008年第一四半期のシェアは18.9%。

この間、かつては日本の電機メーカーが席巻していた半導体製造分野から有名企業が次々と撤退(三菱電機はエルピーダに統合)。エルピーダと技術提携している独キマンダは先月経営破綻。

公的資金による民間企業の破綻回避については、当ブログが毅然と主張するモラルハザード問題をどこまで犠牲にできるかという価値観に絡みます。与党政治家の皆さんの意見としては、せめて金融機関に限定すべきという考え方が少なくともかつては強かった。本件は、エルピーダと同盟関係にあったとは言え、独キマンダは野垂れ死に、日本のナショナルフラッグは守るという態度が、EUから見られて大丈夫か?

Buy Americanを唱え始めた米国にもマイクロン・テクノロジー(旧テキサス・インスツルメント)があり、黙って見てはくれないでしょう。ちなみに、我が国ではエルピーダの工場は東広島に、マイクロンの工場は兵庫・西脇にあります。「国内に競争相手がいないので、モラルハザード問題は軽微」とはいかないのが企業城下町の論理。資本が国内であれ国外であれ雇用を守ってくれれば良いのであって、不公平を許すのは簡単ではありません。
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2009年2月3日火曜日

BNPパリバ・ショック、再び

●資金流出の懸念-中国(2/2ITH)
中国国民が海外送金で資産を逃避させる動きや、中国国内に投資していた海外資本が一転引き揚げる動きが加速していると報じています。

●出稼ぎ農民の7人に1人が失業-春節後の中国(2/2FT、IHT、WSJ、日経)
暴動が起きてもおかしくない状態だとFT紙。社会不安が、資本逃避の一因だとは上記IHT紙。

資本逃避の最大の犠牲者は、東欧や中央アジアかも知れません。

●カザフスタン、国内最大の銀行を国営化へ(2/2FT)
国営化後、ロシアの国営貯蓄銀行への売却も検討だとか。本件で解任される銀行の会長は、野党立ち上げに関与したり、汚職の疑惑で、7年前に逮捕された経験を持つ。銀行会長復帰後も、政治活動は禁止されていたとか。

いわゆるBNPパリバショック(2007年8月)の時点では、カザフスタンの銀行全体で450億㌦以上もの海外資本を調達していたそうです。理由は、国内の預金や借入よりもコストが安かったから。昨年12月ひと月だけで、海外資本の引き揚げと預金の取りつけ騒ぎ、そしてやむを得ず進んだ貸し剥がしで、カザフスタンの銀行全体で1.54億㌦の純損失を招いたとされます(上記国営化のために投与される公的資金は20.6億㌦)。

BNPパリバと言えば、

●不正利益没収へ-アーバン問題で日証協、過怠金10億円超も(2/3日経)
業務改善命令に留めた金融庁よりも自主規制機関の処分のほうが厳しくなった点に、日経は着目。

ちなみに、私の着目点は「外部検討委員会という仕掛けまで作ったのに、金融庁の業務改善命令を免れなかったのは、●●●●の力不足だ」とトップを批判する下々の金融リテラシーの低さ。過怠金云々ではなく、かつてのシティバンク同様、日本から退場命令が下される程度の悪質な事犯だという認識は、証券六法を読んだことがあるかないかの問題ではなく、証券会社の役職員として肌で感じなければいけない常識。実行犯本人は論外として、そこに牽制すべき法務、監査のイノセンスこそ、セレブな勤務環境や報酬に値しない。
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2009年2月2日月曜日

双子の赤字、ニッポン

●温家宝総理、更なる景気刺激策を約束(2/1FT)
昨年暮にぶち上げた4兆元(約60兆円)の財政パッケージに加え、新たな対策を検討。国内経済を刺激し、個人消費に火をつけたい、とFT紙の独占インタビューで。だからと言って、「中国国内に淀む莫大な貯蓄が世界金融危機の一因だ」という馬鹿げた非難には一切与しない、と。

景気刺激の方法として、人民元の切り下げをハッキリとは否定しなかったものの、中国政府が人民元相場を「均衡のとれた妥当な水準」に保つべく努力してきたことを強調。「多くの人々はこの点に気づいていない。もし人民元がグローバル市場に翻弄され(ユーロ/ドルやポンド/ドルなどのように-筆者注)ジェット=コースターみたいな乱高下をしていれば、事態はより深刻だったであろう」と語った。

「今後も米国債を買い続けるか?」というFT紙記者の質問にはハッキリと返事せず。「外貨準備は国内需要刺激のために必要。一方、そのためには既存のドル建て資産の価値を維持しなければならない」。

これこそが、日経CNBCにて申し上げた、中国政府の外貨準備にまつわるジレンマです。ちなみに温総理は、IMFや世界銀行への融資目的で外貨準備を使ってほしいという世界の期待に応えるつもりはないとピシャリ。これら国際機関(という名の米国傀儡組織-筆者注)の組織改革が先だろうと語った。

日経CNBCと先週のオンラインセミナーでお伝えしたもう一つのメッセージは、

「中国は、景気刺激のための財政ばらまき政策が効果的かつ実効性が高い、世界で唯一の国」

であるということ。財政赤字、貿易赤字、家計赤字の国では、ばらまき政策は高インフレを起こすだけ。これを機会に生活水準を見直すしかないのです。日本は米国に近いでしょうか?中国に近いでしょうか?直近は、家計以外の二つは赤字。いわゆる双子の赤字に陥っています。

2009年の為替を見通すために、人民元VS米ドルは、難しいながらも重要な視点。この機会に是非、

「“為替力”で資産を守れ」(アスキー・メディアワークス、1,260円)

を是非お読みください。

月が改まりました。2月いっぱい、フェニックス証券にFX口座を開設していただき、1取引以上を成約してくださったお客様全員に書籍をプレゼントさせていただきますので、そちらもご活用ください。
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2009年1月30日金曜日

為替操作国呼ばわりされた中国と偽ドル工場呼ばわりされた北朝鮮

●為替操作国と名指された中国、米国新政権に対して、最大級の非難-欧州外遊中の温総理(1/29FT)
ダボス会議出席をはじめとする欧州各国歴訪で、自国に次ぐ世界2番目の輸出大国ドイツを訪れた温家宝総理。メルケル首相との対談後の記者会見で「人民元政策は市場のニーズに合致したものであり、柔軟性に富んでいる。

先週、ガイトナー米財務長官が、長年の“タブー”を破り、中国に対して、輸出を保護するために人民元を人為的に操作していると批判したことに対する声明。世界の為替相場がジェット・コースターのようなボラティリティに晒されているが、それが中国のせいにされるとはけしからん、と。

ところで、温首相が訪ねたドイツは、ほんの20年弱前までは半分は共産圏でした。2月号のFACTA(月刊:ザ・ファクタ)で、人気コラムを連載中の手嶋龍一さんは、東ドイツ出身の欧州中央銀行(ECB)政策担当者をベルリンまで訪ねてきた北朝鮮高官が、

「わが朝鮮民主主義人民共和国が偽ドルを刷っていると中傷するものがいる。笑わせてはいけない。偽ドルというが、ニクソン・ショックで金とドルの兌換をやめてしまったドル紙幣のどこがホンモノだと言うのか」

と語ったという話を伝え聞いたと書いておられます。偽物のようなホンモノ、ホンモノのような偽物。このテーマは、昨年来、当ブログで追っかけていたものですが、北朝鮮高官の「不換紙幣自体が偽物」発言はさすがに詭弁。しかし、通貨とは何ぞや?不換紙幣とは何ぞや?基軸通貨とは何ぞや?なかなか痛いところを突いた、見事な詭弁です。

西側社会への意外にも太い地下水脈、贋金作りという大罪を平然と弁護する詭弁能力。勿論、皮肉で申し上げているのですが、北朝鮮の国力はあなどれないと感じます。

【本日最大のニュース】
わが処女作「“為替力”で資産を守れ!」(アスキー・メディアワークス、1,260円)が、いよいよ本日発売開始となります。昨日今日のブログの土台となっている、深くてわかりやすい経済その他の読み解き術が満載の書籍。

今日の東京はあいにくの雨ですが、傘をさしてさっそく「書店へGo!」

ついでに、

外国為替証拠金取引をやるなら、フェニックス証券。主要通貨ペアのスプレッドが「2銭でGo!」
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2009年1月29日木曜日

意外とミーハーな私【号外】

只今、打ち合わせ先から銀座線で会社に戻ったのですが、日本橋で地下鉄から降りたところ、福井日銀前総裁が乗り込んでこられました。先方は、高島屋の買い物袋を持っておられ、当方は、フェニックス証券謹製のエコ・バックを偶然持っていたので、「これからはコチラをお使い下さい」と差し出そうかと一瞬考えましたが、どうしても直ぐにトイレに行きたかったので諦めました。

福井前総裁を間近に拝謁するのは実に17年振り。初回である前回は、福井氏が日銀理事として金融制度審議会に出席されていたとき。大蔵省(当時)の一室で、色んな人が色んなことを言うのですが、その中で福井理事(当時)の発言は断トツに切れ味があったのを今でも覚えています。

果たして、グリーンスパン氏が五番街で買い物をしたあと、地下鉄で家に帰るでしょうか?細かいことを言うときりがないですが、日本は良い国だと一瞬思った、夜の一こまでした。速水総裁の時期の議事録が公開され始めています。そのうち、福井総裁時期のも詳しくわかるわけで、とても楽しみですが、そのころは日本は景気が回復しているのでしょうか?わたしは、日本の景気回復は、中国より遥かに遅く、米国にすら先を越されると見ています。短期=円高、長期=円安。そのココロは、是非、『“為替力”で資産を守れ!』を御笑読ください。
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2009年1月28日水曜日

FX業者は絶滅するのか!?(其の参)

昨年の日本経済新聞、今週の読売新聞、NHKの報道にもありました

「FX会社の顧客資産に、《証券会社並みの》全額信託保全を義務付けへ」

の話。いよいよ来週にも、内閣府令改正案が金融庁から公表され、同時にパブリックコメント募集となりそうです。

改正のポイントは3つ。

①FX顧客から預った証拠金(=顧客資産)は、全額、信託銀行で区分管理されなければならない。

これまでの区分管理ルールは、預金(但し別名義口座)、一部信託(残りはカバー先の外国銀行等への差入証拠金)という方法が許されていたのが、今後は駄目になるということ。

最大の論点だったLG(Letter of Guarantee=信託銀行がカバー先の外国銀行等に差し入れる保証書)方式が認められるかどうか、の結論も、原則駄目ということになりました。原則に対する例外は、債務不履行時のLG実行の際、カバー先債権が顧客返還債権に劣後する信託保全のみ。

LGに依存して《全額信託だぁ!》と顧客保護をアピールしていたFX会社にとっては、茫然自失となるルール改正なのです。

②ロスカットルールが存在しない業者、または機能していない業者に対する取締り。

対面中心のFX会社に該当業者が存在するらしく、当然のルール改正だと思われます。

③極端な低スプレッド、極端な高レバレッジを標榜しているFX会社に対して、適正なリスク=リターンのビジネスになっているのかどうか監督監視を強める

最後のポイントは内閣府令改正ではなく、監督指針改正で対応するそうです。

金融庁としても、上記のうち特に①が、FX業界に凄まじい激変をもたらすことは承知のうえです。すなわち、
①’LG方式は認めるが、全額信託は義務付け
①”一部信託(+カバー先預託)は認めるが、預金は認めない
という比較的緩やかな規制強化案と比較検討していたものの、まさしくリーマンショックにより、LG方式を特別扱いする道理は消えた。よって最も厳しい規制強化案に落ち着いたと考えられます。

今後の猶予期間中に、増資等により自己資本規制比率を増やせる業者がどれだけあるかにもよりますが、現時点では、区分管理に関して①”に落ち着いていたとしても、業界の3分の1以上が、①’であれば3分の2以上が廃業または業務停止に追い込まれるという意見があります。

ましてや、今回の結論①では、生き残れるのは健全経営の極々僅かなところに留まってしまう
でしょう。パブコメで大手を含む殆どの業者からの反論-特に《LGだけは全て認めろ》等-が予想されますが、逆に、「有事でのカバー先優先のLG」は認められなくなるぞ、と金融庁に指導され、わざわざ高コストな区分管理方法に変更した優良業者にとっては中途半端な妥協は許されないでしょう。

今日のブログはフラッシュニュース。本来はもう少し背景なり、区分管理の意味合いや重要性、そして上記③の「向こう見ずなスプレッド競争やレバレッジ競争」への影響について解説をしたいところです。私自身は、幸いにも、こうした動向を相当適度予見することが出来て、FX会社を経営してきたつもりです。

おかげさまで、明後日発売の『“為替力”で資産を守れ』で、今日のフラッシュニュースと同時に解説申し上げたい内容を、一章を割いて、たっぷり書かせていただくことが出来ました。FX取引に関わりのある皆様、どうぞ書籍をお手にとってご覧になってください。

参考過去記事:
FX業者は絶滅するのか!?(其の壱)
FX業者は絶滅するのか!?(其の弐)
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2009年1月27日火曜日

為替だけではない米中の保護主義合戦の火ぶた

●ガイトナー氏を財務長官に正式指名、米国上院(1/27WSJ)
先週、中国に対して経済「冷戦」の宣戦布告をし物議を醸した同氏。オバマ陣営の閣僚人事のなかで最もトラぶった財務長官ポストがこれで解決したとWSJ紙はブレイキング・ニュースで伝えました。

●人民元問題で論争を避ける、IMF長官(1/26FT)
「為替操作国」だとレッテルを張るかどうかが問題ではない、とドミニク=ストラス=カーン長官。しかし、「中国政府は為替操作を自覚しているのは明らか。人民元が実力以下にしか評価されておらず、より柔軟な変動相場に晒されるべきだとIMFは繰り返し主張してきた」とFT紙とのインタヴューで答えた。

人民元を巡っては、IMFは2007年に「米国政府寄り」に政策転換をしているが、それ以前のIMF首脳は、米国政府の代弁者としてIMF自体が人民元引き上げを扇動する動きを批判している。

●化石燃料依存からの脱却を-オバマ新大統領(1/26FT)
自動車の燃料効率の基準をより厳しくする一方、米国内各州に対して温暖化ガスの削減目標を設定。

温暖化対策を怠っていたブッシュ政権から大きな政策転換だとFT紙は報じるが、新大統領は「中国とインドも同調することが必要。全世界の協調なしに、米国がひとり温暖化対策に踏み切ることはありえない」とも語っている。

真面目な車作りを続けてきたメーカーにとっては、燃料効率と温室効果ガスの基準厳格化は買い替え需要を煽るのでプラスの材料の筈。しかし、旧ビッグスリーにとっては、肺炎患者が乾布摩擦を処方されるようなものかも知れません。

ブッシュ政権と異なり、原油高政策を採る必然性のない(?)オバマ政権としては、必ずしも中国とインドを牽制することなく、自国完結型の環境政策をぶち上げても良かったのではないかと思うのですが、、、政権発足後、まだ1週間足らずで、米中は為替と環境と両面で軋み始めております。
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2009年1月26日月曜日

第8回オンラインセミナー、今夜8時

先週金曜日のブログ、人民元の記事は、アクセス数が倍増しました。

米中の経済「冷戦」は予想通りというよりは、オバマ新政権発足の週にいきなり口火が切られるとは寧ろ意外。米国経済の問題を、オバマ新大統領が(1兆㌦の)需要不足と断言していることに大いに関係がありそうです。

自国の首相を叩きまくっている日本の殆ど全てのメディアが手放しで歓迎し期待を膨らませているオバマ氏ですが、米国経済の課題を需要側に求めるのが正しいのかどうか、私には疑問があります。

売れない自動車を作り続けようとしている過去形となったモノ作り、金融の技術革新や自由化に合わせたビジネスモデルの進化を実現できなかった金融業界、そして何よりも、家計においては借入枠と可処分所得をごっちゃにした過剰消費。

持続可能な筈がなかったこれらの矛盾が破綻したと考えれば、米国の経済の問題は、需要側ではなく供給側にある。あなた方、米国民が住むべき家は、もっと貧粗で狭い部屋だ。これこそ、新大統領が演説の中で用いた「現実(real)」という言葉であり、選挙民につきつけなければならなかった現実でしょう。世界経済のなかで、需要側に課題があるから内需刺激策が功を奏しうる国は、貿易黒字と財政黒字という糊しろを持つ中国以外にない、というの私の持論です。

しかし、正論を吐いては民主主義国家では政権をとれません。結果、米中は保護主義路線に突き進まざるを得ない。世界最大の外貨準備高、特に米国債という首根っこを押さえている中国の人民元政策こそ、米ドルの信認のカギを握っているという点こそ、2009年の為替相場を見通すうえで、最重要ポイントとも言えそうです。

先々週末の日経CNBCアジアマネーでのお話と重複しますが、今夜のオンラインセミナーをどうぞお楽しみに。今夜はすでに予定が・・・とおっしゃる皆様は、31日発売の「“為替力”で資産を守れ!」もご参照ください。昨年からずっと注目している中国のことを色々な角度で書かせていただいております。
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2009年1月23日金曜日

人民元が鍵を握るオバマ政権下の為替相場

●ガイトナー新財務長官、中国の為替操作を非難(1/22FT、IHT)
ポールソン氏の後任財務長官としてオバマ大統領が指名しているガイトナー氏。米国上院での質疑で「外交上も“強硬な”手段で中国政府と立ち向かう」と意思表明。

前任のポールソン氏も、これまで時々、中国の「自国通貨安」を批判してきたが、中国を「為替操作国家」と正式に告発しろ、という議会からの圧力には抵抗してきた(FT)。勿論、これは米国にとってのジレンマ、即ち中国政府を怒らせて、その大量に保有されている米国債を堂々と売却されては堪ったものではないという事情があるからです(IHT)。

中国が人民元のドルペッグ制を廃止したのは2005年。管理された変動相場になって以来、人民元はドルに対して約20%増価しています。

ところで、上述の「米国にとってのジレンマ」の裏返しとして、先週金曜日に日経CNBCで喋りました「中国にとってのジレンマ」があります。リーマンショックで加速したドル安は、オバマ政権によるバラマキ政策と、既に始まっている連邦準備制度による米国債に限らない形振り構わずの市中資産買い入れによる未曾有(みぞう)のマネタイゼイション(ハイパワードマネーの供給)で、再加速する恐れがある。但し、只今現在は米ドルは(対日本円を除けば)寧ろ堅調で小康状態。今のうちに米国債を損切りしたいが、損切りするにも、米国債の保有割合(米国債の発行残高に対する割合でもあり、外貨準備高に対する割合でもあります)が高すぎて、自ら動くことが自らの首を絞めるというジレンマです。

中国政府にとっても、外貨準備の評価損をこれ以上大幅に拡大したくないという命題と、人民元の対ドル高基調に戻したくないという命題は、両立が困難な難問なのです。

フェニックス証券のホームページに先週末の日経CNBC「ラップトゥデイ」における人民元の話をアップしました。動画ソフトのダウンロードが少々面倒臭くなっておりますが、お時間のある方、どうぞ本日のブログと合わせてお楽しみ下さい。
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2009年1月22日木曜日

ポンド危機、再び

●2月のG7会合、ポンド安について討議へ=G7筋(1/22日本語ロイター)
ロイターの独占報道で、珍しく情報源が明かされていない。

●ロイズとRBSは国営化されるべき=英国下院財務委員長ら(1/21FT)
ロイズ(旧ロイズ+旧TSB+旧スコットランド銀行+旧ハリファックス)とRBS(旧スコットランド王立銀行+旧ナショナル銀行+旧ウェストミンスター銀行)だけでなく、バークレイズ銀行まで国営化されるのではないかという噂もあり、今週に入ってからの英国ギガバンク各行の株価は大暴落。

ポンドは、対米ドルで7年半ぶりの安値、対円では14年ぶり最安値更新で、昨年ピークの半値に。

主要銀行が概ね国営化されることを社会主義と呼ぶのではなかったでしょうか?今週月曜日に、

《オーバーバンク解消という漢方薬を煎じて飲まないと長期的には資本主義経済圏の病理は何一つ改善しないのですが、短期的にはモラルハザード政策のスピードに応じて、その国の通貨が評価されるという事態が続くかも知れません。政府主導の信用膨張と財政膨張が、当該通貨の買い材料から売り材料に逆転するのが、どの程度「短期的」か、これを占うことが大変難しい。》

と書きました。次いで、翌火曜日には、

《昨夜の為替相場は、円>ドル>ユーロ>ポンド、です。銀行救済⇒量的緩和は、これまで米ドルにおいては買い材料だったのが、昨日は逆だったという点、全てのFX投資家は注目するべきでしょう。》
と続けました。リーマンショック後、マッチポンプのように繰り返されてきた金融機関救済を代表格とする政府の大胆な市場介入が、当該国の通貨の信任として直ちに反応してきた幻想が遂に終わりかけているのが、今回のポンド危機です。

ギガバンクのエコノミストに洗脳された多くのFX投資家は、

★物価指標が予想よりプラス⇒買い材料
★マネーサプライが予想よりプラス⇒買い材料

と長年思い込まされてきました。もともと貯蓄不足であった国において、国外に依存していた資本が引き上げられる信用収縮の局面においては、この大前提が逆転する。というか、金融バブルという特殊な状態が意外と長く続いただけのこと。貯蓄不足だから物価があがる、地下鉄の初乗りが千円以上する国の通貨を喜んで買い続け、更なるインフレ期待でそれを買い増すという大衆心理こそ馬鹿げていたというべきでしょう。詳しくは、昨年5月のフェニックス証券オンライン・セミナーをご覧下さい。
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2009年1月21日水曜日

100年に一度の“言い訳”

そう言えば、一昨昨日の日曜日、テレビ朝日の田原総一郎さんの番組に、自民党を離党した渡辺喜美元行革担当相が出演されていたとき、「100年に一度の危機なんですから・・・」という表現を頻発されていたのを観て、《そこまで繰り返さなくても良いのに》と思いつつ、今週も仕事生活に入って早や3日目。私自身も「100年に一度だからさぁ・・・」という前置きが安易だが便利だと気付き、繰り返し使うことの誘惑についつい負けてしまっています。

以下、具体的な使い方。

★今週月曜日の取締役会。毎月、75歳のオーナーさんがご機嫌よくいらっしゃってくれるのですが、雇われ社長曰く、

「さすがに、100年に一度の危機ということで、年度後半は減益を覚悟しています。」

★従業員に対しては、

「残念ながら、100年に一度だからねぇ。。。年度末の業績賞与は余り期待しないで貰いたい。」

★更には、広告代理店さんに対して、

「広告を続けたいのは山々なんですが、さすがに100年に一度の津波でしてねぇ、、、月々の契約金額を何割程度に減額させてもらえませんか。」

などなど、です。ちなみに、この表現の便利さと切れ味(?)を教えてくれた渡辺喜美氏は行革担当大臣を福田内閣で務められる直前は、安倍内閣で金融担当大臣でいらっしゃいまして、同内閣末期に全国証券大会でスピーチを聞かせていただく機会に恵まれました(2007年9月のこと)。秘書が用意した原稿を無視して、浮かぬ顔また顔、の証券会社社長陣を前に、空気を読みながら笑いを取りつつ本音が炸裂するトークに、渡辺氏の高い能力と志しを感じ取った証券会社社長は私だけでなかったと思います。

★本日発売のマネージャパンMONEY JAPAN(角川SSコミュニケーションズ)で、私の連載コーナーKnowledge Cellarにて大阪大学社会経済研究所のチャールズ・ホリオカ・ユウジ教授との対談が収録されています。取材時期は、ポール・クルーグマン教授がノーベル経済学賞を受賞した直後の昨年10月15日ですが、内容は全く古びておりません。是非お買い求め下さい(取材場所提供:四谷三丁目「チェルト東京」)。
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2009年1月20日火曜日

紳士の国と情熱の国

オバマ大統領の就任式を控えた昨夜は、米国休日のため、そうでなくても注目が欧州に向かうところ。RBS(スコットランド王立銀行)の巨額損失とスペイン格下げが金融市場を震撼させませた。

RBS巨額損失は、ロンドン市場が開く以前に報じられており、日曜日夜FT他が報じた「イギリス政府が、銀行救済の追加策を月曜日に発表か!?」との因果関係が推定されます。

2008年のRBSの損失額は280億ポンド(約4兆円)。これは、銀行業界だけでなく、イギリス全企業の年間赤字記録を更新するものだそうです(ちなみに、抜かされた記録はボーダフォン)。

RBS株は月曜日一日だけで67%下落。3ヶ月前には780億ポンドあった株式時価総額は、月曜日終値で、たったの45億ポンドに、と皮肉たっぷりにFT紙は報道しています。

インターナショナル・ヘラルド・トリビュン紙によれば、ブラウン首相はRBSに対して怒りをぶちまけ「損失の殆どは米国のサブプライム関連の運用と、ABNアムロ買収の失敗(暖簾代なんと200億ポンド)だ。」ということは、「イギリス国民の預金を預かっている銀行が取るべきではない、無責任なリスクだったのではないか!」と語っています。

ブラウン首相の怒りの「中身」が本当であったとすれば、RBSはイギリス国内の不動産関連の損失は処理できる能力が既に無いということを意味しており、実質破綻していることはほぼ疑いないと推定できそうです。アイスランドやアイルランドのような小国の真似をして、100%国家管理という選択肢を避けたい為政者の気持ちも伝わりますが、かつてのイギリス4大銀行のうちのひとつナット・ウェスト銀行を飲み込んだスコットランド地方の発券銀行は、そのバランスシートにおいて、もうひとつの問題銀行HBOS(ロイズTSBにより買収済-株価はこちらも月曜日34%下落)同様、世界最大規模となってしまっていることを考えると、破綻を放置するわけにはいかないでしょう。

日米と比べ、ユニバーサルバンキングの国々では、モラルハザードを気にせず金融システム保全という大義名分で銀行救済策が取られやすい。と当ブログでは皮肉たっぷりに繰り返してきました。預貸金業務を人質に取りつつ、投資(銀行)業務のハイリスク・ハイリターンの損失のつけを血税に回すというやり方にも限度があることを理解する必要があります。

ちなみに、昨夜の為替相場は、円>ドル>ユーロ>ポンド、です。銀行救済⇒量的緩和は、これまで米ドルにおいては買い材料だったのが、昨日は逆だったという点、全てのFX投資家は注目するべきでしょう。

もうひとつ、当ブログで批判を繰り返してきた格付機関。EUに属し、ユーロを採用している故、財政規律に縛りがあり、一国家として通貨供給量の調節も出来ない。つまり、スペインに当て嵌めれば、スペイン国債を乱発してスペイン中央銀行に買い切りオペをさせて勝手にユーロ通貨を市中にばら撒くということは出来ない筈なのに、格下げとはどういうことでしょうか。通貨危機や金融・不動産危機により、ユーロ採用を拙速に検討しはじめたデンマークやハンガリーのような国々がある一方、全く同じ理由・背景なのに、ユーロ圏に(下手をするとEUにすら)留まれない恐れがある国々も出始めており、これまた新たな地政学上の歪みとして注目です。
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2009年1月19日月曜日

バイアグラが売れない!?

●ファイザー製薬、営業部門2400人の雇用を削減(1/17WSJ)
全米のセールスマンsales repの何と三分の一に相当。先日の研究部門800人削減に続く発表。

景気が悪くなると勃起薬が売れなくなるのか?と想像しては行けません。米国の製薬業界の雇用のピークは2006年第一四半期の105,000人。現在そこから1割以上減少しており、ファイザーに至っては2007年1月以上、累計で15,000人雇用削減している、その最大の理由は、後発医薬品との競争で利益率が落ち込んでいることなのです。

ちなみにこの勃起薬ですが、インターナショナル・ヘラルド・トリビュン紙によりますと、スポーツ選手の成績との因果関係が強く疑われる(可能性が強い)。つまり、バイアグラを服用した後だと、速く走れる等の効能が認められるのだそうで、研究が進められている一方、ドーピング検査の対象にするべきかどうか喧々諤々の議論があるのだそうです。

●日興コーディアル証券、売却へ-シティグループ、急遽路線変更(1/18WSJ)
たった3日前には、ほかの個人向ブローカー事業(スミス・バーニー)をモルガン・スタンレーに売却する計画のなかに、日本のブローカー業務は含めないと発表していたのに、直近四半期83億㌦の赤字決算を発表した直後後、方針を変えたと。

ウォール・ストリート・ジャーナルが日曜日夜(日本時間)に報じたニュースは、日本においても注目だと思うのですが、ことの真偽がハッキリしないせいか、どういうわけか、日本のメディアの追随報道は妙に区々です。それにしても、この動き、日興コーディアル証券に対しても、モルガン・スタンレーに対しても、影響力が大いにある筈の三菱UFJは主導権を握っているのでしょうか?

●イギリス、金融機関への追加支援策を今夜発表へ(1/18FT、WSJ)
一発目は昨年10月の4000億ポンド。造反やら再可決やらで物議を醸した米国の金融安定化法案の7000億㌦と比べても、国民所得の規模を考えれば、全く遜色のない乾坤一擲だったが、血税を湯水のように使っているという世論の反動を余所目に、ブラウン首相もダーリング蔵相chancellor of exchequerも、公的資金受け入れ後も貸出を伸ばそうとしない銀行業界に対する怒りと不満を表明すると見られている。

●米国も、銀行救済策を練り直しへ(1/18WSJ)
銀行危機は当初想定よりも酷いとして、財務省、連邦準備銀行、預金保険機構の首脳が次期政権の経済閣僚と議論に入ったと。不良債権買い上げを目的とした「政府系銀行」を設立も。

ゴールドマン・サックスの試算によると、世界中の銀行が米国向けに保有している不良債権のうち、既に2兆㌦は損失が実現しているが、含み損がまだ同規模あるそうです(住宅関連で1.1兆㌦、企業向け貸出と社債で0.4兆㌦、商業用不動産、クレジットカード、自動車ローンで0.6兆㌦・・・)。

●アイルランド最大の銀行を国営化へ(1/17FT)

後半3つの話題、オーバーバンク解消という漢方薬を煎じて飲まないと長期的には資本主義経済圏の病理は何一つ改善しないのですが、短期的にはモラルハザード政策のスピードに応じて、その国の通貨が評価されるという事態が続くかも知れません。政府主導の信用膨張と財政膨張が、当該通貨の買い材料から売り材料に逆転するのが、どの程度「短期的」か、これを占うことが大変難しい。
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2009年1月16日金曜日

日経CNBC生出演でパニック

今朝のブログでお伝えしたとおり、本日午後4時から日経CNBC「ラップトゥデイ」に生出演させていただきました。記念すべき私のテレビ初出演となったのは日経CNBCの看板コメンテーターである中嶋健吉さんと対談する「アジアマネー」というコーナーでして、本日の御題は、2009年の為替相場-特に米中の経済対策とドル人民元の相場についてです。残念ながら外国為替証拠金(FX)では人民元は取り扱っていません(これはある意味で人民元に対する中国政府の管理のあらわれでもありますが・・・)。

しかし、リーマン・ショック後の為替の世界は、米中を軸に展開されるという番組の意図は我が意を得たり。ディレクターの井上さんと事前に打ち合わせと資料作りをさせてもらい、簡単な台本も用意されてはいたのですが、番組直前の中嶋健吉さんとの打ち合わせでは、「丹羽さん、台本を無視してやろうよ。そのほうが丹羽さんの面白さが出るよ」と唆され、いざ本番。中嶋さんからは突っ込まれたりフォローしてもらったりで、結構タジタジ。《ただいま、自分は意味不明のことを喋っているなぁ》と思った瞬間も数箇所ある、その再放送は今夜9:00から(再々放送が10:30から)です。

分刻みで動くスタジオが初体験だったこともあり、伝えたい内容の50%程度にとどまったと反省していますが、伝えられなかった部分は、今月末出版の私の著書「『為替力』で資産を守れ」にしっかり書いてございます。

日経CNBCの視聴者プレゼントの対象にもなっております。抽選で10名様にプレゼント。この機会を是非お見逃しなく。

残念ながら当選しなかった皆さんは、是非書店でお買い求めください_m(。。)m_

ちなみに、コメンテーターの中嶋健吉さんは、私にとっては興銀証券時代の大先輩。しどろもどろの私を助けて下さり有難うございました。今後はより厳しい突っ込みにも耐えうるよう、精進致します!
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人民元の偽札がインターネットで購入可能!?

●中国政府、ネット販売されている人民元の偽札の根絶で苦慮(1/16FT)
贋物の高級ブランド品の世界最大の供給基地として長いこと知られてきた中国。それが、今は偽札-それも中国自身の(!)-の供給販売においてグローバル・リーダーに躍り出た、とFT紙。

今月26日から始まる旧正月は、中国にとって米国のクリスマス商戦に相当する消費シーズン。これを目前にして中国政府が不正ネット販売を弾圧しようとするのは偶然ではないとFT紙は分析するが、効果は上がっていないと。

人民元の偽札は、偽札の額面の1割から3割程度の価格で取引され、指定された銀行口座に振り込まれると宅配されるというのが通常だそうです。中国最大の検索エンジン“Baidu"で「人民元の偽札販売」と検索すると、取り扱っているサイトは簡単に沢山見つかるとのこと。

中国の“ネット警察”によってブロックされているサイトも増えてはいる。しかし、昨年、ネット販売による不正薬物が被害をもたらした事件がそうであったように、法的措置を全国一律に講ずることが難しく、撲滅キャンペーンのようなものを仕掛けること以外に有効な手段が見出せないのが中国の特徴だと、FT紙は締め括っています。

人民元の偽札がこれほどまでにネット上で蔓延するということですが、偽札の製造元は上記末端価格よりも安い原価で輪転機を回しているのだから、何故自分で使おうとしないのか?人民元の紙幣のセキュリティの低さは以前から問題だったのが、何故ここに来てネット販売という分野で問題が深刻化したのか?中国経済や通貨管理、為替相場に与える影響は?などなどと疑問点や腑に落ちない点が多々ある中、実は本日午後4時から、日経CNBCで「米ドルと人民元の相場を占う」というテーマで私自身喋らなければなりません。その前に、このFT紙の“スクープ”消化するのは難儀です。
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2009年1月15日木曜日

ボインねたの翌朝

●加ノーテルが破綻-負債3200億円超(1/14WSJ、FT、日経ほか)
一時はカナダの株式市場で最大の時価総額を誇った通信機器超大手。日本だと、NECと富士通を合わせたようなイメージだが、マイクとスピーカーが一体となって手放しで通話が出来る技術はポリコムと並ぶ特許で、なかなか真似が出来ないものだという話を、以前に松下電器産業(現 パナソニック)の幹部の方から伺ったことがあります。

WSJ紙によれば、部品調達先の協力を取り付けており、事業継続のまま再生が目指せるとのこと。債務超過額はGMよりも遙かに「まし」。連邦破産法11条の威力-モラルハザード防止と事業継続に欠かせない取引先債権者の協力取り付けとの調和-を米国自動車業界に見せつけて欲しい試金石か。

●オバマ次期大統領の景気刺激策に43%の米国民が賛成-WSJ/NBCの最新世論調査(1/14WSJ)
しかし、連邦政府はカネを使いすぎだとして、財政赤字の拡大を懸念する声も少なくない、とWSJ紙は報じています。

●米政府、数十億ドルの追加支援をバンカメに約束へ(1/14WSJ)
メリルリンチ買収により、米銀最大規模となったバンカメ。

●JPモルガンチェースのCEO、2009年超悲観論を語る-フィナンシャルタイムズとのインタビューで(1/14FT)
米国では、クレジットカードその他の消費者向け貸付の焦げ付き、失業が通年で増え続ける。米国、欧州とも2009年中の景気回復は無理と、ジェイミー・ダイモン氏は語る。

●アップルCEOのジョブ氏、今年6月まで病欠(1/14WSJほか)
●リオ・ティント会長、退任へ(1/14FT)

ボインねたの翌朝につき、暗いニュースをまとめてお送りしました。
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2009年1月14日水曜日

DINKsとボイン

今月末に書店に並ぶ予定の『為替力』で資産を守れ!の最終校了が昨日午後。私自身が印刷工場で缶詰となり誤植がないかどうか一字一句見直すこと凡そ5時間。「お疲れ様でした。これ以上は、泣いても笑っても修正は効きません」と言われ、新宿の寒空の下に解放されました。

この時点では通常大きな加筆修正はないものなのですが、長時間お付き合いくださった編集長から、「“DINKs”という言葉が、編集部内で意味不明との声が多かったので、括弧書きで(共働きで子供の居ない夫婦のこと)と挿入したいのですが?」と聞かれました。“DINKs”が登場するのは、少子化高齢化と年金問題を取り扱いつつ、日本と中国の比較をした部分です。少子化と年金問題が『為替力』に関係あるのか、ですって?それは大ありなのですよ。

「語釈の挿入は全く問題ないです。しかし、“DINKs”と言われて(書かれて)意味が判らない読者が少なくないとなると、同じ意味を表すコンパクトな別の表現が出てきたということですか。“DINKs”は随分と寿命の短い《死語》になってしまったものですねぇ・・・」と私が訊ねると「少なくとも出版事業という立場では《死語》認定せざるを得ないですね。でも、(共働きで子供の居ない夫婦のこと)を簡潔に表す別の表現があるわけでもないので、語釈の挿入以外に方法はないですね。僕自身は、数年前に“DINKs”のための節税法という記事の編集に携わったことがあるので、僕個人の中では《死語》認定はしていないのですが」と編集長さん。

《死語》と言えば、現代「死語」ノート(小林信彦著、岩波新書1997/1)の中に、“ボイン”が《現代の死語》だと紹介されています。大橋巨泉さんが11PMの司会者としてコンビを組んだ朝丘雪路を指して発した言葉がbuss wordになったものと記憶していますが、ご存知の通り、⇒巨乳⇒爆乳⇒スイカップ、などと置換されてきています。一方、“DINKs”は別のbuss wordに取って代わられたわけではないのに何故死語になったのか?昨夜、校了が終わった後も気になって仕方がありませんでした。

少子化が「深刻化」(?)する中、“DINKs”が増えこそすれ減っているとは思えません。昨夜、テレビ東京「ガイヤの夜明け」で中国の寒村に初めて全自動洗濯機が入るという場面。家族の月収の2ヶ月分で手に入れた夢の機械は農作業と洗濯に明け暮れ、長年、“しもやけ”と“あかぎれ”に悩まされた奥さんを喜ばせたというシーンでした。温暖化のおかげもあるでしょうが、現在の日本の多くの地域では“しもやけ”と“あかぎれ”は死語に近いのではないでしょうか?「現象やモノが無くなった」ことによる《死語》では、“DINKs”は違うようです。

夜、寝る前に思いついた答えは、「現象やモノが《ありふれた》」ことによる《死語》もあるのではないか、という仮説です。温暖化のおかげで、という話をしました。もし、温暖化が更に進み、関東以南の太平洋沿岸の冬は毎日ポカポカ陽気になったとします。「小春日和」が常態化すれば、「小春日和」という言葉は死滅してしまうのではないでしょうか?エスキモーの言葉には「雪」に相当する言葉がないのだそうです。そのかわり、細雪、粉雪、牡丹雪、吹雪、・・・など7種類の言葉があるが、日本語や英語と異なり、●●雪とか●●snowみたいに、語幹に雪(snow)を伴わない。つまり、部分集合に対する全体集合としての雪という概念が存在しないのだそうです。天から降ってくるものは雪以外にはない世界が常態であれば、なるほどと思います。

対立概念があるから、言葉(意味するものと意味されるもの)が存在する、というのが言語学者ソシュールの構造主義。“DINKs”は、エスキモーにとっての雪のように当たり前の存在になりつつあるということかも知れません。
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2009年1月13日火曜日

ガザ危機と商品相場

「七転び八起きブログ」をご愛読くださっている皆さまのなかには、当ブログがガザ危機についていまだに取り扱わないことが不思議だと思われているかたも少なからずいらっしゃるのでしょう。無視を決め込んでいるわけではありません。イスラエルとパレスチナのいずれかに利害関係があって、書きづらいという事情があるわけでもありません。むしろ、ご想像の通り、我が国で入手可能な大手マスコミの情報から導き出される「図式」

少数民族パレスチナ人が被害者⇔イスラエル人が加害者←国連安保理決議でアメリカが棄権

という、勧善懲悪の歴史観に、大国主義の国連が機能しない(米国の政権が「ユダヤ人」票なり「ユダヤ人」の資金力を無視できない)姿が加わる「図式」は、確かに我がブログが従前から忌み嫌っている一方的な見方かも知れません。しかしながら、この一方的な決め付けに対峙できるような情報もまだ入手できておらず、我がブログ独特の天邪鬼なものの見方をご紹介できずにいるというのが本音です。

グルジア問題や北朝鮮問題を通じて、マスコミ等が喧伝する一方的な勧善懲悪を信じてはいけないと繰り返してきた「七転び八起きブログ」。これらにも増して「ユダヤ人」についての関心は、昔から深かったのですが、これまた書籍を含めたメディア全般において、日本において十分な客観的な情報を手に入れることが極めて難しい分野。「ユダヤ人」と鍵括弧付で書いてきたのも、民族の定義からして問題含みであるという指摘がこれまでにも随分されてきました。ここでは、「ユダヤ人」の全てがシオニスト(ユダヤ人は独自の国家を持つべきである《イスラエルを建国すべき》という立場)ではない。シオニストの全てがガザ侵攻に賛成なわけではない。という点だけお伝えし、引き続き私の独自の調査と勉強を続けて参りたいと思います。

宗教問題、民族問題、そして政治について「あっけらかん」としているのが、(例外は多々あれど)日本人の美徳だと申し上げてきましたが、この点逆に、「日本人は外国人相手に宗教、民族、政治の話題をしてはいけない」などと注意が繰り返されることがあります。私自身がこの注意書きを無視して大変なことを招いたことがあるのです。約13年前、イタリアはフィレンツェの料理屋で米国から旅行に来たとおっしゃる中年のご夫妻と席が一緒になりました。職業は、旦那様が大学教授で、バッハ以前の音楽を研究されていらっしゃるとのこと、一方、奥様はお医者様だとのこと。ここでピンと来るべきだったのですけど、音楽の話を徹底的に聞きだしている間に、例の注意書きを忘れてしまいました。名物のTボーン・ステーキを食べ終わる頃、お住まいを聞くと、ボストンだとか。既に酔っ払っていた私は、余計なことを口に出します。「ボストンと言えば、キッシンジャー元国務長官をはじめ、米国在住のシオニストが多く住んでいるところでしょう・・・」。当時の私のユダヤ人に関する知識は、シオニストのユダヤ人とそうではないユダヤ人はもともと民族の出自が異なるという「説」でした。「それは違う!、シオニズムは立場であり(建国)運動である」と、旦那様が興奮気味に語ると、奥様はそれは微妙に違うのでは云々と、旅行気分を台無しにさせる夫婦喧嘩のキッカケを与えることになってしまったのです。締めは「あなたは最初からお判りのとおり、わたしたちはユダヤ人だ。しかし、僕はシオニストだが、妻は違う。立場が違うんだよ」と。

「あっけらかん」と異文化を学ぶのは好奇心を満たすには良いのですが、随分な迷惑を掛けてしまったと今でも申し訳なく思っています。同一宗教(同一「民族」?)だが立場(時に「宗派」?)が違うということが、しばしば日本国外では大きな意味を持つという現象を、わたくしたちは、何何原理主義云々を待たずして垣間見ることが出来ます。何となく仏教徒の子孫という程度の意識の我々の多くが、恋愛や結婚をするときに、宗派は何処かなどと気にすることは一部の例外を除きないのではないでしょうか。

恐らく二度と会えないであろう、あのときのご夫妻に、おふたりそれぞれの立場でガザ問題について伺ってみたいような、万万が一再会してもその話題を避けて、「Tボーンステーキ、味は忘れたけど、美味しかったですね!」という当たり障りのない会話に終始したいか、複雑な心境に陥らせている今日の状況です。

パレスチナ地域を囲み、イスラエル=米国と対峙するアラブ諸国の立場も、決して一枚岩ではない点、最後に申し添えます。ガザ地区で修羅場と向き合うパレスチナ人に同情しつつも、難民流入は困るとして、支援に消極的なエジプトとレバノン。その両国を非難し、反米・反イスラエルを強硬にアピールするイランとシリア。

それにしても、原油価格は上がりすぎても下がりすぎても、紛争の火種になります。18年前の湾岸戦争も、その直前は商品価格が歴史的な安値圏だったことを忘れてはなりません。
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2009年1月8日木曜日

FXで夢を叶えよう

今日のタイトルは、珍しく、フェニックス証券の宣伝コピー。年初から2月いっぱいまでのキャンペーンです。口座開設をしていただき、どの通貨でもいいので、一回取引をしていただくと3000円のキャッシュバックというもの。宣伝コピーは、東欧通・中央アジア通で知られる(?)フェニックス証券の外国為替部長が考えたものです。

プレスリリースもしました。

プレスリリースでは、同時に、毎日お読みいただいているこの「七転び八起き社長のFXダイアリー」が1月31日に書籍化され出版されることもアナウンスしています。書籍の題名は、

『為替力』で資産を守ろう~世界を見る、経済の先を読む力がつく~

というものです。ブログの内容を抜粋し、現時点でも古びていない記事を中心に、テーマ毎に整理しつつ、日々ブログを読んでいただくときと同様の臨場感や緊迫感を失わないように、原則加筆訂正は殆ど行なわっておりません。森永卓郎さんや宋文洲さんとの対談、『為替力』が身につく用語解説など、書籍ならではの構成をお楽しみいただければと思います。

書店やネットでお買い求めいただければとても嬉しいですが、ちなみに冒頭のキャンペーン「FXで夢を叶えよう」の特別プレゼント企画にもなっております。どうぞご活用下さい。

今週は書籍の準備作業が大詰め。ブログの更新が順調ではなくて、まことに申し訳ございません。
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2009年1月7日水曜日

バーレーンの格付けと米財政赤字

●バーレーンを格下げ方向で見直し、ムーディーズ(1/6FT)
イスラエルのガザ侵攻で中東情勢流動化を受けての措置かと思い、記事を読んだら、全然逆でした。
原油価格の暴落による国家財政の負担増が原因とのこと。ガザ侵攻で原油が50㌦まで戻しているのはむしろプラス材料なのか。

バーレーンは中東諸国のなかでは、原油輸出以外の収入源の多角化が図られているほうだが、それでもピーク時の三分の一程度に低迷する原油価格では財政状態の維持は困難と見られている。ムーディーズの現在の格付けはA2。

もっとも、当ブログでは、格付機関はもとより信頼しておりませんが。

●アルコア、15,000人雇用削減(1/6WSJ)
期間社員含む全従業員の15%に相当。

●米財政赤字、2009年度は1兆㌦へ(1/7Reuter)
財政赤字の天井がなくても、さすがに自動車やアルミそのものを公的資金で買い上げるわけにはいかないでしょう。
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2009年1月6日火曜日

天然ガスと集団的自衛権

●ウクライナに対するロシアの天然ガス供給制限に対し、EUは中立を保つ(1/5IHT)
ロシアとウクライナの間の天然ガス価格に関する条件闘争は3年前にも起きていた。前回はウクライナ側を支援したEUだが、今回は仲裁役を務めず中立を決め込む、とインターナショナル・ヘラルド・トリビュン紙。

EU圏は、そのガス需要の25%をロシアに依存しており、更にそのうちの80%がウクライナ経由。月曜日ロシアが通告した更なるウクライナへの締め付けはヨーロッパを打撃する。特に、ブルガリア、ルーマニア、チェコ、ハンガリーは直ちに緊急事態に陥るとの報道も。

それでも、今回は、

★ロシアはエネルギー価格の暴落に直面していること

★ウクライナは経済危機に直面しており、ロシアが要求しているガス価格を支払うとなると、IMFが合意した経済援助資金(約160億㌦)相当分が一挙に枯渇すること

紛争当事者双方に弱みがある点が、2006年の同様の紛争と異なる点だと指摘。

昨日発売の「週刊ダイヤモンド」。長期連載中の櫻井よしこさんのコラムのなかで外相・陸奥宗光の言葉「兵力の後援なき外交はいかなる正理に根拠するも、その終極に至りて失敗を免れざることあり」を取り上げています。櫻井氏は「日本が、米中合同管理体制への従属を避ける道はたったひとつ。外交と軍事は一体であることを認識し、自衛隊を国軍とすること」と説きます。

その先、一足飛びに「集団的自衛権の行使を可能にする」ということに結びつける。または万能の切り札としての集団的自衛権が先ずありき、という議論をするから、非現実的な抵抗に遭うのだというのが個人的感想ですが。自衛隊はソープランドと同じだ、違憲だが合法だ、という解釈改憲の泥沼からはそろそろ卒業しなければならないのは事実。しかし、自衛権と集団的自衛権の差は著しく、そこに歯止めを掛けて、大国の論理で自衛隊派遣について日本国独自の裁量を奪われるようなことがあっては絶対にならない。余計なおせっかいであったイラク介入で力尽きた米国が、もはやイスラエル対ハマスに実効的な介入が出来ない状況に陥る中、前掲の天然ガス紛争。世界が多極化すると思われる中、与野党論客には大国の利益代表ではない立場で議論をしてほしいものです。

陸奥宗光の言葉「兵力の後援なき外交」。「兵力」と並べて、エネルギーなど天然資源も加えておくべきと、前掲のインターナショナル・ヘラルド・トリビュン紙は物語っているようです。
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2009年1月2日金曜日

明けましておめでとうございます

今朝も外国為替部の職員に混じって元気に出勤。御屠蘇を飲んでいる場合ではありません。

日頃お世話になっている日経CNBCのスタッフの皆さんも恐れる(!?)テレビ酷評家の七転び八起きは、年末年始の地上波番組の大半は無視しつつ、お決まりのNHK「紅白歌合戦」、テレ朝「朝まで生テレビ元旦スペシャル」、最後にNHKスペシャル「激論2009 世界はどこへ そして日本は」を観“戦”。

紅白歌合戦で天邪鬼の私がじぃ~んと来たのは、前川清さんがクールファイブを背景に懐かしの名曲「東京砂漠」を歌ったところ。2008年ヒットしたかどうかに拘らず選曲することが目玉だった2008年の紅白。前川清さんに「東京砂漠」を歌ってもらうことは先月のダイア建設倒産よりも以前に決まっていたのでしょう。

かつて民放局名自体タブーであったNHK。近年は著しく態度が柔らかくなってきているのは読者の皆さまもお気づきの通り。それにしても、懐かしの名曲以外は殆どCM楽曲。崖の上のポニョにしてもあそこまで大仰に宮崎アニメに時間を割いて日本テレビにエールを送る必要があるのか?七転び八起きブログの10倍以上読まれているから嫉妬しているわけではないですが、羞恥心+PABOに混じって出てきたフジテレビの旗は一体何なのか?地上波民放各局が構造不況の傷を舐め合うべく、お互いがお互いの番組を取り上げる品の無い相互乗り入れの動きに、NHKが同調する必要は全く無い筈。

さて、ここからが本題。テレ朝とNHKの討論番組はいずれも派遣切り問題に時間が割かれていました。派遣切りが終身雇用と年功序列の既得権益にのさばる正規雇用(家族としての正社員)の犠牲であるとか、非正規雇用を法律で禁止したところで失業率が上がるだけ(敢えて私が補えば、旧法借家を定期借家に根こそぎ置き換えるのを旧社会党が拒んだ結果、家賃利回りが高止まっただけで社会厚生に何ら貢献していないのと同じこと)という規制緩和論者の主張は多勢に無勢で針の筵に立たされていました。製造業の非熟練労働(単純労働)の分野においては直ちに同一価値労働同一賃金を適用すべきだし、ワークシェアも可能で、企業経営者がそれを厭う理由はないでしょう。

問題は、非熟練労働分野において日本はアジア諸外国に比べ圧倒的に比較劣位にあるということ。熟練労働の分野においてはワークシェアは不可能であるということです。私は自民党政権の肩を持つ義理もへったくりも無い人間ですが、非正規雇用の範囲を拡大したこと、自動車が売れなくなったのは有効需要(≒公共工事)が足りないからだという自民党に対する失政批判は的を射ているでしょうか?自動車が売れないのは景気循環よりも石油価格急騰(今はピーク時の半分なのに売れないのですから!)よりも多機能化・高性能化の行き詰まり(これはエレクトロニクスにも当て嵌まる)と(特に若年層の)生活様式の変遷でしょう。

バブル世代以前に新卒採用され終身雇用と年功序列が未だに当たり前だと考えている既得権者の多くは、自動車は若い頃の夢でありステータスシンボルであり、より短視眼的には女性にモテるための道具だった。それが現在は携帯でのコミュニケーション能力に置き換えられた。違うでしょうか?

私は民主党枝野議員や日本共産党穀田議員の人道的な視点は嘘ではない、政治家にありがちな票田を目の前にした偽善ではないと信じて疑いません。しかしながら、両先生の派遣切りへの対応:「正社員ですら倒産寸前では解雇できる。内部留保をシコタマ溜め込んだ企業が一期赤字くらいで派遣切りは許されない」(枝野氏)、「非正規雇用の範囲を製造業分野に拡大させてしまった以前の法律に直ちに戻すべき」(穀田氏)は間違いです。むしろ改革が不十分で正規雇用分野における終身雇用と年功序列が解体されていないことが問題なのです。

今世紀初頭のITバブル崩壊時に我が国を襲ったデフレで、メガバンクがあと一つでも少なければ、銀行員正社員の数をもっと減らせられていれば、日本の銀行はサブプライム関連商品をはじめとする運用益に頼らずに済む経営体質を手に入れていたかも知れない。ポールソン財務長官がリーマンを破綻させたのはゴールドマンサックスのOBとしてかも知れないが、ビジネスモデルが臨界点に達していた投資銀行の間引きは避けられないという判断が根底にあったと思われます。本日報道されているバンカメによるメリルの買収完了。ここでも、買収側の筈のバンカメ職員にも解雇の波は容赦なく打ち寄せているのです。

若年層の生活様式については、アルコールを飲まなくなった。特に麹臭漂う日本酒が敬遠された。よって全国の酒蔵がどんどん消滅し、杜氏さんの数が過去5年で半分以下になった、という話を当ブログでしました。中小零細企業の廃業や倒産は、派遣切りと全く同じ扱いであり、大企業にのみ許された終身雇用・年功序列と対をなすものです。しかし腕利きの杜氏さん達は、現実を受け入れ、異業種異分野に活路を求め再就職を志していらっしゃいます。決して彼等からは、日本酒が売れないのは有効需要が足りないからだとか、飲酒運転の規制強化はやり過ぎだとか筋違いの言い訳は聞こえて来ないのです。

規制緩和論者の鬼の首を取ったかの如き「会社は株主の物ではない」という議論。日本株の下落幅が金融危機発祥の地米国よりも酷いのは外需頼みだったからという議論。このような感情論が横行する風土そのものが日本株の低迷(純資産倍率1倍を割り込んだ上場企業の多さ)の原因なのです。「赤字に陥ったからといって、内部留保が枯渇するまでは首切りや配置転換や業態転換をしなくても良いんだよ。法律が守っているから」と民主党や日本共産党に応援していただければ雇われ社長の仕事は随分楽になります。でも、そうしたら起業家や株主は日本から益々ソッポ向くでしょう。失業者の再雇用に最も必要な資源は、公共事業でもなければ社会保障でもない。新たな産業を生み出し育てうる優秀で果敢な起業家や経営者なのです。

最後に、誤解のないように所得再分配と雇用のセーフティネットについて申し添えます。派遣切りに遭遇している人達の殆どが、生まれ育った境遇が原因(親が貧しく教育機会に恵まれなかった)だとすれば、つまり格差の“拡大”だけでなく、格差の“固定化”(貧困の再生産)も、現在の日本では進行してしまっているという客観的データがあるのであれば、所得再分配(累進課税強化と生活保護強化)と雇用のセーフティネットを応急的に強化し、格差逆転可能な社会インフラを築くべきです。確かに、東大生の親の収入が、慶大生のそれと同様、全国大学でトップクラスという現状は打開しなければなりません。ちなみに私は中学生時分から進学塾や予備校は、教育の機会均等を保障した憲法に違反すると彼方此方で主張し、同級生達からそこまで言うなよと咎められたものでした。

しかし一方、世の中悪いことばかりではない。「コネ採用」という言葉、今では死語だと信じたい。カネ+コネ+学歴がないと大企業には入れないという時代が終わったのは、失われた10年の米国からの外圧やらグローバル競争のお陰ではないでしょうか。東大卒だから企業パーソンとして優秀な筈だと思い込んで採用する大企業の経営者や、重役や大株主や大口顧客の子息だから面接で特別待遇しなければと考えている人事担当が未だ現存したとしたら、そんな会社はこれから数年の不況のなかで間違いなく滅びるでしょう。

公教育の充実(含む貧困層への教育バウチャー制度)だけで格差逆転可能な社会が実現するとは言いません。が、“良い学校を出て一流企業や一流官庁に入れば死ぬまで安心”という戦後長く続いた日本社会が瓦解したことは決して悪いことではない。むしろこのガラガラポンはもっと進めるべきであり、人生の節目節目に逆転可能なチャンスがある制度設計こそ、グローバル化の正の遺産。この側面を忘れて、規制緩和論者を罵倒する堰を切った声・声・声に騙されてはいけない。

やはり長くなってしまった年頭所感。どうか今年もよろしくお願い致します。
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